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INTERVIEW

2024.06.17

愛美が考える“今を生きる”ということ――ニューアルバム『LIVE IT NOW』に込められた想いと彼女の人生観の変化に迫る!

愛美が考える“今を生きる”ということ――ニューアルバム『LIVE IT NOW』に込められた想いと彼女の人生観の変化に迫る!

愛美のニューアルバム『LIVE IT NOW』は、まさしく“今を生きる”すべての人に届いてほしい素晴らしい作品だ。昨年のアニメタイアップシングル3作品「MAGICAL DESTROYER」「煩悩☆パラダイス」「HELP」で獲得した新たな音楽性とチャレンジ精神、そして自分自身のライフスタイルの変化に伴い、クリエイティブに対する熱量の高さはそのままに、より自由で伸びやかな作風が、彼女のアーティストとしてのキャリアの新たなステップを感じさせる1枚になっている。BRADIO、すりぃ、渡辺壮亮(嘘とカメレオン)、宮田’ レフティ’ リョウら豪華アーティストが参加し、今を生きるために必要なエネルギーが詰まったバラエティ豊かな本作を、愛美本人の言葉と共に紐解く!

INTERVIEW BY TEXT BY 北野 創

人生観の変化、新たな気づきがもたらした新作『LIVE IT NOW』

――2023年はタイアップシングル「MAGICAL DESTROYER」「煩悩☆パラダイス」「HELP」を3クール連続でリリースしたわけですが、改めて愛美さんにとってどんな経験になりましたか?

愛美 自分にとってはかなり大きな経験になりました。というのも、1曲1曲に対して、いい意味で肩の力が抜けるようになって、自分の名義で発表する楽曲に対して、恐れなくなったというか。3クール連続でシングルを発表して、各作品に3曲収録するとなったときに、多くのアイディアが必要になる。そこで色んな人のセンスに頼って任せられるようになったんです。それができるようになったのは自分にとって大きな変化で、今後も長くアーティスト活動を続けられそうな予感がありました。

――それまでは自分のこだわりが逆に重荷になっていた部分があったんですね。

愛美 そうなんです。それと楽曲に関しても、たくさん作る必要があったので、色んなジャンルに挑戦することができて。「SOS_SOS」(「煩悩☆パラダイス」のカップリング曲)や「Noise in me」(「HELP」のカップリング曲)は今までなかなかチャレンジできなかった方向性の楽曲だったので、お客さんの反応や自分の手応えを含めて確かめることができたし、短いスパンで楽曲を仕上げていくという意味でも良い経験になりました。

――それらのシングルを経て制作された今回のニューアルバム『LIVE IT NOW』。「MAGICAL DESTROYER」「煩悩☆パラダイス」「HELP」のシングル表題3曲のほかにも新曲がたっぷり収録されていますが、制作はどのように進めていかれたのでしょうか。

愛美 今回はライブツアーが同時に決まっていたので、それを踏まえてライブで楽しむことを前提にしたアルバムにしたくて。それと同時に、自分がここ数年で“今を生きる”ということについてより深く考えるようになって、自分の人生との向き合い方が変わってきたように思うので、それらを総合した『LIVE IT NOW(=今を生きる)』をアルバム全体のテーマとタイトルにしました。そこから色んなアーティストの方に、アルバムのテーマとライブのことも踏まえて新曲を作っていただいた流れになります。

――「人生との向き合い方が変わってきた」というお話しでしたが、それはどのような変化だったのでしょうか。

愛美 言葉にするのが難しいんですけど……美味しいご飯が食べられて、毎日バラエティ番組やYouTubeを観て笑えていたら、それだけでいいや、と思えるようになったというか。以前はご飯もたくさん食べたいし、バラエティ番組もたくさん観たいし、お仕事もたくさんしたいし、もっと売れたいし(笑)。欲が多かったというか、常に満たされない感覚のほうが強くて。それが「まあいっか」と思えるようになりました。

――それは最初にお話しされていた、楽曲制作において色んな人に任せられるようになった、という心持ちの変化とも結び付くものですか?

愛美 すごく結び付くと思います。前までは「まあいっかではダメでしょ!」と思っていたのが、今はいい意味での「まあいっか」が増えたなと思っていて。私は元々、最初に全部を説明しておきたい気質で、楽曲制作に関しても最初に全部を詰め込もうとしていたし、その楽曲が世に出た瞬間に全部が伝わってほしい気持ちが強くて。なので受け取り手の気持ちを想像して楽曲を作ることが多かったんですね。でも、「こう受け取ってほしい」と思いながら作ったとて、実際にどう受け取るかは人ぞれぞれで違うものであるのなら、逆に隙がある状態とか聴き手の心が入る余裕がある状態で楽曲を届けて、委ねて、もし「説明してほしい」と言われたときに説明すればいいや、と思うようになったんです。

――なるほど。楽曲自体の解釈も人に委ねられる心境になったわけですね。

愛美 それはやっぱりこれだけの曲数をリリースさせてもらえているからこそ思えたことだと思うんですよね。何か大きなきっかけがあって自分の気持ちが変化したというよりも、色んなことが少しずつ繋がって、その結論に至っているのですが、そこから自分の世界の見え方も変わってきた感覚があって。特に「自分は完璧ではない」ということを受け入れられるようになったことが大きいです。だからこそ相手にも完璧を求めないし、「お互い様だよね」というところに落ち着けるようなったのが、自分の人生観としてはすごく大きな変化で。色んな物事に対して「いや、ちょっと待て。自分だって完璧じゃないから人のことは言えないし」と考えると、全部がすごく楽になったんですよね。だから今はすごく過ごしやすくなったなあと思います。

――それまではある種の完璧主義で自分の中の理想像に捉われがちだったのが、その気持ちを手放せるようになったというか。

愛美 そうですね。以前は仕事をするうえでも自分に完璧を求めていたから、息苦しいところもあったけれど、“完璧ではない自分”も受け入れられるようになったから、他者への接し方も変わりましたし、モノづくりもしやすくなりました。それは今回のアルバムのテーマの“今を生きる”にも繋がるところがあって。これも「今を生きてやる!」みたいな強い感じではないんですよ、私の中では。

――もっと軽やかな意味合いなのでしょうか?

愛美 もっと温かいものというか。1日1日をもっと穏やかに、幸せな日として過ごしたいよね、という方向性です。でもテーマの解釈は自由です!

すりぃ提供のアニメタイアップ曲からBRADIO節炸裂のファンクまで!

――ここからはアルバム収録の新曲について詳しくお聞かせください。まずリード曲の「メリトクラシー」は、TVアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』のエンディング主題歌で、ボカロPのすりぃさんが手がけています。

愛美 すりぃさんはすごくポップで印象的なワードを取り入れた楽曲を作られる方というイメージがあったのですが、愛美にどんな曲を書いてくださるのか想像がつかなかったです。でも、今回すごく愛美とマッチした楽曲を書いてくださって、私はとてもとても満足しております!(笑)。

――アニメには愛美さんもミレーヌ役で出演されていますが、作品のどんな部分に寄り添っている楽曲だと感じましたか?

愛美 “持って生まれた能力”という部分に着目して書かれた楽曲だと感じました。アニメの世界観としては、生まれ落ちた環境や“ギフト”と呼ばれる特殊な才能が重要視される世界なんですが、それを俯瞰的に見つつも、社会の仕組みに憤りを感じるところが、感情としてすごく共感できるなと思って。

――愛美さんは社会の仕組みに憤りを感じているのですか?

愛美 そういうときもありますね。それこそ今のニュー愛美になる前、人生観が変わる前の私は常に憤っていたと思います。理不尽なことには怒りたくなるし、嘆いていましたね(笑)。

――逆に言うと、今はあまり憤っていない?

愛美 そうなんですよ。数年前に比べると、あまり憤らなくなったなあって感じますね。大人になったのかなあ?最近、噂話とかもあまり好きじゃなくて。人から聞いた「あの子がこう言っていたらしい」とかの「らしい」という話は、人から人へ伝聞していくなかでニュアンスが変わるものなので、なんか嫌だなあって思うんですよね。まあ年頃の愛美は、そういう噂話も好きだったんですけど(笑)、最近はめっきり興味がなくなってしまって。

――それも人生観の変化に伴うものなんでしょうね。

愛美 多分、他人に対して何も思わなくなったのかなあ。だから世間に対しても何も思わなくなったというか。それも「自分は完璧ではない」というところに繋がるんですよね。

――「メリトクラシー」のお話しに戻りまして、この楽曲の愛美さんの歌声からは、憤りだけでなく、勇ましさやうんざりしたような雰囲気など、様々な感情を歌い分けて表現されているように感じました。

愛美 それこそさっきお話しした俯瞰的な視点と、自分が思う感情を出す視点を住み分けしながら歌うことができたと思っていて。Aメロは悟ったような、ちょっと冷めたようなニュアンスを入れつつ、サビではまさに憤りを出して歌ってみたり、レコーディングしながら組み立てていきました。

――アルバムの1曲目「オネシャス!」は、ファンキーかつエネルギッシュな音楽性で定評のある3ピースバンド、BRADIOが楽曲提供および演奏で参加しています。

愛美 BRADIOの皆さんとはリモートで打ち合わせもさせていただいたのですが、私としては自己を解放できるような曲をとお願いしてみました。私は自己開示が苦手で、ライブでゾーンに入りたいけど入れないことが多いんですけど、そのギアをグッと入れられる楽曲になるといいなと思って。

――実際、ファンキーで熱量の高い楽曲になりましたが、ライブでギアを入れられそうな感触はありますか?

