INTERVIEW
2024.09.12
――今度は改めて、石井さんが北川さんの歌唱を受けてどのように歌ったか教えてください。
石井 私はめっちゃ緊張していて……。
北川 すごかったね。
石井 レコーディングは緊張するんですよ。
――ライブでは全然緊張されないのに?
石井 はい。でも、理恵さんが「こういう感じだよ」ってすごくわかりやすく歌ってくださったんですよ。それに、理恵さんが「見てるよ」と私のレコーディングを見守ってくださったのが救いで。
――見られて緊張が増すのではなく。
石井 逆に、一緒に歌ってくれる方がいるというのが嬉しかったんですね。それで、プロデューサーさんからは「理恵さんの声を頼りに」と言われたので。
北川 言ってた、言ってた(笑)。
石井 理恵さんを頼りに歌ったらすごく褒められました。いつもはガチガチなのに(笑)。「先輩のおかげだね」とも言われたんですよね。でも本当に、理恵さんがこう歌っているから私もこう歌いたい、というのが無意識のうちに出てきたんですよね。歌詞に沿うように、私たち2人の物語も一緒に作られた気がして、感動しました。
――頼りにした、というところを詳しく教えてもらえますか?
石井 私は曲の歌い始めが一番大事で、そこで印象が決まると思っているので、理恵さんの歌い始めをよく聴いていたんです。そうしたら、私が歌い始めるところに理恵さんが迎えに来てくれるような感覚が持てたんですね。温かい気持ちをもらえたのがすごく嬉しくて、その嬉しさをそのまま表現した感覚でした。私自身、その歌い方がハマったと思いますし、(作曲の)馬瀬(みさき)さんも、そこがすごく良かったと褒めてくださいました。あとはさっきもお話ししたように、理恵さんは本当に言葉が立っているので、自分としてはかなり言葉を立てて歌いました。
北川 お互いに寄り添ったんだよね。わかってた、わかってた。
石井 でも、ただ立てるだけではダメなんですよね。それだと雑に聴こえるというか、そこは練習のときから本当に難しかったです。理恵さんは言葉を口の前に集めている感じがするんですよ。マイクの場所に集めてから広げるような。なのでレコーディングでは伸びやかに歌うんですけど、言葉の焦点を顔の前に作って立たせる、みたいな感じをすごく意識していました。
――言葉を立たせるというのは北川さんは意識されているんですか?
北川 これは「プリキュア」あるあるかもしれないですけど、話しかけるような歌詞が多いので、どうしても目の前のマイクに向かって言葉を発するように歌いたいんですよね。普段もそうじゃないですか? 伝えたい言葉があるとき、その言葉が自然と立ちますよね。だから私も、言葉を立てようとすごく意識しているつもりはないんですけど、プリキュアシンガーになったときから「言葉を逃さず伝えたい」という気持ちはずっとあります。聴いてくれる子どもたちに「なんて言ったの?」と思ってほしくなくて。だから、一つひとつのフレーズ感も大事だけれども、子どもたちに言葉がしっかりと伝わるように、そういう歌い方になっているのかもしれないです。
――五條真由美さんも、イベントなどで子どもたちに対して歌うときは一人ひとりを意識しながら歌うとおっしゃられていました。
北川 私、五條さんが「プリキュア」の歌を歌うときは「プリキュア」の「ア」が大事と言っていたのが忘れられないんです。はっきり「プリキュ、ア」と言うようにしている、って。それを聞いたとき、「わっかるー! そうですよね!」ってすごく腑に落ちたことを覚えています。
――完成した楽曲に対する印象というのはどのようなものですか?
北川 続けてレコーディングできたこともあって、2人で並走するのではなく、「こう歌ったら、こう歌ってくれるだろうから、こうするね」という感じで、「キズナ」らしくバトンを繋げられた感覚は強くありました。あと、思った以上に声が似てる感じになったと思いました。
石井 うんうんうん。
北川 話し声の声質は全然違うけれども、お互いに寄り添ったことで、個性がありつつもちょっとした双子感を出せたんじゃないかと感じましたね。Machicoちゃんや千颯ちゃんや、それこそ五條さんともデュエットさせていただいたことがありますけど、私とあみちゃんだからこその良さが出たと思いました。
石井 私も、1人で歌っているパートはお互いが出ているのに、2人パートでは手を繋いでいる感じがあって、似た成分が生まれた気がしていました。完成後もずっと聴いていたんですけど、2人の声が合わさるともっと大勢で歌っているようなパワーを感じるんですよね。それがなんだか「1人ではできなくても2人ならできる」という「プリキュア」らしさにも繋がったような気がして嬉しかったです。
――お二人のお気に入りの箇所は?
北川 あみちゃん、先に言ってください。
石井 私は決まっていて。落ちサビのところです。
北川 レコーディングのときからずっと言っているんです。
石井 そうなんです、ここはすごいんですよ!
北川 (笑)。
石井 歌い分けも最高なんですけど、理恵さんがまず“今、共鳴する鼓動で走りながら”で私に、こういう感じだよ、って渡してくれて、“見失わない”のところで待っていてくれているんですよ。だから2人での“約束するよ”はもう感動でした! 私はいつも、落ちサビから大サビに向かっていく感じが想像つかなくて、どんどん先に走っていくタイプなんですよね。でも、理恵さんが「まだまだ」「まだまだ」「ここ!」という感じでスタートとゴールを提示してくださっているんです。私はそれに合わせて走っていく歌い方をするだけでした。自分で聴き返したあとも、「私にこんな歌の表現ができたんだ!」くらいの衝撃がありました。
北川 ここのレコーディングはすごく生き生きしていたんですよ。すっごく良かったよね。
石井 でも本当に“今、共鳴する鼓動で走りながら”の理恵さんが最高なんですよ。皆さん聴いてください。
北川 ずっと、すっごく褒めてくれているので、焼肉おごらなきゃね、ってずっと言っています(笑)。私は、落ちサビももちろん好きですけど、『わんぷり』らしさがあると思っているのが、“加速度あげて止まれない、止まらない!”ですね。この、かっこつけていない感じが。2人の歌い方にしてもそうなんですけど、上手く歌おうというところを脱ぎ捨てて、まっすぐ歌に向かえたと思っています。だから、『わんぷり』らしさもあるし、「プリキュア」らしく助けたいとか守りたいという想いがダイレクトに伝わる歌になったと思って、私自身もすごく嬉しかったポイントでした。
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