INTERVIEW
2024.10.05
原作小説のスタートから昨年10周年を迎えた『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(略称『ダンまち』)。今回はTVアニメ第5期となる『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』の放送開始を記念し、OPテーマ「少年」を手がけたGRe4N BOYZのリーダー・HIDEと、『ダンまち』原作者・大森藤ノによる貴重な対談が実現。全2回となるロングインタビューの後編では、2人がクリエイターを志したルーツから、長年の大ファンであるという大森が語るGRe4N BOYZの魅力、そして両者の今後の展望などをお届けする。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
▼インタビュー前編はこちら
──今回は、大森さんとHIDEさん、それぞれのクリエイターとしてのルーツなどをお伺いしていきます。『ダンまち』を生み出す前の大森さんは、漫画や小説などどんな作品に影響を受けてきましたか?
大森藤ノ 漫画はずっと読んできたもので、私の根っこの部分にあるものの1つだと思うのですが、実は私、読書がすごく苦手な人間で、一番嫌いな宿題が読書感想文というくらいだったんです。
HIDE え、そうなんですか!
大森 「走れメロス」の読書感想文で、「メロスは激怒した。」ってセリフを引用しすぎて先生に怒られたくらいで、本当にダメな学生だったんです。そんな人間に本を楽しいと思わせてくれたのが「ハリー・ポッター」シリーズやファンタジー小説、当時あったWEB小説でした。あんなに読書が苦手な人間が夢中になって読んでしまう、なんだったら漫画にも負けないくらい読み込んでしまうという読書体験が、ライトノベル作家としての自分に一番影響を与えてくれたものだったんじゃないかなと思います。
──その原体験がご自身の創作活動に繋がったわけですね。
大森 ちょっと自分ではわからないところもあるんですけど。あとは、「ソードアート・オンライン」というすごい作品が当時WEB小説から始まっていて、食い入るように読んでいたんです。それで、いつしか読む側から書く側になっていったのかな。
──そうした読み手から書き手になる瞬間というのは覚えていたりしますか?
大森 小説を読んでいると、書いてみたくなる瞬間がどうしてもあって。というのも、自分が思いつかなかった物語は色んな人が書いてくれるかもしれないですけど、自分が読みたいものは、突き詰めていくと自分にしか書けないということにあるとき気づいて、「じゃあやってみよう」となったんですよね。そこで自分でもWEB小説を書き始めたのが、『ダンまち』の原型で、それを読んでくださった人たちが「面白い」と言ってくださって、ちょっとその気になってGA文庫さんに応募して拾ってもらったのが、この『ダンまち』という作品の始まりの経緯なんですけど。そういう色んなものをインプットして、情熱のようなものを吐き出した瞬間が、書く側にまわったときなのかなと。
HIDE そうですよね。熱のこもった塊みたいなものを受け取ると、「やばい!」ってなりますもんね。
大森 鳥肌も立ちますし、涙も出てきますし。
HIDE 「あれを自分も作りたいな」となりますよね。「自分だったらこうするな」みたいなことが、結果としていつの間にかオリジナルと呼ばれるようになっていく、みたいな。
──そうしたHIDEさんもまた、何かに影響を受けて音楽の道を進むことになったわけですよね。
HIDE 音楽的な原体験というのはたくさんあるんですけど、多分これが自分の人生の何かを動かしたなという体験の1つが、子供の頃に観た武田鉄矢さんの「Ronin」という映画で(1986年公開「幕末青春グラフィティ Ronin 坂本龍馬」)。
──映画ですか。
HIDE 坂本龍馬の映画なんですよ。それを観て、とにかく熱すぎて。そのまま僕、小学校を卒業して家を出て、高知県に移り住んだんですよ。親は実家の京都のまま、中・高は1人で高知で過ごしちゃって。で、そこで出来た友達といまだに色んなことをやっているんですけど、それが多分スタートなんだと思います。B’zさんが大好きでギターもやっていたんですけど、そこからパンクとかラウド、メタルと呼ばれる音楽を聴いて自分たちでバンドを組んだりして、後にメンバーになるnaviと出会いまして、そこで音楽を作ってみたら、現在のGRe4N BOYZの音楽になっていったという感じですね。
──実家を飛び出すという初期衝動と、そのあとに出会う様々なジャンルの音楽を吸収した、まさにミクスチャーなものがGRe4N BOYZになっていったという。
HIDE そうですね。音楽もメタルとかそういうものが大好きだったんですけど、当時バイトをしていたのはヒップホップ系の洋服屋さんだったので、そこでヒップホップも知っていって。
──ちなみに大森さんも、小説以外のもの、それこそ音楽からインスパイアを受けることもあるんですか?
大森 すごくあります。今でもそうですが、散歩とかランニングをしているときに、書きたいシーンだったり、キャラの掛け合いのセリフだったりが降ってくる瞬間があって、そのときに力を貸してくれるのが音楽なんです。それこそランニングをするときに聴く音楽にはGRe4N BOYZさんの曲もいっぱい入っていて、そのメロディに背中を押されるときもあるし、歌詞から影響を受けて一気に世界が広がるような瞬間もあって。困ったらとにかく音楽を聴きながら外に飛び出す、みたいな感じですね。
──音楽が創作の助けになることはよくあると。
大森 ですね。音楽からは本当にインスピレーションをいっぱいもらえます。自分の世界に閉じこもってずっと歩いているのも全然いいですけど、そこに音楽があるだけで──アニメに例えればそこに劇伴が加わっていくような感覚で、まずシーンをどんどん映像として思い浮かべて、その映像を文章に落とし込むっていう作り方です。
──大森さんが想像する映像が小説になっていくと。そこには音楽が非常に重要になるわけですね。
大森 読書は苦手と言いましたけど、映像はすぐに思い浮かぶんですよね。「こういうことをやりたい」はすぐできるけど、それを文章に落とし込む作業が本当に苦手で(笑)。文字としてアウトプットする方法は、今でもずっと試行錯誤しています。
HIDE めっちゃわかります! 頭の中にはあるんだけど、それをパソコンに1個1個落とし込んでいく過程で、なんだか違う方向に行っちゃうんですよね。
大森 そうなんです!頭をパソコンに直結して、考えたそのままをアウトプットできたらなって思います(笑)。
──一方でHIDEさんも漫画などお好きだそうですが、そういう創作物からインスパイアを受けることは多いわけですか?
HIDE いや、もう、受けることだらけですね。普段から漫画を読んだり映画を観たり、本を読んだり、色んなことをしております。何より単純に楽しいので。
──HIDEさんにとっても制作にはそうしたインプットは非常に重要なわけですね。
HIDE どうしても曲が書けないときというのは、インプットとアウトプットのどっちかのバランスが崩れているときで。アウトプットに偏りすぎて全然書けないと思ったら、小説を読んでみたらパッと書けるようになった、みたいなことは結構あったりします。なので、「この日は絶対インプットする」っていう日はちゃんと決めるようにしている節がありますね。
大森 わかります。私も「今日は映画観に行く! 編集さんがなんと言おうと映画観に行く!」という日があります(笑)。
HIDE いいですね!(笑)。
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