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2024.10.08

【連載】May’n Road to 20th Anniversaryインタビュー連載「Crossroad」:第2回(前編):菅野よう子、佐々木史朗

【連載】May’n Road to 20th Anniversaryインタビュー連載「Crossroad」:第2回(前編):菅野よう子、佐々木史朗

意識しても出せるとは限らないキャッチーさをMay’nは天性で

菅野 レコーディングといえば、「ライオン」を録ったときのことをすごく覚えていて、一人目のレコーディングが終わったときは「あぁ、こんな感じだよね」と思っていたのに、二人共声が入った瞬間の「出来上がった感」がすごかったんだよね。アシスタントも「出来ましたね」と言うし、エンジニアさんも「売れるよ、これ」と言っていて、「みんな、そういうのがわかるんだな」と思った。

May’n 「ライオン」は多分、私が先にレコーディングしました。

菅野 あ、そうだった? そしたらこの話はすごく嫌な気持ちになるよね。

May’n佐々木 (笑)。

菅野 まぁ、二人で歌ってもらうことを考えて作った曲だから。でも、あのハマりはすごかった。なんでだろうね。

May’n 「ライオン」はシェリルっぽい曲ですよね。私も歌いながら「ランカちゃんもこういう曲を歌うんだ」と思っていました。菅野さんは二人の歌が合わさったときのイメージが見えていたんですか?

菅野 どうなんだろう……。でも「ライオン」のめぐちゃんって“怖い”よね。いつものめぐちゃんとは違うというか、二人のどちらが勝つかと想像したらめぐちゃんかもしれない。腹が座っているというか、「食べたいなら食べてください」みたいな感じがある。

May’n 私は「絶対食べられるもんか! こっちが食べてやる」みたいな感じですね。

菅野 だから、棲み分けがされているとは思う。だからかな? 映画でも俳優さんが役にハマるということはあるよね。「この人以外は考えられない」みたいな。あのときの二人にはそれがあったと思う。それもあってか、自分で録っていても「ライオン」と「ダイアモンド クレバス」は絶対売れると思った。「ダイアモンド クレバス」はサウンドシティで録ったんだけど、弦の人たちもそう言ってた。May’nちゃんの歌が入ったデモでオケのダビングをしていたら、「これ誰?」「売れるよ、これ」って。

佐々木 ただTVサイズでは最初、「もう二度と触れられないなら」が使われようとしていたんだよね、1番の「神様に恋をしてた頃は」ではなくて。だから、「こっちでしょ!」って自分たちが主張して変えさせたんだけど。勿論、「もう二度とから」を使ったとしても「いい曲」ではあるんだけど、やっぱり最初のインパクトが違うから。

菅野 そんなエピソードがあったんだ。でも確かに「ダイアモンド クレバス」の歌はいいよね。May’nちゃんのどこがいいって、最初からキャッチーさを持っているところ。レコーディングで、どうしても上手く歌うことに一所懸命の人が多い中、もっとキャッチーな感じで歌ってほしいと思うことがよくあるんだけど、その感覚をどうやったらわかってもらえるかいつも悩むんだよね。

佐々木 でも、キャッチーさを持っていない人にキャッチーさを求める場合、意識しすぎて作為的になることもあるから。例えば、「頭」という歌詞を歌うとしたときに、「あ」と「た」の間に小さな「っ」を入れて歌おう、といった感じで別方向からのアドバイスにしたりしています。

菅野 だから、May’nちゃんの持つキャッチーさは本当に強みだと思う。そこは自分で何か意識している?

May’n いえ。天性です(笑)。

菅野 そっかぁ(笑)。そこが売れるポイントだね。

May’n ただ、「神様に」のところは導入であっても心をつかむAメロでなければ、という感覚はあります。特に難しいとは思わなかったですけど。ただ、カラオケやカバーで歌ってくださる方の歌を聴いていると、あそこのパートは難しいのかな、とは思います。技術的には裏声でミックスっぽく入りますし、歌詞の解釈的にも意外と難しいので。それも後で知った部分です。

菅野 May’nちゃんがプロデューサーとして他の歌手に指導するときはどうやって伝えるの? 「好きに歌って」って感じ?

