──3曲目「罪の宴」はライブで盛り上がりそうな1曲ですね。
鈴木 ちょっと話がそれるんですけど、今回のアルバムは前半、後半に分けてレコーディングしたんです。前半戦のテーマは「いかにシンプルにするか」で。その反動で、後半戦のレコーディングでは変化を求めて違うものを作りたいなと思ったんですよね。ちょっとややこしいことになっているんですが、「罪の宴」はその後半戦の1曲です。「in birth」「久遠(くおん)に零れて」「Inferno Inception」とかは前半に録っていて、後半に録った「拝啓、黎明を知って」「re:re:realize」あたりは反動で騒がしい音になってると思います。
藤原 去年の8月と今年の2月に録った曲があって、タイミングが半年くらい違うんですよ。こんなに時期を分けて録るのは初めてでした。というのも、最初からフルアルバムにするとは考えていなかったんですよ。レコーディングが終わってから、そういう話になった記憶があります。
──その間に、やはり色々とやりたくなるものなんですかね?
鈴木 僕の中での判断基準として……何も知らないおじいちゃんに「この曲とこの曲、何が違うの?」と言われたら終わりだと考えていて。僕らのことを知らない人にとっては、全部一緒に聴こえると思うんですよ。でも可能な限り、違う曲だと分かるようにしたいというか。
──またしてもおじいちゃんが(笑)。でも、それは確かに大事な判断基準な気がします。
鈴木 まあ、おじいちゃんは架空の人物で、街を歩いているAさんとBさん、でも良いんですけど。多くの人に聴かせた時に同じ曲だなと思われたくないというか。ただ、色々な曲を作らなきゃあかんという思いと同時に、「同じような曲で在らなければいけない」という思いもあるんですよ。例えば、焼肉屋さんに行ってケーキが出てきたら嫌じゃないですか。そういう意味で、自分らに求められている要素は常にしっかりありつつ、おじいちゃんが聴き比べてもちゃんと違う曲に聴こえるようなラインを狙いたいっていう。
──3ヵ月連続リリースの第1弾となった「in birth」の制作は、改めて振り返ってみるといかがでしたか?
斎藤 確か、前半のレコーディングの最後にできたんですよ。(鈴木から)デモが届いてすぐに曲を覚えて、ドラムから先に録ったはずなんですけど……レコーディングした記憶がない曲です、僕(笑)。
鈴木 無理やり増やした曲だったんですよ。スケジュール的にはかなりギリギリだったんですけど、「今思いついた曲、すっごい良い気がする」「もう1曲行けるんじゃないか?」と。
藤原 結果的に、録ってみて「めっちゃ良いやん!」ってなりましたよね。全員の共通認識で。
鈴木 力の抜け具合のバランスが良かったのかな、って気はするんですよね。
──私は「久遠に零れて」が好きなんです。ハンズクラップが入っていてライブで絶対盛り上がる曲だとは思うんですけど、テクニック的には複雑ですよね。
鈴木 すっごく普通に作ったつもりだったんですけど、確かにちょっと難しい曲ですね(笑)。「綻んで爆ぜれば」(シングル「相聞詩」収録)のあとに作ったので、レコーディングの時期としては前半でした。
藤原 前半のレコーディングは「相聞詩」と一緒で。「せっかくレコーディングするならもう1曲録ろうか」って軽めのノリだったんですよね。
──「闘争を継ぐ」(2023シーズン”オリックス・バファローズスタメンオープニング映像曲)、「Endless me」(2024年シーズン”オリックス・バファローズ”オープニング映像曲)と、どちらも応援歌ですが、この対比も興味深いです。
鈴木 去年の「闘争を継ぐ」はストレートな雰囲気だったんですよね。今年の「Endless me」は、オリックス・バファローズの担当の方と打ち合わせをした時に……野球選手の動きといえば投げる、打つ、ボールを取る、走る、というあたりになると思うんですけど、それ以外のフレーズも欲しいよね、みたいな話になって。それで少し方向性を変えて、ストレートじゃない方向性に持っていきました。
──「Inferno Inception」には、“気づけば三十路の鏡に佇んだご老体 行く末はそう決まってるみたい”なんて言葉もありますが。
鈴木 別に病んでるわけじゃないですよ(笑)。思っていることをそのまま書いていて。この世は無常と思っているのがデフォルトで、常が無いということを知るところから始まるというか。ちょっとしたことに無常感を覚えるんですよ。それを掘っていったことで、この曲になっていったのかなって。
──この曲のあとに、ラストナンバーとして「相聞詩」を持ってきたのも、バランスの良さということでしょうか?
