――そして「Dear STELLA」は、NOW ON AIRのサウンドプロデュースをしていた結城アイラさんとの共作名義で、田中さん自身も作詞に参加されています。正直、クレジットを見ただけでエモい気持ちになりました。
田中 アハハ、ありがとうございます。私も作詞に携わらせていただけるとは思っていなかったですし、しかもアイラさんも関わってくださると知ったときは「いいんですか!」と思いました。アイラさんには、まず自分の気持ちをプロットにして送る過程があったんです。でも、それを送るのがめちゃくちゃ恥ずかしくて(笑)。
――なんでですか(笑)。
田中 もちろんアイラさんはすごくお優しい方なので、NOW ON AIR時代に一緒に過ごさせていただいた当時から、私自身の気持ちを話せる関係ではあったのですが、この曲は私の大切な人を想って書いた曲なので、それを文章として見られるのが気恥ずかしくて。それに、どこまで書けばいいのかわからなかったので、めちゃめちゃ長くなってしまったうえに、その内容がポエムっぽくなってしまって……今思い出してもちょっと恥ずかしいです(笑)。でも、アイラさんはすごく優しく受け止めてくださって。私の気持ちをそのまま温かい言葉で歌詞に起こしてくださいました。
――そのプロットをアイラさんが整えて歌詞の形にされたんですね。
田中 はい。楽曲をいただいて、それに対して「Aメロではこういうことを言いたい」みたいな感じで、大まかな流れと全体のテーマをアイラさんに提出しました。
――そのテーマについて具体的に聞きたいのですが、先ほど「大切な人を想って書いた」とおっしゃられましたよね。
田中 はい、友人や家族、それと聴いてくださるファンの方に向けて書きました。「Dear STELLA」の「STELLA」の部分は“大切な人”を表しています。実は私からは「私の最愛の人」と書いて提出していたのですが、「ちょっと重いかもね」ということでこのタイトルになりました(笑)。でも、アイラさんに対して自分の気持ちを飾ってもしょうがないですし、最上級の“ありがとう”を伝えるときに“最愛の人”という言葉を使ったほうが、アイラさんにも私の意図がストレートに伝わると思ったので、ちゃんと自分の気持ちを伝えられて良かったなと思います。しかもそこが「Dear STELLA」というお洒落な言葉になっていて素敵!と思いました。
――「STELLA」には“星”という意味があって。
田中 たしかに“大切な人”というのは輝いているものじゃないですか。自分にとっての“光”という意味でもそうですし、その人がいるから、世界は輝いて楽しく過ごしていける、という意味もあるなと思っていて。“大切な人”を“星”に例えてくださったアイラさんにはすごく感謝しています。
――なおかつ田中さんは宇宙や天体が好きですものね。
田中 そうなんです!楽曲のイメージ的にも、星空や夜っぽい感じがあったので、であれば私の好きな宇宙を絡めてもいいかな?と思って。なので“何百億年のときのなか”や“星”といった言葉をプロットの中に盛り込ませていただいたら、アイラさんが汲み取ってくださいました。
――“何百億年のときのなか出会えた奇跡”というフレーズも、大切な人を想う気持ちの強さが伝わって素敵だなと思いました。
田中 (スマホを取り出してプロットを確認しながら)ここは「何百億年もの無限ともいえるときの中で、刹那で出会えた奇跡をどうしたら大切にできるんだろうか」と書いたところを、アイラさんが整えてくださって。この部分は私としても大切にしたいところで、昔からずっと思っていることなんですが、生きている時代が100年違ったら出会うことはないわけですけど、100年というのは宇宙の規模からするとほんのわずかな時間で。そう考えると、今ある全部が特別だと感じますし、感謝の気持ちを伝えられたらいいなと思いました。
――そういった宇宙規模のスケールを感じさせるだけでなく、“半分わけたイヤホン 流れてるプレイリスト”のように、大切な人とのリアルな思い出を感じさせるワードも盛り込まれているところがいいですよね。
田中 この“半分わけたイヤホン”のところは、実は小久保さんが「友達とのエピソードを入れてみたら?」と言ってくださって、何個かお送りしたうちのひとつが採用されました。
――ということは実体験なんですね。
田中 そうなんです。その後の“口ずさんだ帰り道”は私から提出したエピソードには入ってなかったのですが、思い返すとそういう帰り道もあったなあと思って。下校中にみんなでその当時ハマっていた曲を歌っていた時期があったことを思い出しました(笑)。
――歌声もエモーショナルでいいんですよね。やはり気持ちを込めて歌うことができましたか?
