――最後の曲である「燈籠光柱(とうろうこうちゅう)」は、水瀬さんの楽曲ではお馴染みの栁舘周平さんの楽曲です。
水瀬 こちらは栁舘さんにお願いして書いていただきました。2~3月に開催したアコースティックライブ(「いのりまち町民集会2024 -ACOUSTIC LIVE Wonder Caravan!-」)から色々インスピレーションを受けて、音の数に囚われず少ない音でも色んな表現ができるものを作りたい、というのが始まりだったのですが……。
――いやいや、音数をすごく重ねた楽曲で全然真逆じゃないですか(笑)
水瀬 これは栁舘さんあるあるで、迷わず壺を割れるタイプの人といいますか、最初にこうかもと思っても次にはもうガラッと変わっているんですよ。「While We Walk」のときも、私たちはOKと思っていた作品が、「あの曲はもうやめました」と途中でまったく知らない曲になったことがありましたし。もちろん制作過程で「こういった雰囲気にいくので大丈夫ですか?」というような確認はあるんですけど、自主リテイクを繰り返しされる方で歌詞もどんどん変えていくから、どのタイミングで練習すればいいのかいつもドキドキするんですよ。「当日変わるとかもある!?」って。
――それはシンガーとしては悩みどころですね(笑)
水瀬 今回は確定されたものが来たので練習して臨めましたけど、当日変更となっても対応できるくらいの気持ちでいつもいるし、むしろそれを楽しみにしている自分もいるくらい、何が出るかわからないお楽しみ感が栁舘さんのサウンドにはありますね。「クリスタライズ」「スクラップアート」の時にもあったのですが、栁舘さんは楽曲の世界観や自身の想いを言葉で表現するのが難しいからと、音楽を作るにあたって参考にした絵や画像を見せてくれるんです。今回の「燈籠光柱」に関しては絵ではなかったのですが、いわゆるお祭り曲っぽい、「これが曲になるの!?」と思うような参考資料を聴かせていただいて、最終的に栁舘さんから返ってきたのがこの曲だったので、やっぱりすごいなと思いましたね。
――“お祭り”というワードのとおり、日本の祭囃子っぽいリズムからブラジルのサンバ、ニューオーリンズのセカンドラインまで、世界各国のお祭りやカーニバルのサウンドが混ざっていますよね。
水瀬 地球の裏側に行ってしまっているくらい目まぐるしく音が変わっていくんですけど、でも「燈籠光柱」というタイトルどおり、1本の光の柱はしっかりあるんですよね。お祭りと一口に言っても、みんなが同じ踊りを踊るのではなくて、お酒を飲んでいる人もいれば、ご飯を食べている人もいるし、なんなら川で遊んでいる人もいる。サウンドからその雑多な世界の情景が浮かぶのは、やっぱり“YD”だと思いました。
――“YD”?
水瀬 楽曲のファイル名がいつも“YD”なので、私はいつも栁舘さんのことを“YD”と呼んでいるんですよ。栁舘さんにはもう公認していただいています(笑)。
――なるほど(笑)。灯篭ってあまり身近な存在ではないと思いますが、水瀬さんはどのようなイメージを持たれていますか?
水瀬 弔う気持ちや願いを込めて灯篭を川に流すお祭りが各地で行われていて、吹けば消えてしまうような脆さも含めて、そこに哀愁が感じられるのが灯篭の素敵な部分で。その光がだんだん遠くなっていくところに切なさと美しさが感じられて、本当に雅な空間だと思います。
――そういった雰囲気をどういうふうに歌で表現させていったのでしょうか?
水瀬 「heart bookmark」とはボーカルのイメージがガラッと変わる曲になっていて、少しやりきれない思いを抱えながらも色んな障害を乗り越えて進んでいくというところに美学がある。そんなかっこよさを意識して歌いました。間違いなく10周年に近いポジションをこの曲は担ってくれるはずなので、改めてファンの皆さんと私たちの絆が深くなる1曲 になると思います。栁舘さんは今までの活動を振り返った時に本人にとって意味のある言葉にしたほうが良いとおっしゃっていて、例えばDメロの“振り返れば静かに旗めく”の部分を“旗めく”に変えてくださったのも栁舘さんの自主リテイクだったんですよ。
――水瀬さんのラジオ番組「MELODY FLAG」に掛けているんですね。
水瀬 ほかにも“旅を続けた”という言葉は(1stアルバム収録の)「旅の途中」という曲にかかっていたりします。今までの自分を形作ってくれたワードをふんだんに使いながら新しさも入れていく形は、振り返れば頑張ってきた過去の自分がいて、前を向けば未来の私が待っているというふうに思えるので、これから先も楽しいことが待っているのだと確信できる1曲になりました。
――そういえば“私たちの祈りを”の部分は、ストレートに水瀬さんの名前とのダブルミーニングになっていますよね。
水瀬 栁舘さん曰く、“祈り”というフレーズは彼の中では簡単には使わないように決めていたそうなんです。今回使ったことに対して「良かったのだろうか?」とおっしゃっていたんですけど、私は意味のあるフレーズとして“祈り”という単語が入ったことで、“私の歌”として確固たるものになってくれたと思っています。最後にラララと歌うパートも含めて大団円感もあるので、この部分はファンの方にも歌ってほしいですね。
――実際に意識されたかはわかりませんが、ファンと一緒に大合唱できるパートや大団円感を含めて、Elements Gardenの藤永龍太郎さん提供による「僕らは今」にも通じるものというか対抗意識を感じたりもしました。
水瀬 栁舘さんと藤永さんは、私のライブに来てくれたときに私が目の前にいながら2人だけでライブの感想を話し合ってしまうくらいすごく仲良しで(笑)。かつ、お互い意識し合っている関係でもあって、そういったお互いのリスペクトがありながらお互いのサウンドを自分たちが塗り替えていくぞと切磋琢磨し合う関係性ってすごく良いなと思います。それだけ一生懸命楽曲作りに魂を込めてくれている分、それに応える歌を歌わなきゃいけないので、私も一緒にスキルアップしていけたらいいなと思いますね。ちなみに藤永さんは「燈籠光柱」でギターを弾いているので、藤永さんファンの皆さんもここで藤永さん成分を堪能してもらえたら嬉しいです。
――そんなハーフアルバムを引っ提げて、9月からは“Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark”もスタートします。昨年の「SCRAP ART」ツアーはかなり新しい挑戦を盛り込んだツアーになっていましたが、今回はどんなライブにしようと考えていらっしゃいますか?
