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REVIEW&COLUMN

2024.09.05

バンドとしての深化を見事に達成した、結束バンドのミニアルバム『Re:結束バンド』レビュー

バンドとしての深化を見事に達成した、結束バンドのミニアルバム『Re:結束バンド』レビュー

劇場総集編のサブテキストとしての楽曲たち

「秒針少女」は音羽-otoha-による楽曲。結束バンドとしては珍しいアコースティックバラードだが、これも下北のバンドのお作法に則ったもので、三井は密かにアイデアとして忍ばせていたものだという。具体的な着想は喜多郁代がアコギを持っているYAMAHAコラボイラストからだそうだが、それを知らなくても像が思い浮かぶほど、長谷川の丁寧なボーカルだ。しっとりと聴いていられるAメロから、Bメロに入ると符割りやテンポが急加速して展開するが、そこでもまったくブレることがない彼女の歌唱力、そして音羽-otoha-のメロディメーカーぶりには改めて驚かされる。クロノスタシスとは、“時計の秒針を見たときに(実時間以上に)止まって見える現象”。無為に過ごしていたときの退屈で時計の針が進まないようすから、時計の針を止めたいほど結束バンドでの時間を維持したいと願う思いを描き出した。自身をモノクロや不純物と卑下したり、メンバーの名前をわかりやすく歌詞に入れ込むあたりが後藤ひとりらしいが、彼女のミクロな物語をじっくりと描き出した。長谷川はこの歌を、後藤ひとりの歌詞を読んだ喜多郁代として、後藤に伝えるように歌ったという。劇場総集編・後編は喜多と後藤の物語の側面があるが、そこを読み解く上でのサブテキストとして、この楽曲と長谷川の表現は何度も耳を傾けることになるだろう。

劇場総集編・後編のEDテーマ「Re:Re:」はTVシリーズ最終話EDテーマ「転がる岩、君に朝が降る」に続いてのASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー曲で、劇場総集編のタイトル原案にもなったものだが、EDテーマとして使うかどうかはプロデューサーから監督に委ねられ、結果採用に至った。原曲からしてギターメロを徐々に増やしていき、リフワークへと繋ぐ100秒をかけた長い長いイントロが特徴だ。編曲の三井は「転がる岩、君に朝が降る」の時とは異なり、イントロではこの曲だと悟られないようなアレンジで組み立てている。エンドロールだけが流れる劇場の暗い空間に響き渡る静謐なサウンドからドラムの連打を合図にギターが主張し出し、歌唱に向けてテンションを上げていく。結束バンドの演奏を存分に楽しめる時間だ。後藤ひとりは決して歌い上げるタイプではない。青山吉能は歌うにあたっても完全に後藤ひとりを演じ、必死に歌う様を表現する。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「Re:Re:」が収録されたのは『ソルファ』で、このアルバムはTVアニメ『鋼の錬金術師』OPテーマの「リライト」などを収録し、アルバムチャートでも2週連続1位を記録するなど、同バンドの存在を広く世に知らしめた名盤として知られているが、怒涛のスケジュールの中で作られたことで、バントとしては仕上がりに満足せず、12年後に1枚まるごとセルフリメイクするという、音楽業界でもほとんど類例がないことを行なっている。当時、スターダムを駆け上がっていく中で、実像と乖離して立ち上がる偶像。承認欲求モンスターの後藤ひとりとは真反対の存在として置かれていた後藤正文は歌詞にこう綴る。“繋ぎ合った時もあった ほどけない感情持ち寄って それが僕のすべてだった それもたった今 失くしたんだ 形だって”。青山が歌うこのパートはテンションを下げている演技でありつつも、ギリギリで歌として成立させている。バンドのサクセスのプロセスの間にはいずれこうした局面も訪れるのかもしれない。そこから彼女は“そしてどうかなくさないでよって~”“後悔してんだよって~”と、小さな反撃の声を上げる。ソロパートではギターハーモニーがありつつ、ベースでグルーヴを感じさせ、ギターヒーローらしくリフを掻き鳴らす。最後に「君じゃないとさ」と希望を残して詠嘆の声を繰り返し発し、ライブ盤のように皆が楽器を鳴らし合って終える。

