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INTERVIEW

2024.09.28

【特集】「学園アイドルマスター」川村玲奈(篠澤 広役)インタビュー――天才肌の広と向き合うなかで気づいた、未知の「光景」に踏み出す楽しさ

【特集】「学園アイドルマスター」川村玲奈(篠澤 広役)インタビュー――天才肌の広と向き合うなかで気づいた、未知の「光景」に踏み出す楽しさ

特に印象的なフレーズは、“選びとった熱が ずっと残っていて”

――楽曲のことも細かく聞いていこうと思います。まずは今回のシングルに収録される広のソロ曲「光景」について。楽曲を制作したのが長谷川白紙さんということもあり、いきなり難易度の高い曲がきましたね。曲をいただいて驚いたのでは?

川村 驚きました。合格の連絡をいただいた数日後に、音源の資料が送られてきたのですが、その時点では、今とはだいぶ曲の雰囲気が違っていて、もっと長谷川白紙さん節が強かったんです。「これはアイドルの曲なの!?」と思ってしまうくらい不思議な楽曲で、自分に歌いこなせるのかすごく不安でした。

――そうだったんですね。

川村 セリフ収録がまだで、台本もいただいていない状態だったので、私の中での広ちゃんの情報はスタジオオーディションの段階で止まっていたんです。なので「広ちゃんってこんな不思議な楽曲を担当する子なのか!?」と驚いてしまって。これから先、ライブもあるだろうし、歌いこなせるか不安が大きかったです。

――長谷川白紙さんのことは元々ご存じでしたか?

川村 今回、曲をいただいたときに初めてお名前を知りました。検索して長谷川さんご本人の楽曲を聴いてみたら、「うわ〜!出会ったことのない音楽の形だ!」と感じて、すごく衝撃を受けました。

――唯一無二といいますか、これまでの音楽の概念に捉われない楽曲を書かれますからね。そんな方が「アイマス」の曲を書かれることに驚きが大きかったです。

川村 本当にすごい方ですよね。曲の雰囲気が、天才肌でミステリアスな広ちゃんのソロ1曲目としてピッタリだなと感じました。長谷川さんに手掛けていただけて嬉しいです。

――その長谷川さんとは、直接お会いしてお話することができたのでしょうか?

川村 はい。本番のレコーディングを、スタジオで実際に見ていただきました。

――なにか言われましたか?

川村 長谷川さんはとても優しい方で、ひとつひとつに対してすごく褒めてくださいました。それとこれは後から聞いた話なのですが、裏で泣いてくださったみたいで。そのことを聞いて「え〜、嬉しい!」と思いました。

――長谷川さんは広に対する熱い思いを、Xで何度かポストしていましたよね。

川村 あれでも結構抑えているみたいで、本当はもっとポストしたかったとおっしゃっていました。スタッフさんに控え目にするように言われて、あの量だったらしいです(笑)。でも、ここまで広ちゃんのことを思ってくださって、すごく嬉しいです。

――それだけの熱量を持って、広というアイドルの楽曲を解像度高く作ってくれたのですね。ただ、そうやって褒めてもらえる段階に至るまでが大変だったと思います。

川村 本当に大変でした。佐藤さんから「サビに入るまでは酔いしれている感じで、ポエムっぽく歌ってほしい」とディレクションをいただいたのですが、事前のレッスンでは上手く表現できなくて……。それを持ち帰り、自分で「広ちゃんならこういう感情で歌うのかな?」と少しずつ固めていったんです。それで本番のレコーディングに臨み、なんとか現在の形に持っていけました。

――高音もすごく美しいですね。

川村 この曲はキーがすごく高くて、地声では出ないところもあるんです。でも、裏声が広ちゃんのイメージに合っていたみたいでよかったです。あの高音を地声で出せと言われたらどうしよう……と思っていたので(笑)。

――広の歌声はただ弱々しいのではなく、繊細な中に表情感があるというか。サビで嬉しさをにじませているのも印象的です。

川村 ありがとうございます。サビは「ステージで伸び伸びと楽しそうに歌っている表情をもっと出してほしい」とディレクションいただき、笑顔感を付け足しました。広ちゃんの笑顔に関しては、「にへら〜と笑っている感じ」というお話を聞いていたので、それをイメージしました。

――「にへら〜」と笑っている姿が目に浮かびます。広の笑い方って特徴があって、かわいいですよね。偉そうに「ふふ」って笑うところもそうですし。

川村 嬉しいです!「ふふ」はセリフ収録で色々とリクエストされて、何パターンも録ったんです。そのうちのどれが使われたのかは、私もゲームをプレイして初めて知りました。

――倒れるときに「きゅ〜」っていうのも個人的に好きですね。

川村 私、台本に「きゅ〜」と書いてあるのを見て、最初は言葉の意味がわからなかったんです。「これってどういうことなんだろう?」と思って(笑)。広ちゃんが倒れるときの音と説明されて、「きゅ〜」も色んなパターンを録りました。広ちゃんって本当に不思議な子だなと思います。

――こういったところも、ぜひ注目してもらいたいですね。では、楽曲に話を戻しまして、広のことをとても表現している「光景」の歌詞ですが、その中でも特に印象的なフレーズを挙げるならどこでしょうか?

