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2024.07.03

絶望に彩られた世界の果てに、光を求めて――ワンマンライブ“Ave Mujica 2nd LIVE「Quaerere Lumina」”神奈川公演が示すバンドの核心

絶望に彩られた世界の果てに、光を求めて――ワンマンライブ“Ave Mujica 2nd LIVE「Quaerere Lumina」”神奈川公演が示すバンドの核心

幕間~ラストの演出が暗示する、Ave Mujicaというバンドの深奥

ここからライブは後半戦に突入。再びステージの灯りが燈ると、ドロリスが静かに、次に奏でる演目のタイトルを告げる。その楽曲の名は「Symbol I : △」。今年4月に配信リリースされたばかりの新曲だ。ライブ初披露ということもあって客席からは歓喜の声が上がる。ゴシックメタルを軸としたエクストリームなサウンドを身上とするAve Mujicaの持ち曲のなかでも、現時点で最も激しく苛烈といえる本楽曲。特にオープンハンドスタイルで全身を駆使して超速ビートを叩き出すアモーリスが凄まじく、両サイドに置かれたクラッシュシンバルを同時に叩くなど、サウンドだけでなく見た目においてもパワフルさを感じさせる演奏で観る者を圧倒する。その怒涛のリズムを駆動源に疾走するバンドの演奏、悲壮さに満ちたドロリスの歌声、厳粛を通り越して崇高ささえ感じさせるコーラス。ライトがステージを赤々と照らし出すなか、まるで炎が渦巻くような熱演が繰り広げられた。

そこからangela「KINGS」のカバーに繋げ、ティモリスがスラップ奏法を駆使してクールかつダイナミックに魅せるなか、ドロリスは王の如き高貴さに満ちた歌声を高らかと響き渡らせる。さらにスカコアのような高速シャッフルリズムが特徴的なCreepy Nuts「堕天」のカバーに雪崩れ込み、その熱狂的な演奏で観客もろとも奈落の底まで真っ逆さまに
“falling”していく。間奏でドロリスとモーティスが向き合いながら演奏して、ブレイクと同時にターンする見せ場もあり、ライブでは間違いなく盛り上がる楽曲だ。

熱狂と共に「堕天」の演奏が終わると、その余韻を断ち切るかのように、幕間映像がスクリーンに再び投影される。「愛してなんて、あげないから」(アモーリス)、「ああ誰か どうか、私を見てください」(ティモリス)、「だって これじゃ、私が空気」(ドロリス)、「高く、高く、積み上げる 哀れな積木たちのお墓 わたくしもすぐに仲間入り」(オブリビオニス)、「耳をもいで。目をくりぬいて、縫ってしまおう そうすれば、きっと 静かになる ぜんぶ、終わる」(モーティス)――そこに並ぶのはあまりにも絶望的な言葉たち。光さえない世界でただただ嘆く声。堕天の果てに、彼女たちが見ているのはどんな景色なのか。会場中が冷たく不穏な空気に包まれていく。

その静寂な空気を切り裂くように、ライブ初披露となる新曲「Symbol II : Air」でマスカレードを再開する。テンションコードを多用したジャジーなサウンドと艶やかなメロディ。重厚な響きはそのままに今までのAve Mujica楽曲にはない華やかさが加わり、まるで空虚な世界を楽しむような軽快さが備わっている。逆に言うと捨て鉢なフィーリングも感じられ、その退廃的な二律背反はまさにAve Mujicaと言えるだろう。そこから光のように降り注ぐコーラスと雷鳴のように激しいサウンドの対比が印象的な人気曲「Choir ‘S’ Choir」でシンフォニックな世界を築くと、間を置かず「ふたつの月 ~Deep Into The Forest~」へ。物々しいイントロから、1Aの“ああ 深く 深く 迷い込んだ森で”という歌詞に合わせるように迷い込んだような仕草で歌うドロリス、ステージ前に出てきて彼女に何かを託すオブリビオニスと、ミュージカルのような演出も交えながら進行していく。さらに2番では、その2人がお互い離れた場所で求めあうように手を差し伸べ、動きをシンクロさせる場面もあり、彼女たちの関係性を暗示するようなステージが展開される。

