INTERVIEW
2024.09.12
2023年、TVアニメ『ひろがるスカイ!プリキュア』のOP主題歌でデビューした石井あみ。そのデビュー曲でMachicoと共にコーラスを務め、“全プリキュア 20th Anniversary LIVE!”をはじめとするライブやイベントでは頼もしい背中を見せてきた先輩プリキュアシンガーの北川理恵。その2人が、「プリキュア」シリーズ最新映画『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』挿入歌「大好きのキズナ」で初めてデュエットを果たした。楽曲は「石井の声で脳内再生された」と北川が称したほど、「プリキュア」シリーズの映画らしい爽やかなギターロック。そこに向かって互いをよく知る2人はどのように自身の歌声を乗せていったのか。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
――まずは、お二人で『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』の挿入歌を担当すると聞いたときの感想を教えてください。
北川理恵 (石井)あみちゃんは私にはない歌い方のセンスを持っていて、羨ましく思うところが多々あるんですよね。声もすごく好きなので、一緒に歌うと決まったときはあみちゃんに寄せていきたいと思ったし、あみちゃんが持っている歌のエッセンスみたいなものを私も取り入れたいと思いました。でも「大好きのキズナ」は、デビュー曲の「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」を歌っているときのあみちゃんがそのまま投影されたような、そんな爽やかな楽曲だったので、あみちゃんの声で脳内再生されてすごく焦ったんですよね。私が足を引っ張るわけにはいかないという緊張で。
石井あみ そんなことはないと思います(笑)。
北川 曲に合う声って絶対あると思うんですよ。特に「プリキュア」では、作品があって、そこに合う歌と声があって……、という形になっているとずっと思っているので、作品らしさ、「大好きのキズナ」という歌の「らしさ」みたいなもの、そしてあみちゃんの声や歌い方に私もちょっとずつ寄せていけたら、と思っていました。
――北川さんが石井さんに感じる、歌い方のセンスというのはどういうところですか?
北川 音程の上から下まで、信じられないくらいに音圧が変わらないところです。私は音程の上の方がパーンって出て、下はそんなに得意ではないんですけど、あみちゃんは均等に出るし、それを操れているので安定しているんです。だから何を歌っても石井あみだとすぐにわかるんですよね。
石井 嬉しい!
北川 逆に、私は曲に寄せて歌うタイプなので、自分の歌い方というものがあまりないんですね。あみちゃんみたいに、曲を聴いたときから自分の歌い方がしっかりとあって、それをそのまま乗せてくるということはできないので、すごいと思っています。
石井 私からしたら、理恵さんのように曲に合わせて歌うということはできないことで……。
北川 武器が違うんだよね。
石井 そうですね。それができたら……、と思いながら曲と向き合ってきたので、曲によって違う雰囲気を出せる理恵さんが本当に憧れです。
北川 優しい(笑)。
――石井さんは、北川さんと今回デュエットになると聞いたときは?
石井 「来たー!」って。
北川 喜ばれた!
石井 デビューのときからコーラスを歌っていただいて、ライブでもたくさんご一緒させていただいて、一番身近に感じる先輩の1人なので本当に嬉しかったです。去年、“プリキュアシンガーズ Premium LIVE HOUSE Circuit!”の「vol.1 <2019-2023 Newest 5 Years ~広島公演~>」で初めて理恵さんが歌っているところを生で見させていただいて、空間の使い方が本当に素晴らしくて。舞台袖から目が離せず、私がなりたいプリキュアシンガーというのを意識した瞬間でもありました。なので「私も頑張らないと」と思いましたね。
北川 お互いに。
石井 最初、「大好きのキズナ」というタイトルをいただいたとき、『わんだふるぷりきゅあ!』(以下、『わんぷり』)っぽいかわいい曲かと思ったら爽快感があって、でも『わんぷり』の、温かさもあるような熱さを届けるのはこういう曲調なんだと思ったんです。題名と曲のギャップもあるし、爽快さだけではなくて『わんぷり』らしくかわいさがあってもいいのかな、言葉によって違ってもいいのかな、とも思いました。だから、理恵さんが先にレコーディングすることは知っていたので、引き出しだけを作っておいて無意識に合わせるようなイメージでした。
――先に歌われる北川さんのイメージというのは?
