【連載】May’n Road to 20th Anniversaryインタビュー連載「Crossroad」：第2回（後編）：菅野よう子、佐々木史朗

いつか頑張っていないMay’nの姿も見せられる日が

佐々木　菅野さんから見た今のMay’nちゃんは？

菅野　ミュージカルを2回見たんですけど、2回目はすごく良くなっていたんですよね。どんどんと演技ができるようになって、MCもはっきりと上手になっていくのが見えるし、最近ではプロデュースも手がけていると聞くし。そうやって幅を広げているけれども、でもそれらが全て歌に還ってきていることもわかるんです。多方面で歌を育てている感じがありますね。歌ってスタイルを作ると多くの人がその中で安住するようになるんですけど、新しいことを体に入れて進化しているとわかる。だからやっぱりこれからが楽しみですね。また曲を作る機会があるのかないのか、それはわからないですけど、「今度はどんな曲を歌ってもらおうかな」と考えてみても。

May’n　ありがとうございます。

菅野　2021年の『マクロスF』ギャラクシーライブ（『～まだまだふたりはこれから！私たちの歌を聴け!!～』）も「すごい！」と思いました。私は全然ライブ制作に関わっていなかったので、あれだけのことをめぐちゃんと二人で出来たということが誇らしかったです。私ができないような世界観も、私がやりたかった世界観も組み込んでいたし、プロデュース能力もすごいと思っているところですね。

May’n　やっぱり、菅野さんとご一緒したライブが素晴らしかったので、「菅野さんがいないからこうなった」と思われたくないところはありました。菅野さんやプロフェッショナルな皆さんから教えていただいたことを一人でもできるように、とは常に思っています。

菅野　なかなかそこまでは出来ないんですよ。これだけ隙間なくいろいろな仕事をやりながら、しかも自分のライブではないところで。実はすごいことをやっているとは思います。そういえば控え室で、「なりたいものがたくさんあって……」という話も聞かせてくれたよね。今の目標は？

May’n　一番大きい目標はデビューのときから変わらず、ナゴヤドームでライブすることなんですけど、そのためにはまず東京ドームでライブを実現する必要があるんです。地方でライブをしたいなら首都圏で同程度の会場を埋められないと、と言われているので。それから『NHK紅白歌合戦』に出場するという夢もあります。だから、たくさんの人が知っているような国民的な歌を歌えることを目指さないと。あとは、もっともっといろいろな曲を歌いたいとか、行ったことがない場所でもライブできるようにするとか、そういう細かな目標が人生計画に詰まっていますし、新しい目標も次々と生まれています。

菅野　でも、デビューしたときはこんなにも海外でライブができると想像していた？

May’n　いや、夢にも思わなかったです。

菅野　そうだよね。私はさっき控室で目標を聞かれたときに「ない」と答えたけど、武道館もドームも願っていないと叶ったりするんだよ。

May’n　あ、なるほど。菅野さんが、売れたいと思ったことは一度もないと仰ったのと同じですね。私売れたいとは思ってきましたけど、武道館に立ちたいと思ったことはないんです。名古屋出身ということもあって武道館でライブを見たことがなかったので。だから『マクロスF ギャラクシーツアー』で初めて武道館に立ったときも正直感動はなくて、それよりも「また目標ができてしまった」みたいな感情でした。嬉しい気持ちがありつつもやっぱり『マクロスF』のおかげなので、「今度は自分一人で武道館に立てるようにもっともっと頑張らなきゃ」と思ったことをめちゃめちゃ覚えています。そのあとに、ソロで4度も武道館に立たせてもらったので……、無欲の勝利みたいな感じですかね。

菅野　無欲というか、本質的な部分が大事だと思うんだよね。お題目を掲げるのもすごくいいと思うんだけど、もう少しぼんやりとした……。

佐々木　具体的ではない目標を。

May’n　そうなんですか。私は具体的な目標を持つことがいいことなのかと思っていました。叶えることができる気持ちになるので。

菅野　1mよりも1cmの方がはっきり見えるからそれは確かにそうなんだけど、ぼんやりとした目標の方が……。

佐々木　「空を飛びたい」みたいな。

菅野　そうそうそう。わからないけれども、そんな気がしなくもないかな。

佐々木　うちは「フライングドッグ」という会社で、犬が飛ぶなんてありえないことですけど、でもこの業界は「思い込めば飛べる」ようなところじゃないですか？　『ピーターパン』に「疑った瞬間、永遠に飛べなくなる」とありますけど、出来る出来ないよりも思い込むのが大切みたいなところがあるよね。

