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REPORT

2024.07.13

青き民に届ける10年分の感謝の気持ちと約束の歌――「雨宮天 Live Tour 2024 “Ten to Bluer Sky”」ファイナル東京公演レポート

青き民に届ける10年分の感謝の気持ちと約束の歌――「雨宮天 Live Tour 2024 “Ten to Bluer Sky”」ファイナル東京公演レポート

雨宮天の約2年ぶりとなるライブツアー<LAWSON presents 雨宮天 Live Tour 2024“Ten to Bluer Sky”>の千秋楽公演が、6月23日、東京・立川ステージガーデンで開催された。通算4枚目のオリジナルアルバム『Ten to Bluer』を携え、4都市6公演を巡ってきた本ツアー。そのアルバムには、今年8月でアーティストデビュー10周年(=Ten)を迎える雨宮天(=Ten)から自身のファン“青き民(=Bluer)”に向けた感謝の気持ちと、この先も共に歩んでいく決意が込められていたわけだが、彼女はこのライブにおいて、10年の活動の積み重ねを感じさせる素晴らしパフォーマンスと飾らない言葉で、その想いを改めて直接、青き民に届けてくれた。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)

デビュー曲から自作のナンバーまで、多彩に魅せる前半戦

この日の会場には、ライブグッズの青いTシャツや青いペンライトを装備して、文字通り“青き民”となったファン一同が集結。やがて開演を告げる鐘の音が鳴り響き、「エリーゼのために」をアレンジした壮大なオープニングSEと共に、雨宮のライブを支える“天ちゃんバンド”のメンバー、宮永治郎(g)、奥野翔太(b)、田中 航(ds)、小幡康裕(key)がスタンバイする。SEのビートも強くなり、期待が高まるなか、聴き馴染みのある「Skyreach」のシンセフレーズを合図に本日の主役・雨宮天が、ステージ中央に高く組まれた階段状のミニステージの頂上に登場。キラキラと光る装飾の付いた銀のトップスと黒いパンツルックの彼女は、スタンドマイクを握り締めながら力強く自らのデビュー曲を歌う。この10年の歩みを感じさせる、最高に熱い幕開けだ。

そこから一転、ジャジーなピアノのフレーズが流れ出し、最新アルバムのリード曲「JACKPOT JOKER」へ。“天ちゃんダンサーズ”が登場して舞台を華やかに盛り上げるなか、雨宮はハンドマイクを握りながらステップを降りてメインステージに立ち、蠱惑的な歌声で青き民を翻弄。ダンサーとの連携も含めてシックに魅せていく。歌唱後、雨宮は元気いっぱいの声で「今日はみんなで最高の1日を作っていこうねー!」と呼び掛けると、続いてサビの“最高”というコール&レスポンスも印象的な「BLUE BLUES」で会場のテンションを最高潮にまで引き上げていく。じろっちこと宮永のギターソロもワイルドで“最高”だ。

その後のMCでは、この日の会場の近所にある昭和記念公園によく行くという話を、まるで友人との気兼ねない会話のように楽しそうに繰り広げる。ライブ中はかっこよく決めてみせる雨宮だが、MCでは何でもない雑談をしながら青き民との交流を楽しむ。この距離感もまた、彼女のライブにおける魅力の1つだ。そして「この10年のなかでも大きな挑戦であり、みんなの大好きな曲」と紹介して、キュートなポップチューン「PARADOX」でライブを再開。そこから同じくTVアニメ『理系が恋に落ちたので証明してみた。』シリーズのOPテーマに起用された「Love-Evidence」に繋げ、ディスコ風味のダンサブルなサウンドと振付も込みで愛らしく盛り上げる。かと思えば最新アルバムからの「the Game of Life」では、アタック感のあるシンセサウンドに乗せてクールな歌声を響かせる。本人は「ダンスが苦手」とよく発言しているが、この楽曲での華麗なターンやダンスパフォーマンスは見事で、その点でも10年での成長をアピールする1曲だったように思う。続く本人が作詞・作曲した「情熱のテ・アモ」における、歌謡曲のフレイバーが色濃い情熱的な歌世界を含め、アーティストとしての表現の幅広さと成熟を感じさせるブロックだった。

役者・雨宮天の本領発揮!物語のように展開するステージング

バンドが雨宮の楽曲を様々なアレンジで演奏するアニバーサリー感溢れるコーナーを挿み(宮永と奥野が真っ青なボディのギター/ベースで弾き合いをしていたのも愛を感じた)、ここからはより物語性の高いパートに突入。照明が暗転すると小幡がピアノでしっとりとしたフレーズを弾き始めると、ステージにいつの間にか置かれていたコート掛けと、そこに掛けられた男性もののジャケットとハットが、スポットライトによって浮かび上がる。そして真っ白いドレス風の衣装に着替えた雨宮が登場。ミニステージの階段をゆっくりと上がり、途中で振り返って、コート掛けのほうを見つめる。まるで誰かのことを思い返すように。

