REPORT
2024.08.28
「学園アイドルマスター」(以下、「学マス」)初のライブツアーとなる“学園アイドルマスター DEBUT LIVE 初 TOUR -初声公演-”で長月あおい(花海咲季役)、小鹿なお(月村手毬役)、飯田ヒカル(藤田ことね役)が見せたのは、演じるアイドルの個性や感情を見事に表現したパフォーマンス。ゲームリリースからわずか3カ月で磨き上げた彼女たちの努力や成長、ツアーを通してのさらなる一歩を感じられるものだった。本稿では、8月25日開催の東京・渋谷クラブクアトロ公演夜の部を中心にレポートしつつ、“初声公演”を通して感じた彼女たちの成長についても触れていく。
TEXT BY 千葉研一
8月10日の名古屋、8月18日の梅田と巡ってきた“初声公演”も、いよいよ千秋楽となる渋谷。開演前には、BGMとして流れていた「世界一可愛い私」などの楽曲にコールが飛び、集まったプロデューサー(「アイドルマスター」ファンの呼称)たちも準備はOKだ。そして、作品の舞台である初星学園の学園長・十王邦夫(CV:大塚明夫)と、プロデュース科担任の根緒亜紗里(CV:古賀 葵)の挨拶、「開演じゃ!(開演です!)」の掛け声で“初声公演”千秋楽は幕を開けた。
オーバーチュアが流れる中、飯田、小鹿、長月がステージイン。演じるアイドルの決めポーズでスタンバイする姿は、すでに雰囲気たっぷり。そんな3人が「学マス」のテーマソングともいえる「初」を披露すると、会場のボルテージは一気に上昇していく。“初声公演”も5公演目ということで、緊張より楽しさや多幸感に溢れているのが表情や動きに表れており、プロデューサーたちの歓声を受けてさらにギアがあがる。それぞれのアイドルらしさが随所に出ているのも素晴らしいところだ。
ツアー初日の名古屋公演でもオープニングは「初」だったが、特に曲の前半はまだまだ緊張や必死さが感じられた。とはいえ、初ステージであることを考えれば完成度はすでに高く、そこから梅田公演を経ての渋谷公演では、周りを見る余裕もできて、よりみんなを巻き込む感があった。
そのまま2曲目は「Campus mode!!」。ゲーム内のエンディング的な場面で流れることもあって、名古屋公演ではイントロが流れた瞬間にどよめきも起こっていた。だが、元々はオープニングを想定して作られた曲であり、「初」と「Campus mode!!」はともに「学マス」のアイドルたちの心情をこれでもかと表現した楽曲。その2曲を続けて披露するのは、自分たちの心意気や決意を最初に示しているようで、このセットリストも頷ける。
その「Campus mode!!」は3人で歌うにはハードなほど忙しい楽曲。それをリミッター無視して出し切ると言わんばかりの全力パフォーマンスで披露し、歌詞に合わせてコミカルに困った様子を見せながら、アイドルの活き活きとした姿を感じられるステージに昇華していく3人。飯田の「もういっちょ!」の掛け声も気合い入りまくりで、プロデューサーたちを盛り上げていた。
怒涛の2曲を終えて、MCパートへ。回しは公演ごとに交代して受け持っており、渋谷公演夜の部は長月が担当。3人は会場の熱気がすごいと口を揃えつつ、「Campus mode!!」の歌詞に”邁進nowです”や”一緒に駆けていこう!”とあるように、プロデューサーたちと一緒にこの2曲でライブが始まるのがいいよね、と笑顔を浮かべていた。
そして、ここからはソロ曲ゾーンとして、各アイドルのソロ1曲目と2曲目を畳み掛けていった。まずは、長月が「Fighting My Way」を披露。「学マス」の楽曲は“アイドルへの挑戦状”をテーマに掲げていると、プロデューサーの小美野日出文や音楽プロデューサーの佐藤貴文が語っていたように、「Fighting My Way」はジャンルも難易度も挑戦的な1曲だ。長月本人もレコーディングはかなり苦労したとインタビューで語っていたが、それをゲームリリース(5月16日)から3カ月足らずの初ステージで披露するのは、ハードルが高いものだったことは想像に難くない。
