INTERVIEW
2024.10.22
Mrs. GREEN APPLEの大森元貴がプロデュースを務めたTVアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』オープニング主題歌 第二弾「レナセールセレナーデ」に続き、2期連続でのアニメタイアップとなるTVアニメ『甘神さんちの縁結び』のOPテーマ「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」を配信リリースしたももいろクローバーZ。『美少女戦士セーラームーン』『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』など、日本を代表するアニメの主題歌を歌ってきたももクロにとっての“アニソン”とは——。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTOGRAPHY BY 笹森 健一
HAIR MAKE BY チエ・竹内 美紀代・横山 藍・RIKO(KIND)
STYLING BY 藤井 希恵(THYMON Inc.)
――これまでに日本を代表するアニメの主題歌を数多く歌ってきましたが、アイドルグループであるももいろクローバーZ(以下、ももクロ)がアニソンを歌うことをご自身たちはどのように捉えてますか。
百田夏菜子 アニソンでももクロのことを知ってくださったっていう方が本当に多いんですよね。私たちのことを知らなくても、曲は聴いたことがあるという人もたくさんいて。特に海外に行った時に、アニメの曲ってすごく強いんだなと感じて。ステージに上がる前は少し不安な部分があるんですけど、実際にステージに上がって、アニソンを歌った時にお客さんがすごく盛り上がってくれて。私たちのことを知らない方が多くても、楽曲がこんなふうに1つにしてくれるんだって実感したタイミングがたくさんありますね。
高城れに アニメはやっぱりたくさんの方が関わっていて、すごい熱量を注いで作っているし、大人も子供もその作品のキャラクターを愛しているのを知っているので、アニソンを歌わせていただく時は、リスペクトの気持ちを持っています。自分たちの楽曲を出す時とは少し違って、アニソンは本当に色んな人たちの思いを背負いながら歌うっていうことを毎回、意識していますね。
玉井詩織 普段の楽曲も自分たちの思いとか、色んな意味合いを込めて歌ってはいるんですけど、アニメソングとなると、アニメからもパワーをもらって、より曲が輝くなっていう印象がありますね。それに、みんなが言ってくれたように、「普段はももクロの曲を聴かないけど、このアニメを通して出会いました」という方もいるし、逆に私たちのファンの方々がそのアニメを観るきっかけになったりもする。私たちがアニソンを歌うことで、色んな人を繋げていける存在になっていったらいいなと思っています。
佐々木彩夏 アニメの主題歌を担当させていただけるのはすごく嬉しいんですけど、毎回緊張するんですよね。原作ファンの皆さんに受け入れていただけるかなという不安はとってもあるんですけど、私たちとしては、普段歌わないような楽曲にチャレンジできる機会にもなっています。でもやっぱり、「作品の一部になる」いう気持ちでいつも身が引き締まるなと感じていますね。
――ももクロのオフィシャルYouTub eで、劇場アニメ『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』の主題歌「笑一笑 ~シャオイーシャオ!~」のMVが3700万回を超えていることはどう感じていますか?
玉井 3700万回!?本当ですか?
百田 そんなにいっぱい?
佐々木 え?知らなかったです。お子さんかな?
