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REPORT

2024.06.19

澤野弘之の軌跡がここに――。尊敬するASKAも登場した“澤野弘之 LIVE [nZk]008”を振り返る。

澤野弘之の軌跡がここに――。尊敬するASKAも登場した“澤野弘之 LIVE [nZk]008”を振り返る。

作曲家・澤野弘之によるナンバリングライブシリーズ“LIVE [nZk]”の最新公演、“澤野弘之 LIVE [nZk]008”が 6月2日、東京・NHKホールにて開催された。“LIVE [nZk]”シリーズとしては2022年に東京国際フォーラムにて開催された“LIVE [nZk]007”以来2年ぶり。脇を固めるお馴染みのミュージシャン陣と、彼のルーツにあるASKAを含む、同じく彼の楽曲を彩ってきたボーカリスト陣を迎えたこの日。澤野曰く“この日だけのスペシャル”な音楽たちが会場を包み込むなか、彼の歴史そのものが透けて見えたかのような壮大なステージの模様をお届けしよう。

PHOTOGRAPHY BY 西槇太一
TEXT BY 澄川龍一

様々な表現を見せながら展開されていく大スケールのパフォーマンス

2年ぶりとなる“LIVE [nZk]”シリーズの会場となった東京・NHKホール。そのステージ上は、“LIVE [nZk]008”をイメージしたロゴのバックドロップを中央に配置して、足場のような格子が設置されているインダストリアルなイメージだ。また、この時点でドラムセットなどがステージの高いところに設置されているのがわかることから、バンドメンバーの立ち位置も前後左右だけではなく高さも加わった、より立体的なステージが予想される。そんな、開演前からどこかスケールの大きいライブとなる期待感が高まるなか、会場が暗転し、『青の祓魔師』シリーズより「Battle Scars」のイントロダクションが鳴り響くなか、バンドメンバーが入場。上段の下手から飯室 博(gt)、藤崎誠人(dr)、田辺トシノ(b)、椿本匡賜(gt)が立ち、下手側のステージより少し高いところに室屋光一郎(vn)、そしてバックドロップの下にあるピアノの前に、大歓声のなか澤野弘之がゆっくりと歩いてくる。時折客席に向かって拍手を煽る仕草をしながらピアノの前に座ると、この日最初のボーカリストであるLaco(EOW)が登場。そこにバンドサウンドが加わり、Lacoがラップを刻み出す。上下左右に配置されたバンドという光景も相まって、実にスケール感の大きいオープニングだ。オリジナルの「Battle Scars」ではDavid Whitakerがマイクを握っていたこの曲だが、Lacoの熱量の高い、そして艶っぽさも感じさせるフレーズも負けず劣らずかっこいい。のちのMCでLacoは「生まれて初めてのラップ」と語っていたが、初めてとは思えない、むしろこの先ほかの楽曲でも聴いてみたくなるほど板についていた。そんなラップパートのあとは彼女らしい伸びやかなフェイクを聴かせた、室屋のバイオリンの硬質なフレーズに導かれて「Trollz」へと続く。バイオリンとギターのヒリヒリするような演奏に加えて藤崎の重くタイトなドラムのなか、これぞLacoといえるコシの強いボーカルで会場の熱量をグイグイと上げていく。次の「Never Stop」でも重くグルービーな歌唱を聴かせながら、ステージを動き回って盛り上げていく。ここ最近の澤野のライブではオープニングを任されることの多いLacoだが、トップバッターとして盤石のパフォーマンスを見せていった。

ここで最初のMCに入り、澤野が観客にご挨拶。「“LIVE [nZk]007”から2年ぶりの開催になるんですけど、今回だからこそ集まってこられたボーカリストたちと、今回ならではのプログラムを考えていますので、最初から最後まで皆さんと楽しんでいこうと思います」とライブの開幕を宣言したあとは、Lacoも「めちゃくちゃ楽しかったです!」と充実した表情を見せる。そしてリラックスしたMCのあとは、引き続きLacoを迎えて「FAKEit」を披露。ミステリアスなイントロのあとの歌い出し、ここでのLacoのボーカルの“掴み”はやはりさすが。ドスンとしたヘビネスのなかで躍動感溢れる歌唱を聴かせていった。

