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INTERVIEW

2024.07.24

そこに鳴る、“エクストリームJ-POP”を極める会心作『開眼証明』インタビュー 世界が注目する3ピースバンドのストイックな音作りとは?

そこに鳴る、“エクストリームJ-POP”を極める会心作『開眼証明』インタビュー 世界が注目する3ピースバンドのストイックな音作りとは?

TVアニメ『魔女と野獣』OPテーマ「相聞詩」(そうもんか)が好評を博した、大阪の3ピース・ロックバンド“そこに鳴る”。2024年4月から始まった3ヵ月連続シングル配信を経て、7月24日に2ndフルアルバム『開眼証明』がリリースとなる。本作には、先行配信された「in birth」「Endless me」「拝啓、黎明を知って」や「相聞詩」も含む全9曲が収められた。

そこに鳴るの特徴に、メンバー全員がボーカルを担える、というものがある。世界中のフォロワーが惚れ惚れとする超絶な演奏技巧、緻密に構築されたアンサンブルに加わる、男女ボーカルによる幾重にも重なりあう独特のメロディー&ハーモニー。さらに、歌謡的な要素を織り交ぜた芳烈な、或いは絢爛な音楽。彼らがこれまで築き上げてきた“エクストリームJ-POP”の現在地を示す最新作『開眼証明』について、鈴木重厚(Vo./Gt.)、藤原美咲(Vo./Ba.)、斎藤翔斗(Dr./Vo.)の3人に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

3/3が歌う超絶技巧バンドは“令和のTHE ALFEE”を目指す

──今年3月に開催された“魔女と野獣OP「相聞詩」release oneman tour 2024”には私もお邪魔させてもらったのですが、スリリングで楽しいひとときでした。その後も3ヵ月連続リリースもあったので、慌ただしい日々を過ごされていたのではないでしょうか。

藤原美咲 次のレコーディングをしたり、リリースの準備をしたりと、あっという間に7月を迎えたような感じでした。

斎藤翔斗 その間、海外からも「相聞詩」の反響があって、中には「このバンドは(日本で)過小評価されてる!」的なコメントもありましたね(笑)。実際、もうちょっと広がったら良いなという思いはあります。

藤原 YouTubeのコメント欄を見ると、最近は日本語のほうが少ないくらい、海外からの反応が増えていますね。ストリーミングサイトでも、アメリカの人たちがすごく聴いてくれていて。いつかアメリカにも行ってみたいなと。

──鈴木さんは「相聞詩」の反響をどのように受け止められていますか。

鈴木重厚 僕自身はすごくもどかしくて。今はもどかしさくらいしかないくらい(苦笑)。もっと広がって欲しいなと思っていて。でも自分のことを分析するに、歌をもっとうまくしていかないとなと思っています。

──以前のインタビューでは自らの音楽を“エクストリームなJ-POP”とおっしゃっていて。2ndフルアルバム『開眼証明』でも日本語の歌詞が中心となっていますが、そこにもこだわりが?

鈴木 そうですね。いかに海外でウケていようが、そこは日本語の歌詞が良いと思ってるんです。母国の言葉のほうが絶対に伝わりやすいと思うんですよね。海外の人からしても、「英語だったら聴こう」って思うとは限らないですし。よく、おじいちゃんとかが「英語だとなに言ってるかわからへん」って言うじゃないですか。その感覚は忘れたくないなと。

──3ヵ月連続リリースに関しての手応えはいかがですか?

鈴木 「まだ終わってない」感はありますね。最初の「in birth」を発表してから、コンスタントに発表し続けていて、まだバタバタしています。曲の出来そのものは、どれもめちゃくちゃ良いと思っているんです。特に「拝啓、黎明を知って」ではMVで初めて絵コンテから手がけさせてもらったんですが、こんなにもタイミングが合っているMVは他にないと自負しています。今までも監修はしていたんですけど、(ディレクターに)歌詞やリファレンスを渡すだけでは「この画が撮れてなかったな」と思ってしまうこともあるし、自分で書かないと伝わり切らないなと。結果、いいMVができたので、あとは色んな人に観てもらえたらなと。

──「拝啓、黎明を知って」はアルバムのオープニングナンバーになりました。今の“そこに鳴る感”が出ているからこその1曲目なのかなと思ったのですが、この位置に持ってきた理由というのは?

