REPORT
2024.08.22
7月27日・28日に東京・武蔵野の森総合スポーツプラザでMyGO!!!!!が開催した“MyGO!!!!! 6th LIVE「見つけた景色、たずさえて」”は、バンドにとって間違いなく1つの到達点と言えるライブだった。過去最大級の規模の会場、初めての2DAYS単独公演、これまでのバンドの歩みを集大成したようなセットリスト――色んな意味で記念碑的であり、同時に今後のさらなる飛躍に向けてのメルクマールとなった本ライブのうち、DAY2公演のレポートをお届けする。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 福岡諒祠(GEKKO)、JOKEI TAKAHASHI、ハタサトシ、池上夢貢
ライブは2日間ともに、燈(Vo./CV:羊宮妃那)のモノローグをフィーチャーしたオープニング映像からスタート。吹きすさぶ風の音と足音が響き渡るなか「どれくらい進んだだろう」とつぶやく燈。「知らない間にすり減っていた 靴底にも気づかない 僕は少し上を向いて 歩くことができてたのかな」と、最新Singleの表題曲「端程山(パノラマ)」の歌詞の一節を、自分自身に問いかけるように紡いでいく。「この世界は、波」「音も空気の波だから」。そんな言葉に続けて、「それならいっそ任せてしまおう 本能のまま 鼓動に、旋律に、身を預けて」と「処救生(こきゅう)」の歌詞を連想させる思いが語られると、勇ましいギターリフがかき鳴らされてついにライブが開幕する。DAY2の幕開けを飾った楽曲は「処救生」だ。
DAY1の1曲目は、MyGO!!!!!の最初のオリジナル楽曲「迷星叫(まよいうた)」だったので、前日とはまったく違った景色での立ち上がり。しかもステージと客席の間には紗幕が張られており、照明によって薄い布地越しにバンドの姿が浮かび上がる形だ。「処救生」はDAY1公演でライブ初披露されたばかりの楽曲だが、観客はバンドと音楽へのひたむきな思いが綴られたその楽曲の熱にあてられて、早くも熱く盛り上がる。さらに燈と楽奈(Gt./CV:青木陽菜)のツインボーカルによる「無路矢(のろし)」、MyGO!!!!!屈指のダンサブルな4つ打ちロック「影色舞(シルエットダンス)」と人気曲を立て続け、冒頭からかっ飛ばしていく。特に「無路矢」は4th LIVEでの初披露のときと同様に、紗幕にリリックビデオを投影するスタイルでのパフォーマンスとあって、その当時からのバンドの飛躍を思うとさらにグッとくる。
そしてこの日最初のMCへ。MyGO!!!!!のライブでは、アンコールのMCを除き、キャストは各担当キャラクターをその身に宿してパフォーマンスを行うので、MCもキャラクターとしての会話劇が軸となる。愛音(Gt./CV:立石 凛)のお天気トークから雨の話に話題が移り、燈が「雨の日は、みんなそれぞれ、何か抱えているものがあるんだと思う。複雑な気持ちとか、割り切れない思いとか。でも、それがあるから生きているんだと思う」と語ると、そよ(Ba./CV:小日向美香)が「そうだね。みんなそれぞれ抱えているものがあって、それが今を作っていると考えると、受け入れられるのかもね」と返答。迷いながら進んできた彼女たちらしい会話がライブの中でも展開される。これが“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)が同期するバンド”をコンセプトに掲げたMyGO!!!!!のライブの醍醐味だ。
そんなMCに続いて歌われたのは、まさに雨の景色をモチーフにした楽曲「輪符雨(リフレイン)」。愛音と楽奈によるゴリッとしたツインギター、立希(Dr./CV:林 鼓子)が叩き出す力強いリズム、そよの見せ場と言える憂いと湿り気を帯びたベースライン。紗幕に映し出されたリリックや傘に降り注ぐ雨などの映像演出が楽曲の輪郭をよりたしかなものにするなか、燈はときに空を仰ぎ見ながらひたむきに雨の歌を歌う。続く「潜在表明」でのポエトリーリーディングのパートもいつも以上に感情を露わにしていた印象で、特に後半の“辛いって 苦しいって こみ上げるのに”で始まる箇所での心の叫びのような歌声は、悲痛さを感じさせるほどの迫力があった。
「潜在表明」の最後のギターの音が残り火を放つなか、燈が静かに「回層浮(かいそう)」と告げて次の曲へ。燈のポエトリーリーディングやバンドメンバーによるコーラスパートが押しては返す波のように雪崩れ込んでくるこの楽曲。燈の“僕を離さない”という絶叫、間奏における楽奈の緊急時を告げるサイレンのような高音速弾きなど、緊迫感に満ちたパフォーマンスで観る者を圧倒して、ライブの前半戦を駆け抜けた。
幕間映像は、再び燈のモノローグ。荒野をあてもなくさ迷うかのごとき映像が、いまだゴールの見えないまま、それでも“バンド”という一縷の希望にすがって前に進む彼女の心象風景のように映る。「何千回夜を越えただろう」「いつも独りだった夜明け」「出口を探して溢れただけの言葉が」「涙を流して生まれた言葉が 今 震える君に届くまで」。徐々に力強くなっていく燈の言葉。そして最後はしっかりと意志のこもった声で「迷子でもいい、迷子でも進め」と告げると、まるで暗い夜が明けるように紗幕が開き、新衣装を纏ったMyGO!!!!!の5人が我々のもとに直接姿を現して、始まりの歌「迷星叫」を奏で始める。夜空にまたたく星のように、バンドという関係性だけが放つ特別な輝きに包まれた5人が、暗い夜の道しるべとなって、迷える人々の行く道の先を照らし出す。燈の歌声は、彼女たちの音楽は、いつだって迷子の側にあるのだ。1st LIVEの頃から数えると何十回と演奏しているであろう「迷星叫」だが、毎回その輝きを更新しているように思う。それはこの日のラスト、こぶしを突き上げ、それを胸元に置いて、満足げに正面を向く燈の表情からも感じられた。
