9月1日、さいたまスーパーアリーナにて“Animelo Summer Live 2024 -Stargazer-”(以下、アニサマ)のDAY3が開催。毎年夏恒例の世界最大級のアニソンフェスの最終日は、話題作発のユニット・出演者や史上初の挑戦などが止めどなくわくわくさせてくれる公演に。また、そんな輝きたちが3日間繋いだバトンに最後に込められた願いが、思わず胸を熱くしてくれる一夜にもなった。
TEXT BY 須永兼次
DAY3はVSinger特化型音楽プロダクション・RK Musicの所属シンガー2人がオープニングアクトを担当。まず、自身もかつて観客として参加していたという瀬戸乃ととは、オリジナル曲「TRUST」をスタイリッシュかつシャープなボーカルで、ハイテンポなナンバーを力強く歌ってみせる。またもうひとりのシンガー・MEDAも、夜好性チックなダンスチューンをスタイリッシュに乗りこなしながら、イントロや間奏で観客への煽りを通じて見事に熱や一体感を場内にもたらしてくれた。
OP映像を経てDAY3の幕開けを飾ったのは、『【推しの子】』に登場する人気アイドルユニット・B小町。まずは「STAR☆T☆RAIN -New Arrange Ver.-」で、背負った映像とSSAをリンクさせるようなすさまじい盛り上がりを生み出し、赤・白・黄の3色のペンライト輝く前で、キュートなダンスポップを歌い踊っていく。そしてもう1曲「サインはB -New Arrange Ver.-」で、場内のボルテージはいきなり爆上がり。噴き出し花火がステージを彩るなか観客の大きなコールは幾度も響き渡り、メンバー3人もそれぞれの個性を表現しつつ、早口になるサビなどをキュートに歌いこなしていった。
続くアイドルマスター シャイニーカラーズは、センターステージに登場したイルミネーションスターズによる「ヒカリのdestination」からパフォーマンスがスタート。3人向き合って手を重ねたり、反対に逆三角形のフォーメーションで外を向いたりしながら全方位へそのきらめきを笑顔とともに届けていくと、アルストロメリアがメインステージからピンクのペンライトの海へ「アルストロメリア」を披露。歌声にもダンスにもたまらない愛らしさを込めて、心をとらえてみせる。それに続き爽やかで青春感あふれる「いつだって僕らは」で登場したノクチルは、4人の関係性もにじむような軽快なダンスとともに歌唱。だからこそ落ちサビで向き合って歌う姿が、よりエモーショナルなものとして映る。そしてイルミネーションスターズとアルストロメリアがトロッコに乗って、アニメ1st seasonのOPテーマ「ツバサグラビティ」を観客と笑顔を交わしながら歌っていくと、大サビではそこにノクチルも合流。歌唱後には関根瞳(櫻木真乃役)が「皆さんのおかげでついにアニサマの舞台に立てました!」と述べていたが、その「ついに」という言葉の裏には、出演が予定されていた2020年のアニサマへの想いも込められていたのではないだろうか。最後に『シャニマス』はじまりの曲「Spread the Wings!!」を全員で披露したことで、4年越しの悲願を果たしていた。
さらにもう1組、『邪神ちゃんドロップキック』からのスペシャルユニット・邪神★ガールズ 生贄SUMMERも初アニサマ。ハイテンポなアニメ1期のOPテーマ「あの娘にドロップキック」を各キャラらしさあふれるセリフや歌声でにぎやかに彩っていくと、大森日雅(花園ゆりね役)の口上を導入に、鈴木愛奈(邪神ちゃん役)と花井美春(リエール役)による「CHI☆TO☆SE愛歌」での姉妹デュエットへ。民謡仕込みの高い歌唱力を生かして艶やかに歌う一方で、後ろでは祭り会場のイメージ画像のもと他のメンバーが、カップ酒(に似た入れ物に入った水)を飲んだり自撮りをしたりとやりたい放題だった。そんななか、邪神ちゃんとコラボ経験のあるニャル子(CV.阿澄佳奈)の声が突然響き、さらに盛り上がるための曲を提案。「太陽曰く燃えよカオス」を“邪神カバー”し始めると、ニャル子の狙いどおり場内は「うー!にゃー!」のコールでボルテージ爆上げ。終盤には邪神ちゃんの着ぐるみ “邪神ちゃんインパクト”から取れてしまった尻尾を鈴木と大森がくっつけるなど、まさに“カオス”そのものなステージが繰り広げられた。
蒼井翔太は、今年のテーマに結びつく曲「絶世スターゲイト」から出番スタート。スタイリッシュかつパワフルでハイトーンな歌声を響かせていき、間奏では軽快に跳ねるなどのパフォーマンスも交えてさらに場内を高めていく。そして「熱気が会場中を包んで、前半なのに吸う空気がない」と観客のボルテージの高まりに喜びをにじませると、最新曲「EVOLVE」に乗せて鋭く空間を切り裂くような歌声を一人ひとりの胸へと届けていく。歌声に加えてステージ上に立つ姿にも最後まで力強さがにじみ、さらに観客の心を燃やし高ぶらせて締めくくった。
