放送開始から30周年を迎えたTVアニメ『マクロス7』。作品と共に、いまだ根強い人気を誇るのが劇中に登場するロックバンド・FIRE BOMBERだ。この秋リリースされる30周年記念シングル「BURN! BURN! BURN!」はFIRE BOMBERにとって12年ぶりのシングルであり、表題曲では主人公=熱気バサラとヒロイン=ミレーヌ・フレア・ジーナスの情熱的な掛け合いを楽しむことができる。今回は“歌ミレーヌ”こと歌唱担当のチエ・カジウラにインタビュー。30年かけて今たどり着いた、ミレーヌや『マクロス7』への思いとは?
INTERVIEW & TEXT BY 仲上佳克
――TVアニメ『マクロス7』の放送開始は1994年10月16日でした。最初はどのような思いでこの作品に関わられていたのでしょうか?
チエ・カジウラ 最初にお話をいただいたのは自分の別の楽曲のプリプロ中で、そのスタッフやチームがそのまま同じメンバーで『マクロス7』の楽曲を制作していたので、作品のストーリーとかは意識しつつも、1つの楽曲を普通に作っているという気持ちでやっていました。なので、そんなに普段の音楽と別のものを作っているという感じでもなく、ごく自然にミレーヌの少し幼いイメージを意識して作っていたという感じでしたね。
あと、これは30周年にして初めて知ったんですけど、ミレーヌとバサラに関してはシンガーの方が先に決まっていたらしいんですよ。その歌声とかを意識して声優さんをお決めになったらしいのですが、私は全然知らなくて「そうだったんだ!」って、このインタビューの前にフライングドッグの佐々木(史朗)さんから聞いて盛り上がったところです(笑)。
――てっきり声優さんが先に決まって、そのイメージに合わせて歌われているのかと思っていました。
カジウラ 私もそう思っていたんですけど、『マクロス7』は歌が重要な作品というのもあって逆だったらしいです。まだまだ知らないことがいっぱいなので、35周年はどんなことを知れるのか楽しみですね(笑)。
――30周年記念シングルのリリースにあたってはどんな思いがありますか?
カジウラ まったく想像していなかったことなので、お話をいただいたときはすごく嬉しかったですし、何より30年も経っているのに新曲を期待してくれているお客さんがいるということが本当にすごいなと思います。そうやって期待してもらえていることもありがたいですし、河森(正治)さんがずっと作品を生み続けてくださっているがゆえにこういう機会が与えられたと思うので、色んなところに感謝です。
――『マクロスF』や『マクロスΔ』などの後続の作品があるからこそ、『マクロス7』にも注目が集まるようになるという。
カジウラ 本当にそうですね。私のInstagramとかにも随分とお若い方が急に来てくださって、新しい作品からさかのぼって『マクロス7』まで観て「FIRE BOMBER好きです」と言ってくださる方もいるので、すごいなと思います。バトンリレーみたいに繋がっているんだなという感じですね、「マクロス」シリーズというのは。
――30周年記念シングルの表題曲「BURN! BURN! BURN!」はバサラとミレーヌの掛け合いが熱い1曲ですが、カジウラさんご自身はこの曲を聴かれてどのような印象がありましたか?
カジウラ まず、仮歌の段階で聴いて「なるほど」と思いました。前回(2009年リリース)の『Re.FIRE!!』での新曲よりも、より元の『マクロス7』の世界観に近い楽曲が来たなという印象でしたね。歌詞もK.INOJOさんが書いているだけあって、当時の“いなたさ”みたいなものがそのまま反映されていて。「このメロディーにこの言葉を持ってくるか!」という衝撃も受けましたし、「どうなるんだろう?」と思いながらレコーディングに挑んだんですけど、やっぱり福山(芳樹)さんの声でこの歌詞が歌われた瞬間に「バサラの歌になった」という感じで。その後に私の声を重ねたんですけど、自分の声が入った段階でまさにFIRE BOMBERの曲ができたという印象になったのは我ながら衝撃でした。新曲なのに昔からある曲みたいだったというか、こんなに『マクロス7』になるんだなって。
――レコーディングされる前はFIRE BOMBERに戻れるのかな、あるいはミレーヌに戻れるのかなという心配のようなものはなかったでしょうか?
カジウラ 頭の中にそういうワードがあったかというと、そうではないんですけど、「これが新曲です」ということで聴いて、歌って、録ってみたら、改めて衝撃があったという感じ(笑)。そこで本当にFIRE BOMBERになったという感覚で……実際に声が全部揃ってみないとそういう感覚にならないじゃないですか。仮歌の段階だと全然違うので。
――カジウラさんと福山さん、お二人の声があってこそのFIRE BOMBERだと。
カジウラ もちろん福山さんあっての、ということですね。私はバッキングコーラス的なフィーリングではいるのですが、それでも2人の声が重なったものを聴くと「やっぱり『マクロス7』のFIRE BOMBERだな」という印象がすごく強かったので、私も少しは存在価値があるんだなと思いました(笑)。そのくらいしっくりきたので、お客さんもきっとそう感じてくださるんじゃないかなと思います。
――バサラと一緒に歌っているときのミレーヌの声は、バサラよりも大人びて感じられるなという印象を改めて受けました。
カジウラ どうなんでしょう? バサラの曲はすべてK.INOJOさんの歌詞なので、歌詞が印象を左右しているなというのはありますけどね。ミレーヌの曲は私が全部作詞させていただいているので、ちょっとガールズポップな感じのワードだったりもする仕上がりになっていると思うのですが、バサラのほうは、ちょっといなたいセンスがある独特な世界観なので、そこの違いじゃないですかね。
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