燈は近年、外部の音楽フェスなどにも出演する機会が増えてきたなかで、観客を煽る言葉を放つなど、過去のライブでは見られなかったアクションを行うようになったが、続いて披露された激情パンクチューン「歌いましょう鳴らしましょう」では、ステージを上手から下手まで移動しながら歌唱。その後ろを追うように弾きながら前進する楽奈、間奏の愛音と楽奈がステージ中央で背中を預け合いながら弾き、その後ろでそよや立希が嬉しそうに演奏する場面など、音楽を心から楽しんでいる5人の姿に、楽しさ以上の何かが込み上げてきて、自然と目頭が熱くなる。きっとそれが“音楽”や“人生”ってもんなのだろう。
MCで愛音が「ここからは後半戦ですけど、皆さんまだまだ盛り上がっていけますかー?」と呼び掛け、メンバーそれぞれコール&レスポンスを行ってボルテージをさらに高めると、愛音の「よーし、今日もあの曲で盛り上がっていきましょう!りっきー(立希)よろしく!」との言葉に応えて、ドラムのタフなイントロが印象的な「砂寸奏(さすらい)」へ。バンドの骨太なアンサンブルと燈のアグレッシブなボーカルのみならず、サビに“Uh Wow wow”と大合唱できるパートを備えたこの楽曲は、初披露となった今年のライブハウスツアー“MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2024「彷徨する渇望」”を経て、いまやライブでの必殺ナンバーに育っている。
そこから彼女たちの迷い続けた日々が最高のメロディに結晶した、疾走感溢れるロックチューン「迷路日々(メロディ)」に繋げ、曲間で5人が輪になって見つめ合い、その絆の深さを音でもステージ上の振る舞いでも示すと、MyGO!!!!!の持ち曲の中でもとりわけ開放感に満ちた「碧天伴走」へ。燈だけでなく、ギターの2人もステージの両サイドまでめいっぱい使ったパフォーマンスで聴き手の心を鼓舞する。
その後のMCで、今までのなかで印象に残っているライブについて語り合う5人。愛音は青空のもとで大好きな「碧天伴走」を披露できた野外ステージ、そよは「潜在表明」「影色舞」を初披露してバンドの成長を感じた3rd LIVE、楽奈は「たくさんギターを弾けたし、美味しいものたくさん食べた」というZEPP TOURを挙げるなか、立希は「5人で最初から演奏できて、嬉しかったから……」という理由で2nd LIVEと答えていたのがエモポイントだった(1st LIVEでは、立希はアンコールを含む終盤3曲のみの参加だったため、最初から5人揃って演奏できたのは2nd LIVEが初めてだった)。
燈は「全部大事で、選べなくて……」と前置きしつつ、「今回のワンマンライブは、今までより大きな会場で。バンドとしても、みんなと一緒に辿り着けた、山のてっぺんみたいなものなんだと思う。今、目の前に広がっている景色は、きっと一人じゃ見られなかったものだし、想像もできなかったものだと思う」と、今回のライブへの思いについて吐露する。「1st LIVEから、今までと同じ時間が過ぎたとき、また、同じ感動に出会えるように。見つけた景色も、今、ちゃんとある感情も、一緒に進んでいきたい」「例え、おどおどでも、ぐらぐらでも、今日、この煌めく空も、いつか、ちゃんと届けられるように」。そう語ると、心の内にある熱い想いを解き放つようなロックナンバー「名無声(なもなき)」で会場の気持ちを一体にしていく。
同曲のラスト、燈が「みんなみたいにはなれなくて。何者にもなれなくて。でも、それでも、だからこそうたいたい!僕らになれるうたを!」と叫ぶと、MyGO!!!!!の5人の絆を繋ぎ止めた歌「詩超絆(うたことば)」に突入する。ひたむきに、一生懸命に、すがるような声で“ゆるされるなら僕は あきらめたくない”“それでも届けたい言葉”と訴える燈。TVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の物語では主にそよに向けられたその言葉も、このライブ空間においては、より大きな意味を持って響く。ラスト、燈が前方の客席に向けて差し伸べる優しい手に、救われた気持ちになったのは自分だけではなかったはずだ。
その迫真のパフォーマンスに演奏後も客席が興奮でざわめくなか、メンバーたちが一言ずつ言葉を紡いでいく。「遠まわりしてきた、そのぶんだけ」(立希)、「見つけた景色を」(そよ)、「たずさえながら」(楽奈)、「ふりかえりながら」(愛音)、「今日までの僕らを、見つめていよう」(燈)。そしてライブ本編を締め括る楽曲として歌われたのが、それらの言葉を歌詞に含む彼女たちの最新Single曲「端程山」。たくましさとスケール感に満ちた本楽曲は、今まで以上に外側に開けた印象が強く、燈も優しく晴れやかな表情で歌っていく。数千人の観客に囲まれた目の前に広がる景色、遠回りしながら歩んできた先に辿り着いた広大なパノラマを、しっかりと噛み締めるように歌い演奏する5人。まだまだ続く未来に向けて上向きな気持ちにさせてくれる、最高のフィナーレだった。
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