水瀬 「SCRAP ART」ツアーはこちらから一方的に見せるライブで、状況を把握するのに時間が欲しいと思うことも皆さんあったと思うんですけど、今回は「heart bookmark」という“心の栞”のコンセプトに忠実な温かいライブ空間を作りたいなと思っています。ブックマークという言葉どおり、皆さんがまた帰ってきたくなるようなライブ空間になってくれたらベストですし、一体感やライブに来たからこそ体験できることも大切にしたいです。今日だけじゃなく私たちはずっとここで歌っているんだよと示せるような、温かくて距離が近い空間を築けるように現在鋭意制作中です。
――ライブでそういった関係性を水瀬さん自身も作りたいという気持ちが強いってことですよね。
水瀬 やっぱり広い会場になるとどうしても見えやすい/見えづらいという部分に囚われてしまいがちなんですけど、心の距離の部分で満足していただけるようなライブができないとダメだと思うので、寂しい思いをさせないためにも、色々工夫しながら温かい空間にできたらいいなと思っています。
――その日はきっとファンにとっての「heart bookmark」になるでしょうね。
水瀬 そうですね。便利な言葉ですね、ブックマーク(笑)。
●リリース情報
オリジナルハーフアルバム
『heart bookmark』
発売中
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥3,300(税込)
品番:KICS-94166
・初回限定盤特典:特製BOX、別冊40Pフォトブック
・封入特典:特製トレカ
【通常盤(CD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:KICS-4166
・初回封入特典:特製トレカ
<CD>
01. heart bookmark
作詞:岩里祐穂 作曲:武田将弥 編曲:白戸佑輔
02. フラーグム
作詞:カノエラナ 作曲・編曲:白戸佑輔
03. スクラップアート
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
04. アイオライト
作詞・作曲:志村真白 編曲:EFFY
05. ほしとね、
作詞・作曲・編曲:櫻澤ヒカル
06. グラデーション
作詞:やぎぬまかな 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)
07. 燈籠光柱
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
<Blu-ray>
Music Video 4曲
01.アイオライト
02.スクラップアート
03.フラーグム
04.heart bookmark
●ライブ情報
水瀬いのり 2024年ライブツアー「Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark」
9月15日(日)【兵庫】ワールド記念ホール
9月21日(土)【広島】上野学園ホール
10月5日(土)【愛知】名古屋国際会議場 センチュリーホール
10月12日(土)【福岡】福岡サンパレス ホテル&ホール
10月19日(土)【北海道】カナモトホール(札幌市民ホール)
11月2日(土)【千葉】LaLa arena TOKYO-BAY
11月3日(日)【千葉】LaLa arena TOKYO-BAY
特設サイトはこちら
https://www.inoriminase.com/special/2024/hb/
●作品情報
TVアニメ『アクロトリップ』
2024年10月よりTOKYO MX、BS日テレにて放送開始
FODにて最速見放題配信
【キャスト】
伊達地図子:伊藤美来
クロマ:島﨑信長
ベリーブロッサム=乃苺佳寿:水瀬いのり
マシロウ: 河西健吾
大溝芭隆:森久保祥太郎
心亜:花井美春
月:沢城千春
【スタッフ】
原作:「アクロトリップ」佐和田米(集英社 りぼんマスコットコミックス刊)
監督:小竹歩
シリーズ構成:猪爪慎一
キャラクターデザイン:川村敏江
プロップデザイン:久保川絵梨子
美術デザイン:藤瀬智康
美術監督:川崎美和
色彩設計:長谷川美穂
撮影監督:木田健斗
編集:柳圭介
音響監督:田中亮
音響制作:Ai Addiction
音楽:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
音楽制作:キングレコード
アニメーション制作:Voil
オープニング主題歌:「フラーグム」 水瀬いのり
エンディング主題歌:「リバーシブルベイベー」 カノエラナ
<イントロダクション>
みつけた、熱くなれるもの(魔法少女)をー
祖父のもとを訪れた地図子は、街を守る魔法少女・ベリーブロッサムと出会い、たちまち夢中に。 しかし、敵対する悪の組織「フォッサマグナ」総帥・クロマの攻撃があまりにもパッとせず、2人の戦いは見応えゼロ。もっと、ベリーの活躍を愛でたい地図子はモヤモヤを募らせていく・・・。
「魔法少女をもっと輝かせたい・・・強いてくれ、苦戦を!」
その欲望(?)が、内気な少女を悪の路に導いてゆく―。
©佐和田米/集英社・「アクロトリップ」製作委員会
水瀬いのりオフィシャルサイト
https://www.inoriminase.com/
水瀬いのりオフィシャルX
https://twitter.com/inoriminase
水瀬いのりオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCYBwKaLwCGY7k3auR_FLanA/
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