だが、初披露の段階から仕上げてきた長月。5公演目となる今回はだいぶ余裕も出てきたのか、歌声の安定感もさることながら、細部のアクセントの付け方や抑揚、咲季らしい表情、腰をキュッとする動きのキレまで一段とクオリティアップしていた。サビでの小刻みなステップも小気味よく、それを15cmのヒールを履いてやるのもすごい。お気に入りのパートと語っていた終盤の“Ram pam pam para pum pum pa”をかわいく決めると、ラストの表情も引き込まれるほどかっこよかった。
感情表現でみんなを圧倒したのは、小鹿の「Luna say maybe」。この曲は上手く歌うよりも感情を優先させて歌ったと以前の公演で話していた通り、冒頭の“あのね。”から始まり、最初は心を閉ざし自分ひとりで苦しんでいる感じだったのが、心の変化に合わせて徐々に笑顔を見せていく。印象的なプロデューサーたちのクラップを受けると、そこには素の手毬としてステージを楽しむ姿が。ラスサビでは”この場所を 大切にしたいの!”と気持ちを込め、“これが、正真正銘の私だ!”と力強く歌い上げていた。
そして、飯田は「世界一可愛い私」で、タイトル通りの最高のかわいさをみんなに届けていく。開演前の“練習”とは比較にならないほどの「かわいい!!」コールが轟き、会場は興奮のるつぼに。
ちなみに、今回のライブではイヤモニを使っておらず、千秋楽でツアー最大ともいえる大ボリュームのコールを直に受けた飯田のテンションは爆上がり。ステージを重ねてきた経験から、いい意味で自由な表現も増えていて、表情も動きも楽しくて仕方ないとはしゃいでいることねの姿そのものだ。さらに、Dメロで不安な心の内を吐露するパートから、自身をもう一度鼓舞すると、“信じてくれる人がいる”の部分は、“人が”のあとに軽く溜めを作ってから「いる!!」と叫び、最高の笑顔を浮かべていた。その姿と込めた思いは、これだけ楽しい曲なのに泣けてくる瞬間でもあった。
各ソロ曲のこだわりポイントや好きなフレーズなどを語ったMCを挟み、続いてはソロ2曲目として長月が「Boom Boom Pow」、飯田が「Yellow Big Bang!」、小鹿が「アイヴイ」を披露。
「Boom Boom Pow」は咲季のかっこよさとかわいさが同居した楽曲で、相手を誘う感じを表現したと思えば、サビでは歌声もダンスもかわいさいっぱい。プロデューサーたちの顔を見て、楽しそうにぐるぐる腕を回す姿も印象的で、ステージを動き回りながら1曲目とはまた違った魅力を見せていく。
楽しさ全開の「Yellow Big Bang!」は、カメラにアピールしたりみんなを煽ったりと曲中のファンサもバッチリ。笑顔でアドレナリン全開に駆け抜ける飯田は、“こんな日を(ずっと)待ってたんだよ”や”夢じゃないんだ”の歌詞を噛みしめるように歌うと、思いをのせて一番のジャンプも決める。
そして、疾走感たっぷりの「アイヴイ」では、“手毬のファンたちが見ているかっこいい月村手毬”を意識してレコーディングしたとインタビューで語っていたが、まさに言葉通りの手毬をステージに降臨させる小鹿。入り込んだ表情や髪を振り乱す動き、背後からライトに照らされる姿も引き込まれる。ラスサビでさらに弾けて笑顔をみせると、ラストのキリッとした表情から、満足げにニヤリとするのも素敵だった。
MCでは、ソロ2曲目についてのトークに加えて、ゲーム内に登場する「初」の衣装を完全再現した今回の衣装についても説明。ことねの衣装のポケットの色が咲季の作る「スーパースタミナドリンク」みたいだと笑う場面もありつつ、好きなポイントをアピールしていた。長月が楽屋でお弁当をこぼしてしまった裏話も飛び出していたが、そこは衣装さんがちゃんときれいにしてくれたらしい。衣装さんありがとう。
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