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INTERVIEW

2024.10.02

TVアニメ『FAIRY TAIL 100年クエスト』劇伴担当・高梨康治に、シリーズを通して本作の魅力を伝えてきたサウンドトラックに込めた想いを聞く

TVアニメ『FAIRY TAIL 100年クエスト』劇伴担当・高梨康治に、シリーズを通して本作の魅力を伝えてきたサウンドトラックに込めた想いを聞く

神曲「Beyond The Quest」の誕生秘話

――そんな「歌もの」が、13話で流れる挿入歌「Beyond The Quest」です。たとえば「歌もの」と言っても劇伴に於いてはコーラス的なものもありますが、今回はしっかり「歌」です。

高梨 「挿入歌」としてやりたかったんです。まず一つは、僕が海外でライブをするときに『FAIRY TAIL』の人気度が日本以上にすごかったんです。劇伴でライブをやるということをずっとやってきましたが、さらに新しいお客さんやファンの人たちに届けるために、歌もので、初めから海外ファンに目を向けることは「あり」なのではないかと思ったんです。だから海外のミュージシャンでやりたいということも最初から念頭にあったんです。もちろん日本のファンの方たちのことも大事に思って活動をしていますが、本当に世界の人たちが『FAIRY TAIL』を求めているということを肌で感じることができましたし、ヨーロッパ圏の人気はかなりのものだなとも思っていたんです。そこに「歌もの」があるということでバンドのファンの方たちにも興味を持ってもらえると思いますし、そういう方たちがまた日本のアニメに入ってくることが面白いことだと思って。今までにない層にも広くアプローチができるのではないかとリアルに考えました。

――今回の「Beyond The Quest」はどういう発注で始まったのでしょうか。

高梨 「好きにやって」と言われて曲を作ったのが始まりでした(笑)。実はこの曲になる前に一曲作って提出をして、OKをもらっていたのですが、その曲が自分として納得できなかったんです。「もっとやれるだろう」って。「やっぱりあの曲はボツで」って言って、2曲目に作ったのがこの「Beyond The Quest」です。

――なにが足りなかったんですか?

高梨 圧倒的なエネルギーかな。聴いている人が「理屈じゃないな」と思うくらいのエネルギーを込めたかったので。最初の作った曲は頭で作っている感じだったんです。音符で作っている感覚というか。そうではなくもっと感覚的に作った、まっすぐな曲が欲しいと思ったんです。もっと内面からエネルギーが出てくるような曲。それが「Beyond The Quest」になったかなと思います。

――ガス.Gをはじめ錚々たるメンバーでのスタジオセッションになっています。どうやってメンバーを集めていかれたのでしょうか。

高梨 自分で言うのも変ですが、僕、日本よりも海外の方が有名でして…(笑)。海外のミュージシャンの方々に名前が通るんです。いろんなミュージシャンから「ちょっと俺に弾かせてよ」とか「俺に歌わせてよ」という話をよくいただいたりもするのです。ほかにもいろんな方の紹介もあって、さまざまなミュージシャンと交流があるんです。この曲のギタリストについては、スーパーギタリストが欲しいと思ったんです。ギターヒーローで、みんなが知っている。今回弾いてもらったガス.Gはオジー・オズボーンのバンドで弾いているから、知名度もすごく高いので、このギターヒーローでいこう、と。続いてベーシストのフレデリク・ルクレール(Kreator、Dragon Force)は超アニメ好きなんです。X(旧Twitter)のアイコンを見てもらえばわかるんですよ。だってナルトのアイコンだから(笑)。もちろん『NARUTO-ナルト-』が大好きな人なので、断られるはずがないと思ったんです。実力派だし、コンタクトを取ってみたら「やるやる!」と即答でした。そしてドラマーです。ベーシストとドラマーは相性も大切だなって思っていたので、フレデリックに「いいドラマーはいませんか?」って聞いたんです。そしたら今度yesに入ったジェイ・シェレンがうまいし、元々メタル出身でテクニックもあるから推薦するよって教えてくれたので、リズム隊はその二人で、となったことでギター、ベース、ドラムは決まりました。その時点でまだボーカルは決まっていなかったので、バックのオケだけ先に録ったんです。ボーカルは何人か候補は出ていたのですが、今回歌ってもらったノーラ・ロウヒモ(BATTLE BEAST)は昔からCDで聴いていたこともあって俺の中で候補の筆頭にいたんですね。そんなとき、ちょうどフィンランドにいるときにBATTLE BEASTのライブがあったんですね。僕はヘルシンキにいたのですが、フィンランド第2の都市でライブをしているという情報を得たので、車で2時間、凍った道を走って出掛けたんです。それでライブ後、知り合いを通じて楽屋に入れてもらって、ノーラさんに直接交渉をしました。そうしたら快諾してくれたんです。

