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INTERVIEW

2024.09.20

小倉 唯が考える女性としての“美しさ”――20代ラストを飾るニューアルバム『Bloomy』に込めた“ずっと咲き続けてほしい”という想い

小倉 唯が考える女性としての“美しさ”――20代ラストを飾るニューアルバム『Bloomy』に込めた“ずっと咲き続けてほしい”という想い

可憐な乙女心からアンニュイな表現まで、新曲で見せる新たな境地

――今回のアルバムにはその他にも多彩な新曲が収録されています。アルバム2曲目の「花占いするの♡」は、シンガーソングライターの清 竜人さんとの初コラボ曲になります。

小倉 せっかくのアルバムなので、作家さんともコラボしたいな、という思いがありました。「どんな方がいいかな?」と考えたときに、私は最近、清さんが作られたアイドルソングをよく聴いていて、声優さんにも楽曲提供されていることを知っていたので、ぜひご一緒したいなと思いオファーさせていただくことになりました。

――清さんの作られる楽曲のどんなところに魅力を感じますか?

小倉 私が最近聴いていたのは、TikTokでバズっていた「ツインテールは20歳まで♡」(きゅるりんってしてみて)という楽曲です。清さんの書く楽曲は、女の子のかわいらしさだけでなく、ちょっと切ない不安定さを感じさせるメロディが素敵だなと感じていて。そういった部分を含めて、今回のアルバムのコンセプトにハマるのかなと思ってお願いすることになりました。

――女の子のかわいらしさと儚い切なさというのは、この楽曲でもまさに感じられるポイントですね。

小倉 そうですね。清さんにお願いする時点では、『Bloomy』というアルバムのタイトルやコンセプトは決まっていたので、そういった全体のイメージをお伝えしつつ、どこかに“お花”の要素を入れていただけるようにお願いしました。あとは、アルバム曲なのでキャッチーだけど攻めた要素もある楽曲にしたいです、とお伝えしました。結果的に、すごくかわいらしい楽曲に仕上がりましたよね。こんなに素敵な楽曲を書いてくださった清さんには本当に感謝していますし、私もすごくお気に入りの1曲です。

――“お花”の要素として“花占い”をモチーフにするのが、乙女心を感じさせていいですよね。

小倉 そうなんです。自分だと、ここまで乙女な歌詞は書けないのかも、という発見もありました。サビの“好き 嫌い 好き”というワードは、メロディとのハマりも相まって、かわいいけどちょっと切ないところが特に気に入っています。男性が書く女の子らしい歌詞も素敵だなと思いましたし、すごく勉強になりました。

――歌い方も可憐な雰囲気ですが、どんなイメージで歌いましたか?

小倉 とにかく楽曲がかわいらしいので、それに負けないようなキュンとする歌い方を意識しました。清さんもレコーディングに立ち会ってくださったのですが、そのときに私の声質をすごくほめていただいたんです。歌録りに関しても「すごく良いですね。僕から言うことはありません」という感じで、このアルバムの中では最速でレコーディングが終わりました。

――清さんは堀江由衣さんに楽曲提供される際も、歌の表現に関しては堀江さんを信頼してほぼディレクションされないそうなので、小倉さんに対しても、最初に聴いて一発でそう感じたのではないでしょうか。

小倉 最初にミーティングをしたときも、前から私の楽曲を書いてみたかったんです、と仰っていただけて。それもすごく嬉しかったですね。

――続いての新曲「恋の秒針」も甘酸っぱくてキュンとなる楽曲ですが、どんなイメージで制作したのでしょうか。

小倉 今回はアルバム用にコンペを行って、それぞれの作家さんが思う「今の私(小倉 唯)に歌ってほしい曲」というテーマで楽曲を集めさせていただいたのですが、この曲は切ない雰囲気のメロディラインに惹かれて収録を決めました。歌詞に物語性がある部分を含めて、リード曲の「Wind of Bloom」にある“物語(ストーリー)”というキーワードともリンクしますし、冬らしさのあるラブソングになっています。

――恋のドキドキを“恋の秒針”と表現したロマンチックな歌詞も素敵ですが、歌う際はどんなことを意識しましたか?

小倉 モノローグを声に乗せているような感じと言いますか、繊細な声色を意識して歌いました。この歌詞で描かれている女の子の心情を上手く表現できればと思ったので、あまり歌い上げるのではなく、ちょっと不安な気持ちを声に乗せるようにしています。

――その一方で、「ハピネス*センセーション」(2020年)などで知られる鶴﨑輝一さんが作詞・作曲・編曲した新曲「スターチス」は、今までになくアンニュイな雰囲気が新鮮なナンバーです。

小倉 今回は、アルバムだからこそ挑戦できるナンバーも入れたくて。この曲はすごく大人な雰囲気が今までにはないテイストですし、どこかお花っぽさを感じました。鶴﨑さんが、あえてこういう楽曲を選んでくださったのはすごく納得というか、新しい挑戦をさせていただけてありがたいなと思いました。

