FLOWが立ち上げた、ロックバンドが創るアニソンロックフェス“FLOW THE FESTIVAL 2024”が6月29日・30日の2日にわたりぴあアリーナMMにて開催された。20周年イヤーの集大成を彩った2日間を余すことなくレポートする。
TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY MASANORI FUJIKAWA 、Taichi Nishimaki
※2日目のレポートはこちら
https://www.lisani.jp/0000262390/3/?show_more=1
開場前のぴあアリーナMMの周辺はすでに多くの観客が集まっていた。物販の長い行列だけでなく、FLOWメンバーのコラボメニューが食べられる隣接カフェ・レストランにも同じく行列が見える。屋内型とはいえ、集うファンの誰もが夏フェスに行くようなスタイルで、フェスに参加することを楽しみにしていたことがうかがえた。一方、会場には「ついに開催できるかと思うとワクワクして眠れなかった」と笑顔を見せるTAKEの姿。リハーサルを見守り、まだ観客のいないフロアへと視線を走らせる。ついに彼らが目指した1つの夢が、ここに叶う。ロックバンドが創るアニソンロックフェス。それはまさしく彼らにしかできない偉業となったのだった。
すり鉢状のアリーナのどの席からもよく見えるステージに、“FLOW THE FESTIVAL 2024”の“最初の音”が響いたのは午前11時のこと。welcome actとしてそこに立ったのはfrom ARGONAVISスペシャルバンドだ。ボーイズバンドをテーマとしたメディアミックスプロジェクトであるコンテンツ『from ARGONAVIS』からARGONAVISのボーカル・七星 蓮役の伊藤昌弘、ギター・五稜結人役の日向大輔、GYROAXIAのボーカル・旭 那由多役の小笠原 仁、ベース・曙 涼役の秋谷啓斗(この日はキーボードを演奏)、ドラム・界川深幸役の宮内告典の5人が登場。2バンド混成スペシャルバンドを“FLOW THE FESTIVAL 2024”のために結成し、フェス会場の空気をライブへ向かって温める。同コンテンツにはTAKEが11曲も楽曲提供をしているという。「アルバムが出来そう!」と楽しそうな伊藤と小笠原。プロジェクトにとってTAKEは「お父さんみたいな存在」なのだそう。レコーディングでいいテイクを出すと「視界良好!」と言ってくれる、頼れるプロデューサーであるそんなTAKEの書き下ろした「BLACK&WHITE」を響かせる5人。スピード感あるロックンロールで疾走感を残したままアコースティックならではの情感あるサウンドとなって会場に広がっていくと、いつしかオーディエンスは立ち上がり、ペンライトを振っていた。またFLOWの「風ノ唄」のカバーを歌った際には、フロアが緑色の光に染まり、「ウォオ~」とオーディエンスの歌声が重なる。その景色へ視線を向けると嬉しそうにした5人が印象的だった。会場の合唱で彩られたラストの「ゴールライン」まで5曲を歌ったfrom ARGONAVISプロジェクトは見事に会場の空気を熱し、フェスの開幕へと熱気を運んだ。
“FLOW THE FESTIVAL 2024”の幕開けの声を上げたのはルルーシュ・ランペルージ、否、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、いやゼロ!言わずと知れたアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』の主人公だ。「また会ったな、諸君。私の名はゼロ!本日“FLOW THE FESTIVAL 2024”に足を運んでいただき、感謝する!僭越ながら、私がこの祭典の開幕宣言をさせていただく!」。響き渡る声に会場からは歓声が沸く。途中、玉城真一郎からメールが届くも「どうせろくでもない」と無視する場面もあったが「ニッポンの文化を支えてきたアニメーション、そしてそれを彩る主題歌アーティストたち。その祭典ともなれば、我々黒の騎士団も応援しないわけにはいかないだろう」と言う。「盛り上がる準備はできているか!?」と会場の声援を求めたコール&レスポンスのあとに「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる!この祭典を全力で盛り上げ、そしてすべての楽曲、すべてのアーティストを心ゆくまで楽しみ尽くすのだ!」とギアスを掛けていった。