――どんなお話をされたんですか?

高梨 こういう曲があって、こういう作品の中で歌ってほしいんだってことですね。彼女も「FAIRY TAIL」の歌をうたうことによってBATTLE BEASTをまだ知らない人たちとも出会えるだろうし、日本にライブをしに行きたいし、ぜひやってみたいって言って、快く引き受けてくれたことで完成しました。

――レコーディングはいかがでしたか?

高梨 リモートでのレコーディングだったので、録った音を送り合ってディスカッションして作っていったのですが、思ったのはね、世界有数のプレイヤーたちに対しては言うことがないってことです!直すところなんてないですし、これで十分すぎますっていうテイクなのにいくつも送ってくれるんです。みなさん、何テイクも送ってくださって「好きなのを選んで」って言ってくださったんです。申し分ないものになりました。そしてノーラにオケを送ったら「歌っていたら楽しくなっちゃった!」と50テイクも歌を送ってくれたんです。これをどう選べっていうの⁉っていうくらいでした。どのテイクも非の打ちどころがなかったです。みなさん、積極的に協力的にやってくださったので、楽しんでもらえたんじゃないかなと思っています。

――そんな「Beyond The Quest」の放送を待つ今、どのような心境ですか?

高梨 めっちゃ楽しみです。この日をずっと心待ちにしていましたから。アニメのチームも尽力してくださいましたし、この曲が流れて、視聴者のみなさんにも届いてくれることが楽しみでなりません。俺の愛が詰まっているところをぜひ聴いてもらいたいです。『FAIRY TAIL』のことが好きでたまらない人間が愛をこめて作った愛の塊なので、想い溢れる曲をぜひ受け取ってもらいたいです。

『FAIRY TAIL』の劇伴はライブを想定しながら作曲している

――その「Beyond The Quest」が流れる今回の『100年クエスト』でナツたちの物語と共に響くご自身の楽曲たちの印象はいかがですか?

高梨 最高です。はたさんの音の使い方が大好きなんですけど、このアニメは劇伴を大きな音で使ってくれていますし、ボリューム調整を緻密にやってくださっているところに、はたさんの音楽への愛を感じます。作り手として「いい使い方をしてくれているなぁ」と感じる使い方です。僕の作った曲を大切に使ってくださっていることが伝わってくるし、世の中の反応としても「これを待っていました」という声をたくさんいただけることが幸せです。

――世界各国で劇伴を鳴らす高梨さん。こと『FAIRY TAIL』曲の反応はいかがですか?

高梨 ヨーロッパでは『FAIRY TAIL』の楽曲は強いですね。肌感覚としてですが。ただ今回は歌ものということもあるので、アメリカでもこれまで以上の盛り上がりを生んでくれることに期待しています。僕の劇伴はライブを想定して作っていますし。

――そうなんですか?

