リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2024.08.25

秋田ひろむ(amazarashi)、キタニタツヤとの初タッグ曲を収録!ニューシングル「ブラックボックス」で見せるLiSAの新たな表情

秋田ひろむ(amazarashi)、キタニタツヤとの初タッグ曲を収録!ニューシングル「ブラックボックス」で見せるLiSAの新たな表情

6月から約6年ぶりのアジアツアーを完走し、7月後半には10年ぶりのアメリカ公演を終え、9月からは全国8会場、すべてが2days公演という大規模アリーナツアー“LiSA LiVE Smile Always~COCKTAiL PARTY~ [SWEET&SOUR]”を控えているLiSA。そんな彼女のニューシングル「ブラックボックス」は、amazarashi・秋田ひろむと初めてタッグを組んだ、TVアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』第2クールOPテーマ。そしてカップリング曲ではキタニタツヤとのコラボレーションも。個性と才能溢れるクリエイターとの出会いが、彼女に与えたものとは?

INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香

『NieR:Automata』に寄り添うためには必要不可欠だった秋田ひろむの曲

――ニューシングル「ブラックボックス」は、TVアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』第2クールOPテーマ。amazarashiの秋田ひろむさんとの初めてのコラボ曲になりました。LiSAさんはアニメとしての『NieR:Automata』という作品に、どんな印象を持っていました?

LiSA ゲーム版で観ていた『NieR:Automata』よりも、より深くみんなの気持ちが迫ってきました。やっぱりアニメになると、セリフもあるし、キャラクターたちの表情が細かく描かれていたり、物語だけで想像していたところが明確になって、彼女たちの心情に触れられるお話になっていますよね。SFですけど、元々のお話も私にはリアルに感じられて。機械生命体が制御しきれないところとか、制御しようとしている人間の気持ちとか……すごく私たちの生活の中というか、社会の中にもある感情だなって思うんです。

――今の世界の少し先に、起きないとは言えない未来ですよね。

LiSA ロサンゼルスに行ったときに「COCO」ちゃんっていう、ご飯を運ぶロボットが街を歩いているのを見て驚いたんですよ。機械と人間が共存する時代はもう来ているんだなって。人間がいなくても機械が生き残っていく時代は遠くないかも?もと思うと、『NieR:Automata』の世界がもっと身近にも思えますね。『NieR:Automata Ver1.1a』も第2クールでは、どんどんダークなお話になっていますけど。

――その作品に寄り添うために、そもそも秋田さんに楽曲をお願いしようと思ったのはなぜでした?

LiSA amazarashiさんのことは、もちろん以前から存じ上げていたし、秋田さんが作られる楽曲、作品にもすごく尊敬がありました。そして『NieR:Automata Ver1.1a』のオープニングを、というお話をいただいたとき、『NieR:Automata』の世界観を一番ご存じの方はどなただろう?と考えたら、秋田さんしかいないと思いました。

――確かに『NieR:Automata Ver1.1a』第1クールでもEDテーマの「アンチノミー」を歌われていますし。

LiSA はい。それ以前にも、amazarashiさんはアニメ化される前、ゲーム版のときから「命にふさわしい」というコラボ作品を創られていて、作品とのお付き合いがずっとある方。私が『NieR:Automata』という作品に寄り添い、想いを届けるには、ぜひ秋田さんに曲を書いていただきたかったんです。

――すごく意外性のあるコラボだと思いました。LiSAさんとamazarashiが交わるのは。

LiSA 私もそう思います(笑)。amazarashiさんがやられている音楽は、本当に独自の世界を貫いていらっしゃるから、LiSAとは混じらないものだと思っていたんです。梶浦由記さんとはまた違う方向で、私がやってきた音楽とはちょっと遠い感覚があって。なので以前だったら、お願いするのをためらったと思うんです。でも、今のLiSAはキャリアも積んだし、色々な方とご一緒でしたことで経験値も積めた。今のLiSAならご相談できるな、というタイミングでもありました。

