REPORT
2024.08.26
CMBによる、初日と同じプログラムのバンドインストを経てのライブ後半戦は、茅原が客席から登場して「純白サンクチュアリィ」を披露。初日と同様にこの日のハイライトの1つになったこの楽曲だが、特に印象深かったのが、茅原ではなく観客の姿だった。普段の観客はステージに向かって、その中心にいる茅原に向けて自身の感情を顔にして声にして伝えているのだが、この曲で観客はステージに背を向けて茅原を見ることで、彼ら彼女らがどんな表情で茅原を見つめているのかがありありとわかるのだ。特に終盤で茅原に「歌って」と促されて、サビのメロディを観客が喜びに満ちた表情で歌う光景は何よりも美しく、普段知ることのできないステージ側から見た景色を伝えてくれるようで、観客を含めた茅原実里のライブの一体感というものを知ることができた。
そこから「Tomorrow’s chance」のイントロが鳴らされると、客席の歓喜の表情はより際立ち、客席を通ってステージへと向かう茅原に大歓声を送る。そして和のテイストが光るロックナンバー「FOOL THE WORLD」で会場を紫色に染め上げ、MCを挟んでエモーショナルな歌唱を聴かせる「境界の彼方」、壮大なスケール感の「ZONE//ALONE」とこの20年間で生まれた代表曲たちを次々と披露。そしてそこから手を緩めることなく「We are stars!」「Paradise Lost」へと続いていった。この一連の構成がとにかくタフで、観客の盛り上がりもさることながら、ステージ上の茅原もほとんど休むことなく歌い続けていく。キャリアを重ねながらもあえてアグレッシブに振り切った構成は素晴らしいの一言に尽きるし、そのなかで聴かせる高揚感に満ちた歌声は、まさしくライブでしか味わうことのできないカタルシスがあった。
そんな壮絶なパートを走り切ったあと、ボルテージも頂点に達した観客は、暗転したステージ上に歓声を送り続ける。初日はこのあと明転してMCへと続くのだが、暗闇のなかで茅原はしばらく微動だにしない。それを察知した観客からの声が大きくなるなかで彼女の胸に去来したものは、タフなステージを駆け抜けた達成感か、20年というキャリアを経た感慨か、ライブという今を生きている実感か、それともあるいは――。いずれにせよ、明転したあとの彼女が発した言葉は初日と似た内容のものであったが、そこには初日にはない感情の揺れが感じられた。時折言葉を詰まらせながら20年を振り返るなかで、「何度もやめようと思いました」という言葉に続く「何度もやってて良かったと思いました」という言葉には、掛け値なしのリアルな感情が込められていた。「ただ、ただ前を向いて歩いていれば、未来を見て歩いていれば、今日みたいな、こんなに……こんなに素敵な日がやってくるかもしれません」という言葉は、歌手活動を休止した3年間を過ごした彼女だから発することができるものだ。そんな思いを強く言葉に伝えたあとに披露された「みちしるべ」「Voyager train」は、初日以上にエモーショナルな色合いを強くしていた。それは茅原も涙で詰まってしまう瞬間もあったからではあるが、一方で2018年に発表された「みちしるべ」と2008年に発表された「Voyager train」という、それぞれ当時の彼女を描いた歌詞が巡り巡って2024年の今に、より実感が込められて歌われたことは当時とはまた違った感動があった。“Historical Parade”を通して茅原実里の音楽と歌に触れた答えはここにあった。彼女と私たちと同じように、曲たちもまた生き続けているのだ。
アンコールは初日と同じく「夏を忘れたら」でチルに始まり、河口湖ステラシアター館長の野沢藤司をステージに招き、改めてこの会場と茅原実里の結びつきを実感する。そしてこの日は河口湖ステラシアターで育ててきた楽曲である「purest note ~あたたかい音」を会場全体でシンガロングし、最後には「Freedom Dreamer」で満開の花火と共に、奇跡のような2日間の幕を閉じたのだった。
茅原実里の20年とは、自身が語る通り紆余曲折のキャリアだった。なかでも歌手活動を休止した期間は、このあと振り返ってみても大きな出来事になるだろう。しかしそれを乗り越えて、富士河口湖町との絆が消えることなく、またこうして河口湖ステラシアターに戻ってきたこと――それを茅原は“奇跡”と語った。そしてこの日をその先の“Animelo Summer Live”や年末に河口湖で開催を予定しているアコースティックライブという未来へと繋げていった。
ライブ本編最後に「人生はパレードだと思う」と語った茅原は、ライブを終えたあとに「パレードは終わらない!」とも口にした。アルバム『Parade』の最後に収録された「everlasting…」もまた同じ言葉で結ばれている。“パレードは終わらない 永遠に”。その言葉を信じる思いはあのときよりずっと強く、茅原実里と観客の心に深く刻み込まれているはずだ。
<SET LIST>
Day 1 2024.8.3
SE. 透明パークにて
01. Contact
02. 詩人の旅
03. 美歌爛漫ノ宴ニテ
04. Defection
05. 書きかけのDestiny
06. Lush march!! 〜 Best mark smile 〜 Lush march!!
07. SELECT?
08. 雪、無音、窓辺にて。
09. a・b・y
CMB Inst.(ハレ晴レユカイ 〜 桜笑み君想う 〜 My Treasure)
10. 純白サンクチュアリィ
11. 君がくれたあの日
12. 会いたかった空
13. 向かい風に打たれながら
14. TERMINATED
15. We are stars!
16. Paradise Lost
17. みちしるべ
18. Voyager train Encore
19. 夏を忘れたら
20. Sunshine flower
21. Freedom Dreamer
Day 2 2024.8.4
SE. 透明パークにて
01. D-Formation
02. Dream Wonder Formation
03. 美歌爛漫ノ宴ニテ
04. SELF PRODUCER
05. Perfect energy
06. Lush march!! 〜 FEEL YOUR FLAG 〜 Lush march!!
07. SELECT?
08. 雪、無音、窓辺にて。
09. Re:Contact
CMB Inst(ハレ晴レユカイ 〜 桜笑み君想う 〜 My Treasure)
10. 純白サンクチュアリィ
11. Tomorrow’s chance
12. FOOL THE WORLD
13. 境界の彼方
14. ZONE//ALONE
15. We are stars!
16. Paradise Lost
17. みちしるべ
18. Voyager train Encore
19. 夏を忘れたら
20. purest note 〜あたたかい音
21. Freedom Dreamer
●ライブ情報
茅原実里 20th Anniversary Acoustic Concert
2024年12月20日〜22日
出演:茅原実里 大嵜慶子
河口湖円形ホールにて
茅原実里オフィシャルサイト
https://minorichihara.com/
茅原実里オフィシャルX
https://x.com/minori_contact
茅原実里オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/@minori_chihara
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