――ここからは楽曲についてお聞きします。最初にレコーディングしたのがソロ曲「Tame-Lie-One-Step」とのことで、曲をいただいたときの第一印象はいかがでしたか?
湊 その時点でシナリオはまだいただいていない状態でしたが、「Tame-Lie-One-Step」の歌詞を読んだら、清夏の過去や思いに関する解像度が想像以上に高くて驚きました。それでさらに清夏のことを知ることができました。
――作詞・作曲の東 優太さんが「タイトルを思いついたときに興奮した」とコメントされていましたが、タイトルも単なる“ためらい”との語呂合わせではない深い意味が込められていますね。
湊 そうなんです。レコーディングしたときは気づかなかったのですが、「Tame-Lie-One-Step」には何重にも意味が入っていて。親愛度コミュのシナリオに「嘘を飼い慣らして自分のものにして、アイドル・紫雲清夏を演じる」と書いてあるのを読んで、「Tame-Lie-One-Step」はこういう意味だったのか!と本当に驚きました。
――英単語の“Tame(テイム)”には「飼い慣らされた」だけでなく、「無気力な」という意味もありますから、“やる気がなくついてしまった嘘(=Tame Lie)”と捉えることもできて本当に深いなと。歌詞の方も、清夏のことを知ってから読むとまた違って見えてきますが、特に心にグッときたフレーズを挙げるならどこでしょうか?
湊 一番涙腺に来たのは、サビの“踊ってたいよずっと”です。乗り越えた先で、踊りたいと思ってくれることが嬉しくて。この曲はコミュを読んだあとに聴くことになるので、このフレーズをなによりも大切に歌わなくては、と思いました。それから、Dメロの“浮いた踵 隙間 埋めていくことでしょ?”というフレーズも、バレエをやってきた清夏にピッタリだなと思いました。夢を叶えることが大事なのではなくて、夢に向かって一歩進むことが大事なんだ、という歌詞にグッときました。
――清夏のことを知らずに聴いたら、背が高い男性に相対して背伸びをしている描写と思うかもですが、知ると違った意味に感じられてすごいです。ダンサブルな曲調の印象やレッスン、レコーディングについてもお聞かせください。
湊 仮歌を聴いて、かっこ良さに惹かれました。お洒落だし、ラップも入っていて、レッスンのときはかっこ良さを前面に押し出して作っていったんです。ギャルっぽいけど大人っぽい面も出したといいますか。でも、オーディションと同じように表情感が大事で、「笑顔感や幸せな感じをもっと出して、これ以上の幸せがないくらいに笑顔で楽しそうに歌ってください」とディレクションいただきました。
まだシナリオを読んでいなかったこともあり、自分が想像する幸せが全然足りていなかったんです。そこで、歌詞をもう一度読み、設定資料を何度も読み返して想像を膨らませました。Pっちが支えてくれたから、Pっちの存在があるからこそステージに立てている――その感謝の気持ちに改めて気づき、気持ちを込めて歌うことができました。
――このような曲調に馴染みはあったのですか?
湊 はい。テンポのいい曲やラップ調の曲を歌うのは好きでしたから。AメロやBメロのちょっと大人っぽい表情を見せるところも得意分野なので、そこに関しては私が持っていったものをそのまま表現して、サビで目一杯の笑顔を見せることを意識しました。
――具体的に注目してほしいポイントを挙げるならどこでしょうか?
湊 Bメロの“見せるデコルテ オシャレ あの子 憧れ”というフレーズは、語尾を少ししゃくり上げて歌っています。セリフの収録でも語尾のしゃくり上げはよく使っているのですが、清夏のギャルらしさに繋がる歌い方なので好きなところです。しかも、その後の“胸秘めたfeeling 気づかないフリ”は、ちょっと落ち着いて一瞬引き込まれるような雰囲気があって。清夏のストーリーでの「あれ?いまの表情はなんだろう?明るいだけではない面が見えたな」というところにもリンクしていると思います。
――レコーディングでは、ダンスが得意な湊さんらしくダンスのこともイメージして歌ったとお聞きしました。
湊 そうなんです。笑顔感を出して歌うことに繋がるのですが、どうやったら笑顔感が出るんだろう?と考えたときに、振りや踊りを意識することで自然とテンションが一段上がると気づいたんです。そうすることで、よりいっそう笑顔感が出ましたし、リズムに合わせてビートを刻むような表現が増えましたので、ダンスを意識したのは正解でした。
――ダンスのイメージを持っていたのであれば、ゲームでライブ映像を見たときは感激だったのでは?
湊 本当に。ぴょんぴょん飛び跳ねて、回って、客席もたくさん見て……踊っているのが本当に楽しいと伝わるMVだったので、見たときはジーンときました。クラップで会場が一体になっている感じも大好きです。
――親愛度コミュを見たあとなので、曲自体も泣けてきました。
湊 私も涙が止まらなかったです。それまでは清夏のキャストとしてこの曲を聴いてきたなかで、実際に(ゲームで)清夏をプロデュースすることで、Pっちの視点で「Tame-Lie-One-Step」を聴くことができて。清夏からの感謝の気持ちを受け取って、本当に涙が止まりませんでした。
――そして、「Tame-Lie-One-Step」と全体曲の「初」には、「学マス」の特徴のひとつである下手なバージョンの歌(レベル1)もゲーム内に登場します。下手といってもアイドルによって表現の仕方が違いますが、清夏はどんな感じに?