――アニメも第1クールEDテーマの「アンチノミー」から第2クールOPテーマの「ブラックボックス」へと、秋田さんの楽曲を通じてしっかりとリンクしましたしね。

LiSA 今回「ブラックボックス」を受け取ったときにも思いましたが、秋田さんの書かれる楽曲は、自分の中にある孤独や、ピュアな気持ちゆえの絶望……人の奥底の感情にすごく寄り添ってくれていて。さっき、LiSAの音楽とは遠い感覚があったと言いましたけど、それはあくまで表面的な部分が大きいと思うんです。amazarashiさんの楽曲を聴くと、自分の中にもこういう感情は絶対あるなと納得できるんですよ。過去のLiSAは、それを表現できる楽器ではなかったから、やったことがなかった。でも自分の中にある感情を表現するには、私もそういう世界を歌いたいし、『NieR:Automata』という作品の中では、やるべきだと思ったんです。amazarashiさんの曲を聴くにつれて、なおさら秋田さんとご一緒させてもらいたいと思いました。

LiSAの「ブラックボックス」は黒いレースを纏った悲しみ

――そうして秋田さんから受け取った「ブラックボックス」。LiSAさんが歌ってきたこれまでのOPテーマに比べて、ゆったりとした曲調はとても珍しい。新鮮な感覚になりました。

LiSA そうなんです。デモを秋田さんの仮歌でいただいたとき、この曲をどういうふうに私という楽器を使って表現するのがいいんだろう?と、考えたんですね。この楽曲こそ、秋田さんの世界観があった上で成り立っている印象があったから。でも、いざ自分で歌ってみたら、すごく自分にフィットしていることに気づいたんです。秋田さんが歌う「ブラックボックス」が、分厚い、真っ黒な漆黒だとすると……私が歌う「ブラックボックス」はレースを纏っているような漆黒感になる。黒いレースで悲しみを表現する楽曲にできるなと確信しました。

――歌詞の世界にも、深い絶望が横たわっているように思えましたが、LiSAさんはどう感じました?

LiSA 秋田さんと直接お話はしていなかったんですが、ご自身がすごく作品を読み解いた上で、ご自分のこととして書かれているんだろうなと、言葉だったりメロディだったりから、すごく感じましたね。おそらく、秋田さんの中での人の存在とか、思想というものが、『NieR:Automata』が訴えているものと遠いところにはいないと思うんですよ。その上で、作品の大切なワードが散りばめられている。ヨルハ機体の彼女たちの駆動システム=心臓がブラックボックスだったり、人間が離れた場所にいるイメージがスペースシップという言葉に表れていたり。時空が離れている感覚や距離を感じながらも、引力で引き合っていたり。言葉選びの中の世界観は、すごく『NieR:Automata』に寄っているのに、リアルな感情が描かれているところが、秋田さんだからこそですね。

――レコーディングをしてみて、さらに想いも深まったでしょうね。

LiSA 私はこのブラックボックスを、人の感情として受け取っているんです。心の中の見えないもの、人の心の中の触れられない悲しみ。それに寄り添いたいとか、知りたいとか……そういう感情の表現を、このブラックボックスという言葉にしているんだろうなと思います。だから私は、その人間対人間の心に対して歌っていって……とても苦しくなりました。

――それくらい、この曲の世界に入り込めた。

LiSA はい。それは秋田さんご自身の、嘘のない気持ちが、この曲にも素直に入っているからだと思うんですね。私が今まで歌わせてもらっているアニメソングを作ってくださっている、例えば田淵(智也)先輩だったり、他の方も皆さんそうなんですけど、自分の気持ちを素直に歌いつつ、作品に寄り添う愛情の掛け方が、曲作りのテクニックとしても表れている。秋田さんもそれが素晴らしくて、さすがだな!と思いました。

――歌詞の1つ1つの言葉も深い「ブラックボックス」ですが、LiSAさんが特に思い入れのあるフレーズは?