高梨 普通だったら劇伴はライブを考えて作ることは珍しいと思いますが、僕はそう意識しています。その意識は『FAIRY TAIL』が特に強いかもしれません。もちろんほかの作品でも意識はしていますが、ライブ想定の、なんだったらフォーメーションまで考えているのは『FAIRY TAIL』だけかもしれない。このサビの部分は僕がキーボードで煽るから、ギタリストはこのあたりに立って、僕はこんなふうに演奏して……ってステージの絵面まで想像しながら作曲をしているという意味では稀有な存在かもしれないですし、ほかの劇伴作家さんでそんなことを考えている人はいないんじゃないかな(笑)。

――京伴祭でも東京伴祭でもショルダーキーボードを手にステージから客席に降りてきている印象が強いですしね。

高梨 降りますねぇ(笑)。僕はそもそもミュージシャンですし。自分から「作曲家」と呼称したことはないですし、なんだったら僕は「メタラー」という肩書だと思っています。作曲家とみなさんが呼んでくださると「もったいないお言葉をありがとうございます」という気持ちになります。なので自分は未だにミュージシャンだと思うし、特に最近はライブも多いですから、劇伴を通してミュージシャンとして活動ができているので、劇伴には感謝をしています。これからは作家もライブをしていく時代になると思うので、ここから先は作家もライブを意識した曲作りをしていくようになると思っています。作家は今後、いろんな面でエンターテイメント性を求められていくと思うので、遅かれ早かれその時代はくるでしょうね。これからの時代はエンターテイメントに向かっていかなければいけないでしょうし、ただPCに向かって曲を書いている時代ではなくなるんじゃないうかと思うんです。AIが作曲を出来る時代、人間が曲を作ることの付加価値となるのはライブやアカデミックな方ならオーケストラで指揮できるようになっていくはずですから。京伴祭もいつか世界に持っていきたいです。

――物語はどんどん色濃い内容となっていきます。今、ご自身の音楽が彩る冒険譚に対して楽しみにしていることを教えてください。

高梨 毎回どの曲が掛かったかを自分でチェックしています。「あ、誰誰のテーマがここで掛かったな」とか考えるんですよね。「トラックNo.00はここで掛かるのか!」とか驚いたり、まだ掛かっていない曲が出てきたときにも興奮したりするので、放送を楽しみにしています。そしてなにより「Beyond The Quest」がこの先も流れる瞬間が楽しみです。みなさんにも一緒に楽しんでもらいたいです。


●楽曲情報
『FAIRY TAIL 100年クエスト』13話挿入歌
「Beyond the Quest」
高梨康治 featuring Noora Louhimo (BATTLE BEAST)

作曲:高梨康治
作詞:若井望
(Vo.) ノーラ・ロウヒモ(Noora Louhimo)
(Gt.) ガス・G. (Gus G.)
(Ba.) フレデリク・ルクレール(Frédéric Leclercq)
(Dr.) ジェイ・シェレン(Jay Schellen)

各種音楽配信サービスにて配信中

配信リンクはこちら
https://avex.lnk.to/FT100YQ_B_T_Q

●リリース情報
『FAIRY TAIL 100年クエスト Original Soundtrack』
12月25日発売

<収録内容>
・FAIRY TAIL 100年クエストオリジナルサウンドトラック集
・劇中挿入歌「BEYOND THE QUEST」 高梨康治 featuring Noora Louhimo (BATTLE BEAST)
仕様
キャラクターデザイン迫由里香氏 新規描きおろしジャケット
予約受付中
※収録内容・商品内容は予定となります。予告なく変更になる場合もございますので、ご了承下さい。

予約はこちら
https://avex.lnk.to/FT100YQOST

●作品情報
TVアニメ『FAIRY TAIL 100年クエスト』
毎週日曜夕方5時30分~放送中
放送局:テレ東系列6局ネット(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送)

原作:真島ヒロ・上田敦夫『FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST』(講談社「マガジンポケット」連載)

©真島ヒロ・上田敦夫・講談社/FT100YQ製作委員会・テレビ東京

関連リンク

TVアニメ『FAIRY TAIL 100年クエスト』公式サイト
https://www.fairytail100yq.com/

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