本作はクリエイター陣とアーティストは放送前のそれと比べて明らかに解像度高く向き合い、各曲の仕上がりも非常に密度が高く、かつ総集編の編集内容とともに改めて理解を進める一作としてまとまった。アニメの映像展開に一旦の区切りがつき、結束バンドはこの後ツアーに出る。その後の展開はわからないが、ここまで仕上がったボーカリスト・長谷川育美や、ステージ上のバンドメンバー、作詞作曲陣らがこのまま散会してしまうのは、日本のロックシーンにおいてあまりにも惜しい。今後も軌道に乗った後に立ち塞がる壁や賛否両論を呼ぶような実験作、経験値が深く現れるような1枚など、バンドとしての生の時間経過をもう少し見ていたいと思わせる充実作だった。


●リリース情報
『Re:結束バンド』

発売中

価格:¥2,750(税込)
品番:SVWC-70668

<CD>
01. 月並みに輝け(前編オープニングテーマ)
02. 今、僕、アンダーグラウンドから(前編エンディングテーマ)
03. ドッペルゲンガー(後編オープニングテーマ)
04. 僕と三原色(「い・ろ・は・す」タイアップ楽曲)
05. 秒針少女
06. Re:Re:(後編エンディングテーマ)

●リリース情報
NEW EP
「We will」
11月6日発売

【初回仕様限定盤】
品番:SVWC-70677
価格:¥2,200(税込)
全4曲収録

・キャラクターデザイン・総作画監督けろりら描き下ろしジャケットイラスト
・ポラロイド風フォトカード封入
※収録内容や特典は予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。

●イベント情報
結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”
2024年9月8日(日)Zepp Osaka Bayside
開場 16:30 開演 17:30

2024年10月19日(土)Zepp Sapporo
開場 17:00 開演 18:00

2024年11月3日(日)Zepp Haneda(TOKYO)
開場 16:30 開演 17:30

2024年11月24日(日)Zepp Nagoya
開場 16:30 開演 17:30

2024年12月22日(日)Zepp Fukuoka
開場 16:30 開演 17:30

結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will” ライブ・ビューイング
2024年11月3日(日)17:30開演

<出演>
青山吉能、鈴代紗弓、水野朔、長谷川育美
バンド
比田井 修(Dr)、akkin(Gt)、山崎英明(Ba)、高慶“CO-K”卓史(Gt)
[東京公演のみ]比田井修(Dr)・akkin(Gt)・山崎英明(Ba)・高慶“CO-K”卓史(Gt)

会場:全国各地の映画館
映画館はこちら
https://liveviewing.jp/bocchi_rocks2024/

※開場時間は映画館によって異なります。
※大阪府では条例により、16歳未満の方は終了時間が19:00を過ぎる上映には、保護者同伴でないとご入場いただけません。
料金:¥4,000(税込/全席指定)
※3歳以上有料/3歳未満で座席をご使用の場合は有料
※プレイガイドでチケットをご購入の際は、チケット代以外に各種手数料がかかります。

一般発売(先着)
2024年10月19日(土)12:00 ~ 11月1日(金)12:00
ローソンチケット
https://l-tike.com/bocchilv/

ローソン、ミニストップ店内の端末「Loppi」
※お申込みは、おひとり様につき4枚までとなります。
※一般発売は先着順となりますので、予定枚数に達し次第受付を終了いたします。

(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス

関連リンク

結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will” ライブ・ビューイング 情報サイト
https://liveviewing.jp/bocchi_rocks2024/

『ぼっち・ざ・ろっく!』公式サイト
https://bocchi.rocks/

『ぼっち・ざ・ろっく!』公式X
https://x.com/BTR_anime

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