May’n そうですね。

菅野 それで「私には勝てないわね」と思うんだ?(笑)。

May’n (笑)。そうですね、「やっぱり私が一番だね」って(笑)。

May’nと中島愛が歌うことで深みを増したシェリルとランカ

菅野 実は私、さっき控え室で話すまで、May’nちゃんがこんなに強気の人だとは思っていなかったんだよね。いつの間にかスパルタなプロデューサーになっているみたいだし。当時の印象では、負けず嫌いではあっても強気さを外に出してはいなかった気がする。

佐々木 昔より気の強さが外に出ているよね。

May’n でも、私はすぐに誰かをライバル視するので、例えば当時も、一番近くにいるめぐみ(中島愛)ちゃんに負けたくない気持ちは常にありました。特に一緒にライブを作り上げる相手でもあったので。ただ、そこが『マクロスF』らしいというか……。シェリルとランカも絶対そうですよね。

菅野 そうだね。あと、May’nちゃんとめぐちゃんの振る舞いが少しずつシェリルやランカちゃんにトレースされていったよね。『マクロスF』の制作チームは男性が多かったからキャラクターの造形がやや男好みというところに対して。

佐々木 深みが出たというか、女性キャラクターに関してはよくわからないまま、男性陣が「これは男のロマンかもしれない」と思いながらも作っていたところはあったと思う。だから、自分たちの予想から外れた部分をMay’nちゃんやめぐみちゃんが出してくるとそちらに引っ張られるんだよね。特にライブではそういう部分が現れていた。

菅野 ね。すごく引っ張られたよね。でも(早乙女)アルトくんについてはそういうことがないわけで。ライバル心についても男性が作るわかりやすいものとは違い、May’nちゃんとめぐちゃんが歌ったことで競い合いながら同じ目的に向かって頑張る戦友感が加わっていったと思う。

May’n 確かに河森さんは現場で見たものを反映される方でした。

菅野 鯛焼き(型携帯電話「携鯛」)を持たせるとかね。

May’n あれは「大丈夫かな?」と思いましたけど(笑)。でも確かにシェリルにはすごく共感できていました。例えば、好きな人がいたとしても決してその人のためには生きないところとか。あくまでも歌うことが命であり、共感するライバルと出会い、その渦の中にアルトくんもいて……、という感覚なんです。一番の軸が音楽、というところはすごくよく理解できました。

菅野 アルトくんがシェリルを目覚めさせるという話をスタッフとしたんだっけ?

May’n はい。ビックウエストの方と雑談しているとき、シェリルが目覚めないと新曲を作ってもらう機会もないので聞いたんです。そうしたら、「アルトが帰ってきたらシェリルも目覚めますかね」みたいに言われたので、「いやいや、そんな単純な話じゃないです」「シェリルだったら、きっと自分の歌いたい音楽が聴こえてきたら口が勝手に動き出します」「でも、目をつぶったままだと腹に力が入らないし歌いづらいから、もっと歌いたいという気持ちで目を開けるんですよ」「そのときアルトくんが目の前にいて嬉しくなる……、みたいな。そういう順番なんです、絶対」って私の中の解釈を熱く語りました(笑)。

菅野 でも、言われてみるとそうだね。どうしても、王子様がキスをしたらお姫様が目覚める、みたいな安全牌なストーリーに陥りがちだけどそれは違うよね。

May’n 私はシェリルのそういうところが好きなんです。だからシェリルを担当できて良かったとすごく思います。それに、年齢やキャリアが追いついてきた今、自分が一番シェリルに近づけている気がするんです。

菅野 確かに、売れていない時代を経験しつつも努力を誰にも見せずに頑張って……、というところはきっとシェリルそのものだよね。May’nちゃんの歌を聴いていてもシェリルを自然と感じることができて、それはすごく嬉しい。

