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INTERVIEW

2024.07.17

愛美・伊藤彩沙がPoppin’Party活動10周年を前に思うこと――通算20枚目のSingle「TARINAI/トレモロアイズ」が示すバンドの今と未来

愛美・伊藤彩沙がPoppin’Party活動10周年を前に思うこと――通算20枚目のSingle「TARINAI/トレモロアイズ」が示すバンドの今と未来

次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」の顔役として、キャラクターを演じるキャストがリアルバンド活動を行うという前代未聞のスタイルを確立したPoppin’Party(以下、ポピパ)が、記念すべき20枚目のSingle「TARINAI/トレモロアイズ」をリリースした。どこまでもキラキラドキドキを求めるポピパのエネルギッシュな側面を力強いロックサウンドで示した「TARINAI」、スマートフォン向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」(以下、「ガルパ」)のイベントストーリーと連動した切なくも青春の煌めきが詰まった「トレモロアイズ」。タイプは違えどポピパの“今”と“未来”を描いた両楽曲について、「バンドリ!」を最初期から支える戸山香澄役の愛美(Gt.& Vo.)と市ヶ谷有咲役の伊藤彩沙(Key.)に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

20作目のSingle、そしてポピパ活動10周年を目前に2人が思うこと

――今作は記念すべき20枚目のSingleということで、まずは「バンドリ!」の立ち上げ当初から参加しているお二人に、ここまで走り続けてきたことについて、改めて今のお気持ちをお聞きしたいです。

愛美 ポピパもそろそろ活動10周年になるのですが、体感的にはもう何十年も活動しているような濃度で、振り返ると本当に色んなことを乗り越えながらやってきましたし、もうすっかり日常の中に「バンドリ!」が組み込まれていて、自分の人生においてバンド活動がこんなにも馴染むことになるとは思っていなかったです。なので、ありきたりですがすごく感慨深いですね。

伊藤彩沙 最初は本当にゼロからのスタートだったので、目の前のことをがむしゃらにこなしていく感じだったのですが、走り続けていたら、いつの間にか大家族になっていました(笑)。自分たちがこれだけ色んなライブをさせてもらったり、20枚もSingleを出させていただけるなんて思ってもみなかったですし、バンドがこんなに増えることも全然想像していなくて。今はそれぞれのバンドが世界中で頑張っていて、すごく不思議な感覚です。

愛美

――その中でポピパは「バンドリ!」の最初のバンドとして、そして「バンドリ!」を象徴する看板バンドとして、この9年、コンテンツの人気を牽引してきました。

愛美 外から見たらポピパが引っ張ってきたように見えるかもしれないですが、、他のバンドにも引っ張ってもらっている感覚がすごくあって。どのバンドがいなくてもここまでやってこられなかったと思います。ですがポピパは、「バンドリ!」というコンテンツに対する思い入れが特段強いとも思っています。自分たちのライブや活動のひとつひとつが「バンドリ!」の命運に関わるという責任感はもちろんあります。

伊藤 うんうん。私もあいみん(愛美)と一緒で、みんながいるから私たちがいるというのを感じていて。(キャラクターを)演じながら、実際にライブ活動を行うプロジェクトというのは初めてのことで、本当に手探り状態だったので、たまにその頑張りを自分たちで称えあったりもするんですけど(笑)。でもそれぞれのバンドに色んな頑張りや苦労があって、それぞれの個性があって。それこそ合同ライブをやらせていただくときに、改めてポピパの個性や良さに気付かされることがよくあるんです。なのでお互い肩を並べて、それぞれのところで頑張っているファミリーという感覚です。

伊藤彩沙

――合同ライブと言えば、今年4月にMyGO!!!!!との合同ライブ“Divide/Unite”を横浜アリーナで開催されましたが、そのときに何か新たな気づきはありましたか?