曲明け、自然を感じる環境音流れるなかステージ上にキャンプ地が現れると、キャンパーたちの中央に座る亜咲花が「So Precious」を歌い始める。場内をクラップの音が包むゆるっとした空気のなかグルーヴィーな歌声を、力感なく広がらせていく亜咲花。この日もやはり、彼女の歌声は絶品だ。歌唱後には「自分がアニサマからいろいろなものをもらった分、今年は皆さんに夢を与える番!」と意気込みを語って、2020年のアニサマで歌う予定だった「Eternal Star」を念願の披露。風格さえ感じるほど堂々と、星の海へと伸びやかに歌声を響かせていく。派手なダンスなどなくとも、その身ひとつで大観衆を引っ張っていく姿のかっこよさが、特にこの曲にはあった。そしてもう1曲はスタンドマイクを生かしたフリも交えつつの「わやわやわー!」。序盤甘めに振った歌声も、この3曲の中では良好なアクセントとして機能。最後には高らかなフェイクも聴かせて、“アニソンシンガーの底力”を示してくれた。
続く内田雄馬はまず「Hope」を歌唱。ラウドでヘヴィなロックに合わせて、一音ごとのアタックを強めに歌って観客の心をより震わせる。さらに2サビ明けにはブレイクダンスも交えて大観衆を沸かせると、曲明けにはその熱気を喜びつつ、2曲目にはスタンドマイクを用いての「Over」の披露へ。ここでも爽やかに歌いながらサビでコールを呼び起こすなどさらに盛り上げ、会場全体の“観客=星々”へのエールを歌に乗せて打ち出していく。また1サビ前にはマイクスタンドを蹴り倒す「限界を壊す」というメタファーのようなパフォーマンスを交えるなど、最後まで聴覚と視覚の両方で心をとらえてみせた。
そして鈴木愛奈が今度はソロアーティストとして、「Apocalypse Day」で登場。特に序盤では曲のダークさに乗って妖しさを引き出していく一方で、サビではハイトーンながらも単なる力押しはせず、しかし同時に迫力も感じさせるという絶妙なボーカルワークをみせていく。さらにもう1曲歌ったのは、それとは真逆のテイストのミドルナンバー「果てのない旅」。楽曲序盤は温かみを感じさせ、サビでは透き通るようなファルセットでより美しく聴かせてくれたことで、序盤のキャラソンも含めてこの日は、彼女の歌唱表現の豊かさを改めて堪能できる1日にもなっていたように感じた。
続くZAQは「ピアノソナタ第11番 イ長調 K. 331」の独奏を導入にガラリと雰囲気を変えると、「カーストルーム」を自身の激しいピアノ演奏とともに、刺々しくパワフルな彼女ならではの歌声でステージを飾っていく。さらに「特別バージョンの最終試験を始めます」との言葉に続いて「マイナーピース」を歌い始めると、登場した制服姿のダンサーの中に、なんと東山奈央とSHIN(MADKID)が!それも全く“お客さん”ではない、力強さと切れ味の鋭さを両立させた“実力至上主義”のステージだ。中盤のダンスタイムでもシャープかつ質の高いダンスで大歓声を生むと、そのダンサーたちを従える形でZAQが、最後までパワフルな歌声を響かせていった。
そして「トゥッティ!」のイントロ流れるなか登場した北宇治カルテットは、イエローの輝きに染まった客席を前に楽しみながらも全力で歌唱し、大サビ直前には「トゥッティ!」と大きなコールを呼び起こして1曲を駆け抜けていく。歌唱後にはZAQを呼び込み、彼女が手掛けた「音色の彼方」でコラボ。そのZAQによるピアノ演奏から始まる、夕暮れ時の帰り道のような暖かさと切なさが込められたミドルポップをまっすぐ歌っていくことで、青春の1ページのような光景を描き出せていたように感じた。また、楽曲中盤からは観客が響かせるクラップを通じたセッションで1曲を作り上げたところでTRUEが登場して、「音楽しようぜー!」の雄叫びとともに北宇治カルテットと一緒に「DREAM SOLISTER」を歌唱していく。
会場一体となって1曲を作っていくなかで、抜群の晴れやかさとパワー感を持つTRUEの歌声がその中心で燦然と輝き、すさまじい盛り上がりをみせる。そしてもう1曲「ReCoda」は、歌唱後に「私にとっての『一年の詩~吹奏楽のための』」と語ったTRUEがメインボーカルをとり、高らかに歌い上げてからスタート。まるでSSAの音楽の光源になっているかのようなエネルギーにあふれた歌声を、この場全ての人へのエールとして放っていく。また落ちサビにて、黒沢ともよを通して彼女が演じる黄前久美子へと歌いかけるような姿も胸を熱くさせながら、DAY3の前半を締めくくってみせた。
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