トゲナシトゲアリ、聖地・川崎でアニメ『ガールズバンドクライ』の感動を再現！2ndワンマンライブ“凛音の理”6000字超ロングレポート

「私たちの始まりの目撃者になってください！」

アンコールを受けてステージに戻ってきたバンドは、「もっとやっちゃってもいいですか！」（理名）とフロアに呼び掛けて、「偽りの理」からライブを再開。「名もなき何もかも」と同じくバンドの最初期からある楽曲だけに、ステージの見せ方もこなれたもので、夕莉と朱李が向き合ってヘドバンしながら演奏する場面も。続けてシーケンスによるリズムとミニマルなギターフレーズが奏でられて「黎明を穿つ」へ。青と赤を対照的に用いたライト演出も込みで、冷静と情熱の間、胸の内に秘めた激しい感情を表現するかのようなパフォーマンスが印象に残った。

続いてのMCで、ようやく自己紹介を行うメンバーたち。美怜と凪都の代わりに参加したサポートメンバーの宮内沙弥（Dr）と鈴木栄奈（Key）は、“アニサマ”やこのワンマンの2日後に出演した“BAYCAMP 2024”でも演奏を務めていたほか、鈴木は「名もなき何もかも」のアニメーションMVで智のモーションキャプチャも担当していたとのことで、理名からは「智ちゃんのウインクの人です！」と紹介されていた（同MVには智が演奏しながらウインクする場面がある）。

その後は、夜の闇の中を駆け抜けていくような「闇に溶けてく」、夕莉のいななくギターがさく裂した「碧いif」、各々がポジションをチェンジしながらステージをいっぱいに使って盛り上げた「極私的極彩色アンサー」と、激しいアップチューンを連続で畳みかけていく。

そしてスクリーンにアニメの最終話にあたる第13話「ロックンロールは鳴り止まないっ」のクライマックス、まさに本公演の会場となっている川崎CLUB CITTA’でのライブのシーンが上映される。その間に理名は、劇中の仁菜と同じようにエレキギターを手にしてスタンバイ。彼女がライブでギターを弾くのはこれが初めてのことだ。仁菜の一人語りのシーンからシームレスに、理名が「私たちの始まりの目撃者になってください！」と仁菜のセリフを言い放ち、第13話の挿入歌「運命の華」がライブ初披露される。ステージが眩しくライトアップされるなか、彼女たちはかつてないほど明るくてポジティブなその楽曲を、開放的な歌と演奏で表現する。ときにメンバー同士で向き合いながら、心から楽しそうに音楽を奏でるトゲナシトゲアリ。キメの“1,2,3,4!”とカウントする箇所では、観客もその日一番の大声で合唱して心をひとつにする。ラストは銀テープが発射されるなか、理名は音源でも印象的だった超ロングトーンをバッチリきめてみせ、理名、夕莉、朱李がステージ中央で寄り合って「せーの、ありがとー！」と、アニメのラストシーンさながらのポーズで締め括った。

その後、パシフィコ横浜での5thワンマンライブ、アニメ『ガールズバンドクライ』劇場版総集編の前編・後編の製作決定といった新情報を告知すると、最後はやはりこの曲、アニメのエンディング主題歌「誰にもなれない私だから」でフィナーレを迎える。誰にもなれない不安や寂しさと、それでも“君と歌ってみたい”と期待する気持ち。劇中の仁菜のように心があちこちに揺れながら、それでも譲れない想いがあることを感じさせる、切実なニュアンスの歌声が心に響く。17歳の仁菜と同年代、現在16歳の理名だからこそ歌える歌なのかもしれない。

スクリーンにはエンディングアニメーションやアニメの劇中で描かれた5人のシーンが映し出され、トゲナシトゲアリがひとつのバンドとして固まっていくまでの軌跡、彼女たちとのこれまでの思い出が浮かんでは消えていく。これでこの日のライブは終わりだが、5人を乗せたバンドワゴンはどこまでも走り続ける。TVアニメはいったん区切りを迎えたが、トゲナシトゲアリの物語はこの先も続いていくし、我々は彼女たちの新たな“始まりの目撃者”になったのだ。この先、トゲナシトゲアリがどんなバンドに成長していくのか。その物語を引き続き見届けていきたい。

トゲナシトゲアリ 2nd ONE-MAN LIVE“凛音の理”
2024年9月13日（金）神奈川・川崎CLUB CITTA’

M01. 雑踏、僕らの街
M02. 空の箱（夕莉）
M03. 空の箱（バンド）
M04. 声なき魚
M05. 視界の隅朽ちる音
M06. 名もなき何もかも
M07. 理想的パラドクスとは
M08. 気鬱、白濁す
M09. 運命に賭けたい論理
M10. 蝶に結いた赤い糸
M11. 無知のち私
M12. 傷つき傷つけ痛くて辛い
M13. サヨナラサヨナラサヨナラ
M14. 爆ぜて咲く
M15. 空白とカタルシス
EN1. 偽りの理
EN2. 黎明を穿つ
EN3. 闇に溶けてく
EN4. 碧いif
EN5. 極私的極彩色アンサー
EN6. 運命の華
EN7. 誰にもなれない私だから