石井 理恵さんの歌は言葉が形になって届いてくるので、それを受け止めて私からも渡せるように、というのはすごく考えていました。その頃、ボイトレの先生や作家の先生から、伸びやかなところが私の歌のいいところだと言ってもらっていたので、その良さを出していけるように、なるべく大きい場所をイメージしながらまっすぐ歌おう、と思っていました。でも、理恵さんのレコーディングを見学させてもらったんですけど、ワンコーラス歌うだけで「あれ?もう完成?」と思うくらいに素晴らしくて。衝撃を受けました。理恵さんが差し出してくれたものを受け取って、一緒に走っていくように歌ったら楽曲にも寄り添えたし、自然に温かいものになりました。
――北川さんは先番としてどういうイメージで歌おうと考えていらっしゃったんですか?
北川 あみちゃんが言ったように、「大好きのキズナ」は、かわいらしくも歌えるし、かっこいいに振ることもできるし、爽やかにもいけるし、エモくも歌えるし、色んなことができる楽曲だと思ったんです。どういう場面で使われる挿入歌なのかを教えていただいたのがレコーディング当日だったので、色んな歌い方を試しておいて、レコーディングでプロデューサーさんやディレクターさんにうかがってから調整していく、という作業になりました。
プリキュアの楽曲って多岐に渡っていて、とても熱い曲もあれば、かわいいに特化した曲もあり、かわいい曲だけどこうしてほしいみたいに言われることもあるので、その場で声をチューニングするみたいに、「これだとかわいすぎます?」「こっちだとかっこ良すぎますか?」と確認する作業をさせてもらうんです。そこにすごく時間がかかってしまうんですが、チューニングができればあとはすんなり録れる、という感じです。
石井 すごかったです。
――具体的にはどういうチューニングが行われたのでしょうか?
北川 ブースに入ったあと、最初にワンコーラスを通して歌わせてもらって、「どうでしょうか!?」というところから始まったんですけど、最初はかっこよすぎた感じで、ちょっとずつ息成分を多めにしながら、駆け抜けていく感じや爽やかさみたいな方向に寄せていった記憶があります。でも、デュエット曲という段階で、先に録る人はある程度予測して、「こちらのバトンでいかがでしょうか」ということをやり続けるものだと思っていて。「こういうことみたいだからこう歌うね、よろしく」と思いながら歌っていました。そんな私の歌っているところをよく見て、聴いてくれたあみちゃんが私に寄り添ってくれたので、バトンの受け渡しが一層うまくいったんだと思います。2人の声が合わさったラフミックスをその日のうちに聴いたとき、もう(拍手して)、それから「嬉しいね」みたいなことを言ったよね。
石井 はい。
北川 やっぱり、お互いのレコーディングを聴けたのは良かったですね。デュエット曲といえども、レコーディングの日程が別々になることが結構あるんですけど、あのときは私とあみちゃんだからこその寄せ合いがうまくいったと思いましたし、お互いにコンセンサスが取れている状態で歌えたことが大きかったです。
――数々のプリキュアシンガーとデュエットされてきた北川さんですが、「石井あみの横で歌う北川理恵」として意識した点はありますか?
北川 あみちゃんは言葉が滑らかなんです。速い歌が絶対に得意。私はゆっくりな歌の方が得意なんですけど。多分、この曲を聴いたときにあみちゃんの声で脳内再生されたのは多分そういうことだと思います。なので、全体的に言葉を立てすぎない方が合うとは思いました。立てすぎるとちぐはぐしそうなので、私もあみちゃんの滑らかな感じを全体的に意識しよう、と家で練習していたときから考えていました。あと、高音では、ピーンと張った成分よりも少し息が混じった成分の方があみちゃんとは合うと思っていました。これがMachicoちゃんや(吉武)千颯ちゃんとだったら、息成分があまりない、「ターン!」と密度の濃い声の方が合うと思うんですけど。
――息成分が多めの声、というのは言葉通り、息を混じらせながら歌うということなのでしょうか?
北川 イメージはそれだと思います。多分、口の開け方でかなり変わると思うんですけど、私の場合、口の中を固めにしておくと硬い音が、声帯をあまり閉じすぎないようにすると柔らかい声が出る、みたいなイメージがありますね。それこそ「大好きのキズナ」のサビでは口を広めに開けて歌っていました。あみちゃんと同じメロディーラインを歌う場合はその方が混ざると思っていたので。
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