アーティストの名前をコールするのもルルーシュ。その声に導かれて、フェス本編最初に登場したのはGRANRODEO。10年来の盟友である彼らの登場に会場は興奮を隠さない。FLOWの創るアニソンンロックフェスの鬨(とき)の声だ、とばかりに1曲目の「Can Do」から大歓声に包まれ、フロアの熱は一気に急上昇。ステージ後方の巨大スクリーンにはアニメ『黒子のバスケ』の映像が流れる。2012年の作品ながら、その一音一音、一声一声が当時の記憶を蘇らせるよう。駆け上がるようなギターリフと疾風のメロディに「オイ!オイ!」と大歓声が沸き、フロアが震撼する。続いたのはアニメ『恋する天使アンジェリーク ~かがやきの明日~』のOPテーマ「Infinite Love」。広がりあるサウンドで眩いほどのポジティブな想いが満ちる言葉を、フロアの1人1人に届けるように歌い上げるKISHOW。そんな歌に導かれるように手を挙げて応えるオーディエンスの姿がそこにはあった。「この栄えある“FLOW THE FESTIVAL”のトップバッターを仰せつかりましたGRANRODEOです!」とKISHOW。「さっき楽屋で、TAKEちゃんがたっぷりプレッシャーをかけてくれましたからね。“このフェスの成功はGRANRODEOの2人にかかっていますから”と。ちょっとビビっていたんですけれども、皆さんが温かいものですから、いいフェスになりそうだなと思っています」と言うと、e-ZUKAも「なんだったら今日、俺ら、トリもやってもいいよ?」と会場の反応への感想を滲ませる。そんな爆笑のMCのあとにはオリエンタルな中国楽器の旋律が鳴り出し、TVアニメ『最遊記RELOAD -ZEROLIN-』のOP主題歌「カミモホトケモ」。悠久のときを思わせる雄壮なメロディが会場を三蔵たちが旅する場所へと連れていくようだった。空間を切るように響くエレクトロサウンド。その音だけでオーディエンスが声を上げる。TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第1シーズンのOP主題歌としてもファンに愛されてきたラウドなエレクトロロック「TRASH CANDY」が加速するようにビートを刻めば、アリーナがライブハウスの様相を見せる。轟く楽曲を全身で楽しむオーディエンスの姿。ステージの端から端へと歩みながら満員の客席を煽るような歌声に、ギターの旋律が熱を帯びていった。息つく隙を与えず続いたのはメロディックでパワー漲る疾風のロックンロール「愛のwarrior」。「オイ!オイ!」と声を上げ、拳を突き上げヒートアップする会場をさらに、さらに、とKISHOWもハイトーンで煽る。「横浜、いけるかー?まだ昼すぎだけど!」とコール&レスポンスから始まったのはTVアニメ『NEEDLESS』 のOPテーマ「modern strange cowboy」。Yokohama cowboyたちが騒ぎ、声を出し、天井知らずな熱気を生みポジティブ唱と共に軽快なロックサウンドがぴあアリーナMMを1つにしていくとラストはTVアニメ『黒子のバスケ』のOPテーマ「The other self」へ。伸びやかな高音と軽快なギターの旋律がどこまでも昇っていくとフロアは歌声を重ねていく。トップバッター、渾身のステージは、始まりからステージとオーディエンスの全力の熱のぶつけ合いとなった時間だった。
サブステージで繰り広げられたクリエイターズトークを経て、ライブステージに2番手で登場したKEYTALK。音出しのリハーサルでは確かめるようなベースの音。この日、休養しているベースの首藤義勝に代わり、ベースを弾きながら歌うボーカル&ギターの寺中友将のつま弾く音だ。「皆さん、その調子で楽しんでいきましょう!よろしくお願いしまーす!」と寺中。そしてリハーサルを終えた彼らはステージを降りた。こうした音出しの様子が見られるのもフェスならではだ。会場の照明が落とされ、出演バンドを紹介する映像が流れると、フロアは改めて大歓声に包まれる。その登場SEとして響いたのはなんとFLOWの「贈る言葉」!そしてステージで準備が整うと鳴り出したのは「MONSTER DANCE」のイントロ。彼らの名を一気に知らしめた人気のナンバーが到来したことで、会場のオーディエンスは一斉に手を高く上げて歓喜の想いを見せて応える。ダンサブルなビートに観客の足は床を蹴り上げ、ジャンプでビートを掴むと、寺中もギターの小野武正も、そしてもちろん後方でリズムを叩き出すドラムの八木優樹も、笑顔を見せた。駆け上がるようなギターリフで畳みかける「パラレル」では「オイ!!オイ!!」と声が上がり、そのビートにステップを踏むように楽しむフロア。赤いペンライトで染まる景色は、ロックバンドにとっては珍しい光景だろう。「最高ですね。みんなの楽しもうという熱がこちらに届いています!本当に僕らも楽しいです!」と寺中。「記念すべき初日。僕らも呼んでいただいたからには、盛り上げる大きな柱となれるように、明日、そして来年にも続いていけるようなフェスにしていけたらと思います」と笑むとフロアから温かな歓声が沸き、ライブは「コースター」へ。軽快でメロディアスなダンスロックに続いたのは「MURASAKI」だ。ステージに紫の照明が当たり、ゆっくりと音がつま弾かれたイントロから勢いを加速させながら抒情的なダンスロックが広がっていくと、フロアのペンライトが赤に加えて青、白、と総じて紫へと繋がるようなカラーへと変わっていく。