伊藤 初心を思い出させてくれたライブでした。やっぱりMyGO!!!!!のみんな、演奏している姿がすごくキラキラしていて。それを見ていて、昔の自分たちと重ねてしまうところがありました。

愛美 うんうん。とても前向きな初々しさを感じました。もちろんMyGO!!!!!ちゃんも活動を始めて数年が経っていますけど、それでもMyGO!!!!!ちゃんにしか出せない、色んなことを模索しながら、もがきながらやっている感じ、とにかく目の前のことをがむしゃらにやっているオーラやパワーが感じられて。

伊藤 そうそう。

愛美 ポピパはバンドリーマー(※「バンドリ!」のファンの呼称)の方によく「実家のような安心感がある」と言われるのですが、自分たちとしてはまだまだ一生懸命やっているし、楽なことなんてひとつもないので、そう言われるのがあまりピンときていなところがあったんです。でも、改めてMyGO!!!!!ちゃんとライブをさせてもらったときに、たしかに全然違う空気感があることを感じて。ポピパの楽屋は間違いなく実家の親戚の集まりのような雰囲気なので(笑)、そこからくるバンドの空気感の違いなのかな、とも思いました。

――ポピパがリアルバンドとして目指しているもの、この9年間活動してきたなかで変わらず持っている軸のようなものはありますか?

愛美 ずっと変わらないのは「売れたい!」という気持ちです(笑)。これまでも「バンドリ!」の歴史の中で、色んなバンドが音楽番組やフェスに出させてもらいましたけど、まだまだポピパも出ていきたいですし、もっとたくさんの人たちに認知されたいと思っていて。最近は音楽系のフェスやアニメ系のフェスに「バンドリ!」のバンドが出演するのが恒例になってきていて、それはすごいことだと思っているんですけど、そこにポピパがラインナップされてないとすごく悔しくて(笑)。ポピパもどんどんそういう場所に出たいです!

伊藤 あと、お客さんに楽しんでもらいたい想いが強いバンドだと思います。毎回ライブを経験していくうちに、どうすればより盛り上がるかがわかってきて、その感覚がどんどんブラッシュアップされていくので、今はライブのセットリストの会議もいつも白熱して時間通りに終わらないくらいで(笑)。ライブやキャラクターへの想いや熱量はメンバーそれぞれにあると思います。

――たしかにポピパのライブは毎回、手を変え品を変えて楽しませてくれていますが、ああいったエンターテイメント精神の強いステージは、ポピパというバンドのキャラクター性によるものなのでしょうか。

愛美 バンドやメンバーの空気感もそうですし、ポピパの元々のキャラクター性、(戸山)香澄が持つ好奇心、「キラキラドキドキすることを探していきたい」という想いがリンクした結果だと思います。ポピパはキラキラドキドキを名目に色んなことがやれるバンドだと思っていて(笑)。なので「せっかくなので今回はこういうことをやってみよう」という空気感が全体としてあるんですよね。あと彩沙が言ってくれたように、メンバー5人それぞれの想いがあって、毎回、話し合うなかでアイデアが無限に出てくるんです。

伊藤 私たちは正直にぶつかり合いながら話し合うんです。お互いの想いを尊重しながら。

愛美 ひとつの意見に対して、それをやった場合の良い面・悪い面をみんなで意見を出し合って検討していて。ときには「これはどういう結果になるんだろう?」というアイデアもあるのですが、プロデューサーさんやメンバーの誰かが強く「これをやってみたい!」という想いがあるときは、そのポジティブな想いは活かすべきだと思っているので、ポピパは「とりあえずやってみよう!」精神が強いですね(笑)。

ポピパ史上、もっとも貪欲なロックチューン「TARINAI」

――今回のSingle収録曲のうち、表題曲の「TARINAI」は本作のために書き下ろされたアグレッシブなロックチューン。過去曲で例えるなら「Moonlight Walk」に近いクールさを感じましたが、お二人が楽曲を受け取ったときのファーストインプレッションはいかがでしたか?

愛美 ライブで盛り上がるだろうなって思いました。絶対に楽しそう。

伊藤 それと「TARINAI」というタイトルの言葉が面白いなと思いました。「まだまだ満足できない(=“I’m Never Satisfied”)」というのは、すごく考えさせられるワードだなあと思って。

――“TARINAI こんなもんじゃない TARINAI まだ終わりじゃない”という貪欲なメッセージ性は、ポピパの楽曲としては新鮮ですよね。

愛美 たしかに、今までのポピパにはなかった方向性のメッセージだと思います。でも、リアルバンドの私たちは、この10年、ずっと抱えている気持ちなのかもしれない。毎回ライブを作るにしても、ライブをやり終えた後も、表現しきれないもどかしさみたいなものがずっとあって。毎回「もっとできたはず」という気持ちがあったり、ライブの打ち合わせのときも「もっと何かできるんじゃないか」という気持ちがあるんです。色んな制約があるなかでライブを作らなくてはいけないので、やっぱり5人全員の100パーセント、500パーセントを表現できるライブというのはなかなか難しくて。