高城 嬉しいけど、誰が観てくれているんだろうね。
――あははは。最近、ダンスプラクティス動画も出たので、MVの反響を受けてかと思っていました。
玉井 確かにダンスプラクティスはアニメソングを中心に選びましたね。ももクロ楽曲で、知ってもらっている曲がいくつかあるなかで、アニメの歌は、より広がりが大きいなっていうのは実感としてあって。それこそ「笑一笑 ~シャオイーシャオ!~」は『クレヨンしんちゃん』の映画の主題歌だったということもあって、小さい子から大人の方まで聴いてくれてるなっていうのを強く感じてますし、特に運動会で使ってくださっているので、ダンスの練習で見てくれたりするのかなって思いますね。
――アニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』の主題歌「MOON PRIDE」も3300万回を超えています。
佐々木 すごいですね。アニメの力を借りて、世界中の人たちが聴いてくれたらいいなっていう気持ちは、いつもよりちょっと貪欲になっちゃうところはあるかなと思います。YouTubeは全世界で観てもらっているし、外国語のコメントがあったりすると、やっぱりアニメの偉大さを感じますし、そこに便乗して聴いていただけるとすごく嬉しいなと思いますね。日本の中での年齢層の幅広さもだけど、そういう数字を聞くと、色んな国に届いてるという実感が沸いて嬉しいです。
百田 TVアニメ『じょしらく』のED主題歌「ニッポン笑顔百景」を発売した9年後に、世界19ヵ国くらいで1位になったんですよ。(Apple Music【J-Popチャート】にて)スタッフさんから「何かバズってるかも?」みたいなのを聞き始めたと思ったら、あれよあれよという間に、世界の方々がTikTokで使ってくださって。自分たちでは、どこでバズるかわからないなって思ったし、やっぱり日本のアニメはすごく愛されているんだなというのを肌で感じて。
――アニメのOP映像の振付を踊るダンスチャレンジが世界中で巻き起こっていましたね。
百田 自分たちはその状況についていけなかったです(笑)。たしかにみんな、めっちゃ踊ってくれてるけど、みたいな。皆さんアニメの映像と、ダンス動画をセットで上げていたので、そこに自分たちの声が乗っているというのがすごく不思議でした。
高城 本当に信じられないっていう気持ちが大きいですね。私たちの歌がそんなにたくさんの人の耳に届いてるんだと思うと、みんなが言ったように、アニメの力の偉大さも感じますし、それこそ本当にもっとたくさんの人に聴いてほしいという欲も出てきますよね。例えば、海外で行われるアニソンフェスに出たいなとか、そういう夢がたくさん増えていきます。
――さらに、今年の7~9月、10~12月と2期連続でアニソンを担当することは皆さんどう感じてますか。
玉井 とにかく嬉しいです!
佐々木 私たちはそんなに頻繁に曲を出すグループじゃないので(笑)。こうやって2期にわたってアニメ主題歌を歌わせてもらえるのはすごく嬉しいなと思っています。
百田 活動がより活発になるからね。本当に忘れちゃう時があるんですよ、シングルを出すということを。
――あははははは。
百田 前も急に思い出したように3曲連続で出したりして(笑)。こうやって2作品連続でアニメのタイアップを歌わせていただけることはすごく嬉しいですし、やっぱりアニメとアニメ主題歌ってすごく繋がりが大きいなと感じていて。私たちも小さい頃から主題歌もセットでアニメを観ていたし、覚えてるアニソンもたくさんあるので、その大役を任せていただける喜びと、しっかり努めないとなっていうプレッシャーというか、緊張感もありながら、楽しみたいなと思っていて。
――TVアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』オープニング主題歌 第二弾「レナセールセレナーデ」はMrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)の大森元貴さんが作詞、作曲、プロデュースを手がけています。
玉井 去年の春にミセスさんと対バンライブをやらせていただいたご縁もあって、今回、楽曲提供をしていただくことになったんですけど、最初はアニメのタイアップがつくとは知らなくて。『転スラ』のタイアップになるよ、それが大森さんが作ってくださる楽曲だよってなって、2度嬉しかったです。まず、私たちにとっても久しぶりのアニメタイアップソングでしたし、大森さんが作ってくれるっていうこともあって、どんな曲になるんだろうというワクワクした気持ちがありました。
佐々木 今、日本を代表する大森さんに書いていただけることにすごく緊張したんですけど、『転スラ』もシリーズ化されていて大人気のアニメなので、ダブルで緊張というか、頑張らなきゃと思って。
高城 アニメもミセスもどっちもビッグネームすぎて、私たちで本当に大丈夫なのかなっていうのが……。
――ももクロもビックネームじゃないですか?
