アニメ最終話から続く物語が新たに幕を開けた『FAIRY TAIL 100年クエスト』のOPテーマ「Story」を歌うのは5人組男性アーティスト・Da-iCE。
ゼレフやアクノロギアとの激闘を経て、「妖精の尻尾」最強チームメンバーたちは北大陸ギルティナの「魔陣の竜(マギア・ドラゴン)」ギルドが発行する「100年クエスト」に乗り出すことになる――。今回は、そんな物語のOPテーマとなる「Story」を作詞・作曲したメンバーの和田 颯を直撃。アニメが好きだという和田が考える“アニメのオープニング像”を詰め込んだ本作についてたっぷり話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――リスアニ!初登場となる和田さんなので、まずは個人的に印象に残っているアニメ主題歌を教えてください。
和田 世代としては『ONE PIECE』で、東方神起さんが歌っていた「Share The World」です。学生時代にめちゃめちゃ観ていたので、すごく印象に残っています。あとは『ソードアート・オンライン』の曲はすごく好きです。やっぱりLiSAさんのイメージって、『ソードアート・オンライン』なんですよね。今となっては『鬼滅の刃』のイメージも強いですが、僕にとっては『SAO』。特に「unlasting」(アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』アリシゼーション・インベーディング編EDテーマ)がすごく好きです。
――Da-iCEは2024年にデビュー10周年を迎えられました。10周年イヤーに突入した今、どのようなお気持ちですか?
和田 あっという間ではありました。インディーズとしての活動を含めると13年なのですが、なんだかんだ無我夢中で。目の前のことを必死にやってきた時間でした。「これがしんどかった」とか「辛かった」というのはその都度もちろんありましたが、そこまで深く印象に残っているということもなく、目の前にあるものを進めてきた時間だったので、どこか自分たちのことを信じられる核はありましたし。結局、振り返ってみれば「楽しい」が一番に浮かんできます。10年、やってきて、楽しかったです。
――素直に浮かぶのが「楽しい」。
和田 そうですね。メンバーもほどよい距離感ですし、それは結成してからこれだけ時間を経ても変わっていないんです。楽屋のテンション感も結成当時のままなので、この5人だからこそこの時間をやってこられたんだろうな、という気持ちです。
――以前リスアニ!ではメンバーである大野雄大さんにall at onceさんとの対談でご登場していただきましたし、花村想太さんもLil’Fangさんと共にアニメ『オリエント』の主題歌を歌われるなど、近年のDa-iCEさんはほかのアーティストさんとのコラボレーションや、他ジャンルの方たちとのステージなどに積極的に出ていかれているイメージがあります。そうした外部からの刺激は自身のグループの音楽活動にどんな作用がありましたか?
和田 昔からDa-iCEは1つのジャンルにとらわれずにやってきたと思うんです。だけどそれも自分たちで選んでいるだけでは偏ってしまう。そういうときに別のバンドさんやシンガーソングライターの方に書いてもらうとまた違う味を出してもらえる。こちらも新鮮ですし、楽しいですし、刺激をもらっています。全然違うけれど、自分たちだけでやってしまうと、逆の意味で「Da-iCEっぽい」ものになってしまうときもあるんですよね。でもコラボを体験することで、引き出しも広がりますし、聴いてくださっている方たちからも「この角度から出すんだ!」という驚きみたいなものにも繋がりますし、自分たちとしてもそうした変化を及ぼしてもらえることにワクワクします。
――Da-iCEは2020年のアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』EDテーマを皮切りに、アニメの楽曲も歌ってこられました。そういったアニメの楽曲をやったことで活動環境に変化などはありましたか?
和田 それで言うと初めてライブでジャカルタに行かせてもらったんです。やはり海外では日本のアニメがすごく影響力を持っているんだな、とすごく感じました。『ONE PIECE』OPテーマの「DREAMIN’ ON」も歌わせてもらいましたし、きただにひろしさんの「ウィーアー」のカバーもやらせてもらったのですが、ジャカルタのお客さんが全員で、日本語の歌詞を口ずさんでくれるんです。それくらい歓迎の勢いを感じましたし、アニメへの熱量を皮膚感覚で味わって「日本のアニメってすごいな」って思いました。それにアニメの楽曲を担当させてもらうと、コメントにも海外からの反応がたくさんあるんです。そういうふうに自分たちのことを知ってもらえること、アニメに関わらなかったら知ってくれる機会がなかったような人たちにまで届くことって、すごく嬉しいですよね。それに僕もアニメが好きなので、その反応に胸が熱くなります。
――そんなDa-iCEがアニメ『FAIRY TAIL 100年クエスト』のOPテーマ「Story」を歌っていらっしゃいます。アニメのOPテーマに必要な要素はどんなものだと思われますか?
和田 僕の勝手なイメージですが、頭がサビで始まって勢いがつくけれどAメロは落ちつきがあって、Bメロでまたアガっていって、サビでドン!と圧倒する感覚がありました。
――そのなかでの「Story」はやはりそのイメージを追いかけたのでしょうか?
和田 この「Story」は僕と、高校の同級生でインディーズバンド(PARIS on the City!)でギターを弾いている小林ファンキ風格とで作らせてもらったものを、さらに明神ナオさんに形にしていってもらったのですが、制作の最初の段階で今お話をしたアニメのOPテーマのイメ-ジを伝えて、頭のサビで勝ちたい、ということで僕の持っているOPテーマのセオリーの通りに作っていきました。それをアレンジしてもらって、めちゃめちゃバンドサウンドにしていきました。ただ、作るのはよかったのですが、あまりにもバンドサウンドになったので、完成してから全然フリが浮かばないままで今に至ります。ダンスミュージックではないジャンルで作ってしまいましたから、自分では1ミリも振り付けが思い浮かばなかったんです(笑)。でも「この曲ならこの人にフリをつけてもらいたい」というアイディアは浮かんだので、その方と一緒にフリを作らせてもらう、という感じで完成していきました。
――特に『FAIRY TAIL』が冒険譚なだけに、和田さんがお持ちのセオリーは効いてきそうですよね。
和田 そうなんです。とにかく疾走感と熱量を入れたいと伝えて作らせてもらいました。
――地元・群馬の高校の同級生だと言う小林さんと、大人になった今、一緒に作業をされるのはどんなお気持ちですか?
和田 この年になって絡むとは予想もしていなかったので、めちゃくちゃエモかったです。それこそ高校の文化祭のときから彼はギターを弾いていて、バンドでライブをしていましたし、僕はステージでダンスを披露していたのですが、そのときにも「いつか2人でGLAY×EXILEの『SCREAM』みたいなことをやりたいね」って言っていたんです。それがようやくバンド楽曲で、自分たちが踊るという形で実現しちゃった。しかも今回のMVにも彼らに出てもらっているので、個人的に胸アツな曲になりました。
――高校時代に「いつか一緒に」と言っていたことが叶うことを、想像したことはありましたか?
和田 1ミリもないです(笑)。彼は一度バンドを諦めて仕事をしていたのですが、やっぱり夢を追いかけたいとバンドを結成して上京してきたんです。それがこうして一緒にやれるところまできた。学生時代には夢を語り合っていたけれど、まさか一緒に、この年になって作品を作ることができるなんて思ってもみなかったので、本当に幸せです。2人でやりとりしているときもずっと「ヤバいね」「エモいね」ってばかり言っていました(笑)。この曲の前にも一緒に作ったことがあったのですが、お客さんの前で披露されているのを見たときにすごく喜んでくれたことを思い出します。今回はアニメタイアップですから。もっと喜んでくれそうです。
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