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INTERVIEW

2024.07.12

斉藤朱夏、“君”との関係性を詰め込んだ5周年記念ミニアルバム『555』リリース!

斉藤朱夏、“君”との関係性を詰め込んだ5周年記念ミニアルバム『555』リリース!

今年の8月にソロデビュー5周年を迎える声優アーティストの斉藤朱夏が前作「愛してしまえば」以来、1年ぶりとなる通算4枚目のミニアルバム『555』をリリースした。ソロデビュー5周年記念と銘打たれたミニアルバムには、“変化”や“人生の転機”を意味するエンジェルナンバーが掲げられている。靴紐を結び直し、大きな目標に向かって走り出した彼女の現在の心境をじっくり聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ

――この取材時は全曲のレコーディングが終わったばかりという状況です。

斉藤朱夏 ツアーをやりながらのレコーディングだったので、シンプルに大変でしたね。この5周年というタイミングでミニアルバムを出す意味をずっと考えていて。たくさん向き合って、向き合いきれなかったタイミングもあったので、まずはやっとレコーディングが終わってホッとしています。去年、自分の中で色んなことがあり、心がぐちゃぐちゃになってしまって。正直、何を伝えていいのかがわからなくなってしまった時期がありました。どんな気持ちで音楽を作っていいのかと……でも、改めてこの5周年を振り返ったときに、今ここに自分が居られるのは“君”と歩いてきた物語あるからこそだなと思って。だからこそ今回のミニアルバムでは“君”との関係性を詰め込んだらいい形になるんじゃないかなと思い始めて。

――ライブハウスツアー中だったのが大きいのかも。

斉藤 それは間違いないですね。今、自分が素直に思っていることを歌うことで、聞いてくれてる人=“君”っていう存在との信頼や信用がより深まるんじゃないかなという実感があって。まだリリース前だったんですけど、「離れないで」だけはツアー初日から歌っていますし、「だらけ。」も10公演目で初披露して。このツアーを通して、「離れないで」の1曲だけでも既に自分が結びたいものが結べているなっていう感覚がある。それはきっと、“君”という人たちが、色んな思いを込めてライブに挑んできてくれてるから。5周年に向けて、リスナーのみんなの気持ちもどんどん大きなものに変わっていっている実感があります。

――その“結びたいもの”ってなんですか?

斉藤 私はデビューミニアルバム「くつひも」でデビューしているので、靴紐=リスナーでいてくれる“君”との絆だなって思ってるんです。そしてやっとここに来て、「くつひもの結び方」(1stライブのタイトル)が回収されてる感じがあって。あのときは結び方がわからなかったんですけど、今やっと結び方がわかって、自分のあのときの気持ちが回収されている。あのときから今がずっと繋がっているんだなと思ったし、少しずつ結び方がわかって、私たちって、ほどけたものをまた結び直してっていうことをずっと繰り返してきたんだろうなっていう感じですね。

――4月に先行配信された「離れないで」は温かくも切ない、90’sR&B。これまでにないサウンドですが、本作では作家陣がガラッと変わっていますよね。

斉藤 色んなクリエイターの人と楽曲を作っていきたい、歌っていきたいっていう思いがあったので、制作環境をガラッと変えたんです。結構な勇気でもあったんですけど。

――「離れないで」はどんなところから作り始めたんですか?

斉藤 リスナーの人からいただいた言葉を元に作った曲なんですよ。「どんどん朱夏ちゃんが遠くに行ってしまっているみたい」って言われたときに、全然そんなことないんだけどなと思って。

――ライブでもよく言っていましたよね。

斉藤 そう。むしろ近すぎるというか、ゼロ距離でやっているつもりなんだけど、なんでそう思うんだろう?って考えていて。やっぱりライブになかなか来れない人からすると、自分が知らないことがあることが寂しいみたいで。だから、遠くに行っちゃった気がするのかもっていう言葉を見て、「えー!むしろ離れてってるの、そちらじゃないの?」みたいな。

