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INTERVIEW

2024.08.08

研鑽し続けた10年の歩みが生んだ、さらなる攻勢を予感させる一作――大橋彩香、Nemo Album『変革Delight』リリースインタビュー

研鑽し続けた10年の歩みが生んだ、さらなる攻勢を予感させる一作――大橋彩香、Nemo Album『変革Delight』リリースインタビュー

声優アーティスト・大橋彩香が8月6日に、『変革Delight』を日本人アーティスト初となるNemo Albumとしてリリース。自身のアーティストデビュー10周年当日の発売となる記念すべき本作は、初レギュラー作の主題歌を担当したFLOWがタイトルチューンを、「みんなDEどーもくん!」で4年以上共演し続けている大原ゆい子が「美味しいセレナーデ」を提供した、まさにこれまでの歩みを反映したメモリアルな一作となった。今回はそんな新曲2曲の話題を中心に、これまでの活動も振り返りながら、大橋にたっぷり語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次

「変革Delight」は、“戦いの年”に向けた強く鋭い姿が浮かぶ1曲

――新譜についてお聞きする前に、同じくアーティストデビュー10周年を記念して開催されたアジアツアー“Reflection”についてお聞かせください。ツアーを回るなかで、この10年間の活動の積み重ねが生きたように感じる瞬間はありましたか?

大橋彩香 メンタルも体力も、色々な経験を通じてたくましくなったんだなぁって感じました。というのも私、今までツアーのことを正直「しんどいもの」だと思って避けてきたところがあるんですよ。2017年にやった最初のツアー“OVERSTEP!!”がしんどすぎて、体調管理が上手くいかなかったイメージがあったので、今回も最初はちょっと不安だったんです。でも“Reflection”では、全然体調崩さなくて。

――同時期に、並行して“魂のフリーライブツアー”も行なわれていたのにもかかわらず?

大橋 そうなんです。ツアー自体も海外の会場も含まれていたりと割とカロリー高めだったのに、終始元気に回れていたんですよ。それは、特にメンタルがたくましくなったからかもしれないですね。私、メンタルから体調を崩すタイプなので。

――メンタル面では、7年前からどんな変化があったように思われていますか?

大橋 前よりもあまり失敗を気にしなくなりました。昔は失敗することが恐ろしすぎて、ミスったらその後の曲全部楽しくなくなっちゃうくらいで(笑)。だからミスしたら「どうしよう……」と萎縮してしまって、負の連鎖が起こる……という悪循環がよく起きていたんです。でも最近では、言い方は悪いかもしれないですけど、「ミスもライブの醍醐味」みたいに割り切れるようになったというか。もちろんミスがないほうがいいんですけど、起きてしまったときにも上手く復活できるようになってきました。おかげで最近は「アレがダメだった……」じゃなくて、「あー、楽しかった!」という気持ちでライブを終われるようにもなっています。

――そんなツアーを経てリリースされるNemo Album『変革Delight』は、まったく表情の異なる2曲が収録されてはいますが、どちらも大橋さんの歩みを感じさせる作家陣によるものです。

大橋 どちらもすごくお世話になった方たちに制作していただきまして……今まで積み重ねてきたご縁あっての2曲だと思いますし、色んな曲を歌ってきたからこそ出せる今の表現を詰め込ませていただきました。

――ではまずタイトルチューン「変革Delight」についてお聞きしていきます。この曲をFLOWさんに依頼することになった、きっかけはどのようなものだったのでしょう?

大橋 10周年曲制作のタイミングで、イベントなどでFLOWさんと共演する機会がすごく増えまして。そのとき「いつか楽曲を作っていただけたら嬉しいです」みたいなお話もよくしていたので「……今なんじゃない?」と思って(笑)、お願いさせていただきました。

――FLOWさんは、声優としてのデビュー初期から非常に縁深い存在ですよね。

大橋 そうなんです。私の初レギュラー作品『エウレカセブンAO』や、私が女性主人公ボイスを担当している『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』の主題歌を担当されていますし、キャラクターとして曲をカバーさせていただいたこともあって……そんなふうにお世話になる機会の多かった方々に、大事な節目の楽曲を担当していただけて嬉しかったです。

――楽曲自体については、どのような希望を出されたんでしょうか?

大橋 10周年イヤーは結構「戦いの年だな」と思っているので、「『10周年を機にまたスタートラインに立って、革命を起こしてやろう!』みたいな、かっこ良くて強い楽曲がいいです!」とお願いさせていただいて。あとは「ライブ映えして、初見の人でも乗れるような曲だと嬉しいです」というお話もさせていただきました。そうしたら、もう「まさに!」みたいな曲をいただけて……打ち合わせも15分くらいで終わったのに(笑)。

――そんなに早く(笑)。

大橋 打ち合わせはリモートで、KOHSHIさんとTAKEさんが参加してくださったんですけど、さっきみたいな希望をお伝えしたらすぐに「わかりました!」ってなって(笑)。デモもかなり早く上げていただいたんですよ。しかも3曲も。

――その短時間の打ち合わせから3曲も!?