LiSA 全部好きなんですけど……やっぱりサビですね。1番と2番で“知らなかった 知りたかった君の笑顔、湧き出す場所”というフレーズが、ラストだけ“君の涙、湧き出す場所”に変わっているんですよ。それだけで、笑顔が嘘だったってわかるじゃないですか。そういう本当のリアルな心に触れたかったという気持ちを表す上で、笑顔と涙を並べて前と最後に置いているところが、とてもニクイです。さらに、その“涙”に行き着く前に、最後のサビのワンフレーズめが、1番と2番では“壊してくれ その腕で 何度でも名を呼んで”になっていたのが、“殺してくれ その腕で”になっている。私もよく、悲しすぎることや辛すぎることがあると“あーもう、いっそ殺して!”って思うことがあるので、ここを歌うときは本当に苦しいです。

――さらに気持ちが乗ってしまった。

LiSA そうなんですよ。そんなサビの最後のフレーズが“あらゆる悲しみは星を目指す”なのも……辛いですよね。私って、すごく悲しいこと、辛いことがあっても、その瞬間には理解が追いつかなくて、いつもあとから気づくんですよね。その場ですぐに泣き崩れるとかできないから、なおさらこの歌詞が響きました。秋田さん、すごいです!MVも長野県の国立天文台の野辺山宇宙電波観測所というところをお借りして撮影したんですけど、私の頭の上にある黒い物体が、ブラックボックス。過去と未来の景色が入り混じった、幻想的な映像にしていただいたので、いろんなストーリーを想像してもらえたら嬉しいです。

ライブでみんなとどう遊ぶ?を形にした「MAKE A MiRACLE」

――2曲目に収録されている「MAKE A MiRACLE」は、とてもライブ感のあるロックナンバーになっています。こちらはLiSAさんの作詞で、作曲がLiSAさんのライブでサポートギタリストとしても大活躍のPABLO a.k.a. WTF!?さん。こちらは、7月からボートレース2024 TVCMタイアップソングにも起用されていますね。

LiSA はい。PABLOさんの曲は以前から書いていただいていたんですけど、世に出すタイミングをずっと温めていたんです。そんなときに今回のボートレースのCMのお話をいただいて、もうぴったりじゃない?ということで、ボートレースをイメージしながら、歌詞を考えていきました。でも、仮歌詞の段階から出だしの“どんどんスピードを上げて”っていう、レースにふさわしいフレーズはあったんですよ。ご縁を感じますよね。

――確かに“熱いエンジンを唸らせ 波⾵起こそうぜ”や“回転数上昇”“どんどん進路を変えて”や“ライバルがいるくらいが燃えあがっちゃうものよ”というフレーズも、ボートレースの光景が浮かんできますよね。

LiSA まだボートレース、やったことないんですけどね(苦笑)。私、賭け事って得意じゃないから、今までタイミングもなくて。でも、ボートレースのことを調べてみるうちに、一度はレース場に行ってみたいなって思いました。水しぶきを切って走るのが、気持ちよさそうですよね。

――「MAKE A MiRACLE」はとてもライブ映えしそうな曲ですが、PABLOさんとはどんなやり取りが?

LiSA まさに、ライブでみんなと一緒に楽しめる楽曲がいいなとリクエストしたんです。なかでもギターのリフにはこだわってもらっていて。PABLOさんからも、お客さんと一緒に音楽でどう遊べばいいかな?というアイディアを借りつつ、この曲になりました。本当は、ライブでも水をかけたり、降らしたりしたいんですけどね!

――確かに、みんなが一体となって楽しめる要素が詰まっていますよね。そしてこの曲はMVもユニークで。

LiSA そう、懐かしいゲーム機も出てくるし、ゲーム画面もめちゃめちゃこだわって作っていただいたので、ゲーム好きの方にも、ぜひ観てもらいたいです!

次のページ:キタニタツヤとロックしたい!とオファーした「洗脳」

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP