――今回のシングルでのミレーヌのソロ曲「レゴリス」もご自身で作詞・作曲を手掛けられていますね。
カジウラ 位置的には「PILLOW DREAM」とか、そういったもののラインナップ上にある曲かなと思います。TVアニメ当時のイメージで書くのか、それとも成長したミレーヌのイメージで書くのかで迷ったんですけど、前回の『Re.FIRE!!』のときは当時のイメージを想像してガールズポップっぽいものを作ったので、今回は大人になったミレーヌでもいいかなと思って、それを意識したラブソングにしました。年を重ねてもバサラは相変わらずだろうなと勝手に想像しつつ、一方のミレーヌは今までのようなガールズポップ的な感情ではないだろうなと。バサラが太陽のようにギラギラと輝いている存在ならば、私(ミレーヌ)は月だと。バサラの気持ちはわからないけど、ミレーヌはきっとバサラに憧れて、バサラが好きだろうから、そんなバサラを追いかけても、求めても、きっと絶対に交わらない。惹かれあって、追いかけて、どれだけ追いかけても届かない、そういう気持ちで書きました。
――ミレーヌがかなり大人になっていて、このシングルでもしTVアニメ以来30年ぶりにミレーヌの歌を聴くという人がいたらびっくりするかもしれませんね。
カジウラ それは自覚しております(笑)。どこまで大人のミレーヌとして作るかというので迷いはしたんですけれども、でも、30年経って我々も大人になって、きっとリスナーの皆さんも大人になって、「恋焦がれることのどうしようもなさ」みたいな気持ちを味わったことがあると思うし、私自身も大人になって味わいました。だいぶ遅い年頃でしたけど、「一生交わらないんだな」っていう感情を知って。私が歌詞を書くときは自分自身の気持ちが必ず反映されるので、あえてバサラとミレーヌもそうだろうなというふうに想像して書いてみましたね。あと、ほかの曲でも出してはいるんですけど、今回はよりディープに宇宙の浮遊感を意識して出したなとは思います。
――たしかに宇宙を漂っているようなイメージはありますね。
カジウラ 「マクロス」のどのシリーズにも宇宙のシーンってあるじゃないですか。ストーリーが始まる前の、ただ惑星が浮いているとか。そういうシーンの中に溶け込むような曲にしました。
――バサラのソロ曲「I am a ROCK」を聴かれた感想もお聞かせいただけますか。
カジウラ 「バサラだなあ」という印象ですね。ちゃんと裏切らないなっていう。ミレーヌはちょいちょい裏切ってくるんですよ。私が、ですけど(笑)。「チエさん、次は何を出してくるの?」って、みんなドキドキワクワクしていると思うので、私はそういう立ち位置でいいかなと。そして福山さんは裏切らないという、コントラストのはっきりした作品かもしれないですね。
――対照的な楽曲が聴けるという意味ではお得な1枚ですよね。
カジウラ どうでしょうね? ちょっと心配はしているんです、実は。ストーリーや気持ちとしては奥深いものを表現したつもりなんですけど、そのぶん重みがあるので、重みをどういうふうにみんなが受け取るかなというのは、よくも悪くもドキドキしますね。
――きっと「レゴリス」というワードも検索されるでしょうし。
カジウラ あえてそこはあまり説明しないようにしました。でも、いつまで経っても報われない感情があると、きっとミレーヌは粉々に散っている部分もあると思うので……。
――切ないですね。
カジウラ 切ないんですよ、ミレーヌって。女子の内面というのは複雑なので、そういう気持ちもあるかなって。いつもミレーヌの歌詞は明るいところばかり出してきていたので、ちょっとそういう部分も出してみました(笑)。
――シングルと同時に、1997年リリースのベストアルバム『マクロス7 ULTRA FIRE!! FIRE BOMBER BEST ALBUM』がアナログ盤としてリリースされます。FIRE BOMBERとしてアナログ盤をリリースされることにはどんな思いがありますか?