大橋 はい。その中から、大橋サイドで満場一致で選ばせていただいたのが「変革Delight」の元になった曲だったんです。そこからも歌詞とかすべての工程が早くて……FLOWさんの仕事人ぶりを感じました。

――曲を受け取ったとき、特にどんな部分が印象的でしたか?

大橋 私、転調のある曲が元々好きなんですけど、特にお願いしていなかったのに最後に転調してキーが高くなるので「やったぁ!」と思いました(笑)。それに、間奏があまりなかったり1番と2番で構成が若干違っていたりと、展開が目まぐるしくて飽きさせない曲だなぁとも感じましたね。あとは……苦手なラップが入っていたのは予想外で(笑)。でも色んなラップを歌ってきたなかで、ラップには作られる方のクセがすごく表れるのを感じていたので、「わー!FLOWさんのラップだぁ!」と嬉しくもなりました。

――そのラップ部分には、今回どのように取り組まれたのでしょうか。

大橋 私がラップをやらせていただくときって、例えば「Be My Friend!!!」みたいに漢字があることが多くて。「変革Delight」も四字熟語みたいな漢字がすごく多かったんです(笑)。だから今回もろれつも上手く回らなかったし、どう乗っていけばいいのかの感覚を掴むのがすごく難しくて。ボイトレのときにこの曲を持っていって、ラップのところだけかなり練習したんですよ。

――特訓のようなこともされたうえで、レコーディングに臨まれた。

大橋 はい。どうしても職業柄、言葉をきれいに言うクセがあるので、海外アーティストが日本語を歌ったときのラップのような感じにすると結構おしゃれになるのかなと思ったりして。なので、Kanata Okajimaさんに昔教わった「日本語をローマ字で書いて、『R』を英語の発音みたいにする」という方法を、今回も実践してみたりしました。

――それ以外の部分については、実際歌ってどんな感覚がありましたか?

大橋 これはすごく意外だったんですけど、キーの高さの割に疲労度の高さを感じたんです。最近は自分の中でキーを低く設定する傾向があるんですけど、気持ちのところで「前に前に」となる……戦場に出るようなイメージというか(笑)。そんな強い気持ちを持った歌詞になっているので、気持ちの面ですごくエネルギーや熱を引き出してくれる楽曲なんだなというのはすごく感じました。

――歌声にいつも以上の強さや鋭さがあって、牙のようなものさえ感じていたので、お話を聞いてすごく納得してしまいました。

大橋 レコーディングに臨む意識は普段と大きな違いはなかったんですけど、もしかしたら「10周年曲」という称号みたいなものが無意識的に自分をピリッとさせたのかもしれませんし、やっぱりどこか覚悟を決めていたのかもしれないですね。あとはFLOWさんが作ってくださったからか、女性が歌う曲というよりはちょっと男性が歌う曲に寄っているような感じもあったので、「これから喧嘩しに行く」みたいな(笑)、擦れたところが見えるような表現になったのかな?という気もします。

――レコーディングには、FLOWさんはいらっしゃったんですか?

大橋 TAKEさんにディレクションしていただきました。ディレクションしていただくのは初めてだったので最初はすごく緊張していたんですけど、それを吹き飛ばしてくれるくらいアゲアゲなレコーディングで、楽しかったです(笑)。しかもテイクを組むのがとにかく早くて!普段は全部録ってからテイクを組んでいくんですけど、TAKEさんは3テイクくらい録ったところで頭の中で「このテイク組もう」と決まっているみたいで、録りながら組んじゃうんです。そういうところも含めて改めて「どこまでも仕事人だなぁ」とも感じましたし、そのスタイルがせっかちな私にもすごく合っていて、ノーストレスでレコーディングできました。

――そんなこの曲のMVは、どんなコンセプトを元に制作されたのでしょうか。

大橋 まず「スケールの大きい画を撮りたい」という企画書をいただいたんですよね。草原のような開けた場所で、旗や布をたなびかせている……みたいな。自分自身もそういう「革命」のようなイメージは持っていたので、すごくいい映像が撮れたと思っています。

――引きの画の壮大さも魅力でしたが、1サビ明けの旗を持って岩肌に足をかけているバックショットも非常にかっこ良かったです。

大橋 ジャンヌ・ダルクみたいなものをイメージしていたので(笑)、それを連想させるようなものもできて良かったです。ちょっと曇天だったのも、曲に合っていますしね。

――ただ、後半の劇場のシーンも含めて表情的にはシリアス一辺倒という感じでもないんですよね。

大橋 そうですね。私がシリアス苦手っていうのも少しあるんですけど(笑)。ちょっと楽しんでいる感じとかも込めながら撮影させていただきました。

――また、旗の色合いとチェック柄は「YES!!」を連想するものなので、デビューと今とを繋ぐ曲になったイメージもありました。

大橋 たしかに。あのときの衣装はピンクチェックでしたし……そういえば、「Give Me Five!!!!! ~Thanks my family♡~」のときも衣装の色が赤だったので、「周年曲は、赤なのかな?」っていう気もしますね(笑)。それに、『Reflection』の「Don’t need color」ではKanataさんが歌詞の中で私を赤に当てはめてくれていたので、もしかしたら最近はオーラが赤になってるのかもしれないです。自覚は全然ないんですけど(笑)。

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