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INTERVIEW

2024.10.09

“fripSideの音楽”を真正面から追及したニューアルバム『infinite Resonance 3』完成!八木沼悟志、上杉真央、阿部寿世それぞれが思う“fripSide”とは。

“fripSideの音楽”を真正面から追及したニューアルバム『infinite Resonance 3』完成!八木沼悟志、上杉真央、阿部寿世それぞれが思う“fripSide”とは。

現体制としては3年目に入ったfripSideが、昨年から1年ぶりとなるニューアルバム『infinite Resonance 3』をリリースした。これまで上杉真央と阿部寿世というツインボーカリスト編成を活かした、3rd Phaseならではのサウンドを追求してきた彼らだが、今回はコンポーザーでありプロデューサーである中心人物の八木沼悟志が、第3期では開けてこなかった引き出し、いわゆる過去のfripSideのエッセンスを多分に含ませた作品となった。多くの人たちに愛されるfripSideという音楽を真正面から追求した1枚が生まれた経緯を、八木沼、上杉、阿部の3人に聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

デジタルJ-POPとしてのfripSideというところに一度立ち返る

――fripSideのニューアルバム『infinite Resonance 3』(以下、『iR3』)ですが、『infinite Resonance』(以下、『iR』)、『infinite Resonance 2』(以下、『iR2』)と過去2作と比べて、また変化が見られた一作になったと思います。satさんのなかでは『iR3』の制作にあたってイメージしていたものはなんでしたか?

八木沼悟志(以下、sat) デュオという形態の新しいfripSideとしてどのようなものを出すか?というのは一番大きなテーマで、それは『iR』と『iR2』を作ったときとは同じなんですけど、『iR3』はそれをより研ぎ澄ませて考えて、もう少しポップにというか。デジタルJ-POPのfripSideに一度立ち返ったほうが、2人の新たな魅力を引き出せるのではないかというのがあって。fripSideとしての立ち位置や存在意義を見直す、いい1枚になったなと思っています。

――3枚目にして見直す時期に来たというのは興味深いですね。

sat 僕がそんなことを考えるに至った1つのファクターは、昨年の20周年ライブ(“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”)で。あそこでnaoちゃんと第1期の曲をやって、fripSide設立当初に僕とnaoちゃんが目指していた方向性や目標みたいなものと、第2期に南條(愛乃)さんとやったアニソン中心の音楽展開があって、その第1期のときに目指していた音楽の振り幅というものを少し取り入れてもいいかなと思って。

――たしかにあのときの第1期のサウンドへの反響は大きかったですよね。それを第3期に活用してみようという。

sat 僕のチャンネルとして使えるべき武器なのに、使うのを忘れていたんですよ。アレンジも含めて。そういうところを2人にぶつけたらどんな科学反応があるのだろう?と思っていて。で、やってみた結果「めちゃくちゃいいじゃん!」って。「これは第3期fripSide始まったな!」って(笑)。

――始まりましたか(笑)。でもそれくらいフレッシュな印象が『iR3』にはありますよね。今回のコンセプトについてはボーカルのお2人はどう思いましたか?

上杉真央(以下、Mao) 私はあまり「これまでと大幅に違うな」という感覚はそこまでなかったです。曲をいただくたびにすごくいいなって、どの曲を聴いても思っていました。

sat いつもいいんだけど!(笑)。

Mao わかってますよ(笑)。でも今回は歌う前から、「きっとこの3枚目のアルバムはすごいアルバムになるだろうな」というのはすごく感じましたね。

阿部寿世(以下、Hisayo) そうですね。私も大幅に変わった印象はそこまでないんですけど、なんだろうな、satさんが本当に今やりたいと思っている音楽なんだろうなというのは感じましたね。

sat うん、そうだね。

Hisayo 私がsatさんから楽曲データをもらったときに、「この曲作るの楽しかったんだよね」みたいなことを言っていたじゃないですか。それが私たちも嬉しかったんですよね。satさんも楽しんで作っているんだ、私たちも頑張って歌おうっていう気持ちにいつもなります。

――そこですよね。satさんがfripSideのプロデューサーとして20年やってきて、第3期が始まったときもプロデューサーとしてfripSideを今後どうしていくかということを考えながら音楽を作っていたと思うんです。その一方でコンポーザーとしてのやりたいことというものも、過去の引き出しを含めてこの『iR3』には込められているのかなと。

sat うん。

――そういったメンタリティのなかで、本作の曲作りはいかがでしたか?

sat メロディというのはいくらでも出るんですよ。ただ、その取捨選択が難しくて。今の我々のオーディエンスに何が刺さるのか、みんなは何を求めているのか、とか。どんなボーカリスト2人を観たいのか。言ってしまえば我々のファンが今何が足りないと思っているのか…でもこれって全部想像になっちゃうんですよね。その想像が難しい。難しいけど、そこを想像できているから生き残っているのかもしれない。

――ファンにどう刺さるかを想像しながらの曲作りであると。

sat そう。だから多分、今回のアルバムはファンの皆さんには刺さるんだろうなという自信はすごくありますね。それを引っ提げての秋からのツアーも過去最大にボルテージは高まるものになるという確信もある。ただ実際、アレンジ作業とか録音とか、エディットとか実務は非常に大変ですよ。僕ももう高齢だし、10年前とは体力も全然違うし。制作にも体力は必要だからね。