田中 はい。歌詞はアイラさんに整えていただきましたが、私が言いたかったことや使いたかった単語を最大限入れてくださったので。先ほど「真っ直ぐ届ける」というお話をしましたが、この曲は特にそれを意識して歌うように小久保さんからディレクションしていただいたので、ずっと「真っ直ぐ届ける……!」というのを意識しながら歌って。そうしたら、本当に飾らない声というか、真っ直ぐで届きやすくて伸びやかな歌になった印象があって。私からの“ありがとうソング”なので、たくさんの人に届いてほしいです。
――時間的に10曲すべてについて聞くのは難しいので、田中さんがぜひ語っておきたい楽曲についてお話を聞きたいです。
田中 どの曲も素敵なので選ぶのは難しいのですが……アルバムの2曲目の「From here to HISTORIA」は、私の中の勝手なイメージでは、「Crier」と肩を並べるもうひとつの“始まりの曲”という印象があります。曲調も真っ直ぐでスピード感がありますし、出だしの“ここから始まる HISTORIA”から始まり感をすごく感じるんですよね。特に2番のサビの“この歩みすべて残せる先が 君の心なら From here to HISTORIA こわくない”というフレーズが好きで。これから先がどういう未来であれ、一歩ずつ歩んでいく軌跡を、ファンの皆さんに受け止めてもらえるなら、どんな形でも頑張っていけるという決意にもなって、大好きな楽曲になりました。
――「Crier」とはまた別の意味で、デビューに際しての想いと重なる楽曲なんですね。
田中 それと「Going Going Going」は、ずっとコンテンツでもお世話になっている下地悠さんが歌詞を書いてくださったので印象深いです。歌詞に“この惑星(ほし)”と読ませるルビがあるのですが、これぞ下地さん!と思えて、実家のような安心感を感じました(笑)。この曲はサビがノリやすくて、“Going Going Going”や“Doing Doing Doing”のようにみんなで歌えるところがたくさんあるので、ぜひ覚えてライブに来てほしいです。今回のアルバムは熱く盛り上がれる曲が多いのですが、この曲はよりみんなで盛り上がれる曲だと思います。
――「No Pain No Gain」もスタイリッシュなナンバーになっていて。
田中 ですよね!「Crier」も強い言葉を使っている印象ですが、アルバムでは「No Pain No Gain」がいちばん鬼気迫るものがあると感じていて。今回、(アルバムの)数量限定盤の特典として10色のペンライトを作ったのですが、色分けを考えた結果、この曲はちょっと暗めの緑に振り分けました。今は転んでいるけど、砂でもなんでも掴んで這い上がってやる!みたいなイメージの曲なので、ちょっと暗くしたほうが雰囲気が出るかなと思って。
――なるほど。他には何色があるのですか?
田中 10色全部、緑です!
――あっ、そういえば田中さんのNOW ON AIR時代のイメージカラーも緑でした。
田中 そうなんです。NOW ON AIRは担当カラーを決めるとき、自分で好きな色を選べたんですよ。私は緑が好きなので、そのときも緑を選んだのですが、やっぱり今も好きな色は緑ですし、自分にとって大切な色なので、ペンライトも全色緑になっています!
――素朴な疑問なのですが、ペンライトで緑だけ10色って色分けできるんですか?
田中 ちょっと黄色っぽかったり白っぽいのもあるんですけど……でも私が緑と言い張れば緑になるという魔法の言葉をいただいたので、みんなに魔法をかけることにしました(笑)。
――ちなみに個人的には「KURAGET DOWN」が好きです。“くらげ”をモチーフにした歌詞を含めて、他とはまたテイストの違う曲になっていて。
田中 あー!この曲もいいですよね。ちょっとK-POPっぽい雰囲気で、キャッチーな音から始まって愉快な感じになっていて。この曲はいちばん最後のレコーディングだったので、それまでの集大成として、ここに全部を詰め込もう!と思って歌いました。歌詞もいいですよね。ありのままで生きていいんだよ、というメッセージが込められていて。
――10曲それぞれ様々なカラーを感じさせる作品になりましたが、田中さんとしてはどんなアルバムになった印象ですか?