鈴木 そうですね、そこもバランスの感覚で。
── 改めて出来上がった全曲を聴かれて、どのような感触がありましたか?
藤原 前作『超越』が初めてのフルアルバムだったんですけど、実験的な曲が多かった印象があったんです。それに対して今回は、フルアルバムを作ろう!って気合いが入っていたわけではなくて、そこに鳴るの曲を集めたらフルアルバムができました、というか。だから今回は初めて自然体のフルアルバムかなって思っています。力が入りすぎていないし、“今のそこに鳴る”ならではのモードを詰め込むことができました、っていう。私はそういう印象がありますね。
鈴木 おっしゃる通り。
斎藤 前作からだいぶ時間も経ってますしね。(2021年正式加入のため)全曲自分のドラムで録ったのも多分今回が初めてなんじゃないかな。だから個人的にはすごく感慨深いんですよ。もうタイトル通り、開眼しちゃったよっていう(笑)。
──ここでタイトル回収ですね(笑)。8月から始まる“そこに鳴る oneman tour 2024「開眼証明」”も、すごいことになりそうですね。
藤原 今までの曲もやりつつ、アルバムの新曲も入るので……バンドのスケールアップというか、より洗練された感じになるのではないかなと思いますし、そうなれば良いなと。
斎藤 ライブだとアルバムの曲も変わってくると思うんですよね。『ドラゴンボール』で例え話をすると……超サイヤ人になりすぎたトランクスというのがいて。彼はパワーに頼りすぎて、スピードが足りなくなって負けちゃうんですよ。それを削ぎ落とした段階の「超サイヤ人2」っぽいなって思っているんです。つまり何が言いたいかというと(笑)、これまではパワーでゴリ押しをしていたときもあったような気がするんですけど、今度はすごくスタイリッシュなライブになるんじゃないかなって。
鈴木 セトリが変わって、翔斗が歌う曲が増えるんですよ。やはり歌というのはものすごく大切だと思うので、ボーカリストの比率が増えることは喜ばしいなと思いますし、これでよりTHE ALFEEに近づけるんじゃないかなと(笑)。あとは、そこに鳴る、って名前だけ知っているという方もいると思うんですが、改めて今回のニューアルバムの曲を聴いてもらいたいなと思っています。良い意味でこれまでと全然違うものになっているし、先ほどお話ししたように「焼肉屋さん状態」ではあるので(笑)。とにかく一度聴いてもらって、ライブにも来てもらえたらと。
●リリース情報
そこに鳴る
『開眼証明』
2024年7月24日発売
https://lnk.to/sokoninaru_kaigansyoumei_CD
【初回限定盤】
品番:GNCA- 1673
価格:¥3,850(税込)
【通常盤】
品番:GNCA-1674
価格:¥2,750(税込)
【収録内容】
<CD>
1. 拝啓、黎明を知って
2. re:re:realize
3. 罪の宴
4. in birth
5. 久遠に零れて
6. 闘争を継ぐ
7. Endless me
8. Inferno Inception
9. 相聞詩
<Blu-ray> ※初回限定盤のみ
・「魔女と野獣OP「相聞詩」release oneman tour 2024」ライブ映像
・「闘争を継ぐ」「in birth」「拝啓、黎明を知って」 MUSIC VIDEO
●ライブ情報
そこに鳴る oneman tour 2024 「開眼証明」
8/9(金) 名古屋 ell.FITSALL OPEN/START 18:30/19:00
8/23(金) 新潟 RIVERST OPEN/START 18:30/19:00
8/24(土) 仙台 enn2nd OPEN/START 18:00/18:30
9/1(日) 福岡 Queblick OPEN/START 17:30/18:00
9/7(土) アメリカ村 FANJ twice OPEN/START 19:00/19:30
9/21(土) 神戸 太陽と虎 OPEN/START 18:00/18:30
9/29(日) 代官山 UNIT OPEN/START 17:00/18:00
TICKET: 全公演共通 ¥3,800(D 代別)
そこに鳴る 公式サイト
http://sokoninaru.com/
そこに鳴る 公式X
https://x.com/sokoninaru_band
SHARE