菅野　そうね。それに「歌が好き」って結局はそういうことなんだとすごく思う。

May’n　自分でもそれはいいことだと思います。悩んだり売れなかったり、もっともっと頑張ろうとずっと練習したりという時間はありましたけど、でもプロになってからもデビューする前と同じように歌が好きでいられているので。そこはすごいことだと思います。

菅野　でも……、頑張り屋だとは思うけど、頑張らないところも見てみたいかな。頑張っていないMay’nちゃんの歌を聴いてみたい。

May’n　頑張っていない歌ってどういうのですか？

菅野　わからないけど（笑）。

佐々木　菅野さんの仮歌みたいな（笑）。

May’n　（笑）。

菅野　確かに、シェリルはギリギリだから、私はそういう曲ばかりをあなたに作ってきてはいたけど……。

May’n　そうですね。May’nの曲には生きるか死ぬかみたいな曲が多いので、そういう世界観の曲以外でも熱を入れすぎてしまうところはあります。

菅野　いや、熱はすごく大事なんだよ。AIが歌っていてもいい今となっては、人間との差なんて熱くらいしかないから。でも、熱量が下がったのも聴いてみたいかな。

May’n　最近、カバー曲のレコーディングがあったんですけど、だらしなく歌ってくださいと言われたとき、歌えなかったんです。リズム感を細かく取れるのが長所ではあるんですけど、つい歌詞を音符にハメすぎてしまって。自分で聴き返してもできてはいなかったです。

菅野　だらしなくはなっていなかった？

May’n　はい。かなり意識したので最終的にはいつもよりもかなり“だらーっと”なりましたけど、自分はリズム感を崩すことが苦手なんだと気づきました。

菅野　そうか、“崩す”ということかもしれないね。

May’n　やっぱり根が真面目なんだと思います。それはいいところですけど、だからこそたどり着けていない音楽も多分あるんですよね。

菅野　そこが幅としてあってもいいかもしれないとは思った。薄汚れたというかだるい感じというか。

May’n　じゃあ、本当の私を出しちゃおうかな（笑）。

菅野　でも絶対あるのよ。「ユニバーサル・バニー」も歌えたわけだから。WhiteとBlack、2種類のうさぎが出てくるところは頑張っても歌えるわけではないから。

May’n　そうですね。あれも頑張ってはいないです。

菅野　でしょ。だから可能性はあるんですよ。

May’n　テンションが高いからなぁ。適当になれないんですよね。正直、頑張っている自分が好きでもあるから、だらだらしている部分もあまりないんですけど、ただ、もしもそういうところが出てきたらちゃんと出してあげたいとすごく思いました。

佐々木　今のMay’nちゃんは力を抜いた自分を出せているからね。

菅野　いつか「目指せ！　東京ドーム！」とか言っていないMay’nちゃんを見てみたいな。

●リリース情報
『ストロボ・ファンタジー』
発売中
発売元：Digital Double／販売元：avex pictures

【CD＋Blu-ray】

品番：XNDD-00022/B
価格：￥2,640（税込）

【通常盤（CD）】

品番：XNDD-00023
価格：￥1,540（税込）

＜CD＞
01. ストロボ・ファンタジー
TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』エンディング主題歌
作詞：May’n・草野華余子　作曲：草野華余子
編曲：eba・岸田（岸田教団＆THE明星ロケッツ）・草野華余子

02. ウイニングショット!! feat.AYAME(from AliA)
愛知県ケーブルテレビ高校野球テーマソング
作詞：May’n・EO　作曲・編曲：EO

03. Pray
作詞：U-ka　作曲：KENT/TOMOYA(SALTY DOG) 　編曲：高橋浩一郎

-Bonus Track-
戦乙女の歌
TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』劇中歌
作詞：つむぎしゃち　作曲・編曲：井内啓二

＜Blu-ray＞
M1.ストロボ・ファンタジー Music Video
M2.ストロボ・ファンタジー Music Video メイキング

●ライブ情報
May’n Road to 20th Anniversary『Nice to MEAT you!』
2024年10月20日（日）
会場：豊洲PIT
開場：15:00 / 開演 16:00
出演者：May’n、FLOW、AliA
May’n主催では初となる対バン形式ライブを、May’nにとってゆかりの深いアーティスト2組を迎えて開催！
チケット一般発売中！
イベント特設サイト：https://www.sound-c.co.jp/sp/maynMEAT/

リスアニ！LIVE 2025
2024年1月24日（金）・ 25日（土）・26日（日）
会場：日本武道館
May’nは2日目の1/25に出演決定！

“リスアニ！LIVE 2025”公式サイトはこちら
https://www.lisani.jp/live/