青き民に届ける10年分の感謝の気持ちと約束の歌――「雨宮天 Live Tour 2024 “Ten to Bluer Sky”」ファイナル東京公演レポート

涙のアンコール、青き民に届ける感謝の気持ちと約束の歌

青き民たちの熱烈的なアンコールを受けて、ツアーTシャツにポニーテール姿でステージに戻ってきた雨宮は、これもこの10年歌い続けてきたポジティブなポップチューン「チョ・イ・ス」を披露。客席に向けて大きく手を振りながら、楽しそうに歌う雨宮の姿を見ていると、観ているこちら側も自然と笑顔になってしまう。最後は「みんなで飛ぶよー！」と呼び掛けてジャンプで締め。その後、こだわりを込めて作ったライブグッズの紹介や、アーティストデビュー日の8月13日にYouTubeでの生配信「あおしゃべり」を行うことを告知すると、今度は最新アルバムより柔らかな雰囲気のポップナンバー「mellow moment」を歌う。愛おしいこの瞬間がもうすぐ終わってしまうことを意識してしまったのか、途中で涙ぐんで歌えなくなってしまう場面もあったが、その人間味あふれる姿に心が温かくなる。青き民もクラップで気持ちを届けるなか、雨宮は最後に満面の笑みで「ありがとう」と伝えて、その愛に応えた。

「“mellow moment”は遊ぶって決めてたのに、ボロボロになっちゃってごめんなさい！でもすごく幸せだった、ありがとう！」と、改めて感謝の気持ちを伝えた彼女は、続けてアーティスト活動への想いを言葉にする。声優の彼女がアーティストデビューするにあたって考えたのは“歌でも演じる”ということ。「曲という舞台があって、歌詞というセリフで、色んなキャラクターをアーティスト活動でも演じたい」。その想いを胸に活動してきたなかで、自分の理想の表現に届かなくて心が折れそうになったことが何度もあったという。「でも、必ず立ち上がってこれたのは、立ち上がったその先で、みんながこうやって受け取ってくれて、みんなが待っていてくれるから。だから泣いても絶対に立ち上がろうと思って、ここまでずっとやってきました」と涙声で語る。その結果、今は「声優としてのアーティスト活動の歌の形」を確立できたと感じ、「私じゃなきゃ表現できない歌もあるんじゃないかな」と思えるようになったという。

「“変わらなきゃ”と焦る気持ちを“変わりたい”と思わせてくれて本当にありがとう」「そして“私なんかじゃダメだ”という気持ちを“私じゃなくちゃダメだ”と思わせてくれて本当にありがとう」。青き民への心からの感謝の気持ちを直接伝えると、「もうとても言葉では伝えきれないたくさんの想いを、次の歌に込めてうたいたいと思います」と告げて、彼女自身が作詞・作曲した「Dear Blue」を、この日のライブのラストナンバーとして歌い始める。青き民に手紙を書くような気持ちで歌詞を書いたというこの楽曲を、彼女はときに優しく歌いかけるように、ときに力強く抱きしめるように、万感の思いを込めて届ける。涙ぐむ瞬間も見せつつ、会場中のペンライトが灯す“青い光を道標に”して、真っ直ぐな歌声で。彼女はMCで“歌でも演じる”のが自身のアーティスト性と語っていたが、もしかしたらこの曲は、何かを演じるのではなく彼女自身の気持ちをそのまま表現した、初めての楽曲なのかもしれない。これまで共に歩んできてくれたことへの感謝と、これから先も共に歩み続けていく約束を、親愛なる青き民に歌という形で直接届け、温かい空気に包まれたなか、ツアー”Ten to Bluer Sky”千秋楽はフィナーレを迎えた。

雨宮本人が語っていた通り、雨宮天のアーティスト活動は、彼女自身の声優としての基盤があってこその表現が追及されており、そこに本人の音楽的な好み――ロックや歌謡曲の要素が反映されることで、楽曲ごとに独自の深みのある世界観が構築されている。それを統合してステージで様々に表現する演者としての力量、シンガー／パフォーマーとしてのこの10年での成長をはっきりと示してみせたのが今回の公演だったように思う。だが、雨宮天と青き民の歩みはこの先もまだまだ続く。彼女たちの青い“そら（＝Sky）”はどこまでも果てしなく広がっているのだから。

＜セットリスト＞
01. Skyreach
02. JACKPOT JOKER
03. BLUE BLUES
04. PARADOX
05. Love-Evidence
06. the Game of Life
07. 情熱のテ・アモ
08. 月灯り
09. 羽根輪舞
10. 火花
11. irodori
12. 風燭のイデア
13. Fireheart
14. VIPER
15. Velvet Rays
16. Defiance
17. 永遠のAria
18. 衝天