そのまま階段を上って最上段のミニステージで地べたに腰掛けると、彼女は2ndシングルの表題曲「月灯り」を歌い始める。もとより哀切感に満ちた(と同時にそれでも前を向いて進む意志が込められた)バラードとして知られるこの楽曲だが、この日はワンコーラスをピアノの伴奏のみをバックに切々と歌い上げて、いつも以上に感情豊かに表現する。2番からは他のバンドメンバーの演奏も加わって、よりドラマチックな音像の中で、ときに胸に手を当てながらエモーショナルに歌を届ける雨宮。再びピアノのみの伴奏で歌った最後の一節“…今日だけ 泣いてもいいかな?”、それを歌い終わったあと静かに体をオブジェに預けて目をつむる彼女の美しい姿に、会場からは割れんばかりの賞賛の拍手が沸き起こった。

続く「羽根輪舞」では、雨宮とは別の女性が階段の中ほどに登場し、雨宮の歌声に合わせて動くことで、歌詞に描かれている感情、切ない慕情を表現する。そして間奏で時計の針の音が鳴ると同時に、いつの間にかコートハンガーに掛かっていたジャケットとハットを着たダンサーが動き出し、“あの日の想い”にまつわるストーリーがショウのように再現されていく。雨宮の憂いを帯びながらも優雅な歌声、輪舞曲(ロンド)に合わせて舞い踊る2人。ステージで繰り広げられるのは、思い出の中の幸せだった時間だ。

そこから照明が暗転して、次曲「火花」へ。ダンサーは消え去り、コート掛けには再びジャケットとハットが掛けられている。その前で寂しそうに佇み、立ち去る女性。そして立ち上がった雨宮は、ドレス用の真っ赤なロンググローブを身に着けて、微熱を帯びたブルージーな歌声を響かせる。燃え上がるような感情の発端となる、心の内に秘めた火花。それを艶やかに表現しながら、雨宮はステップを降りて、コート掛けの前に歩み寄り、ジャケットに触れながら、その肩にもたれかかりながら、情熱的に歌い上げる。かつての想いを昇華するように。

そんなシアトリカルなステージングに続いては、歌謡ジャズ路線のシックなダンスナンバー「irodori」を披露。間奏でゾクッとするような流し目を客席に向けると、衣装の巻きスカート風の部分を脱ぎ捨ててショートパンツ姿に。両サイドで踊るダンサーと共に熱のこもったライブを展開していく。その曲のラストを高らかと歌い終えると、すかさず赤い手袋の指先を噛んで艶っぽく脱ぎ去り、ダンサーのサポートで青いマント風の飾り付き衣装に早着替えして、自作の和ロック「風燭のイデア」に移行。相手への想いが積もりに積もって恨み節に反転したような詞世界が、これまでの楽曲の流れと合わさって物語を浮かび上がらせていく。ときに膝をつきながら熱く歌う場面を含め、雨宮の身を焦がすようなパフォーマンスが素晴らしく、アーティスト・声優・役者としての表現力の高さを改めて感じることができた。

天を衝く歌声、命を燃やし尽くすようなロックの熱狂

その後のMCで、トランプカード風の舞台セット(「JACKPOT JOKER」のイメージで作ってもらったとのこと)や、アルバム『Ten to Bluer』のジャケット写真に写っていた10個の青いイスがステージの各所に置かれていることをアピールして、今回のライブステージにおけるこだわりを語る。また、1曲目の「Skyreach」で使用したマイクスタンドもデビュー当初から使っているものとのことで、この10年の思い出があらゆるところに散りばめられているのだという。

そして「ここまでは私の圧でみんなを圧倒するパートだったんですけど、ここからはみんなの圧と私の圧をぶつけ合って戦うパートが待っています」と予告して青き民たちに気合いを注入し、「東京、命燃やしていけー!」と熱く呼びかけてニューアルバム収録曲「Fireheart」に突入。雨宮のパワフルな歌声に負けじと客席からも大合唱が巻き起こり、雨宮も「みんなの命の叫びが聞こえてきます!」と喜ぶ。会場を揺るがすほどのコール&レスポンスで完全に火を付けると、続いて艶めかしい低音ボイスが特徴的な歌謡ロック「VIPER」へ。さらにマイナー系のアップテンポなロック曲「Velvet Rays」を連続で届け、客席のボルテージをさらに引き上げる。

そこから間髪入れず披露された「Defiance」では、ギターの宮永とベースの奥野もステージ前面に躍り出て熱く盛り上げる。その熱気を引き継ぐように、今度は「永遠のAria」を階段状のミニステージの頂上に上がって歌唱。彼女のアーティストとしての持ち味のひとつである“エモーショナルなロックナンバー”、しかもシングル表題曲を惜しみなく連発する構成は、ある種、この10年の集大成を示すようでもあり、その意味でも聴いていて胸が熱くなる。

そして次がライブ本編最後の曲に。「みんなが作ってくれた青い光と共に、さらに青く青く突き進んでいく、その決意を込めて、残っているものを全部出して歌います」。そう宣言した彼女は最新シングル曲「衝天」を歌い始める。デビュー曲「Skyreach」と同じコンビ、古屋 真(作詞)と伊藤 翼(作曲・編曲)が10年のときを経て再びタッグを組み、制作されたこの楽曲を、雨宮は先ほどの宣言通り、その身を振り絞りながら全身全霊で届けていく。間奏で湧き上がる青き民のコールに、力強く手を振りながら満面の笑みで応える彼女。その声援が、雨宮にとっては何よりも大きな力になるのだろう。彼女の歌声はさらにエネルギッシュになり、ラスサビではまさに天を衝くようなロングトーンを響かせて、ライブ本編を締め括った。

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