INTERVIEW
2024.10.01
──このワンチームで同じ方向を向いて曲を作っていったことが、「少年」という楽曲に繋がっていったわけですね。ではその「少年」について詳しくお伺いしていきますが、「少年」というタイトルはどのタイミングで生まれたものなのでしょうか?
HIDE 僕らの曲の作り方って、まず初めにメロディだけ作っちゃうんです。その次に歌詞が出来て、最後にタイトルを付けます。なので、最後の最後までタイトルがない状態でずっと物事が進んでいくんですけど、スタッフから「もうそろそろギリギリです!」と言われるくらいの段階で、歌詞を見ながら「少年」という言葉を思いついて。「これしかない」という感じでした。
大森 個人的には、この「少年」というタイトルがすごく好きで。
HIDE 本当ですか? 嬉しいなあ。
大森 「英雄」ではなくて、「少年」だというのが本当に嬉しくて。
HIDE みんな誰でも少年、少女を経ていくじゃないですか。「その先がある」という意味も込めて付けました。
──楽曲のサウンドとしては、ファンタジックな音色が印象的ですね。
HIDE そうですね、西洋のスカンジナビア辺りを感じさせるようなファンタジーのイメージで、剣と魔法みたいなサウンドってどういうものがあるんだろう?と思って、そういう要素を探って入れ込んでいます。
──また、そうした音がダイナミックに、派手に鳴っているなと。
HIDE 元来が派手好きなので(笑)。アレンジは作曲の段階から入っていて、初めからそういう作り方でした。
──メロディを作りながら、並行してアレンジも詰めていくわけですね。そのメロディは、サビで始まる冒頭からして“必殺感”のある、非常に印象に残るものですよね。このメロディというのはどのようにして生まれていくんですか?
HIDE 僕はギターを握り締めてじっと机の前で作るってことがあんまりなくて。普段から、どこであろうがメロディが思い浮かんだら、それを全部歌って録っておくんです。そのうえで、例えば翌日の朝起きても覚えているメロディとか、何日か経ってもまだ頭の中に鳴っているメロディを曲に起こしていくんですね。だから電車の中で思いついたときは結構大変ですね(笑)。外で歩いているときとかだったらまだ全然大丈夫なんですけど、電車とかバスだとすぐに降りられないし、その場で歌うわけにもいかないし。
大森 そうなんですね。私もアイデアはいつでもすぐにメモに残すので、HIDEさんに親近感を感じつつ……でも私の場合、電車の中でもメモアプリを開くだけなので、LINEでもやっているふりしながら書き残せるところがちょっと違いますね(笑)。
HIDE たしかに!(笑)。
──そして「少年」における刺さるポイントとしてはやはり歌詞ですよね。おそらくオンエアで楽曲を聴かれた多くの人が感じることだと思うんですが、非常に『ダンまち』を思わせる言葉たちが並んでいますね。改めてGRe4N BOYZの作詞において大事にしていることはなんですか?
HIDE 作詞においては、「最終的にどう聴こえるか」がめちゃくちゃ大事だと思っていて。メロディを作っている段階から「こう聴こえる」って言葉が実はあったりするんですよ。「ここは多分”あ”行だな」とか「ここは”お”で、ここはこんな伸び方しているな」とか、「こことここは多分韻を踏むんだろうな」とかっていうのは、作曲の段階でなんとなくあるんです。
──なるほど。
HIDE もちろん、もっと根本には「じゃあ何を言うんだ」というのがあります。今、目の前に誰がいて、この曲を聴いてくれたらどういう感情になるんだろう、みたいなところから作っていって。それがどんな時間帯──例えば17時に聴いたらこんな感じだよなとか、今これは誰がどこで聴いているんだ、みたいなのを考えながら、どんな歌詞を書くかを考えます。
──聴き手のシチュエーションも含めてイメージしたなかで生まれる言葉たちになると。
HIDE そうしないと僕は書けないというか。もちろん最終的に、聴いていただいた人がどう受け取るかは皆さん次第なんですけど、僕は最初に聴く人のことを考えて、あとはそれがどういう音になっていくかというのをはめていきながら、「いや、ここは言葉が弱いな」といったことを考えながら直していきます。
──そこには、『ダンまち』を観ている人のことも視界にはあるわけですよね。
HIDE もちろんアニメからもそうですし、あとはこの歌がもしかしたら何かの一助になれるかもしれないというのは考えています。『ダンまち』を観て、翌日また普段の生活に戻るときに、「よし、やってやるか」みたいなきっかけにちょっとでもなってくれたらいいな、という感じですね、。
──大森さんとしては歌詞をご覧になった感想はいかがでしたか?
