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INTERVIEW

2024.08.28

Aimer 24thシングル「Sign」インタビュー 『狼と香辛料』新OPテーマに重ねた“孤独を抱えた者同士”への特別な思いとは?

Aimer 24thシングル「Sign」インタビュー 『狼と香辛料』新OPテーマに重ねた“孤独を抱えた者同士”への特別な思いとは?

Aimerの24thシングル「Sign」のタイトル曲は、TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』第2クールOPテーマ。オーガニックで優しいメロディ、そして、孤独を抱えた者同士の絆を描いた歌詞が1つになったミディアムチューンに仕上がっている。シングル「Sign」の制作を中心に、6月から7月にかけて行われた海外ツアーの手ごたえ、この秋から始まる全国ホールツアーの展望などを含め、今のモードをじっくりと語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

15周年に向かっていくなかで、普遍的な曲を作りたかった

――新曲「Sign」はTVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』第2クールOPテーマとなりました。まずは『狼と香辛料』に対して、どんな印象を持っているか教えてもらえますか?

Aimer 原作の小説も読ませていただいたんですが、新鮮な面白味がありました。中世を舞台にしたファンタジーなのですが、激しく戦ったり、血が流れたりする物語ではなくて、主人公の2人(若き行商人クラフト・ロレンス、狼の化身であるホロ)が一緒に旅をするなかで、色んな事件に出会って。それぞれに機転や知恵を働かせながら事件をくぐり抜けていくストーリーなんですよ。2人の仲が深まっていく様子も描かれていて、「どうなっていくのかな?」という好奇心も掻き立てられるし、「商人って、こんなふうに相手の出方を伺っているんだな」って勉強にもなって(笑)。とても興味深い作品だなと思っています。

――ホロは豊穣を司る狼の化身。Aimerさんにとってのホロの魅力は?

Aimer まず、ビジュアルがかわいいですよね。(狼の)耳と尻尾があって、フワフワして暖かそうで(笑)。でも中身は狼で、神様の使いでもあるから、すごく機転が効くし、知識もある。そのバランスがすごく素敵だなって思います。ロレンスとの仲睦まじい場面、心温まるシーンもたくさんありますが、ロレンスがタジタジになったり、ホロのおかげで危険を回避することもあって。旅のパートナーとしてもピッタリだし、“かわいい”だけがメインではないというか、守られてばかりのキャラクターじゃないのが素敵だなって思います。

「Sign」期間生産限定盤ジャケット

――現代的なヒロイン像かもしれないですね。「Sign」のゆったりと温かい雰囲気も、アニメの世界観にすごく合っていて。歌詞を書くにあたっては、『狼と香辛料』のどんなところにフォーカスしていたんですか?

Aimer 『狼と香辛料』の物語の何が魅力なのか?と考えたときに、事件をくぐり抜けるときのハラハラ感だったり、2人が旅する背景の美しさだったり、色んな要素があって。第2クールのなかで特に印象的だったのは、2人が初めて仲たがいをする場面だったんです。結果的には絆が深まるんですが、「Sign」を作るにあたって、そのシーンをフィーチャーしたいなと思って。ホロとロレンスは元々孤独だったんです。ホロの「独りぼっちはもうイヤだ」というニュアンスのセリフもあるんですが、孤独を抱えていた2人が出会ったからこそ、かけがえのないものが得られたんじゃないかなって。……それが自分自身とシンクロしたんですよね。個人的な音楽の話になってしまうんですが、音楽と出会って、歌い始めた頃は「向こうに誰もいない」というか、“ゼロ”という感覚だったんです。それが“イチ”になったときにすごく感動して。

――それは「自分の歌を聴いている人がいる」と実感した瞬間ですか?

Aimer そうですね。それがなかなかわからなかったんですよ、私は。デビューしてしばらく経っても(聴いている人がいると)信じられなかったんですけど、初めてライブをしたときに「本当にいてくれたんだ」と。そういう経験を繰り返すことで、聴いてくれる人たちの存在が刻まれて。今もそうですけど、楽曲を作るときもその人たちのことを思っているし、かけがえのない存在になっているんですよね。

――Aimerさんのファンの皆さんは、楽曲に対する思いもすごく強い印象があります。SNSなどでも、自分自身の体験を絡めて感想を書いている人がいたり。

Aimer デビュー当時から「何かしら悩みや迷いを抱えた人が多く聴いてくれてるのかな」という印象があって。ファンレターを読んでいるときもそう感じることが多かったし、孤独を抱えている2人が音楽を通して出会った感じがするというか。私にとっては「見つけてもらった」という感じがあるし、その一つ一つが当たり前じゃなくて、奇跡的だったなって。「Sign」に“似た者同士だった”という歌詞があるんですけど、アーティストとリスナーってそういうものかもしれないなと。でも、聴き方は色々ですからね。私はそういう思いで書きましたが、どんなシチュエーションに当てはめてもらってもいいと思っています。

――“想い合えた印”もそうですが、聴く人によってかなり印象が変わりそうですよね。

Aimer “消えない印”“ずっと褪せない印”もそうですけど、誰かにとってはそれが苦しいときもあるんじゃないかなって。さっきもお話ししたように「Sign」は“孤独を抱えた2人が出会う”という物語をもとにしていますが、そこに寂しさや暗さが伴っていないとウソになるだろうなと思っていたんですよ。

――そこまで意識を届かせて歌詞を書いているんですね……。「Sign」のアレンジや音像については?

Aimer 『狼と香辛料』の舞台は中世っぽさ、ヨーロッパっぽい雰囲気があって。2人が旅している場所も自然が溢れていて、麦畑が風になびいていたりして。そういう風景を想起させるようなメロディやサウンドにしたいなと思っていました。生楽器を活かすことも意識してましたね。

――メロトロンの音も入っていて、ビートルズ的なテイストもありますね。

Aimer ビートルズといえば、以前から玉井さん(玉井健二プロデューサー)と「『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』みたいな曲を作れたらいいね」という話をしていたんですよ。音楽活動15周年に向かっていくなかで、どこかで普遍的な曲を作りたいなって。「Sign」を作っていくにあたり、「このタイミングなんじゃない?」ということになったんですよね。

――これまでの道のりを振り返りながら、この先に思いを馳せる……というような?

Aimer そうですね。「ザ・ロング・アンド~」をイメージしながら制作したのは「Sign」ですけど、“これまでがあって、これからもある”という概念はこのシングル全体に言えることかもしれないです。2曲目(「Wren」)、3曲目(「月影」)はちょうど海外ツアーの前後に制作していたので、そのなかで感じたことも反映されていると思います。海外ツアーは5年ぶりだったし、しかも今回はアリーナ公演だったので、すごく大きい出来事でしたね。

次ページ:「今、生まれ変わっているような感覚」を反映した楽曲とともに、次のツアーへ

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