――“変わらぬ心”“永久不変”“いたずら心”など色んな意味の花言葉を持つ「スターチス」をモチーフにしているのもお洒落ですよね。

小倉 歌詞に“お花”のモチーフを入れたいとお伝えしたところ、鶴﨑(輝一)さんからご提案いただいたのが「スターチス」でした。歌詞の内容的にも、物語っぽくなっているかと思いきや、意外と掴みきれないところがあって、聴き手に委ねられている感じがありますし、言葉のニュアンスや雰囲気で伝えるところがあるので、受け手によって想像する世界観が変わると思います。歌い方は大人っぽさを意識していて。少し達観しているような雰囲気は、今の自分だからこそ表現できたのかなと思いました。

――“「もうおしまい」何度目かもわかんないや”というフレーズからは相手との微妙な距離感や関係性が浮かびますし、大人になることで変わるものと変わらないことの狭間で揺れるような切なさがあって、瞬間の美しさと儚さという意味では、「Wind of Bloom」のお話とも繋がる気がします。

小倉 全体を通してそういった価値観が一貫していますよね。私から「こうしてください」とお願いしたわけではないのですが、作家の皆さんがアルバムのテーマやコンセプトからキャッチしてくださいました。アルバム全体として統一感が生まれたように思います。本当に素敵な曲が多くて、我ながら良いアルバムができたなと感じています。

アルバムに込めた“ずっと咲き続けてほしい”という想い

――「Lovely Happily Shiny Days」はラブリーかつノリの良い、小倉さんらしいナンバー。大森祥子さんとの共作名義で、小倉さんも作詞に名を連ねています。

小倉 このアルバムの中ではアイドルソング的なポジションの楽曲で、ライブでも映える、とてもかわいくてパワフルな楽曲になっています。イメージとしては現代的な要素を取り入れつつ、女の子がかわいくなるために努力している様子や、より輝くための日々を過ごしているなかでの想いを乗せたので、聴いていて明るく楽しい気持ちになれると思います。

――今を生きる女の子のガールズライフを表現した楽曲なんですね。

小倉 それこそ「トキメキWeekend!」(シングル「Empty//Princess.」のカップリング曲)もそうだったのですが、今どきのキーワードを散りばめた楽曲がファンの方たちからも好評で、そういった楽曲を今後も表現していきたいな、という思いがあって。“ブルべ”や“骨格診断”“グリッター”といったワードは私もアイデアを出しながら作っていきました。10代20代の女の子の心情ともリンクするようにイメージして書いています。

――「One & Only」は聴き手の背中を押してくれるような、ポジティブなメッセージが詰まった楽曲になっています。

小倉 ライブを想定して、みんなとコール&レスポンスが出来るような楽曲を作りたくて生まれた曲になっています。みんな違ってみんないい、人それぞれの良さや魅力があるよね、という希望が込められていて。みんなと一緒に見る未来、希望に溢れたメッセージ性というのは、ライブで歌っていても輝きを感じられるのかなと思って、私からもアイデアを出させていただきました。

――歌声からも元気をもらえるように感じました。

小倉 レコーディングでは、実際にライブ会場で歌っているところを想像して、特定の誰かに向けてではなく、みんなに歌い聞かせるような、壮大なイメージで歌いました。最後の“la la la”のところは、みんなで一緒に歌っている景色が浮かんできて、それを考えるだけでも楽しかったので、今からライブで歌うのがもっと楽しみです。

――小倉さんが作詞で参加した「センチメンタルメッセージ」は疾走感もありつつ切なさを感じさせる楽曲で、こちらもグッと大人になった表現が印象的です。

小倉 アルバムの中では一番ロックな雰囲気のナンバーになりました。SNSを筆頭に現代に渦巻く感情を表現して、かなり攻めた歌詞になっているのですが、今のこの時代に生きていくなかで誰しもが抱える葛藤や悩みを詰め込むことができたんじゃないかな、と思います。思いをぶつけるような強い歌い方、情緒が揺れ動く様子を歌で表現しています。

――世の中の閉塞感や本音を伝えられないもどかしい心情などが描かれていますが、小倉さんも共感できる部分はありますか?

小倉 そうですね。このお仕事をしていると、自分の感情を本音で伝えることはなかなかできないですし、歌詞にある“嘘ばかりの世界”という言葉も、この業界に限らず誰しもが感じられることなのかな、と思います。色々な誤情報や噂話が飛び交う現代社会で、自分は何を信じて進むべきか。そういった部分にまで切り込んでいるなので、時代に沿っているようなテーマ性なのかな、と。

――小倉さんがこういった強いメッセージ性のある楽曲に挑戦するのは意外でした。

小倉 実際に歌ってみたら、レコーディングが思っていた以上にスムーズに進んで。こういう路線の楽曲も良いのかも、と思いました。「塗り固められたものを取っ払っちゃえ!」みたいな潔さは歌っていて清々しく感じましたね。今までの自分の中にはなかった表現で、新しい発見になりました。

――今後もこういった路線の楽曲を期待しております。そしてアルバムの最後にはシングル曲「Love∞Vision」が置かれています。この曲順にはどんな意図が?

小倉 エンドロール的なイメージで、この位置に置きました。それとタイトルに“∞(無限大)”が入っているので、これからもずっとリフレインしていってほしい、という思いも込めていて。今回、『Bloomy』というタイトルを付けたときに、お花はどうしても散ってしまうイメージがあると思うのですが、そうではなく、“ずっとどこかで咲き続けている”という想いがあって。なので最後に「Love∞Vision」を置くことで輪廻のようなイメージを表現しています。

次ページ:12年越しの新たな「Raise」、みんなに会いに行くツアーに向けて

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