カジウラ 今レコードを出すこと自体がお洒落な感じもしますし、カラー盤の懐かしい感じもいいなと思いました。コレクションするにもアナログは嬉しいですもんね。ジャケットも大きいですし、イラストも楽しめるし。
――ジャケットが大きいからこそアナログ盤はコレクションしたくなるんでしょうね。
カジウラ あと、私はレコード特有のノイズがすごく好きなんですよ。ちょっとほっこりするというか、温かい音が鳴るので。
――このベストアルバムの収録曲や、それ以外にもFIRE BOMBERの楽曲にはたくさんの名曲がありますが、特に印象に残っている楽曲やライブで印象的だった出来事はありますか?
カジウラ どの楽曲も私はとても好きですよ。でも、今は私もだいぶ大人になってきたので、特にバラードが好きですね。「LOVE SONG」ですとか、「君に届け→」は今でも自分のライブで歌わせていただいていますし、とてもシンプルで真っ直ぐな気持ちを歌っているので好きです。ライブでいうと“MACROSS CROSSOVER LIVE 2019”のときに、(中島)愛ちゃんと一緒に「アイモ」を歌わせてもらったんですけど、あれはもう最高に気持ちよかったですね! 私ね、愛ちゃんの声、大好きなんですよ。とても美しいじゃないですか。伸びがあって。「アイモ」という楽曲も大好きで、ミレーヌにもぜひカバーさせてほしいというくらい本当に好きなんですけど、それでどうしても一緒に歌いたいとお願いしたら現実になったので、すごく嬉しかったです。
――来年2月にはFIRE BOMBERの13年ぶりとなる単独ライブ開催が決定しましたが、こちらへ向けての意気込みをお聞かせください。
カジウラ まずは単純にすごく楽しみですね。2DAYSというのもすごく贅沢だし、私といえば毎回ライブごとにアレンジを変えるので、良くも悪くも皆さんドキドキしながらのステージだと思うんですけど(笑)。その時代ごとに好きなサウンドを反映させながらアレンジを変えていくのが私のやり方なので、これまでは都度そうさせていただいてきたんですよ。でも、今はもう何周も回って奇跡的に原点に返るという気持ちになっているので、今回はそんなサウンドでやりたいなと思っています。
――30年も経つと原点に戻ってくるものなんですね。
カジウラ 自然に戻ってきましたね。「気持ちに正直に」というのが自分の人生のテーマなので、やりたくないことはやりたくないし、やりたいことをやるというのが私の生き方ではあるんですよ。そうやって自然な形で活動することを佐々木さんや皆さんが許してくださっていたので、これまで色んなアレンジに挑戦させていただいたんですけど、今回は原曲の良さを楽しみたいところですね。
――ミレーヌ・フレア・ジーナス、FIRE BOMBER、そして『マクロス7』は今のカジウラさんにとってどんな存在になっているのでしょうか?
カジウラ 「人生」になってしまいましたね。最初は正直、何が何だかわからなかったんです。私も若かったし、アニメが放送された途端、世界がガラッと変わって「え!? こんなに売れるの?」という衝撃を受けてしまって……。自分自身はそんなつもりもなく、ただ音楽を楽しんで作っていただけだったので、びっくりしてしまって、そこからは色んなことがありました。今はもうアニメが日本の宝になっている時代ですけど、当時はまたちょっと違って、色々言われる側面もあったので苦しい時代もあったし。楽曲に対しての気持ちは変わらず、ずっと好きではあったんですけど、私は一度離れてしまったりもして。
だけど、そうやって離れても「ずっと待ってるよ」と言ってくれる人が変わらずたくさんいてくれて、それでまたちょっとずつ受け入れることもできるようになって。じゃあ、自分に正直になるにはどうしたらいいのかと思って曲のアレンジを変えながら、自分の中で色んなものを消化しながら向き合ってきたら、あっという間に30年が過ぎていて、色々模索したり試行錯誤したりしながらも、ずっと向き合ってきた作品かなと思います。なので、私の人生は死ぬまで「マクロス」なのだそうというのは、30周年でこのような機会をいただいて改めて思いました。きっと35周年も、40周年も、50周年も、ずっとそうだと思います。具体的に何かやるかやらないかは別にして、作品の中に私の歌は流れ、存在し続けるんだなというのをとても感じています。