――そうですよね。

sat だから逆に、作業時間の精度が上がるというか、例えば「今日10時間しか働けなさそうだな」と思ったらぎゅっと集中して制作できる。

――そこは年の功というか、20年以上のキャリアがものを言いますね。

sat でもいつもそうなんだけど、ギリギリまでやらない(笑)。

Mao やってください!(笑)。

sat 『iR2』を出したときにも、今度は月に2曲ずつ作って、アルバムを出しますというときには完成しているようにしようって思っていたんですよ。

――言っていましたね。

Hisayo そうなりませんでしたね(笑)。

――MaoさんもHisayoさんも、『double Decades』を含めて4枚目の制作になりますが、レコーディングにあたってもこれまでと比べて変化を感じるようになりましたか?

Hisayo そうですね。2人のコミュニケーションも増えたし、収録前にこういう歌い方から全体の雰囲気や、細かいところまでの話し合いは前のアルバムよりもさらに増えたと思います。

Mao 2人の共通認識というのをレコーディング前に作ってから臨むようにはしていますし、レコーディング中もどちらかが先に録り始めるところで、Hisayoが先にブースに入っているときは、Hisayoがどういう意図でどういうふうに歌っているのかを聴きながら、自分の歌にもちゃんと反映できるようにしています。逆に私が最初に歌うときは、私はこういう意図を持ってこういうふうに歌いたいんだよというのがsatさんにもHisayoにも伝わるよう心がけながら、意思疎通がレコーディング中にもできるようにというのを『iR2』のとき以上に心がけて臨みましたね。

Hisayo 言葉でもそうだし、歌でもお互いが伝えるし読み取るし、みたいな。もちろんsatさんもそれを読み取ってくださってもっとよりいい歌い方というか、ディレクションをしていただいています。それとMaoちゃんがディレクションされてるのは私も聞いているので、それを自分にも落とし込んで歌うようにしています。

sat そういう阿吽の呼吸も増えたし。意思疎通するための会話もより増えたし。例えば2人が僕の知らないとこで、「ブレスはここにしようね」みたいに事前に会話をしてくれているので、僕のディレクション面でも非常に助かっていて。そういうスムーズなところも増えたし、2人の表現の幅もどんどん増えているし、歌唱の表現力というものに自信を持っていいんじゃないかなって思う。

Mao でもそうやって私たちが事前に話し合ってレコーディングに臨めるようになったのは、satさんが、私たちが事前に練習できるように、ちゃんとスケジュールに組み込んでくれたからなんですよね。それで私たちは、事前にある程度どうやって歌おうかなというのを考える時間を取れる環境が出来たんですよ。

――さっきは制作がギリギリと言っていましたけど、ちゃんとそうした余地を残してsatさんも制作していたわけですね。本作で印象に残った点として、2人の歌い分けやボーカルの難易度も前作より上がっている気がしました。

sat デュオの曲を構築するということに僕も少しこなれたし、2人の良さを出すというところでもさらに進化を見せられたかなと思いますね。

――1曲目の「Starlit Moment」からすぐにわかる仕上がりになっていますね。

sat 「Starlit Moment」と2曲目の「Unbroken Resolve」は、どっちを1曲目にするか最後まで迷った。僕はどっちでもいいかなと思っていて、最終的には西村(潤/NBCユニバーサルのレーベルプロデューサー)さんに決めてもらったんですよ。

――たしかに『iR3』を聴いたとき、冒頭2曲のインパクトがすごいなと感じました。「Starlit Moment」で衝撃を受けたら、次の「Unbroken Resolve」でさらに。

sat 例えば……せいろの蕎麦を食べていたら、下にもう一枚蕎麦があったみたいな(笑)。

――とてもわかりやすい例えです(笑)。1曲目にすごい曲が来たなと思ったら、次の曲もすごかったという、この構成はアルバムとして素晴らしいですね。

sat どうしてもこの2曲を作りたい。こういう雰囲気の曲を両方ともやりたくて。

――まさにsatさんが最近使っていなかった引き出しを開けた印象ですが、この2曲のレコーディングはいかがでしたか?

Mao 特に2曲目の「Unbroken Resolve」は歌い分けが細かいというところはあったんですけど、3年目の付き合いになる私たちだからこその挑戦というか、こういう細かい歌い分けになったのかなという想像もできました。ここは相手がどのようにかぶせてくるのかな、歌ってくるのかなというのをきちんと想像しながら歌わなきゃいけないっていうところがあるので、3年かけてその想像力も磨かれてきたと思いますし、この細かい歌い分けで呼吸を合わせて歌えるようになったと思います。

sat そうだね。作っていて思ったのは、「あ、これ初年度だったら無理だな」って。2人の息が合わない。

Hisayo そうですね。

sat それこそ南ちゃんとやった「Secret Operation」も歌い分けはすごく細かい。あれも2人が1年生のときだったら「satさん、これ難しいです」って言ってるかもしれない。今は全然問題ないでしょ?レコーディングのときにも「これ、餅つきみたい」って思ったもん(笑)。

Hisayo たしかに!(笑)。

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