佐々木 そう、やっぱり無理してシェリルを演じているところがあったら、こちらとしても申し訳ないことをしている気持ちになるので。

May’n 今、常に練習しているので確実に出せるキーが高くなっていて、「サヨナラノツバサ」の高いキーも百発百中で出せるんです。当時は何回歌っても高いところが出せず、菅野さんにはいつまでもOKをもらえなかったですけど。「はーい、もう1回」「はーい、もう1回」って。ブログには30回くらい録り直したと書いた記憶がありますけど、実際には150回はやったと思います(笑)。何十分も「ヴァルキュリアー♪」だけ歌い続けたんです。でも、地声でパンといきたいと私も菅野さんも思っていたから……。

菅野 そう、「じゃあ裏声で」という話にはならなかったよね。

May’n 菅野さんが一度、「うーん……、じゃあこれで」みたいに仰ったんです。そのとき、「諦められた!」って思って。いつもだったら「最高! シェリルさーん!!」とか言ってくれるのに。だから、「もっとできる気がします」と言って、さらにそこから50回くらいはテイクを重ねたのが「サヨナラノツバサ」でした。あのときに、完成形が見えているなら妥協しないという気持ちを学びました。

佐々木 でも大変だよね。歌えたら歌えたで菅野さんに「つまらないのー」と言われるから(笑)。

May’n そうなんですよ(笑)。

菅野 だって、シェリルはギリギリで歌っているから余裕で歌われると嫌なのよ。シェリルには自己破壊欲求があると勝手に思っていて、なんだったら「この曲で声を潰す!」という曲ばかりを書いていたくらいだから。

May’n 私もライブで「オベリスク」とか歌っていると「ここで私、死ぬのかな?」って思います。シェリルにはギリギリの危うさというか、崖っぷちを歩いているみたいなところがあります。


●リリース情報
『ストロボ・ファンタジー』
発売中
発売元:Digital Double/販売元:avex pictures

【CD+Blu-ray】

品番:XNDD-00022/B
価格:¥2,640(税込)

【通常盤(CD)】

品番:XNDD-00023
価格:¥1,540(税込)

<CD>
01. ストロボ・ファンタジー
TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』エンディング主題歌
作詞:May’n・草野華余子 作曲:草野華余子
編曲:eba・岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)・草野華余子

02. ウイニングショット!! feat.AYAME(from AliA)
愛知県ケーブルテレビ高校野球テーマソング
作詞:May’n・EO 作曲・編曲:EO

03. Pray
作詞:U-ka 作曲:KENT/TOMOYA(SALTY DOG)  編曲:高橋浩一郎

-Bonus Track-
戦乙女の歌
TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』劇中歌
作詞:つむぎしゃち 作曲・編曲:井内啓二

<Blu-ray>
M1.ストロボ・ファンタジー Music Video
M2.ストロボ・ファンタジー Music Video メイキング

●ライブ情報
May’n Road to 20th Anniversary『Nice to MEAT you!』
2024年10月20日(日)
会場:豊洲PIT
開場:15:00 / 開演 16:00
出演者:May’n、FLOW、AliA
May’n主催では初となる対バン形式ライブを、May’nにとってゆかりの深いアーティスト2組を迎えて開催!
チケット一般発売中!
イベント特設サイト:https://www.sound-c.co.jp/sp/maynMEAT/

リスアニ!LIVE 2025
2024年1月24日(金)・ 25日(土)・26日(日)
会場:日本武道館
May’nは2日目の1/25に出演決定!

“リスアニ!LIVE 2025”公式サイトはこちら
https://www.lisani.jp/live/

関連リンク

May’n オフィシャルサイト
http://mayn.jp/

May’n レーベルサイト
https://www.digitaldouble.co.jp/artists/mayn

May’n X
https://twitter.com/mayn_tw

May’n STAFF X
https://twitter.com/MaynStaff

May’n 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/MaynOfficial

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