高城 いやいや!そこに入れるのが私たちで大丈夫なのかなって感じたんですけど、楽曲には大森節がふんだんに入りつつ、ももクロや『転スラ』の要素もたくさん盛り込まれていて。歌うのはすごく難しかったんですけど、歌っていて私たち自身もテンションが上がりました。
玉井 最初に聴いたときは、「めちゃくちゃいい曲だな。楽しい曲だな」って思ったんですけど、一瞬、自分たちが歌うことを忘れていて。「あ、これって私たちが歌うんだ」ってすごい緊張感に襲われましたね。
百田 で、歌ってみたら、驚くほど歌えなくて(笑)。
玉井 難しかったよね~。
百田 急に「どうしよう……」って焦り出すっていう。やっぱり大森さんが歌うようには歌えないんですよね。同じように歌うんですけど、想像しているのとまったく違う感じで自分の口から出てきて(笑)。最初は上手に歌えなくてすごく焦ったし、レコーディングを経た今でもやっぱり難しいなと思うんですけど、みんなで歌い継いで繋げていく曲なので、歌うごとにだんだんと少しずつ慣れてきて。
――今年の夏に出演したすべてのフェスでセットリストに組み込んでいましたね。
百田 皆さんの反応も大きかったですね。「ミセスぽいと思ったら、やっぱり大森さんが作ってたんだ」っていう声もたくさんいただいて。アニメに加えて、フェスでもさらに知ってくださるっていうタイミングもあったんですけど、まだまだたくさんの方に知ってほしいですし、難しい曲なので、もっともっと上手に歌って届けられるように頑張りたいなと思います。
――先ほど、「ミセス」「ももクロ」『転スラ』の要素が盛り込まれてるとおっしゃっていました。
佐々木 そうなんですよ、それぞれの“らしさ”がてんこ盛りで、色んな思いを詰め込んでくださっていて。実は、ミセスさんの「ケセラセラ」のメロディがちょっと入っているんですね。「ケセラセラ」が“転生”したら、「レナセールセレナーデ」になったっていうメッセージが込められていて。本当に天才的で素晴らしい1曲なので、そこにどれだけももクロらしさを詰め込めるかは私たち次第だなと思って。一生懸命に頑張ってレコーディングして、『転スラ』ファンの皆さんからも、「ミセス」のファンの皆さんからも、もちろんモノノフさん(ももクロファンの総称)たちからもたくさん反響をいただいて。みんなに聴いてもらって、やっと曲が完成だと思うので、皆さんからの反響を見て一安心しましたし、みんなの思いが詰まった素敵な1曲に仕上がったなと思っています。
高城 “生まれ変わっても私達でいたい”っていうのは、アニメとリンクしつつ、ももクロとモノノフさんとの関係性とも繋がってくる。そういう意味では、普段、私たちのことを応援してくれる方々に対しても私たちなりのプレゼントだよっていう気持ちもあるんですね。すごく温かい歌詞なので、たくさんの方がこの楽曲を聴いて、ももクロに興味を持ってくださって、私たちよりも上手く歌い上げている動画をアップしている方もいて。「私たちより上手く歌われると困るよ」ってメンバー同士で話しているんですけど、この曲を入り口に、たくさんの方々にももクロを知ってほしいなという気持ちです。
――特にももクロらしさが出ているなと思うのはどういうところですか。
佐々木 歌割りは大森さんが決めてくださったんですけど、歌割りの所々にそれぞれの個性が詰まっていて。
百田 この話をすると、れにちゃんがちょっとピリッとするんですよね。
高城 大森さんは、ももクロの情報を追っかけて、それぞれの小さい頃の夢を反映させてくださっている歌詞があるんですね。
百田 いいよね~。
玉井 優しいよね。
佐々木 前に4人でラジオで話したことがあって。しおりんが「ケーキ屋さんか、パン屋さんになりたい」で、夏菜子ちゃんが「お花屋さん」で、私は「おジャ魔女ドレミちゃん」になりたいって言ってたんですね。それがしっかり歌詞に反映されていて、歌割りもその通りになってるんですけど、れにちゃんの夢だけ入っていなくて。
高城 私のパート、“ノスタルジー・ザ”までなんです(怒)。すごい中途半端!
百田 中途半端じゃないよ(笑)。
佐々木 大森さんも「高城さんが何を言っていたか忘れちゃった」って言っていて。
高城 私もそのラジオで絶対に言っているんですよ!
――実際には何を言ったんですか。
玉井 奇想天外すぎて歌詞に入れ込めないって判断されたのかも?
百田 そっちじゃない?
高城 たしかにそうかも。小学校4年生の頃はTVドラマの影響で消防士さんに憧れていたけど。
百田 消防士さんだったら入るよね。
佐々木 もっと小さい頃じゃない?だって、私、「おジャ魔女ドレミちゃんなりたい」って言っているくらいだから。幼稚園とか。
高城 その頃は怪獣になりたかった。
玉井 ほら~。怪獣はちょっと難しいよね。
高城 ……でも、私の言い分はそれだけじゃないんです!2Aの“冴えない私もいつか”っていう一文が私の歌割りになっているんですよ!大森さん的には、ちょっと私は刺さらなかったのかなって……。
玉井 あははは。じゃあ、誰が刺さったの?
高城 3人は刺さっているんです。ただ、私のことは刺さらなかったんじゃないかっていう疑惑が。
百田 インタビューの原稿にはちゃんと<※個人の感想です>って入れておいてください(笑)。
高城 次にお会いしたときに、絶対にそこを聞こうと思っています。「なんで、ここ、私なんですか?」って。
玉井 それ、超面白いな(笑)。
SHARE