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INTERVIEW

2024.07.24

桃井はるこ提供の新曲も収録!上坂すみれ、アーティストデビュー10周年イヤーの締め括りとなるベストアルバム『SUMIRE CATALOG』を機に振り返る、アーティスト・上坂すみれの10年。

桃井はるこ提供の新曲も収録!上坂すみれ、アーティストデビュー10周年イヤーの締め括りとなるベストアルバム『SUMIRE CATALOG』を機に振り返る、アーティスト・上坂すみれの10年。

アーティストデビュー10周年を迎えた上坂すみれが、アニバーサリーのラストに送り出すのがこのベストアルバム『SUMIRE CATALOG』である。DISC1にはシングルの表題曲を収録、DISC2には上坂すみれのアーティスト性が強く出た楽曲を本人がセレクト、「聴いてからライブに来たら知っている曲がたくさん」(上坂)という全30曲入り2枚組ベストアルバムだ。桃井はるこが提供した「ファーストピリオド.」ほか1曲の新曲と、小鳥遊 空役で歌ったキャラクターソング「ソライロ」のセルフカバーに関するメイキングを出発点に、上坂すみれがアーティストとして進化を遂げてきた道のりを自ら振り返る。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

自分の原点である存在から周年に対する最大の祝辞

――まずは、ベストアルバムに収録する新曲が、どのようなコンセプトからスタートを切ったのか教えてもらえますか?

上坂すみれ 新曲を2つと、セルフカバーを1つ(収録)、ということだったので、セルフカバーには初期のライブでたくさん歌った曲で人生初レコーディング曲でもある「ソライロ」がいいかと思いました。新曲のうち、リード曲については、自分の声優を目指す原点となった桃井(はるこ)さんに楽曲をお願いできたら嬉しいという想いから。もう1曲は、ベストアルバムでしかできないような、私と同志の内輪ネタがいっぱい入っていて、かつ盛り上がる曲にしました。

――桃井さんに対して、上坂さんが憧れた部分というところも改めて教えてもらえますか?

上坂 最初は声がかわいいというところから入ったんですけど、コスプレをしたり、楽器も弾いたり歌ったり、というマルチな魅力を持っていて、二次元のキャラクターが三次元に現れたような感覚がありました。でも、ご自分の考えをすごくしっかりと持っていらっしゃっていて、そこにすごく魅力を感じるようにもなりましたね。桃井さんはアキバがまだマイナーの頃から、自分が好きな街だということを主張されていて、「アキバに行くやつは変」という風潮にも流されず、自分の好きなことを信じきる強さが本当にかっこ良かったです。ご自身の内面では色々な葛藤があるのかもしれないですけど、まだパソコン通信くらいしかなかった時代からパソコンを使って世界に向けて自分の意見を発信して、しかもクリエイター然とするのではなく、素直に自分が好きなものを見てほしい気持ちで動いている桃井さんを見ていて、自信がなくて自我も持てなかった学生時代の自分は、その生き様に憧れていました。

――「ファーストピリオド.」を受け取ったときの印象はどんなものでしたか?

上坂 桃井さんの歌詞はいつも本当に素敵なんですけど、今回は特に、この10年間をすべて肯定してくれるような、それでいてこれからの未来についても優しく背中を押してくれるような内容でしたね。これが最初の到達点であり、ここからもっと素敵な未来があるんだよ、ということを決して押し付けることなく、優しく真っ直ぐに届けてくださる言葉だと思いました。10周年に対する最大の祝辞であり、聴いてくれているみんなに対してもありがとうを伝える慈愛に満ちた歌詞になっていると思います。

――桃井さんが書かれる歌詞は等身大ならではのセンチメンタルさが魅力かと思いますが、上坂さんが特に魅了された曲というと?

上坂 やっぱり「ワンダーモモーイ」と、UNDER17の「「もっと、夢、見よう!!」ですね。弱くて自信のない自分だけど前を向く権利はあるんだと労わってくれていますし、少数派である自分を見守って、肯定してくれるような優しさが歌詞に詰まっているところが本当に素敵だと思いますね。

――「見参!革ブロ☆ふぉーえばー」では上坂さんが歌詞を書かれました。どのような想いを込められましたか?