湊 モーションを見たときに、わざとやる気を出さないでいるというか、踊りを避けていると感じたんです。なので、カラオケで流して歌っているようなイメージで歌いました。
――全体曲である「初」や「Campus mode!!」はソロ曲とは違ったアプローチもあったと思いますが、こちらの印象はいかがですか?
湊 「初」も「Campus mode!!」も「学マス」を体現しているというか、歌詞を見たときに「学マス」が始まるんだ!みたいな嬉しさがありました。「アイマス」らしさがありつつも、今までの「アイマス」では聴いたことのないような音や新しさがあって、新しい道を切り開いていくイメージがどちらの曲からも感じられて、そこも「学マス」らしいなと思いました。
しかも、どちらの曲にも清夏のストーリーと共通するような点があるんです。“諦めない”という言葉(歌詞)を清夏が歌う、しかも笑顔で歌うことが本当に嬉しくて。これらの曲も、笑顔で楽しく幸せな気持ちを持って歌うことを常に意識しました。
――そのほかに、清夏らしさを表現するために具体的に工夫した点があれば教えてください。
湊 「Campus mode!!」の“yeah!”の掛け声は、みんなと同じ言い方をするのではなく、清夏っぽくちょっと下から上にしゃくり上げてギャルっぽさを意識しました。“壁は登るか?穴を開けるか?抜け道を探すか?”のところも、それぞれに清夏らしい表情をつけていますし、節々で清夏のいたずらっぽい表情や挑戦的な表情、大人っぽい表情、達観している表情などを詰め込んでいます。清夏が色んな表情で歌っているのを感じていただけたら嬉しいです。
――今回のシングルではソロ歌唱バージョンがフルで収録されますから、細かいところまで聴いてもらいたいですね。「Campus mode!!」は忙しいしキーも高くて大変だったとよく聞きますが、湊さんはいかがでしたか?
湊 私も「これ……本当に歌えるのか?」と思いました(笑)。でも、難しいからといって表情をひとつたりとも取りこぼしたくない、清夏だからこそ込められる表情や気持ちがあると思いましたので、すべて込められるように本当に何回も練習しました。
――さらに、清夏はシーズンイベントの楽曲「キミとセミブルー」をメインで歌っています。こちらは清夏らしさ全開ですね。
湊 “THE 夏”という感じが清夏にすごく似合うと思って、本当に楽しかったです。楽しすぎてテンションが上がってしまい、「ちょっと楽しくなりすぎているかもしれません」と指摘されたくらいで(笑)。でも、やっぱり清夏らしさは忘れたくなかったので、この曲の魅力であるセリフや掛け声にも清夏のギャルっぽさや表情を見せられるように意識しました。特にAメロの“ドキドキしたわ”や“早く終われー!”といった掛け声の箇所は、セリフを収録しているようなイメージで、清夏が目の前で動いているのを想像しながら収録したので、伸び伸びとやることができました。
――ちなみに、ほかの方に聞いてもわからなかったのですが、湊さんはこの曲の歌詞にある“サマーマ”がなんなのかわかりますか?
湊 私もわかりません(笑)。これはもうテンションというか、マインドなのかなって思います(笑)。
――確かに、マインドかもしれないですね。シーズンイベントの曲としては「冠菊」は歌ってみていかがでしたか?
湊 (葛城)リーリヤ役の花岩香奈ちゃんが先に録ったものを仮歌としていただいたのですが、すごく好きな曲なので歌えて嬉しかったです。それまでの曲が歌詞のひと言ひと言に表情を乗せていったのに対して、この曲は全体の雰囲気を大事に歌いました。1番は和やかっこいいイメージ、2番になるとちょっと切なさがあり、最後は明るくステージを楽しんでいる感じ……そういうブロックごとの感情を大事にしていますので、ぜひフルで聴いてみて欲しいです。
――ライブ開催記念の楽曲「がむしゃらに行こう!」「Howling over the World」「ミラクルナナウ(゚∀゚)!」もそれぞれ違った味があります。
湊 どれも素敵な曲ですが、個人的には「Howling over the World」が特に好きです。私はハモリをつけるのが昔から好きで、友達とのカラオケでも、ハモっていいと言われるとすごく喜んでしまうのですが、ほかの曲のレコーディングのときに歌ってみたい曲を聞かれて、ハモリのある曲を歌いたいとお伝えしていたので、掛け合ってハモっていくタイプの楽曲を歌わせていただけてすごく嬉しかったです。
――それ以外で、清夏として今後どんな曲を歌ってみたいですか?
湊 やっぱりダンサブルな曲、ダンスで魅せる曲を歌いたいです。「Tame-Lie-One-Step」もダンスが魅力的な曲ではありますが、本気で踊るというよりは、みんなと楽しむのがコンセプトの曲ですので、いつか清夏のソロダンスで圧倒するような曲ができると嬉しいです。もしそれをライブで披露する機会があれば、全力で頑張りたいなと思います!
SHARE