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INTERVIEW

2024.06.22

『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』喜多郁代役・長谷川育美インタビュー「この結束バンドという形態がめちゃくちゃ幸せで大好き」

『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』喜多郁代役・長谷川育美インタビュー「この結束バンドという形態がめちゃくちゃ幸せで大好き」

「私、大丈夫」ステージに立つことで、歌唱を楽しめるように

――先ほど、「結束バンドらしさ」という言葉がありましたが、長谷川さんの思う「らしさ」を改めて言葉にするとどんなイメージでしょうか?

長谷川 不完全でもいいというか、むしろきれいじゃなくていいなと思っていて。その「らしさ」が逆に味になっていると思うんです。音楽的に言うと、『ぼっち・ざ・ろっく!』の作品のなかの結束バンドと、現実世界でのフェスに出るようなバンド活動がかけ離れざるを得ないのは難しいところではあるんですけど……。

――作中では荒削りながらも青春のパッションを思い切りぶつけていますが、リアルなステージに出る結束バンドはプロフェッショナルである必要があると。

長谷川 そうですね。立つ舞台が大きいので、やっぱりしっかりしたものを見せなければと思っています。そこは同じ「結束バンド」でありながらも、作中とライブで切り替えてまた違う表現をしているんです。私はもちろん上手くは歌いたいけど、それだけでなく感情を乗せたいという思いが強くあって。それは自分の中で“恒星”(2023年5月21日にZepp Haneda (TOKYO)で開催されたワンマンライブ“結束バンドLIVE-恒星-”)の頃から出来てきている感じがあります。そのときにライブならではの表現をたくさん試して、ライブ感みたいなものを掴めたんです。完璧でなくてもいいし、なんならちょっと荒いところはあるかもしれないけど、それが「結束バンドらしさ」になっていたらいいなと思います。

――それに関連して伺いたかった質問がありました。長谷川さんは、TVアニメの物語で描かれた喜多ちゃんとしてフリーズパックしたものをステージ上で再現するのか、それとも生きた喜多ちゃんとして経験をアップデートさせていくのか。今のお話からすると後者のようですね。

長谷川 そうですね。やっぱり作中のSTARRYでオーディションを受けている結束バンドが、“JAPAN JAM 2024”のステージに立てるわけはないと思うんです(笑)。アニメのままの結束バンドを持っていくと、私の中で整合性が取れなくなるので、立つステージに合わせていいと私は思っています。でも、気持ちは絶対に結束バンドですけどね。やっぱりライブならではという部分を大事にしていますし、それぞれの場所だからこそ出せるものがあると思っていて。“JAPAN JAM 2024”のときに出せたものが、9月から始まるZeppツアーで同じように出せるかというと、そうではないだろうし、その場所で出せる生感、それこそがライブだし、私はそれを大事にしたいなという気持ちでステージに立っています。

――その感覚はいつ頃から固まりましたか?

長谷川 これも“恒星”の頃からです。最初の“ぼっち・ざ・ろっく! です。”(2023年4月23日にヒューリックホール東京にて開催されたスペシャルイベント)のときは、自分の中で納得のいくライブができなかったので、“恒星”のときは最初不安で、とにかく今このステージを一生懸命やろうとしか考えていませんでした。でも、歌っている最中からもう楽しすぎて、早々に「私、大丈夫」って思えたんです。音楽ディレクターの岡村(弦)さんからも「長谷川さんは楽しむ力がある人だ」と言っていただけたのが、すごく嬉しくて。それって当たり前に持てるものではないと思うので、それが私の強みかなと思いました。

――そういった経験をすることによって、今回の新曲も長谷川さんのなかで上手く歌えるようになったというような実感は持っていますか?

長谷川 元々ロックにあまり触れてきていなかったというのもあり、レコーディング中も歌い方ひとつからアドバイスをしていただくことが多かったのですが、ここ最近の曲は「もう結束バンドとしての歌い方が馴染んできたね」と言っていただけるくらい、瞬時に結束バンドとしての歌唱ができるようになってきた感覚はあります。歌も多分成長している気がします。

――後藤ひとり役の青山吉能さんも絶賛する長谷川さんの歌唱ですが、当初はそんなご苦労があったんですね。

長谷川 歌に感情を込めているつもりでも、聴いてみたら案外さっぱりして聞こえることがこれまではあったんです。でも最近は自分の中でそれがちょっとずつできるようになってきた感じがしていて、それがとても嬉しいです。歌というのは、どうしても上手い・下手という基準がありますけれども、私が好きなのは気持ちが乗っている歌なんです。そういう歌を歌える人間になりたいと思っていますし、結束バンドの楽曲は内から出てくる熱や叫びがすごく込められているものばかりなので、そういう感情面はやっぱり大事だなと思っていて。だからこそ技術も磨いて歌をより良いものにしていけたらと、ずっと思っています。

――その感情をより込められるようになった理由はご自身では何だと思いますか?