鈴木 自分たちらしい曲だなと思ってはいたんですけども、なぜ1曲目に持ってきたのかというと、バランスが良かったのかなって感じはしますね。

斎藤 聴いた人たちを1曲目であっと驚かせられる感はありますよね。再生5秒くらいで「なんやこれ、いいやんけ!」って思えるような引っ掛かりを作りたかったという思いがあります。

──それも“らしさ”の1つだと思うのですが、皆さんは今の“そこに鳴る”らしさについては、どう考えられていますか?

鈴木 “エクストリームJ-POP”と……“令和のTHE ALFEE”ですかね。

── “令和のTHE ALFEE”は初耳でした(笑)。

鈴木 THE ALFEEが令和の時代のバンドではないという意味ではないですよ(笑)。もちろん今も現役ですし。意味合いとしては、フォークをやったり、メタルをやったり、プログレもやったりと本当にすごい存在だというのと。バンドメンバーが3人いて、3人とも歌うってなかなかないと思うんですよ。色々なトラックや楽器はあるけど、やっぱり人の心を惹きつけるのって人の声だと思っていて。その点で3人中3人が歌うところが独自性だと思っています。

曲に関しては、あえてインスタントに作りたいというか。要素をすごく「キュッ」としたいんですよ。濃縮還元みたいな。今でこそ「3分代の曲ばかりだよね」って時代ですけど、僕らは10年前からすでに基本は3分台で、今では2分台です。限られた時間のなかでさらに濃くして、3人の声が乗ることによって……“焼き肉エビフライラーメン定食”的な(笑)ものを作る。そのうえで、歌はしっかりとJ-POPでありたい。

──もはや濃密なお弁当のような……お弁当のきめ細かさというのも、日本らしいところですものね。

藤原 確かに、色々な要素が1つに詰め込まれているっていう意味では幕の内弁当っぽいかも(笑)。

──3人が3人とも歌う、というお話がありましたが、アルバムの2曲目「re:re:realize」では藤原さんがリードボーカルを務められていますね。

藤原 この曲のレコーディングは結構難航したんですよ。今回は自分の歌と向き合う時間がすごくあって。自分の壁をどう超えていくか、すごく悩みましたね。

── “後悔はもう飽きたんだ メビウスの輪を壊したくて”という歌詞がありますが、それは藤原さん自身もそうだった?

藤原 そうですね(笑)。ベーシストとして悩むことはそこまでないんですが、歌で悩むことは多かったんですよ。

──ベースの音色もこの曲は違うような気がします。音作り全体が進化した雰囲気というか。

鈴木 音像がそもそも全然違うんですよね。スタジオの機材や、歌録りのマイクもいつもと変えてるし。より立体的な音作りになった気がしますね。

藤原 ベーシストとしてもう一歩先の感じというのは意識していたんです。そもそも、この曲では4弦を全然使っていなくて、チューニングを下げて4弦で弾くか、いつものチューニングのまま3弦で弾くか、両方試したんです。そうしたら後者のほうが面白くて。普通はベースって低い音が求められるので、4弦で行くことが多いんですけど、3弦にしたことで、明るい軽快さや疾走感が出たのかなと思っています。これまでこういうアプローチはしたことがなかったので、今まで聴いてきた方は「おっ」となると思います。だから異色感が出たのかなと。

鈴木 逆にギターは1音、チューニングを下げてたんですよ。そこがちょっと面白いところというか。ベースが上がって、ギターが下がるっていう。

斎藤 その中で、ドラムは意外と機械的かもしれないですね。このアルバムの中だと、いちばんカチカチしてる曲というか。藤原さんがメインの曲って久しぶりだったんですよね。アルバムの『超越』以来だから……多分、4年ぶりなんです。それもあって、歌を強調したいなと思っていました。

次ページ:会心の出来映えとなった「in birth」、その制作経緯とは?

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