INTERVIEW
2024.10.05
──さて、ここからはGRe4N BOYZの大ファンである大森さんに、GRe4N BOYZの音楽の魅力を語っていただきたいと思います。
大森 緊張しますね……(笑)。でも、作曲やメロディに関して私は素人なので、小説家としてはやっぱり歌詞がすごく素敵だなというところですね。その“素敵”をもう少し言語化すると、難しい言葉を一切使っていないというのが本当に素晴らしいと思っていて。色んな人が聴いてもわかるようにしている、それは小説にも通ずるところがあるんですけど、難しくない単語を使って素晴らしい描写を生み出すところ、そこが私はGRe4N BOYZさんの本当にいいところだなと思っていて。飾らないところというか、ずっと等身大のままなんですよね。
HIDE ありがとうございます……!
大森 私が書いた『ダンまち』の1巻を今読み返すと、もう恥ずかしいんです。背伸びしようとして、自分をいかにかっこよく見せようとしているかが見えてしまうというか。最近は、いかに難しい言葉を使わないで理解してもらえるかを意識するようになったんです。GRe4N BOYZさんの歌詞を見ると、「あ、こういう言い方があったんだ」って、色んな曲に色んな発見があって、本当に感動しますよ。例えば、「始まりの唄」という曲に、”『拝啓 昨日までの自分へ』僕は君の途中”という歌詞があって。昨日の自分に言っているのに、“君の途中”って言っているということは、その行間を読むと、それが憧れや理想といった、目標のうえでの自分なんだよ、というのが入ってくるという……ごめんなさい、オタク特有の早口で(笑)。
HIDE いえいえ、ありがとうございます。(笑)
大森 少し自分語りになってしまうかもしれないですけど、私は『ダンまち』って「綺麗事を目指すお話」だと思っていて。その綺麗事って、今の世の中ではネガティブな使われ方をされることが多いと思うんですけど、でもその綺麗事が叶ったら一番いいに決まっている。そういう前提で『ダンまち』を作っているんです。
──なるほど。
大森 でも綺麗事という皮を一枚剥がすと、汚いものや苦しいものが溢れてしまう。だからこそ綺麗事──もっとかっこよく言うんだったら、理想みたいなものがあると思ってます。それを目指す物語が『ダンまち』なのかなって。一方で、GRe4N BOYZさんは、常に目標に向かって一緒に頑張ろうって、「諦めるな」じゃなくて「一緒に頑張ろう」って言ってくれる。その寄り添ってくれる歌詞が本当にあったかいし、素晴らしいなと思っているんですが、今になって自分の作品に重ねて見ることで、GRe4N BOYZさんの歌詞のすごさに気づけた部分もあります。
HIDE いやあ、嬉しい。ありがとうございます。
大森 ほかにも、MISIAさんに提供された「アイノカタチ」も素晴らしくて。”愛に もし カタチがあって それがすでに わたしの胸に はまってたなら きっとずっと 今日よりもっと あなたのことを知るたびに そのカタチはもう あなたじゃなきゃ きっと隙間を作ってしまうね”という……難しい言葉は一切使っていないんですよ。なんだったら小学生でもきっとわかる、中学生だったらもっとわかるというような歌詞になっていて。普遍的な言葉ですけど、私はこれは哲学だと思っています。
HIDE これ、本当にすごく嬉しいです。僕も古典とか哲学とかが大好きでたくさん読むんですけど、例えばニルヴァーナのアートワークに、ぐるぐると渦を巻くようなイラストがあるんですけど、あれはダンテの「神曲」に出てくる地獄図なんです。でも「神曲」を読んでいる人は誰もグランジやカート・コバーンに行き着くとは思っていないじゃないですか。宮崎駿作品でも同じように「神曲」の煉獄を思わせる世界観を使っていたりするし、そういうクリエイティブはもちろん大好き。その一方で、結婚式で花嫁がお母さんやお父さんに向けて読む手紙って、誰が聞いても無条件に泣けたりするじゃないですか。ああいうものには勝てないなと思っていて。だから自分は哲学的な世界も大好きですけど、色々混ぜて作っています。
大森 なるほど。
HIDE みんなが幸せになったほうが絶対いいに決まっている。だけど幸せって自分で決めるものだから、世間が決めるものじゃない。だから、「自分はこうなりたい」って決めたんだったら応援します、それが見つかってないんだったら、見つかるまで何かもがけばいいんじゃないの?みたいな思いがあって。今回の「少年」の歌詞には“アイロニー”って言葉も使っていますけど、結局それを決めるのは自分で、自分が決めた世界で勝ち抜けばいい、という。
大森 そういうアプローチだったんですね。あの“アイロニー”には古代ギリシャのテイストもあるなと思っていました。
HIDE あ、そうそう! そっちもありますね。
大森 いやあ……このインタビュー、議事録をいただきたいですね(笑)。
──こうしてお二人のお話を聞いて、序盤でHIDEさんがおっしゃっていた、双方が同じコアを持っているという話がよくわかりましたし、それが結実したものが『ダンまちⅤ』でも見られるのかなと。
HIDE 今回「少年」を書くときにも、クリエイティブとしてアニメサイドのやり取りはいくつかありましたけど「これ、どうしようかな」って思ったことはまったくなかったんですよ。それは多分、初めにあったそのコアの話で、どういった方法で表現するかは別にしても、人間とか人生をどう捉えているかという部分はもしかしたら近いのかなと思っていました。
大森 ありがたいことに私も実感しています。私も「愛唄」「キセキ」から始まって、GRe4N BOYZさんの色んな曲を聴いてきましたけど、プリミティブ、原点のところは変わっていなくて、それが今の「少年」にこうして繋がっているんだったら、本当に嬉しいですね。私にとっても「少年」が一番好きな曲になってしまうと思います。
HIDE ぜひそうなっていただきたいですね。でも本当に、今回の『ダンまち』のお話がなかったら「少年」という曲はまず生まれていない。それは僕らにとっても本当に嬉しいことです。
──いやあ、放送前にすごい話をいただきました。
大森 放送前なのに最終回みたいです(笑)。
──ますます放送が楽しみですが、一方お二人のクリエイティブとして、この先どんなものを作っていきたいと考えていますか?