そして次がラストの曲に。オブリビオニスが左手を高く掲げながら、右手で印象的なイントロのフレーズを弾き始めると、会場からは歓声が上がる。そこからけたたましいギターが割り込んで「黒のバースデイ」の幕開けだ。ヘドバンや「オイ!オイ!」と声を上げて熱狂するオーディエンス。何もない世界に絶望し、暗闇で嘆き、彷徨うなかで、また新たな何かに生まれ変わる感覚。ドロリスが悲壮感を漂わせながらも強烈なボーカルで紡ぐサビの“生まれ変わる ああ 本当の私に”というフレーズは、このライブもまた、Ave Mujicaにとっての新しいバースデイであることを示唆しているのかもしれない。“破壊”と“再生”を何度も繰り返して、常に世界を更新し続ける。それがAve Mujicaのマスカレードの神髄であるのではないかと感じさせる、気迫に満ちたステージングだった。

ラスサビ終わり、オブリビオニスがスカートの裾をつまんで優雅にお辞儀して白熱のライブは締め括られたわけだが、この日のマスカレードには続きがあった。再びステージが暗転してスクリーンに映し出される映像。「探しても」「探しても」「光は見えない」「天を」「地を」「彷徨った」と、メンバー5人が細切れに言葉を繋いでいく。感情の見えない淡々とした語り口が、余計に切羽詰まったものに聞こえる。「この先に、光が?」「わからない」「遠く、遠く、まだ遠く」「足が潰れても歩き続ける」「世界の果てへ」「光を、求めて」。その言葉に続いて、凛としたピアノの音色が流れ始め、スクリーンにはおぼろげな光が映し出される。切なくてドラマチックでどこか温かなメロディ。やがてそこにチェロの演奏が加わって、哀しくも美しい音楽を紡いでいく。生命の脈動のように力強いそれは、絶望に満ちた“世界”を淡く照らす希望の“光”のようだ。ここで我々は気づく。あんなにも重く禍々しいAve Mujicaの世界にも、光が射す可能性があるということを。そのたおやかな“光”の音楽がフィナーレとなって、この日の公演は本当の終幕を迎えた。

ライブタイトルの「Quaerere Lumina」が象徴するように、光を求める彼女たちの想いや願いが投影された今回のマスカレード。幕間やラストの演出を含め、今まで以上にAve Mujicaと各メンバーの本質に近づくことのできる公演だったのではないだろうか。7月7日に行われる「Quaerere Lumina」愛知公演でも、きっとそれを体感できることだろう。いずれにせよ、彼女たちの進む道の先に、光があらんことを願う。

■Ave Mujica 2nd LIVE「Quaerere Lumina」 神奈川公演
2024年6月8日(土)@神奈川県民ホール 大ホール
公演詳細: https://bang-dream.com/events/avemujica_2nd

M1 素晴らしき世界 でも どこにもない場所
M2 Ave Mujica
M3 Angles
M4 暗黒天国
M5 Mas?uerade Rhapsody Re?uest
M6 神さま、バカ
M7 Symbol I : △
M8 KINGS
M9 堕天
M10 Symbol II : Air
M11 Choir ‘S’ Choir
M12 ふたつの月 ~Deep Into The Forest~
M13 黒のバースデイ

●ライブ情報
Ave Mujica 2nd LIVE「Quaerere Lumina」愛知公演
日程:2024年7月7日(日) 開場17:00/開演18:00(予定)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

チケットご購入はこちら:https://eplus.jp/avemujica_2nd/
※一部席種は販売終了の場合がございます。
※先着順・上限数に達し次第終了

©BanG Dream! Project

関連リンク

BanG Dream! 公式サイト
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Ave Mujica 公式X
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Ave Mujica 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@bang_dream_AveMujica

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