――推し変する人もいますしね。

斉藤 ずっと応援してくれていた人が、いつの間にか違う人を応援していることもあるし(笑)。それは、全然いいんですよ、私。一生同じ人を推し続けるってすごく難しいから、本当に全然OKで。でも、「遠くに行ってしまっているみたい」っていう言葉を見たときに、じゃあちゃんと言葉にして、歌にして伝えようと思って。そういうんだったら、離れないでいてよって。遠くからでもいいから見ていてほしいと私は思ってるから。しかも、どのタイミングで見に来てくれても嬉しいんですよ。全通をしないとダメとか、過去のグッズを持っていないとファンって言えないとか、ファンクラブに入ってないとファンって言っちゃダメっていうことはまったくない。そういう、知らない間に出来上がっているルールみたいなものを全部なくしたいんですよね。地元だから何となく足を運んでくれて、初めてライブに来てくれた人に対しても、「じゃあ、今日から私たちの仲間です!」って私は思っていて。ただ、やっぱり離れてほしくない気持ちはあるので、この5周年というタイミングで、改めてこういうことを言うことに意味があるなと思って作りましたね。

――6月に配信リリースされた「だらけ。」はロックンロールで、また全然違うテイストの曲ですよね。

斉藤 この楽曲は、デモから一緒に作り始めたんですけど、これはもう私のリアル体験をそのまま歌にしてしまいました(笑)。一番最初にプロットを書いたときに“人生波乱万丈だな”っていう言葉がぱっと出てきて。5年間で自分の中で色んな人生があって、私、このお仕事を始めてからもう10年くらいになるんですよね。この10年間で色んなことがあって、ソロデビューをしてからの5年間はさらに濃厚で。人とのコミュニケーションの難しさを感じたり、噂や嘘だらけ世界だなって思ったりとか。だから、この楽曲に対しては、リアルに吐き出したいっていうことをずっと言っていました。だから、今までの斉藤朱夏っぽい感じではあるけど、最後は未解決で終わるっていう。

――それがすごいですよね。解決してないまま曲にするっていう。

斉藤 あはははは。そうなんですよ。ステージに立つのが難しくなってしまったタイミングで書いたプロットでもあったので、もう心がずっとぐちゃぐちゃというか、もうどうすることもできないなっていう。自分は目を合わせて向き合っていたつもりでも、相手は違う方向を見ていたり、嘘に嘘を重ねられたりすると、自分の心が死んでしまう。その先に何かがあるのかな?って思っても、やっぱり何もないので、もう大丈夫ですって、何も言わずに離れていくことになる。だからこそ、今回は“修復不可能、未解決だー!”で終わるのが一番私にぴったりだなと思って。人生、未解決で終わることもめちゃくちゃあるよねっていう。だけど、サウンドはめっちゃ明るいっていう。

――“あたしは独りぼっちになった”と歌っていますが、続く「こころ」でも孤独を感じてますよね。

斉藤 アーティストってとにかく孤独なんですよね。初めて「くつひもの結び方」でライブをやったときにもすごく思って。アーティストってこんなに孤独なんだって感じて、ライブが終わってから大号泣しましたもん。「寂しい、つらい。でも、ステージ好きだし、歌うのも好きだし」って。そこで自分が変わっていくのかっていう未来が見えなくて、めちゃめちゃ泣いたんですよ。ステージに1人で立つことが怖かったんです。

――バンドメンバーがいましたよね?

斉藤 バンドメンバーがいるのはわかっているし、スタッフがいるのもわかっているし、目の前に“君”っていう人がいるっていうのもわかっているけど、それでも孤独になる瞬間がめちゃめちゃあって。それは、もしかしたらステージに立っている人間にしかわからない悩みかもしれない。でも私、アーティストとリスナーって鏡だと思っていて、私が“孤独”と感じている時は目の前にいる“君”も同じことを感じているかもって。だからこそ、あえて“孤独”という言葉を使うのは、みんなが孤独だと思ったときに、「朱夏の曲がある」と思ってくれたらいいなって。

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