長谷川 やっぱり、ステージ経験が大きいと思います。そもそもこれまで歌のお仕事もそこまでなかったし、ましてステージに一人で立って歌うなんてことは、結束バンドまでありませんでしたから。そこから色々と経験させてもらって、こう表現したいという気持ちもどんどん出てきて、それが今の歌唱に繋がってるんじゃないかなと思います。

――ライブを楽しめている様子が伝わってきます。

長谷川 そうですね。でも私は声優としてのボーカルというか、結束バンドの喜多ちゃんとしての向き合い方しか知らないので、仮に「長谷川育美としてライブをやってください」と言われても、特にやりたいことは思いつかないんです。結束バンドだから「私はこういう表現がしたい」という欲が湧いてくるんだろうなと、毎回思いながら歌っています。

――喜多ちゃんとしてというか、彼女を通しての表現。

長谷川 歌唱の部分で喜多ちゃんのフィルターを通すことはもちろんそうですし、作詞の方もぼっちちゃんをその身に落とし込んで書いてくれているので、ぼっちちゃんが書いた歌詞をどう歌うべきか、作品全体で見せたいものは何かを考えたうえで表現しますし、やっぱり作品というものがあるからこそ湧いてくる意欲なんだと思います。そう考えると私はやっぱり声優だなと思います。そして声優をやっているからこそできる表現もあると思うので、そういうところを大事にしていきたいなと思います。

――“JAPAN JAM 2024”の映像を少し拝見しましたが、ファンの温かさが印象的で、フェスにおけるアウェイ感がありませんでした。ご自身ではこれをどのように受け止めましたか?

長谷川 本当にアウェイ感がありませんでした。実際にステージ上から「『ぼっち・ざ・ろっく!』を知らない人ー?」って聞いたら、むしろ知らない人の方が少なかったんです。私としてはもっと知らない人がいてくれたら、これから好きになってもらえる人を増やせると思ったのに(笑)。でも、こんなにも大勢の人がフェスにまで会いに来てくれたのは嬉しかったですね。私自身も、推しが出演するとなっても、フェスまではさすがに……と見送ってしまうタイプなのでわかるんです。こうしておそらく馴染みがないところにまで会いに来てくれるのは勇気のいることだと思うので、とても嬉しかったです。

――さらにこの夏は日本最大級の野外フェス“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024”への出演があります。こちらの展望をお聞かせください。

長谷川 結束バンドはプロのミュージシャンの方々に演奏していただいて、キャストが歌うという方針を取っているのが特徴です。たまに「キャストが演奏してほしい」という声をいただいたりするのですが、私は自分だけが創り手だと思ったことは一度もなくて。当たり前の話ですが、アニメ作品というのは大勢のスタッフさんが愛を持って各々のお仕事を通じて1つのものを作っていて、私はそれが大好きなんです。だから、私はこの結束バンドという形態がめちゃくちゃ幸せで大好きですし、私もこの結束バンドのメインボーカルとして楽曲をとにかくたくさんの人に届けられるように、常に成長していけたらと思っています。普段は役者なので、慣れないことも多いですけれども、感情の部分であったり、その場所のライブで得られた感情を大事にしながら、結束バンドの曲を届けられたらいいなと思います。

――アニメが始まった頃に“ROCK IN JAPAN”に出られるなんて……。

長谷川 思わないですよ!(笑)。この前、“JAPAN JAM”のステージに立ったときに、「これ、声優をやっていて見られる景色じゃないな」って思いましたもの。貴重な体験をさせてもらっていますし、それもこうして素晴らしい作品に巡り会えたからこそだと思っているので、この経験は大事にしていきたいですし、できることならもっと色んな場所に出ていきたいと思っています!

――秋からは「結束バンドZEPP TOUR 2024 “We will”」が予定されています。意気込みはいかがでしょうか。

長谷川 前回の“恒星”は一夜限りのワンマンライブだったのが、今度は全5公演のツアーとなります。まだどんな内容になるかはまったく知らないのですが、ツアーでやっていくからには、“恒星”よりも進化したところは見せたいですし、ツアーの中でも成長していきたいと思います。毎月ライブができるなんて、またとない機会だと思うので、体力面に気をつけて、みんなで成長の場にしていけたらと思っています。


●作品情報
『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』
前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』全国公開中
後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』2024年8月9日(金)公開

■スタッフ
原作:はまじあき (芳文社「まんがタイムきららMAX」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成・脚本:吉田恵里香
キャラクターデザイン・総作画監督:けろりら
副監督:山本ゆうすけ
ライブディレクター:川上雄介
ライブアニメーター:伊藤優希
プロップデザイン:永木歩実
2Dワークス:梅木葵
色彩設計:横田明日香
美術監督:守安靖尚
美術設定:taracod
撮影監督:金森つばさ
CGディレクター:宮地克明
ライブCGディレクター:内田博明
編集:平木大輔
音楽:菊谷知樹
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:八十正太
制作:CloverWorks
配給:アニプレックス

■キャスト
後藤ひとり 青山吉能
伊地知虹夏 鈴代紗弓
山田リョウ 水野 朔
喜多郁代 長谷川育美

関連リンク

アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」公式サイト
https://bocchi.rocks/

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