大森 当初に歌詞をいただいたときの私は、「素晴らしいです!大丈夫です!」みたいなことだけを言ってうなずくだけのイエスマンだったのですが……、あるとき志治さんから「どうですか?」って言われたときに、「全然大丈夫です」って返したんですが、志治さんが「うん」と頷いて、そこからどこにも行かなくて、ずっと目の前に立っているみたいな時間があったんですよ。
志治P そうでしたっけ……!?(笑)。
大森 「私に何をさせたいんだ!」みたいな。でも私もそのとき、たくさんの人が関わって作る創作物というのは、ちょっと「殴り合う」ほうがいいものが生まれるというか、原作者としての想いも引っ張り出さないとダメなのかな、みたいなことを思いました。そのときに──目の前にいるのは学生の頃からの憧れの人だというので葛藤もありつつ、おこがましいかもしれないですけど、歌詞の方向性について少しお伝えさせていただきました。
──なるほど……。
大森 最初にいただいた歌詞も本当に素晴らしくて、色んな人に刺さると確信もしていたのですが、唯一思ったのが、”始まりの男の子”のイメージがあるなということだったんです。そのことをお伝えしたところ、次にいただいた歌詞がその”始まりの男の子”からちょっと先に進んだ男の子のイメージに変わっていて、それがすごく嬉しくて。まだ右も左もわからない男の子じゃなくて、色んなことを経験した男の子の歌詞になったような気がして、それが『ダンまち』5期のベルにすごく合ってるなと思って、「これしかない!」という話をしました。
──『ダンまち』5期ならではの歌詞が上がってきたと。
大森 はい、それが本当に嬉しくて……ごめんなさい、ちょっと今泣きそうなんですが……本当に歌詞がピッタリだったんです。最初は『ダンまち』の原点みたいものをフィーチャーしていただいているのを感じましたが、そこからちょっと進んだ「少年」になったのが本当に嬉しくて。
HIDE 大森先生の言うとおり、殴り合いでいい作品になっていくんですよ(笑)。
大森 ありがとうございます。デコピンくらいしかできなかったかもしれないですが……(笑)。
──そうして大森さんが勇気を出したことと同じように、この曲を聴いて勇気をもらう人たちは多いと思います。また、この曲はTVサイズの1コーラスはもちろんですが、フルサイズでの2コーラス目以降の展開も素晴らしいなと。特に中盤の“123”で始まるシンガロングのパートですよね。
大森 あそこですよね!
──まさに今回の第5期の展開を予感させるような、大勢の人たちが集まっていくさまが表現されている気がして。
大森 おっしゃる通りだと思います。
HIDE あのパートは、最初からなんとなくイメージはあったんですけど、レコーディングしながら、「いや、これだと足りないな」とか「ここにこれ足そう」というのをやりながら作っていきました。コーラスに参加してくださる方には、事前に「こういうのをやってきてください」って楽譜をお渡ししたりするんですけど、GRe4N BOYZの現場では録音当日にそれとまったく違うものになることがあって(笑)、今回もそうなりました。
──あのようなスケール感のある展開は、レコーディングのなかで生まれていたわけですね。
大森 デモの段階から聴かせていただいていましたが、完成版はもう破壊力が……破壊力って言い方がふさわしいのかはわからないですけど、「(デモから)こうなっちゃうんだ……」って本当に鳥肌が立ちました。またファン目線の私が出てきてしまうのかもしれないですけど、この曲作りに少しでも関われたのが本当に誇らしくて、嬉しかったです。何より、自分の作品がこの曲と一緒に走っていけると思うとすごく頼もしいし……ちょっと言葉にできないくらいですね。作家なのにすみません!
HIDE 嬉しいなあ。
大森 GRe4N BOYZさんの曲を初めて聴いたときのプリミティブな自分を思い出すというか、GRe4N BOYZさんの決して変わっていない部分として「応援してくれる、励ましてくれる、背中を押してもらいながら一緒に肩を並べてくれる」ような感じがこの「少年」という曲にもあって、本当に嬉しかったんです。
──『ダンまち』を書く前の大森さんご自身のことを思い出させてくれるというのは素敵ですね。
大森 私は学生時代に運動部だったんですけど、当時に走りながらずっと聴いていたGRe4N BOYZの曲だって思いました。
HIDE ありがとうございます。大森先生やその周りのスタッフの皆さん、さらにそれを最後に受け取ってくれる『ダンまち』ファンの皆さんが、「これでよかった」って言ってくれるものになるのを最大の喜びとしながら、自分たちの楽曲としても「これはやるぞ」っていう瞬間を見つけて、曲として素晴らしいものになることを見据えながら作っているんですけど、その2つが共存できたら幸せですよね。
──その瞬間が10月に迫っています。この「少年」にどんなアニメーションがつくのかも楽しみですよね。
志治P もう、ものすごい物量の画コンテが上がってきています。キャラ数もすごいですし、その枚数……いわゆるキャラクターの動きも含めてすごいことになっています。それくらいのオープニングになっているので、まさに現場の皆さんが今頑張って作ってくださっているので、僕もプロデューサーとしてすごく楽しみにしているところですね。とにかく出し惜しみは一切なく、「我々は本当にここまでやるんだ」っていうものをぶつけてくれています。
HIDE いいチームですね!
大森 はい、本当にいいチームです。
──また、GRe4N BOYZの音楽をきっかけに『ダンまち』に触れる人たちが増えて、『ダンまち』をきっかけにGRe4N BOYZの音楽を深く知る機会にもなりそうですね。
HIDE そうですね。そういった、すごくいい相互作用が生まれるようなタイミングなのかなと感じます。
大森 そうなったらすごいし、嬉しいですね。私としては、本当に少しでも何かでお返しできたらという思いです。
(インタビュー後編に続く)
▼インタビュー後編はこちら
●リリース情報
GRe4N BOYZ
TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』OPテーマ
「少年」
デジタル配信中/
GRe4N BOYZ ニューアルバム『あっ、ども。あらためまして。』(2024年11月20日発売)に収録予定
作詞 GRe4N BOYZ
作曲 GRe4N BOYZ
編曲 Ryo’LEFTY’Miyata / GRe4N BOYZ
●作品情報
TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』
【放送】
TOKYO MX/BS11/ABEMA:2024年10月4日(金)24:30~
【配信】
ABEMAほか各配信サイトにて配信開始予定
「ダンまち」シリーズ ポータルサイト
https://danmachi.com/
「ダンまち」シリーズアニメ公式X
https://x.com/danmachi_anime
GRe4N BOYZ 公式サイト
https://gre4n-boyz.com/
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