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INTERVIEW

2024.09.30

新作ゲーム『ソードアート・オンライン フラクチュアード デイドリーム』主題歌「私たちの讃歌」は10分超えの超大作!制作過程をReoNa×荒幡亮平×堀江晶太×毛蟹×ハヤシケイが語り合う

新作ゲーム『ソードアート・オンライン フラクチュアード デイドリーム』主題歌「私たちの讃歌」は10分超えの超大作!制作過程をReoNa×荒幡亮平×堀江晶太×毛蟹×ハヤシケイが語り合う

絶望系アニソンシンガー・ReoNaと『ソードアート・オンライン』のタッグに新たな1ページが加わった。新作ゲーム『ソードアート・オンライン フラクチュアード デイドリーム』主題歌「私たちの讃歌」は、10分40秒にもおよぶ大作であり、『SAO』×ReoNaの集大成とも呼べる内容に仕上がっている。今回はReoNaに加え、作詞・作編曲を担当した作家陣から荒幡亮平、堀江晶太、毛蟹(LIVE LAB.)、ハヤシケイ(LIVE LAB.)の計5名の対談をセットアップ。本楽曲が生まれた経緯から制作時のエピソードまで幅広く語ってもらった。

INTERVIEW BY 北野 創 TEXT BY 河瀬タツヤ

ゲームとシンクロした主題歌制作事情

――今回リリースされた「私たちの讃歌(ウタ)」は新作ゲーム『ソードアート・オンライン フラクチュアード デイドリーム』の主題歌で、これまでの『SAO』×ReoNa楽曲に関わってきたクリエイターが一堂に会した1曲になっています。まず、どういった経緯でこの楽曲の制作がスタートしたのでしょうか?

ReoNa 『ソードアート・オンライン』(以下、『SAO』)のゲームが10周年を迎えるにあたり、新作ゲーム全体の概要についてゲームサイドから1番最初にお話をいただきました。『フラクチュアード デイドリーム』は、これまでの『SAO』のキャラクターがたくさん出てくるゲームになるのですが、そこからReoNaの楽曲でも同じように色んな人を集めて10周年の節目になる楽曲を作ったらどうだろうかという話になり、そこでReoNaの楽曲に携わってくださっている方々にお声掛けしたところ、皆さん快く受けてくださったという流れになります。

――皆さんは今回のお話をいただいた際に、どういった印象を受けましたか?

荒幡亮平 面白そうだなと思いました。自分はコライトする機会が今までなかったのですが、今回のメンバーは勝手知ったる面々ということもあり、このメンバーでコライトした楽曲をReoNaが歌ったらどうなるんだろうという楽しみの方が大きかったです。

ハヤシケイ みんなで集まってやろうという話になってから、自分はそのなかの1人としてスッと入った感じです。コライトの機会は僕もなかったので、正直どうなるのか不安で、最初は暗中模索な感じでした。

堀江晶太 僕は人と楽曲を作ること自体好きだし、かつ今回の面子だったので、一緒に作れることは嬉しかったです。ただ、この大人数で癖の強い面子、さらにReoNaという癖の強いアーティストが集まっているので、リーダーだけは絶対やらないぞと心に決めて入りました。

全員 あははは(笑)。

堀江 それをやってしまうと凄まじい情報量になるので、きっと誰かがまとめ役をやるだろうと。

荒幡 まとめ役は毛蟹君がやるだろうって僕も思ってた。

毛蟹 まとめられているかどうかはちょっとわからないですが、一応まとめ役のポジションにはいたのかな。でも、多分『アベンジャーズ』でいうところのキャプテンアメリカ的なまとめ役ではないんですよ。多分アイアンマンになって死んでいます(笑)。

まるで読み合い!?10分超楽曲のコライトの裏側

――この楽曲はイントロ、1A・1B・1C、2A・2B・2C、3A・3B・3C、4A、5A・5B、6Inter、6Cの15ブロックで構成された組曲的な楽曲になっていますが、どういった形で楽曲制作がスタートしたのでしょうか?