川村 ラスサビ前の“選びとった熱が ずっと残っていて”です。このフレーズは、より感情を込めて歌えたと思います。レコーディングでもすごく褒めていただきました。広ちゃんが自分でアイドルという道を選んだ、その選び取った熱がずっと残っている……それってすごく広ちゃんを表している歌詞だなと思って、特に大好きなフレーズです。

――コミュを読んだら、それをすごく感じると思います。そして、この曲はもうひとつ驚いたことがあって。ストリングス&ホーンアレンジにブラジルの巨匠であるアルトゥール・ヴェロカイが参加しています。

川村 そうなんです。でも、そんなすごい方がアレンジしてくださっていると全く知らなくて。MVのコメント欄を見て知りました。強いものに強いものをぶつけた感じがします。この曲は本当にすごいです!

「光景」とはまた違った感情を意識した「コントラスト」

――ソロ2曲目の「コントラスト」は、シンガーソングライターの佐々木恵梨さんが書き下ろした、「光景」とはまた違った雰囲気のある素敵な曲です。こちらはいかがでしたか?

川村 この曲も苦労しました。リズムがめちゃくちゃ難しいですし、サビには英語も出てきますし……。レッスンのとき、佐藤さんから「本Rec(本番のレコーディング)までに英語ペラペラでよろしくお願いします!」と笑顔で言われて(笑)。どうしようと思いましたが、自分なりに英語の発音よくするため、試行錯誤していっぱい練習しました。本番では、リモートで見てくださっていた佐々木さんが「前より全然良くなってる!」と英語を褒めてくださって、練習した甲斐がありました!

――英語部分も素晴らしかったです。その感じだと全くしゃべれないみたいですが(笑)。

川村 はい(笑)。

――この曲はリズムも特徴的ですよね。佐々木さんが自身のXで「私のお気に入りは、間奏から“推測も計算も”にかけての7→7→6→4→6拍子です」と書かれていたように、拍子が細かく変わる場所もありますし。

川村 そうなんです。本当に難しくて、上手くリズムに乗ることができなかったです。でも、佐々木さんが「もうちょっとこういう風に歌うといいかも」とアドバイスをしてくださって、なんとか頑張ることができました。

――そんななかで、広としてこの曲をどう表現したのでしょうか?

川村 この曲の歌詞には、広ちゃんの内面を表しているような言葉がたくさん出てくるんです。佐藤さんからも「前半のサビはただ楽しく歌うのではなく、悔しい感情や悲しさ、切なさも入れて歌ってほしい」「ラスサビはステージで華やかに楽しんでいるような歌い方をしてほしい」とディレクションをいただきました。なので、「光景」とはまた違った感情を意識しました。声量も「光景」より出ているのではないかなと思います。

――主旋律の裏でささやいている声も印象的ですよね。そこもコントラストになっているのかな、とも感じるところですが、この部分はすんなりいけましたか?

川村 そうですね。吐息でウィスパーっぽくささやくセリフは、佐藤さんに上手と褒めていただき、あまり苦戦することなく、ただただ楽しくレコーディングできました。

――声が重なっている部分や伴奏も含め、完成したものを聴いたときはいかがでしたか?

川村 完成した音源を聴いたのはしばらく経ってからだったのですが、レコーディングのときよりもギターやドラムの音が足されて、すごく華やかなアレンジになっていたので、そのかっこ良さにすごく感動しました。

――「光景」「コントラスト」ときて、広には今後どういう曲を歌わせてみたいですか?

川村 「光景」と「コントラスト」はだいぶ曲調が違いますし、シーズンイベント曲の「キミとセミブルー」はかわいい系、「冠菊」はかっこいい系ときたので、広ちゃんは他のアイドルと比べても結構色んなジャンルをコンプリートしていると思うんです。なので悩みますが……バチバチでイケイケなロックを歌わせてみたいです。あのキャラクターでどう歌うのかあまり想像できないので、見てみたいです。

――その「キミとセミブルー」「冠菊」のレコーディングはいかがでしたか?

川村 「キミとセミブルー」はすごく不安になりながらレコーディングに行ったのを覚えています。広ちゃんがかわいい系の楽曲をどういう風に歌うのか、全然想像がつかなくて。現場で相談しながら、「サビでは笑顔の雰囲気で」といったディレクションいただき、全体的に楽しんで歌っている感じにはなりましたが、すごく苦戦した曲です。

――レコーディング順としては遡ることになると思いますが、全体曲「初」と「Campus mode!!」についてもお聞きします。これらの曲も広としてどう表現するか悩んだのでは?

川村 そうですね。レコーディングの順番としては「光景」の次が「初」で、まだ他の曲を録っていないタイミングでしたから、私の中では「光景」のゆったりと裏声を使って歌うイメージで止まっていたんです。だから、「初」のような楽曲を広ちゃんがどうやって歌うのか、すごく悩みました。

――悩んだ結果、どのように考えて歌ったのでしょうか?

川村 サビにいくまではあまり感情を出しすぎず、サビで感情を出して歌おうと考えました。これは全体曲だけでなく、どの曲でも意識していることです。

――広というキャラクターを考えると、「Campus mode!!」は「初」よりもさらに難しそうです。

川村 「Campus mode!!」は「初」よりも苦戦しました。収録する量も多かったですし、キーが高くてテンポも速いので。とにかくたくさん録って、ようやく完成した感じでした。そして、9人全員が合わさった完成バージョンを聴いたら、広の声量がとても小さくて(笑)。

――確かに広のソロ歌唱バージョンを聴いたら、「Campus mode!!」の“yeah!”とか人一倍声が小さい!と思いました(笑)。でも、それも広の個性だなと。

川村 あれでも広なりに楽しんで歌っているんです(笑)。

次ページ:補習組3人の収録は、ほかの2人との温度差も楽しい

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