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INTERVIEW

2024.07.25

TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』のOP主題歌「Hazure」を担当する超学生に、楽曲へ込めた想いを聞く

TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』のOP主題歌「Hazure」を担当する超学生に、楽曲へ込めた想いを聞く

Web小説投稿サイト「小説家になろう」から誕生した“なろう小説”のひとつであるノベル「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」(以下:ハズレ枠)が、2024年7月からTBSほかにてTVアニメ化。そのOP主題歌「Hazure」を担当しているのが、ベネチアンマスクがトレードマークとなっている超学生だ。

物語は、ある日突然クラスメイトたちが異世界に召喚され、主人公の灯河が最低ランクのE級勇者として廃棄遺跡に放逐されるところから始まる。その後、灯河は「ハズレ枠」と称される「状態異常スキル」を駆使して最強へと成り上がっていく。今回は、辻村有記とTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也が制作したOP主題歌「Hazure」の魅力や、アニメ「ハズレ枠」の世界観について、超学生にじっくりと話をうかがった。

INTERVIEW & TEXT BY 小町碧音

なろう小説もボカロと変わらないところがある

――最近の超学生さんについて、おうかがいしたいです。前回、TVアニメ「カワイスギクライシス」のOP主題歌「スペースキャットビッグバン」をリリースされてから、どのような日々を過ごされていましたか?

超学生 昨年はライブがあったので、準備や本番の周辺では投稿できないことが多く、月によってはまるまる1か月投稿ができない時もありました。今年はその反動もあって、とにかくたくさん投稿しようと思っています。毎週1本のペースでYouTubeに動画を投稿するようにしていて、その結果、家にいる時間が段違いに増えたのが大きな変化ですね。

――超学生さんのトピックとして、今年5月6日に「超学生の腕そのもの握手会」を開催されたことがあります。今話題の新しい握手会ですね。

超学生 はい、実は3年くらい前から生配信で「腕だけの握手会をやってみたい」とずっと言っていて。でも当然、そんなの簡単にできるわけがなくて(笑)。それが最近、EP『MAR6LE』の特典として何かイベントをやらないかという話がレーベルからあり、試しに「腕だけの握手会をやりたい」と言って、形になりました。それだけのことです。

――やってみたいと思った理由は何だったのですか?

超学生 本当に特に理由はないんですよね。強いて言うなら、「なんでこんなことするんだろう」って思ってもらえたら、それが狙いというか(笑)。配信でもそんなことばかり言ってるので。例えば、グッズも手をそのまま印刷したハンカチとか、最近だと指がアクスタになったりしてますけど、それも特に理由はなくて。

――そういう不思議なものに惹かれてしまうのですね(笑)。

超学生 仲良くしてくれているインターネット活動者の友人が、「なんだ、これ」って言いながらグッズを買ってくれたのは、面白かったですね。あと、普段はそんなに話をしない上司からも「これは何?」って聞かれて、「超学生の指です」って説明できたのが面白かったという反響もありました。変なグッズがなぜか一番売れるのが超学生なので、引き続きそういうものを出していきたいなって改めて思いました。

――それにしても、腕だけとなるとできることも限られる?

超学生 全然そんなことはなくて、むしろ普通の握手会よりいろんなことができるんですよ。サインも書けるし、恋人つなぎもできるし、動画も撮れるし。特殊な手法で僕からもしっかりみんなのことが見えていたので、言葉は発せない代わりに、見せてくれるものに対して応えることができました。かなり、いろんなやりとりが腕を通じてできた握手会だったと思います。なので、「腕しかなくて喋れないから意味ないじゃん」という意見を目にすると、「しめしめ」と内心、思っています。僕たちしか知らないやりとりがいっぱいあるのに、と(笑)。

非日常感を味わったMV撮影

――今回、OPテーマを担当されているTVアニメ「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」は、Web小説投稿サイト「小説家になろう」から誕生した作品と聞いています。「小説家になろう」で生まれた作品を“なろう小説”と言い、なかでも多く投稿されているのは異世界系とのことです。もともと異世界が舞台の作品にご興味はありましたか?

超学生 普段から意識して読もうとはしていなかったですね。でも、改めて思い出すと意外と読んでいるかもしれないと気づきました。例えば、なろう小説出身で有名な「転スラ(転生したらスライムだった件)」とか、最近だとなろう小説ではなく他の異世界ものとも少し違いますが、「ダンジョン飯」。あれも異世界ものですが、戦いをするわけではなくてちょっと特殊な感じです。他にも「ドラゴン、家を買う。」もいわゆるスタンダードな異世界ものとは違うかもしれないんですけど、意外と無意識に好んで読んでいたのかもしれないなと思いました。