堀江 作曲を始める時に、これだけ人数もいるのでどういう形で進めていくのがいいのか作家全員で集まって会議をしたんです。制作方法としては、ある程度ルールや枠組みを決めてテンポやキーを揃えてから作るというパターンもあるんですけど、話していくなかで、この面子だったらルールを決めないで一度それぞれ好き放題に作った音源を持ち寄った方がいいのではとなりました。なので、曲のスピードもジャンルもなんでもいいし、Aメロやサビでも、なんなら1コーラスを作ってもいいし、反対に断片的なメロディでもいい。ただ、持ち寄ったところでそれを合体するのはすごく大変だねという話にもなって、“じゃあ……、毛蟹さんよろしく”と(笑)。そんな感じでスタートしました。

毛蟹 でも晶太くんから出てきたデモは6分とかあったよ!?

全員 あははは(笑)。

堀江 1コーラスでもいいということはフルでもいいってことです。

――なるほど(笑)。最初に皆さん各々で作った楽曲なり素材はどういうものだったのでしょうか?

荒幡 自分はそもそも『SAO』という作品をReoNaと出会うまで知らなかったんですが、そこからアニメを全部観て、ゲームも遊ぶくらいにハマって。なので今回は、自分が思う『SAO』の歌をとりあえず作って投げてみました。ReoNaが歌ってきたゲームの主題歌「Scar/let」(『ソードアート・オンライン Alicization Lycoris』OPテーマ)と『VITA』(『ソードアート・オンライン Last Recollection』主題歌)をアレンジした時も思ったのですけど、ちょっと1回マイナーロックを避けたかったんです。というのも、キャラクターが集まるのだったら、メジャーキーなメロディの方がスケールが広くて良いだろうと思ったので。そんなことを考えながら作曲していたので、メロディがスッと出てきて出来上がっていた感じです。


▲荒幡亮平

毛蟹 今回、楽曲の1番根底となるメロディは荒幡さんにやってもらっていて、パートで言うと、1Aと1Cになります。1C、つまり1サビのメロが丸ごと荒幡さんなので、荒幡さんがこの曲の顔と言っても過言ではないと思います。

ハヤシ 僕は『SAO』のアインクラッド編、フェアリィ・ダンス編といった各編の主題歌を自分なりに作ってみるというイメージで3つくらいメロディのパターンを書いて出しました。

毛蟹 ケイさんのパートは、2A・2B・2Cあたりが丸っと残っていて、他に出してもらったメロディも分解して色んなところに入っています。裏のメロディになっているものもあります。

堀江 僕は割とこういうチームワークの場合、ゲームにしろ仕事にしろ、後方支援が好きなんです。なので、皆さんが持ってきそうな『SAO』のメインのエモーショナルな部分ではなく、あえて『SAO』の世界を補完するブリッジ的なものをイメージして作ってみました。実は最初にオンラインで打ち合わせをしているときに話を聞きながら裏で曲を書いていたんですよ。なので、結果的に断片を繋いでいったら6分になってしまいました。

毛蟹 晶太くんからいただいたデモは、その時点でサイズとしてはすごい量があったんですけど、その6分間に同じフレーズはまったくなくて、ずっといろんなフレーズが散りばめられている感じでした。

堀江 分解前提で作っているから。

毛蟹 すごく分解しやすかった。晶太くんパートで丸々残っているのが、おそらく5A・5Bあたりです。

堀江 あとイントロとか、ああいうところにも使ってもらったのかな?

毛蟹 そうだね。1Bも晶太くんメロだったはず。あとは、サビに入る直前の瞬間的なフィルだとか、そういうところに細かく分解して置いています。

――堀江さんの普段の作風としてはエモーショナルなメロディを書くイメージが強いですけど、逆にそういった後方支援ができるのもコライトならではですね。

堀江 そうですね。そういうのも好きですし、なかなか1人だとその機会もあまりないですし、今回はエモーショナルそうな人がいっぱいいると思ったからその辺は任せようかなと。

――毛蟹さんは取りまとめ役以外に自身で作ったパートはありますか?