HIDE 僕はもう、単純に歌が上手くなりたいですね。
大森 えっ!?
HIDE いや、本当に。だから今もずっとボイストレーニングを続けていたり、色んな方法を試しているんですけど、そこから表現するものの精度を上げていきたいっていう感じですね。
──これだけ長くやってきてもまだ達成したと感じていないわけですか。
HIDE いやもう全然、全然なので。逆に野望みたいなものが僕はあまりなく、いいアウトプットができる人間になれれば幸せかな、と思っていて。ただ今回のこういうお話も突然出会わせていただいて、こういう風に作品が生まれていくので、それって自分があらかじめ計画をしてやっていくものでもなかったりしますよね。だから、こうして自分が求められたときに、求められた場所で、それ以上の力を発揮できるようにしていくのが夢……みたいな感じですかね。
──そのために自分自身を高めて前進していくというか。大森さんはいかがですか?
大森 私はライトノベル以外にも漫画やゲーム、アニメなど色んなことにチャレンジしたい、という展望はあるにはあるんですけど、絶対どこかで原点に戻ろうっていうことは決めていて。今回対談させていただくにあたって、GRe4N BOYZさんの楽曲を聴き返してきたんですけど、そこで原点に戻ることの大事さみたいなものも創作者として大切だなというところがあって。どこか遠いところに行っても、昔の自分を思い出してまたライトノベルを書こう、いつかまた絶対ライトノベルを書こう──初心に帰る、原点に帰ることは忘れないでいよう、というのはいつも思っています。それこそ”『拝啓 昨日までの自分へ』”じゃないですけど……今は途中にいるけど、どんなに遠くに行っても自分を手放さないように、大事にしたいなと思っています。
──変化していくなかでも原点を忘れないと。
大森 もしかしたら私はこの先、色々あって嫌な人間になってしまうかもしれない。でも『ダンまち』を書き始めたときの気持ちや、GRe4N BOYZさんの曲を聴いて涙ぐんだときの自分は絶対忘れないように、“闇堕ち”しそうになってもグッと堪えられるように自分に言い聞かせたいなって。それを忘れなければ、私は『ダンまち』をずっと書き続けられると思うので。それが私にとって一番の”綺麗事”かもしれないですね。
HIDE わかるなあ。
大森 でもHIDEさんもきっとそうだと思うんですけど、独りじゃないから、支えてくれる人たち、励ましてくれる人たちがいるからできるなっていうのはありますよね。
HIDE そうですね。特に僕らは今年名前が変わって、今は全国ツアーをやっているんですけど、それでも来てくださる皆さんとか、応援してくれる皆さんがいて……ありがたすぎますよね。
──11月には「少年」を含むアルバム『あっ、ども。あらためまして。』もリリースされますし、今後のGRe4N BOYZの展開も楽しみですね。さて、対談は以上となりますが、改めて初対面を終えてみていかがでしたか?
HIDE 大森先生はもう本当に素敵な方で、こういう人からこういう素敵な物語、世界を巻き込んでいくようなものって生まれるんだなっていうのを、本当に身に沁みて感じました。あとは、お互い顔を出していないので、もし今度街で会ったら2人だけ「あっ!」ってなりますね(笑)。
大森 私だけ二度見しちゃうかも(笑)。私もこうしてHIDEさんとお会いして、すごく優しい方というか、本当に楽曲を聴いた通り頼もしい方だなって。あと対談させていただいてすごく嬉しかったのが……私の目標みたいなものに、ピーターパンになりたいというのがあって。
HIDE ピーターパンですか?
大森 ちょっと誤解を生むかもしれないですけど、私の読者の方を、「ピーターパン」の物語のようにネバーランドに連れていって、そこに永住させるわけじゃなくて帰っていってほしいなって。それは多分、HIDEさんが「やることが決まっていたら応援するし」みたいなお話をされていたことと似ていて。具体的に言えば、(アニメが放送される)金曜日の夜にネバーランドに連れていって、日曜日の夕方に帰って「月曜日から頑張るぞ」みたいな気持ちになってもらえる作品であれたらいいなというのが目標です。それがHIDEさんの考え方とも通ずるものがあるのかなと思えて、エネルギーをいただいた楽曲通りの方だなって感じて嬉しかったです。もしかしたら、それも『ダンまち』のファンの方に伝えたいことかもしれないですね。
HIDE たしかに、金曜日にネバーランドに行くみたいに『ダンまち』のアニメを観て、「少年」を聴いて、「頑張ろう」ってエネルギーを補充してもらえたら、こんなに嬉しいことはないな。
──通ずるものがある2組のコラボでエネルギーを充填してほしいと。
大森 通ずるものじゃなくて、私は“もらった側”の人間ですから。GRe4N BOYZチルドレンが書いた作品なんです!
HIDE (スタッフを見回して)聞いた!? ちょっと、えらい人呼んできて!(笑)。
一同 (笑)。
大森 本当に、それくらい影響は受けていると思います。
HIDE 嬉しいなあ。僕らの曲をそこまで聴いてくださっているとは存じ上げていなかったので、本当に嬉しいです。ありがとうございます! あと、歯のことでお悩みのときはいつでもご連絡ください(笑)。
SHARE