――「ハズレ枠」も異世界ものと言いつつ、特殊な部分もある気がします。

超学生 そうですね。僕の認識だと多かったのは、冴えないモブみたいな人生を送っていた主人公が交通事故とか何らかの理由で亡くなって、異世界で若干違う自分に生まれ変わって、亡くなる前の記憶をもとに無双するイメージでした。そのイメージがあったので、「ハズレ枠」を読んだ時に、「こういうのもあるんだ」とちょっと新鮮な気持ちになりました。今回は、全員が急にそのままの姿で異世界に転移させられて、それぞれの持つスキルを駆使して戦うという設定です。その後、なろう小説のことを調べていくと、最近はこういう展開も多いと知って。なろう小説もトレンドがあって、時代とともに移行していくのは面白いなと思いました。友人と「ボカロ曲とかと一緒で、流行っているものが1個ドンってあると、それを避けて新しいものに移行していくんですよ」と話していました。例えば、「転スラ」が流行ると、似た展開の作品が登場した時に「これ転スラみたいだね」と言われるのを作家さんたちは避けたいんですよね。これってボカロや歌ってみた、イラストレーターなど、どこでも同じで、トレンドがどんどん移行していくんだなとすごく感じました。

――その逆もありますよね。

超学生 もちろんです。例えば、僕が歌ってみたを始めた10年前ぐらいは、J-POPに寄せた作風が多かったんです。4年前ぐらいには、どろどろしたダークな闇系の曲が流行っていました。でも最近は、ちょっと可愛い曲が流行っています。例えば、HoneyWorksさんの作るキラキラとした青春ソングや、女の子っぽい曲ですね。2021年にはKAMITSUBAKI STUDIO所属のVシンガー・花譜さんの声をもとにした音楽的同位体”可不”が登場し、昨年4月には重音テトの新しい音源「Synthesizer V AI 重音テト」が出てきたこともあり、ふわっとした可愛い曲が流行った印象です。最近のメガヒット曲「メズマライザー」は重音テトと初音ミクの曲ですし、「オーバーライド」も重音テトの曲です。これらから、重音テトを中心とした可愛い曲ブームへの移行を感じることができますね。

――さすが、しっかりボカロのトレンドをおさえていますね。OP主題歌「Hazure」は、主人公の灯河視点の楽曲になっています。辻村有記さんとTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/G)さんが制作されていますが、このお二人の印象はいかがですか?

超学生 THE ORAL CIGARETTESの山中さんの曲は今まであまり聴いてこなかったので、最初はどうなるんだろうと思っていました。ただ、僕の中の印象としては、メロディーラインがすごく独特で、耳に残るなと思っていました。今回、辻村さんのメロディーに山中さんのメロディーが合わさったサビ周辺で、「これぞ、THE ORAL CIGARETTESのメロディーだ」と感じました。かなり個性が入っていて、すごく嬉しかったです。光栄だなと思いました。辻村さんに関しては、前回僕のオリジナル曲「Fake Parade」でご一緒したんですけど、1曲通してずっとノれる特徴があるなと思っていました。どこを聴いてもずっとサビのような疾走感があるのが特徴です。今回もその要素がふんだんに入っていて、すごく嬉しかったです。そこに山中さんのパワーも加わって、サビではさらにもう一段階爆発する感じがあって。AメロやBメロで左右からいろんなセリフが入っていたり、Bメロで面白いことをしているのは辻村さんのセンスだなと思いました。このお二人に作っていただけたのは、すごく良かったと思います。

――レコーディングはどのように進めていったのですか。

超学生 前回の「Fake Parade」のレコーディングでは辻村さんに立ち会っていただいたんですけど、今回は自宅Recでしたね。辻村さんの直接的なアドバイスはなく、楽曲から辻村さんの声を聴きながら録っていくだけだったので、すごく難しかったです。でも、前回ご一緒した経験が、生きたんじゃないかと思っています。

――楽曲はもちろん、制作されたMVも「ハズレ枠」の世界観に寄り添った不気味さと見応えのある仕上がりでした。どのようなことを提案されたのでしょうか。

超学生 僕からは、「カジノ+異世界」みたいなテーマと衣装の提案をしました。特に、2人の着ぐるみに関しては不気味に見えてほしいと提案しましたね。一般的に着ぐるみは可愛いと思われがちですが、カジノと組み合わせることで、かなり異質な存在に見せたかったんです。

――カジノが浮かんだ理由は?

超学生 正直、曲調が大きいですね。辻村さんたちの音の雰囲気からカジノでディーラーをやっている絵が浮かびました。それに、アニメのタイトルが「ハズレ枠の」ですし、楽曲タイトルも「Hazure」なので、ギャンブル性のあるカジノのイメージが合うなと思いました。

――なるほど。MVでは、生々しさや強さを表現されていましたが、演技してみていかがでしたか?

超学生 カジノでめちゃくちゃ負けて終わっている人を演じる指示があったんです。でも、僕はギャンブルもしないし、失敗した時に大騒ぎすることもない。なので、全く自分とは違う人物を演じる感じが、すごく新鮮で楽しかったです。

――ダークな世界観の中で見事に一人二役演じられていましたね。

超学生 主人公の性格的に、不満や抑圧された想いを感情的に叫ぶ感じにしたかったんです。でも、アニメを見ていただくとわかる通り、アニメの主人公の灯河は過去やトラウマ的な部分が大きいんです。自分の中で考えていることや野望など、内側の要素も大事に歌いたかったので、その二つをうまく混ぜながら意識してレコーディングしました。

次ページ:超学生の状態異常スキルとは?

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