毛蟹 自分のパートは一応4Aあたり、プログレッシブなところは作っています。ただ、どちらかというと基本的にはもらった素材を並べて管理する作業が多くて、ひたすら(もらった素材で)パズルをやっている役割のほうが大きかったかもしれないです。

荒幡 でも1番大事。

堀江 実作業時間は多分1番多いですもん。

荒幡 これ、譜面作るのも大変だった。今後ライブでもやることもあるから作ったんですけど、なかなか他で見たことがない表記になっていますね。

毛蟹 (ストリングスアレンジを担当した)宮野幸子さんの楽譜もとんでもない枚数で、冊子みたいになっていましたよ。

――今作には他にも、「forget-me-not」や神崎エルザ名義の楽曲「ピルグリム」などを手がけてきたrui(fade)さんや、「Till the End」のコーラス作詞を担当したIruma Rioka(LIVE LAB.)さんが参加していますが、例えばruiさんは3A・3B・3Cの神崎エルザパートを担当されたんでしょうか?

ハヤシ そうですね。

毛蟹 これはruiさんにしか書けない。

ベートーヴェンが引き出した「歓喜」と「悲愴」

――今回の楽曲はベートーヴェンの『交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」』(通称:第九)のモチーフが印象的に使われています。神崎エルザの楽曲もクラシックのモチーフが度々使われてきた伝統がありますが、そこはやはり意識されたんですか?

ReoNa 意識しましたね。神崎エルザもいるので、全体の骨組みを考えていくなかで、宮野さんのアイデアもあり、クラシックのモチーフとして最終的に第九に決まった記憶があります。

堀江 1回目の打ち合わせのときか。モチーフを何にするにしろ、メロディだけを引っ張るのではなく、この楽曲に相応しいテーマで、かつリスペクトを持って作れるものとして引用できるのは何だろうとなって、それは第九だねという結論になりました。


▲堀江晶太

――今回「私たちの讃歌」で“ありがとう”と何度も歌っていますが、それはテーマが先にあったのか、歓喜の歌がその感謝の部分を引き寄せたのか、どちらでしょうか?

毛蟹 第九モチーフが先じゃない?

ハヤシ どっちが先だったかはちょっとうろ覚えですが、“愛”をテーマにしたいという話があったんです。それは作品に対する愛とか、劇中のキャラクター同士の愛とか。“愛”という、とてつもなく大きな概念を表現するのに相応しいクラシックといったら、第九の歓喜の歌ぐらいしか思い浮かばなかった。

荒幡 ちなみに、実はイントロもベートーヴェンで、『ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章』をモチーフにしています。これがコントラストになっている。

毛蟹 裏テーマじゃないですけど、第九が決まったあとに対比で「悲愴」を置けたらいいよねという話が出て、喜びも悲しみも両方包み込むじゃないですが、それは2Cの歌詞、“喜びも 悲しみも あなたと居たシルシ”に落とし込んでいます。ちなみにこの“シルシ”がカタカナなのは『SAO』リスペクトです。(※LiSAの歌うマザーズ・ロザリオ編EDテーマ「シルシ」から)

荒幡 そう言われると、クレジットにベートーヴェンがいないなぁ。

ReoNa 大丈夫。私の今までの歌詞カードには、スペシャルサンクスのところに入れているから。

――クレジットといえば、作詞・作曲に神崎エルザが入っていますよね。

ReoNa 今までReoNaと『SAO』という作品に関わってくださった方をこれだけ大招集しているなかで、エルザに声を掛けないわけにはいかないよねと。でも最初は結構ダメ元というか、本当にエルザを入れられるのかどうかも私自身は半信半疑だったんですけど、最後に出来上がったものを聴いたときに、概念としてエルザがちゃんと楽曲の中にいてくれている感じがすごくあって。声を掛けたら“何それ楽しそう!”って言って参加してくれそうだし、ReoNa×『SAO』には欠かせない存在なので良かったです。

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