REPORT
2024.07.25
2024年に入ってのfripSideは、昨年大晦日の名古屋でのカウントダウンライブを経て、1月には東京でのワンマンと、naoと南條愛乃という歴代ボーカリストを迎えての20周年フェス、3月にはPhase 3初となる“ANIMAX MUSIX”出演、4月から6月にかけては全国ライブハウスツアー第3弾“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024 supported by animelo”と、実に精力的なライブ活動を行ってきた。そして6月29日に神奈川でのツアーを終えたあと、“Special Day”と称した神奈川・KT Zepp Yokohamaでのワンマン“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024 [Special Day]”が開催された。先のツアーでは初日の沖縄公演を除いて中心人物である八木沼悟志が出演せず、ボーカリストの上杉真央、阿部寿世とバンドによるセットとなったわけだが(ツアー最終の神奈川公演は八木沼が体調不良により欠場)、この日のKT Zepp Yokohama公演もまた、上杉・阿部中心となるステージとなった。fripSide Phase 3をより強固なトライアングルとするために、八木沼がボーカリスト2人の成長の場として用意したツアーの集大成としても注目が集まったこの日、上杉と阿部という若きシンガーは、fripSideという名を背負いながらどんなステージを見せたのか――。
TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ
2022年4月の始動以降、若い2人のボーカリストを迎えてからのfripSide Phase 3において、八木沼悟志はたびたび2人の成長を促す発言をしてきた。そして時にはライブに自身が参加しないことで、2人にフロントマンとして引っ張る場というものを提示してきた。そしてこのたび、KT Zepp Yokohamaを2人で回す――いわばソールドアウトにするというテーマを設けた。そんな、ボーカリストの成長と進化の集大成ともいえるこの日、蓋を開けてみるとフロアは2階席まで多くの観客が詰めかける満員状態となった。そこには八木沼が20年以上作り上げてきたfripSideへの信頼感があるのはもちろんだが、同時に上杉・阿部の2人によるPhase 3への期待感あるいは支持そのものが光景として現れたのだと感じさせる。
まさに、ツアーの集大成、そして2年間で蓄積したものを披露する場としてこのうえない環境が用意されたなか、いよいよステージが幕を開ける。クールなインストゥルメンタルが流れるなかバックバンドが入場、そして上杉・阿部が入場してステージ中央に背中合わせに立ち、「Invisible Wings」と共にこの日のセットがスタート。
阿部の熱っぽい歌い出しからしてこの日を前にした高いテンションを感じさせるものだったが、対するクールな上杉の歌唱も含めて、今年1月のZepp Haneda(TOKYO)で観た「Invisible Wings」よりも落ち着きが見られる。この曲はPhase 3らしいシンメトリカルなダンスも見ものだが、それもしっかり揃っているの同時に、どこか以前よりも余裕が感じられるものだった。また、それを受けての観客のリアクションもより熱量高く、かつきちっと揃った歓声とコールが聴かれたのもまた印象的だった。まさに観客も含めて仕上がっているというか、このツアーを経てライブにおける一体感というものがしっかりと醸成されたのだと感じさせる。
1曲目から熱狂を生み出したあとは、そのまま間を置かずに「fermata ~Akkord:fortissimo~」へと雪崩れ込む。ここでのボーカリスト2人も隙のない歌唱を聴かせ、Bメロに入るところで阿部がそっと「せーの」と観客の警報を促すなど、演奏を含めて熱っぽさはあるなかでも落ち着きを見せたパフォーマンスを続ける。そしてその後は再び間を置かずに「black bullet」へ。最初のブロックからクライマックスのような人気曲の連発に、赤く染まった客席はよりラウドな歓声を響かせる。聞くところによると、この日のセットリストは上杉・阿部の発案によるものだったそうだが、こうしたハイスパートな序盤のなかにも安定感のあるパフォーマンスを見せるあたり、成長に裏打ちされた自信が透けて見える。
最初のMCでは「楽しすぎてニヤニヤが止まらなくて、今日は大変なことになりそうですけど」と阿部が言うと、「今日は“Special Day”なのでスペシャルな思い出をみんなで作りたいと思います!」と堂々とした宣言。そして続けて披露されたのは、ポップなサウンドが聴かれる「trust in you」。強靭な最初のブロックから一転して、観客もピンクのペンライトを大きく振って楽しんでいる様子。しかしそこから「Newage」へと突入すると、今度はクールな様相が会場を支配する。4人のダンサーを迎えて上杉も阿部も大人びた表情と歌唱を聴かせながら、息の合ったダンスを披露した。そしてそんな空気のなかで「more than you know」へという鉄板の流れへと続いていく。歴代の名曲を含めて数々の見せ場のある現在のfripSideのライブだが、なかでも「Newage」と「more than you know」は彼女たちの新しい魅力が存分に出た、今やライブに欠かすことのできない重要なピースだ。八木一美のドラムがリードするドスンと腰に来る低音を強調したバンド演奏も盤石で、終盤にはベースの山田潤一によるアグレッシブなソロパートが聴かれる。その間、中央のボーカリストとダンサーはピタリと動きを止め、ベースソロと楽曲のエンディングと共にキメのポーズをつけるというコントラストのあるステージングも素晴らしい。上杉もその後のMCで「この2曲は、これからも私たちの代表するような曲として歌っていきたい」とその手ごたえを語っていた。続く「Forget-me-not」でも2人の豊かなボーカルを存分に堪能することができた。1コーラス目は阿部がメインで上杉がハーモニーを乗せ、バンドも入った2コーラス目は逆に上杉メインで阿部のハモ、そして最後にはそれが融合するという、Phase 3ならではのパフォーマンスが聴かれる。
まずは彼女の代名詞ともいえる「with a smile」で、キュートな魅力を存分に見せる。これまではステージに1人でスキルフルなダンスを笑顔で見せてきたが、この日はダンサー2人も加わって息ぴったりなダンスを披露。続く「Trust in my soul」では一転してハードなサウンドのなか、ここでも激しいダンスと歌唱を聴かせ、異なるアプローチの楽曲でそれぞれの魅力をしっかり打ち出していった。
続いては阿部と代わって上杉のソロパートへ。ここでは彼女のキリッとした歌唱を堪能できるブロックで、観客に向けて「おいで」と呟いて始まった「Distance to starry sky」では、その歌声の見事さはもちろんのこと、観客を掌握するような堂々とした表情が深く印象に残った。そのあとの「Reach for the light」では、そうした圧倒的強者感のなかにも見える真っ直ぐな彼女の気持ちが見え隠れする歌詞も含めて、エモーショナルなパフォーマンスが展開されていく。そして阿部がステージに戻ったあとの「Two souls -towards the truth-」は、普段はイントロの「せーの!」の警報を八木沼が担当するところを2人がしっかりと継承、観客の歓声をしっかりと引き出していた。
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