――では最後に、30年間応援してくれているファンや新しい世代のファンに向けてのメッセージをお願いします。
カジウラ 今回のシングルは、表題曲に関しては1ミリたりとも裏切らない。本当に期待していてほしいという、当時の『マクロス7』がよみがえるような作品になっていると思います。ソロの曲に関してはそれぞれの気持ちを反映させながら出来上がっているものなので、そういった気持ちで楽しんでもらえたらなと思います。そして、その曲たちが今回のライブでどうなるのか? 2DAYS公演で遠くからいらしてくださる方もたくさんいるので、楽しみにしていてほしいなと思います。
●リリース情報
FIRE BOMBER
「BURN! BURN! BURN!」
2024年10月30日発売
品番: VTCL-35379
価格:¥1,540(税込)
・『マクロス7』キャラクター原案・美樹本晴彦氏描きおろし新規イラストデザインジャケット
・初回生産分のみ特殊パッケージ仕様/“SANKYO presents MACROSS 7 30th Anniv. FIRE BOMBER LIVE 2025 ~BURN! BURN! BURN!~”先行抽選申込シリアルコード封入
<CD>
1. BURN! BURN! BURN!
作詞:K.INOJO 作・編曲:今村良太
2. I am a ROCK
作詞:福山恭子 作・編曲:福山芳樹
3. レゴリス
作詞:Chie Kajiura 作曲:Eric Zay and Chie Kajiura 編曲:Eric Zay and Chie Kajiura
※他、各楽曲のInstrumentalを収録
FIRE BOMBER
ANALOG BEST『マクロス7 ULTRA FIRE!! FIRE BOMBER BEST ALBUM』
2024年10月30日発売
品番:VTJL-32~33(アナログ盤2枚組)
価格:¥6,600(税込)
・初回生産分のみ限定カラーヴァイナル仕様
Disc1:VF-19改 ファイヤーバルキリーイメージカラー/Disc2:VF-11MAXL改 ミレーヌバルキリーイメージカラー
※本商品はCD『マクロス7 ULTRA FIRE!! Fire Bomber Best Album / FIRE BOMBER』 (VTCL-60059)と同収録内容となります。
<アナログレコード>
Disc1-side A
1. TRY AGAIN
2. HOLY LONELY LIGHT(Duet Version)
3. 突撃ラブハート(Duet Version)
4. MY SOUL FOR YOU
Disc1-side B
1. PARADE
2. SWEET FANTASY
3. 1・2・3・4・5・6・7 NIGHTS
4. REMEMBER 16(Acoustic Version)
5. I CALL YOUR NAME
Disc2-side A
1. だけどベイビー!!
2. SEVENTH MOON
3. POWER TO THE DREAM
4. MY FRIENDS
Disc2-side B
1. DYNAMITE EXPLOSION
2. LIGHT THE LIGHT
-BONUS TRACK-
3. PLANET DANCE(Live Version/1997.8.17 at Shibuya Kokaido)
4. Angel Voice (Played by Basara Nekki)
●ライブ情報
SANKYO presents
MACROSS 7 30th Anniv. FIRE BOMBER LIVE 2025 ~BURN! BURN! BURN!~
<公演日/会場>
2025年2月21日(金)開場18:00、開演19:00/豊洲PIT
2025年2月22日(土)開場17:00、開演18:00/豊洲PIT
<出 演>
福山芳樹(『マクロス7』 熱気バサラ歌担当)
チエ・カジウラ(『マクロス7』 ミレーヌ・フレア・ジーナス歌担当)
西脇辰弥(Band Master, Keyboards)
根岸孝旨(Bass)
松本 淳(Drums)
外園一馬(Guitar)
© 1994,2024 BIGWEST/MACROSS 7 PROJECT
© 1997 BIGWEST/OVA MACROSS 7 PROJECT
マクロス公式サイト
https://macross.jp/
SHARE