田中 全体的に“始まり”や前に進んでいく感じが強くて、応援ソングのような楽曲も多いので、私も歌っていて力をもらえますし、皆さんの日々の活力になるような作品になったと思います。「田中有紀はこういうものです!」という意味もありますし、私は誰かの背中を押せるようなアーティストになりたい想いがあったので、そんな楽曲たちと一緒にデビューすることができてすごく嬉しいです。
――「Dear STELLA」の歌詞に“ビルに隠れて 雲がかって 見えない明日も 照らせる様な 私になってゆきたい”とありますが、それが田中さん自身が目指すアーティストとしての理想像なのかな、と思いました。
田中 実はこの部分、私がプロットで書いたときは、悲しみの気持ちの方が強く出ていたんです。都会のビルに縁どられた空は窮屈そうで、夜になるとビルの灯りとかで空が見えにくくなるじゃないですか。それが自分の中では印象的で、「空を見上げても星には届かなそうだな」といいうイメージで書いていたのですが、アイラさんが「ユッキー(田中)はそれすらも輝かせるような人物になれるんだよ」というメッセージをこの歌詞に込めてくださったような気がして。
――めちゃくちゃいい話じゃないですか。
田中 私もそういう人になりたくて、このお仕事や歌を歌う決意をしたので、アイラさんからも「そうなれるよ」と言ってもらえているみたいで、すごく嬉しかったです。これからもこの歌と歩んでいけるのが幸せです。
――最後に、2025年1月に開催予定のライブに向けての意気込みをお聞かせください。
田中 皆さんと声を出して一緒に盛り上がれる、一体感の生まれるライブに出来たらと思っているので、今からそういう演出をたくさん考えて、こだわっていきたいなと思っています。楽しいライブにしますのでぜひ来ていただけたら、そして緑のペンライトを振っていただけたら嬉しいです!
●リリース情報
『Crier』
田中有紀
10月2日発売
【初回限定盤】
品番:LACA-35128~9
価格:¥4,400(税込)
初回限定仕様:各曲のインストCD、楽曲制作秘話が聞けるオリジナルラジオ視聴カード(エムカード)
【通常盤】
品番:LACA-25128
価格:¥3,300(税込)
【祝Debut祝Live!ペンライト付き数量限定版】
価格:¥7,150(税込)
数量限定仕様:初回限定盤+本人が好きな緑をベースに楽曲をイメージして自ら配色した10色発光するペンライト
※本商品は、アニメイト、A-on STOREでの限定販売商品です。
封入物:1st Live 最速抽選申込券
<CD>
1. Crier
作詞:Ryosuke Matsuzaki RAP詞:Lauren Kaori 作曲・編曲:鈴谷皆人
2. From here to HISTORIA
作詞:真崎エリカ 作曲・編曲:ぽりふぉ
3. Blue Wind
作詞:Mio Aoyama(Blue Bird’s Nest) 作曲・編曲:大西克巳(Blue Bird’s Nest)
4. No Pain No Gain
作詞:Ryosuke Matsuzaki 作曲:YUU for YOU、Ryosuke Matsuzaki 編曲:YUU for YOU
5. KURAGET DOWN
作詞:Eri Osanai 作曲:Eunsol(1008)、小久保祐希、YHEL 編曲:Eunsol(1008)
6. Going Going Going
作詞:下地悠 作曲:Yasutaka.Ishio(Relic Lyric)、前迫潤哉 編曲:要田健(Relic Lyric)
7. Familiar
作詞:園田健太郎 作曲:Giz’Mo(from Jam9)、Eunsol(1008)、石黑剛 編曲:Eunsol(1008)、石黑剛
8. Dear STELLA
作詞:田中有紀、結城アイラ 作曲:Stand Alone、小久保祐希 編曲:Stand Alone
9. 未来スケッチ
作詞:常楽寺澪 作曲:YUU for YOU、Ryosuke Matsuzaki 編曲:YUU for YOU
10. UP TO DATE
作詞:kenko-p(Blue Bird’s Nest) 作曲・編曲:大西克巳(Blue Bird’s Nest)
●ライブ情報
YUKI TANAKA 1st Live: Crier
2025年1月11日(土)
会場:ヒューリックホール東京
※チケット価格や申し込みに関する詳細は後日発表いたします。
<プロフィール>
東京都出身、1998年6月26日生まれ。
所属事務所:ヒラタオフィス
2017年、劇場アニメ『きみの声をとどけたい』龍ノ口かえで役で声優デビュー。代表作はゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』芹沢あさひ役、『MANIFEST/マニフェスト』オリーブ・ストーン役など。2024年10月放送予定のTVアニメ『トリリオンゲーム』高橋凜々役が決まっている。
田中有紀ランティスサイト
https://www.lantis.jp/artist/tanakayuki/
田中有紀 公式X
https://x.com/yuki_t0626
田中有紀 公式YouTube
https://www.youtube.com/@TANAKAYUKI_Official
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