愛美 入れられそうです!みんなでクラップできる楽曲だし、振付も付けられそうなので、お客さんと一緒に盛り上がれると私も反応を見て安心できるし、そういう部分も込みでギアも入れられるんじゃないかなと思って。ライブで歌うのが楽しみです。

――4曲目の「5&I」は爽やかな曲調ですが、歌詞に“6度目の世界でも 僕らをはじめよう”という印象的なフレーズがあって、スケールの大きなメッセージが込められた楽曲ですね。

愛美 私も“生まれ変わり”はあるんじゃないかと思っているので、この楽曲の世界観もすんなり受け入れられました。他の楽曲は割と「魂!」という感じの楽曲が多いんですけど、この楽曲に関しては(優しい声音で)「魂」という感じがして……とにかく心がフッと軽くなるような楽曲だと思いました。「また会える」と思ったら心が軽くなるなって思いますし、「きっとこの目で見るこの世界は一度切りだから、今、伝えるべきことは伝えよう」というメッセージもすごくわかるし。でも、魂レベルでは「きっとまた会えるよね」と信じている。生きるうえですごく希望になると思いました。希望の歌です。

――愛美さんの歌声からもポジティブなフィーリングが感じられました。

愛美 この曲は口角を上げて歌いました。今の自分は何回目の人生なのかはわからないけど、不思議だなあって思うんですよね。どの時代に生まれ落ちるかはわからないし、この時代に生まれて良かったなと思うこともあれば、もう1世代あとに生まれかったなあと思うこともあったりして(笑)。でも、今の私はこの時代に生きているわけで。せっかくこの世界で自分が選び取った環境があるのであれば、この人生を楽しんでみたいなと思える曲です。

――まさに『LIVE IT NOW(=今を生きる)』の精神が反映された楽曲ですね。続いての「if」は愛美さん自身が作詞されたバラード調のエモーショナルなナンバー。“手紙”をモチーフにしたような内容に感じました。

愛美 “手紙”と言えば“手紙”なのですが、どうしてそういう形にしたかと言うと、とても尊い感情というか、気持ちのレアリティを表現したかったんです。

――気持ちのレアリティ、というのは?

愛美 手紙ってなかなか書かないものじゃないですか。私もファンレターをもらう立場として、その手紙を書いている時間はすごく尊くて、かけがえのないものだと思うんです。でも毎日書くものではないし、手紙はすごく特別な存在に感じるんですよね。その手紙を比喩表現として、それくらい大切な気持ちだよ、ということを表現しました。

――ということは、気持ちのレアリティとしては最上級ということ?

愛美 はい。めったに伝えない気持ち、という感じですね。これは私が出演しているゲーム作品の、とある関係性について掘り下げた曲なのです。

――……今、何となく察しがついて感情が爆発しそうです。

愛美 そういう具体性のある楽曲に挑戦できるというのも、アルバムならではだと思うんですよね。

――「if」というタイトルの意味も噛み締めながら聴かせていただきます。続いての「C’est la vie drive」は、嘘とカメレオンの渡辺壮亮さんが書き下ろした、疾走感溢れるアグレッシブな楽曲ですね。

愛美 プロデューサーさんが以前に嘘とカメレオンを担当されていたご縁もあってお願いしました。きっと愛美ファンがみんな大好きな王道ロックになったと思います。サビでは懐かしい愛美が顔を出すというか、10年前くらいの愛美のような雰囲気があるので、コアなファンの人には特に刺さるんじゃないかと思います!音の感覚や響きを含めて懐かしい気持ちになりましたね。

――それは意識してそう作られたわけではなく?

愛美 はい。結果、出来上がったら「なんか懐かしいなあ」っていう気持ちになったんです。勢いがあって思い切りのいい、正統派の楽曲なので、ロック魂をそのままぶつければ成立するだろうなと思いながら歌いました。

次のページ:“これが人生最後の歌になるかもしれないから”

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