伊藤 そうだよね。

愛美 特に私と彩沙は日常でもライブの演出について語り合うことが多いんですけど、自分たちの内にあるパッションに対して、実際にそれを表現しきれていない感覚があって。なのでもしかしたら「TARINAI」という感情は、これまでずっと感じてきたものなのかもしれない。

伊藤 これはいい意味なんですけど、私もライブが終わった後に満足しきったことはなくて、自分の中の反省や悔しい想い、「もっとこうできたよね」ということを考えてしまうんです。でも、いつも満たされないからこそ、ここまで続けてきているんだと思いますし、ずっと追いかけ続けている感じはあります。

――その意味では皆さんのバンド活動に対するストイックな姿勢もこの曲には反映されているのかもしれないですね。他に自分自身の気持ちや、今のポピパのバンドとしての状態にリンクする部分はありますか?

愛美 全部かなあ(笑)。最初の“生まれたばっかの火種を 絶やさずそっと守っている”という歌詞は、「バンドリ!」そのものに対する想いにも重ねることができて。やっぱりポピパの5人は「バンドリ!」に対して強い想いがどうしてもあるはずなので、きっとみんなもこういう気持ちはずっとあるんだろうなって思います。

伊藤 うんうん。私としてはこの歌詞は全体的に気持ちが燃えているような感じなので、「香澄たちポピパがこれを歌うとどうなるんだろう?」と感じたところがあって。“もっと”って歌う香澄は今まで見たことなかったので、早くライブで聴きたいです。

――愛美さんはレコ―ディングの際、どんなことを意識して歌われたのでしょうか。

愛美 挑発的な感じで歌いました!

伊藤 それ!私も最初に歌を聴いたときから、香澄の挑発的な表情が浮かびました。あと、かっこよさがベースの楽曲ですけど、サビの直前のキャッチ―なメロディやリズムになるところにいつもの香澄らしさを感じて。強気だけど色んな表情が見えて素敵だと思います。

愛美 ありがとう(笑)。最近のポピパの楽曲では、香澄は包み込むような目線で歌うことが多かったので、久しぶりに強気な香澄で歌って。プラスして今回は挑発的な余裕感があったほうがいいと思ったので、そういうニュアンスを入れてみました。

――それはこの楽曲のテーマ性に合わせただけでなく、Singleを20枚重ねてきたからこその表現でもありますか?

愛美 そうですね。香澄はこれまでも色んな面を楽曲で見せてきたと思うのですが、そのなかで香澄のかわいさがあったうえでのかっこよさが絶妙なバランスで出来上がってきた感覚があって。それがこの「TARINAI」には凝縮されていると思います。さっき彩沙が言ってくれたBメロの部分の、かっこいい曲をストレートに歌うだけではない抜け感は、Single20枚分の活動を重ねてきたからできる香澄の表現だと感じていて。同じ歌詞でも1番と2番で歌い方を変えていたりもするので、1曲で何度も味わえる楽曲だと思います。

――香澄としての“かわいさ”と“かっこよさ”の両立はまさに本楽曲の肝だと感じました。ちなみに先ほどライブで盛り上がりそうな曲という感想もありましたが、実際にライブで披露するときのイメージは浮かんでいますか?

伊藤 サビの“Ba-BanG, Ba-BanG”というコーラスは、ぜひバンドリーマーの人に一緒に歌ってほしいなって思います。

愛美 “wow wow wow”のところも。この部分はみんなで歌うのはもちろん、手の振りがあると楽しいだろうなと思うのですが、そこで自分は客席を煽ったりするべきか、演奏に徹するべきかを迷っていて。かっこいい曲なので、香澄はバシッと演奏に集中していてもいいと思うんですよね。彩沙にはぜひ踊ってほしいけど(笑)。

伊藤 まかせといて(笑)。

次ページ:りみ&有咲の揺れる想いに寄り添った「トレモロアイズ」

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