曲が終わってLacoがステージを去ると、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』より「TRACER」のイントロが演奏され、mpiとBenjaminの2人が登場。軽快なサウンドの中で2人の熱いハーモニーを聴かせたかと思えば、そのまま「BITE DOWN」へと繋がり、今度はミクスチャーテイストなロックサウンドに合わせてBenjaminのラップを聴かすなど、さすがの変幻自在なパフォーマンスを聴かせていく。続けてTVアニメ『群青のファンファーレ』の「RUSH」では疾走感溢れるサウンドに2人のボーカルが清涼感たっぷりに聴かれ、冒頭の重々しい展開から一転して、軽快なセットとなっていった。そんな2人と澤野によるMCを挟み、澤野が「せっかくこの2人がいるならこの曲を」と言って始まったのは、映画『プロメア』からの大アンセム「Inferno」だ。冒頭の2人の歌い出しで大歓声と共に観客が一斉に手を挙げる光景は圧巻で、観客が大きく手を振るなかで最後まで熱く、そして爽やかなステージが展開されていった。

常連から初出場、久々の顔と“LIVE [nZk]”を彩る歌声たち

続いて、「DOA」のヘビーなイントロが鳴らされると、観客は待ってましたとばかりに歓声と拍手を送る。ここでもちろんボーカルを務めるのは、久々のライブ登場となるAimee Blackschlegerだ。アグレッシブなギターを中心にとした爆発的なサウンドのなか、Aimeeの力強く伸びやかなボーカルは健在で、重厚な世界観を展開していく。そして室屋がステージに復帰しての「Light your heart up」では、その室屋のバイオリンを含むアコースティカルなサウンドと共に、Aimeeの優しいボーカルが聴かれていく。改めて幅広く豊かな表現力にうっとりとしていると、MCではAimeeが「私のお気に入りの曲」と紹介して、これまた懐かしいTVアニメ『ギルティクラウン』からの「Release My Soul」へ。アコースティックギターのアルペジオと澄み切ったボーカルが会場を包む。やはり彼女は澤野弘之の音楽に欠かせない重要な声であることを示す、素晴らしいパフォーマンスとなった。

「Release My Soul」の澄んだ空気感の余韻のなかで、続いて披露されたのは「DARK ARIA 」。バイオリンと田辺によるコントラバスの重厚な弦のアンサンブルが流れるなか、ステージ上にはふわっとした衣装のXAIが登場。まるで妖精のような佇まいのXAIが美しくもハリのある歌唱を響かせる。続いては一転してダンサブルなテイストの「LEMONADE」へ。ここではグルービーな演奏に合わせてXAIもまたビートに的確なアプローチを見せながら、躍動感溢れる歌声を響かせていった。MCではかねてからの澤野の音楽のファンでもあり、初めての“LIVE [nZk]”参戦ということで、「オタク大勝利」と喜びを見せるXAI。澤野ファンでもあり『ガンダム』好きでもあるという彼女が続いて披露したのは、実物大ユニコーンガンダム立像のテーマソングでもある「Cage」。バイオリンが活きるアコースティックな序盤のアレンジ、ドラマチックに展開していくにつれ高揚していくXAIの表現力――大きな感動を生むシーンとなった。

ステージもいよいよ終盤。続いてはmizuki(UNIDOTS)の登場だ。彼女が歌唱を担当する楽曲の中でもすっかりここ最近のお馴染みとなった「Avid」は、まさにmizukiらしい澄み切った歌声がもの悲しく響く、絶品のパフォーマンス。そうした独特の浮遊感のまま「EGO」へ。mizukiのボーカルもさることながら、室屋のバイオリンと椿本のギターが空間的に鳴る、素晴らしい演奏となっていた。改めてだが、この日のサウンドと澤野と共に支えた演奏陣のパフォーマンスは本当に素晴らしく、“LIVE [nZk]007”以来2年ぶりに参加となった室屋のストリングスも加わり、様々な楽曲のテイストに応じた演奏を全身で感じることができた。続くMCでは、今年でSawanoHiroyuki[nZk]の活動が10周年を迎えるに触れ、10年以上前の始まりの楽曲「A/Z」「aLIEz」を歌ったmizukiと活動を振り返り、2人らしい穏やかな会話が続く。そんな一場面を経て次に披露されたのは、およそ10年前リリースしたTVアニメ『アルドノア・ゼロ』から「Keep on keeping on」へ。時折ステージを動きながら、また全身を使ってアグレッシブな歌唱を聴かせていった。

次のページ:澤野弘之に多大な影響を与えたASKAとの、運命の共演

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