都会的なサウンド感のあるミディアムなギターロック「blue moon light」のあとのMCでは、出演を直訴したという小野が「レギュラーを狙っていきたい!」と意気込みを見せ、コール&レスポンスでTAKEの口癖「なんでだよ!」を会場全体で叫び、心を1つにすると、TVアニメ『境界のRINNE』のOPテーマ「セツナユメミシ」でKEYTALKアニソン祭りの開幕を彩る。切なさも滲むドラマチックな和ロックの1曲が、あの世でもこの世でもない輪廻の輪へとぴあアリーナMMを誘っていく。「僕らの数少ないアニソン大放出ですが、僕らの大好きな『ドラゴンボール』に少しでも関われた、あのときの感覚を少し思い出しながら」と前置きをして歌い出したのはTVアニメ『ドラゴンボール超』EDテーマ「スターリングスター」だ。物語の余韻を感じさせるような柔らかなナンバーにフロアからクラップが重なった。最後はTVアニメ『境界のRINNE』の映像と共にKEYTALK初めてのアニメタイアップ曲となった「桜花爛漫」へ。爽快で広がりあるサウンドに軽やかなボーカルが乗ると、会場の歌声もステージに向かって放たれる。クラップと共にオーディエンスとステージが一体となったライブだった。
サブステージでのREAL AKIBA BOYZのキレあるダンスのあとは、SPYAIRが登場。最初の一音から大歓声に――そう、『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』の主題歌「現状ディストラクション」が空間を一気に侵食していったのだ。拳を上げ、共に歌って応えるオーディエンスひしめくフロアを見渡し、ベースのMOMIKENもギターのUZも満足気な表情を見せた。「ようこそ。SPYAIRの“FLOW THE FESTIVAL”へ!」とYOSUKE。飛び跳ねろ!とばかりにドラムのKENTAがビートを刻むと劇場版『銀魂 THE FINAL』の主題歌「轍~wadachi~」ではYOSUKEの「ジャンプ!」の声に、一斉にジャンプするオーディエンスが会場を揺らす。間髪入れずにドラムのカウントが入り、ギターの旋律が響いた瞬間、今から歌う曲がわかる。それほどに愛されてきた1曲「アイム・ア・ビリーバー」がフロアを席捲する。「うぁあああ!」と歓喜の歓声が会場を包むポジティブな想いに満ちたこの曲は、TVアニメ『ハイキュー!! セカンドシーズン』のOPテーマ。クラップに迎えられたナンバーを彩るフロアの光は赤だけでなくオレンジも揺れ、まるで烏野高校と音駒を応援しているかのようだった。オーディエンスがひと際大きな歓声を起こしたのは「Last Moment」。TVアニメ『BLEACH』のEDテーマであり、SPYAIRにとっては初のアニメタイアップ曲だったナンバーだ。どこか切なさが滲み、戦士の休息のようなメロウな曲もまた作品のファンに長きに渡って愛されてきた1曲。「ぴあアリーナの皆さん、元気ですね?この場に呼んでいただけて光栄です。最後まで精一杯、120%で演奏をして帰るので、皆さんも今日1日を全力で楽しんでください」とYOSUKEが告げると会場から歓声が沸く。そしてSPYAIRの“今”が詰まる「RE-BIRTH」では力強く真っ直ぐな歌が「SPYAIRここにあり!」と会場に刻み付けた。さらにTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のOPテーマ「RAGE OF DUST」ではYOSUKEのロングシャウトにオーディエンスの太く層の厚い歓声が重なり、大きな歌声の塊となっていく。「一緒に歌いましょう!」という声に続いて大合唱となったのはTVアニメ『ハイキュー!!』のOPテーマ「イマジネーション」だ。彼らと『ハイキュー!!』を結び付けた爽快なロックンロール。躍動するビートと軽やかに疾走する歌声には同じく歌声を上げ、間奏では「オイ!オイ!」とリズムを刻み、会場が一体となって作り上げる曲となっていた。そのままライブは「サムライハート(Some Like It Hot!!)」へ。「Hey!Hey!サムライハート!」とフロアから湧く声。TVアニメ『銀魂’』のEDテーマであるこの曲は、ぴあアリーナMMで大きな歌の塊となった。「皆さん、アニソン好きですか?僕たちもアニソンが大好きです。これからもSPYAIR、日本のアニメに誇りを持って、これからも活動していきます」と語りかけるYOSUKE。ラストチューンはSPYAIRと『ハイキュー!!』の絆が生んだ「オレンジ」。映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の主題歌であり、好調のバレーボール日本代表の背中を押してきた1曲でもある応援歌。オレンジに染まった会場にエモーショナルでありながらドラマに満ちた展開を持った珠玉ロックンロールが広がっていく。大合唱と共に紡いだ神セットリストと呼べるステージだった。
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