上坂 実は、MUTEKI DEAD SNAKEさんがまず仮の歌詞を書いてくださったんですね。ただ、(上坂すみれの愛称である)「すみぺ」を前面に押されていたので、私としては同志との思い出という部分をフィーチャーしたいと思っていました。なので、フリートークを書き起こしたか、トークイベントを見たような感覚になれる歌詞にしようと、初見の人にはまったくわからないようなネタとか、自分の好きな作品のオマージュを入れてみるとか、でもなんだか楽しそうというテーマで書きました。例えば、ライブやイベントで「かわいい」というコールを禁止しているんですけど、あるライブのMCで「たまにはかわいいって言われたい」と話したことがあるんです。そういう元ネタがわかるはずはないんですけれども、そこに対してまったく説明がないところがこの歌のいいところなのかな、と思っています。

――新録となった3曲をどのように歌われたか、レコーディングについても教えてください。まずは、「ファーストピリオド.」から。

上坂 この曲は仮歌を桃井さんが歌ってくださっていたので、私はそのまま世の中に出てほしいと思ったんですけれども、でも一応私のアルバムなので……。私の楽曲では、1番、2番、3番で歌詞が違っているものが多くて、歌詞が同じだったときは変えていただくんですけれども、今回は歌詞のメッセージが伝わってほしいので、あえて同じ言い回しにして、ストレートな言葉を伝えることにしました。なので歌も誇張することなく、素直に歌うのがこの曲では一番いいのかな、と思いました。

――では、桃井さんから受け取ったときから2番とラスサビの歌詞は同じで?

上坂 そうですね。歌っているとライブの光景が浮かぶような歌詞であり、曲調だとはレコーディングしながら感じました。

――レコーディングに桃井さんはいらっしゃったんですか?

上坂 いらっしゃらなかったですね。「いらっしゃったらどうしよう?とは思っていたんですけど……。なので、レコーディングでは程よく緊張せずに歌えたので良かったです。

――桃井さんとはどれくらいの関係値なんですか?

上坂 対談させていただいたり、私のラジオ番組に来ていただいたり、お互いのライブを観たり、お会いしたことは結構あるんですけど、いかんせん私は推しに直接会えないタイプのオタクなので。お会いしたときの記憶はいつも曖昧なんですよね。

――次は「ソライロ」について教えてもらえますか?

上坂 この曲は初めてのセルフカバー、初めてのアコースティックとなるんですけど、2010年代アニソンのようなしっかりした骨格を持っていますし、メロディもいい意味で懐かしくて少し過去を振り返るような曲調なので、アコースティック映えしますね。曲の良さを改めて感じました。私がTVアニメ『パパのいうことを聞きなさい!』(以下、『パパ聞き』)で演じた小鳥遊 空ちゃんのキャラクターソングで、等身大の女の子を歌っているんですよね。なので、10年間でこんなに歌が上手くなりました、というところを伝えるのではなく、あくまでももう一度「ソライロ」に出会うという体験を表現したいと思いました。空ちゃんを演じている当時の気持ちを思い出しながら歌うというアプローチでしたね。

――当時の気持ちを思い出すために何かされましたか?

上坂 ちょうどこのレコーディングの1ヵ月前くらいに、(『KING AMUSEMENT CREATIVE Anime Histoleap』というイベントで)『パパ聞き』の第1話をライブハウスで上映してファンの方々と観る、という機会があったんですよね。キングレコードの人と当時のことをコメンタリーしながら。私は、あんまり自分の過去作を観返すタイプではないんですけれども、ファンのみんなが当時の気持ちになりながら見てくれたので、レコーディングではその日のことを思い出しながら、大切にいつまでも持っていたい過去、という気持ちを込めて歌いました。

――最後に「見参!革ブロ☆ふぉーえばー」についても。

上坂 これはオケがパーティーソングになっているので楽しく合の手を入れて、かつ「♡をつければかわいかろう」の男性コーラス隊をオマージュしようというところで、キングレコード社員の皆さん計6人の方にコーラスで入っていただきました。当時の思い出も蘇りつつ、ディレクション席に座って指示を出してみるとか、遊びながら作っている感覚でしたね。

――「♡をつければかわいかろう」のレコーディングのことは覚えていますか?

上坂 何をやったかはあまり覚えていないんですけど、(レコーディングスタジオのコントロールルームで押す)トークバックを押した気がするので懐かしかったですね。

次のページ:アーティストながら同じ目線の同志に寄り添える存在に

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