高垣彩陽と豊崎愛生がコラボレーション楽曲「トゥインクルクス」をリリース!ミト(クラムボン)×riya(eufonius)のタッグで紡がれる彼女たちの新たな煌めきは、どのようにして生み落とされたのか。そしてそれぞれにとって大切なソロ楽曲のデュエットによるリビルドは、2人にどんな感情をもたらしたのか。高垣彩陽×豊崎愛生にロングインタビューを敢行した模様をお届けする。
INTERVIEW BY 青木佑磨(学園祭学園)
TEXT BY 市川太一(学園祭学園)
――高垣彩陽&豊崎愛生名義での楽曲「トゥインクルクス」がリリースされるということで、まずは楽曲制作にいたった経緯からお伺いしたいです。
高垣彩陽 元々は2人でツーマンライブをやろうというのが最初にあったんです。4月28日の立川ステージガーデンでのライブが決まって、その打ち合わせが今年の頭にあって。それで集まったらスタッフさんから「せっかくのツーマンなので2人の新曲を作ります!」とサプライズ発表されました。
――お二人だけに秘密で進行していたんですね。でも4月のライブ用の新曲を1月に制作開始は、なかなかタイトなスケジュールですね。
高垣 そうですね(笑)。だから打ち合わせもライブというよりは新曲の話がメインになりました。その日のうちに私から、「今のタイミングで愛生と私で何か歌わせてもらえるんだったら、ミトさんに曲を書いてもらえないでしょうか?」と提案させてもらいました。
――第一指名というか、ミトさんのお名前はすぐに浮かんだのでしょうか?
高垣 はい。私はミトさんとお仕事をご一緒させていただいたのは、「私の時計」でベースを弾いていただいた時くらいしかなくて。ずっとミトさんが作った愛生の曲を素敵だなって思っていて、愛生とたくさんお仕事をしているからこそ愛生のことをよくわかっていると思うし。ミトさんはスフィアのライブを観に来てくださったこともあるし、私のソロコンサートにもわざわざ大阪まで足を運んでくださったんですよ!私たち2人のことを音楽性やパーソナルな部分も含めてわかってくださってる方に曲を作っていただきたいなと思い、ミトさんのお名前を挙げました。
――豊崎さんにも、まずは新曲制作のサプライズから伺ってよろしいでしょうか。
豊崎愛生 すごく嬉しかったですね。今までスフィアとしての 4 人だったり、キャラクターとして一緒に歌うことはあったんですけど、彩陽ちゃんと2人で曲を新しく作るっていう試みは初めてで。2人でリリースというのが事務所的にも初めてだったので、彩陽ちゃんとやらせてもらえるのはすごく嬉しかったですね。ライブが控えているなか、やっぱり何かしらお客様にサプライズプレゼントみたいなものを用意したいなって考えていたところだったので、もうこれ以上ない企画だと思いました。
――新曲の制作自体がサプライズで伝えられたなかで、豊崎さんから見てもすぐに打ち合わせでミトさんの名前が挙がったのでしょうか?
豊崎 元々、彩陽ちゃんが私の曲で「これ好きだわー」とか「この曲かっこいい!」って言ってくれるのがミトさん作曲のものが多かったんですよ。なので今回のコラボで曲を書いてもらうのは絶好の機会じゃないかと。私たちのことをわかってくれている人で、お願いできるなら私の中でもミトさんというイメージありました。
――その日のサプライズ会議で、ミトさんにどんな曲をお願いするかまでお話ししたんですか?
高垣 ライブで絶対歌う曲になるし、いっそ曲のタイトルをそのままライブのタイトルにするくらい新曲を中心に置くライブにしたい……というのをミトさんのいない場で勝手に(笑)。曲の方向性の指定というよりは、ミトさんから見る私たちってどんな姿なんだろうって知りたいのもあったので、あまり具体的なお願いはせずに、まず「どんなものが浮かびますか?」というのを伺いたいという話になりました。
――豊崎さんはご自身のソロでミトさんと作品を作るときと、制作方法に差はありましたか?
豊崎 たくさん楽曲を作っていただいてるので曲によるんですけど、一番最初にご一緒させていただいたのが「Dill」という曲で、そのときはミトさんが「もうわかってるんで任せください」と(笑)。
――その時点でミトさんの中に豊崎さんに歌わせたいものがあったんですね。
豊崎 そう言っていただけて嬉しかったですね。ミトさんへの信頼があったからこそ、楽曲=今回のライブのコンセプトにしようという話になりました。ミトさんの曲を軸にライブを作っていけたらいいなと思ったんです。なので渾身の1曲をお願いしますと。そういう意味でも今までとは作り方がライブも含めて全然違いましたね。今回のライブは3部構成にしたくて。先にそれぞれのソロパートがあるんですが交わることなく完全に独立したステージにして、そのあとに2人のコラボパート。コラボパートはアンコールというよりソロパートと同じくらいのボリュームにしたくて3部構成になりました。ライブとしての楽しさをたくさん詰めたくて、「トゥインクルクス」はまさにそのパートのテーマという感じになりましたね。
――ミトさんにライブ自体の軸になる曲をと発注をした上で、その後どのようなリアクションがあったんでしょうか?
豊崎 かなり早く曲を返してくださいました。本当にすぐ。しかも実は 2 パターンあったらしいんですけど、ミトさん的に「お二人の初コラボであれば明るいほうがいいのでは」と「トゥインクルクス」を提出してくれました。
高垣 明るくない曲もあったみたいだね。そっちも聴いてみたかった。
豊崎 明るい曲になろうとバラードになろうと、ミトさんが紡いでくれる曲っていつもキラキラしていて。その絶対的な信頼感があったので、実は曲が出来上がる前にライブのモチーフを宝石に決めたんです。どんな曲でも煌めきが溢れ出しているマジックがかかった楽曲になるはずなので。
――初稿が届いた時点で既に今の「トゥインクルクス」の原型という感じですか?
豊崎 そうですね。ほとんど完成した状態だったと思います。
高垣 愛生の曲に感じていたキラキラがやっぱりこの曲にもあって。しかもクラップが入っていたりと、イントロからもうこれはライブにぴったりだなと思いました。私たちの中でもイメージが湧きました。
――本作は作詞をeufoniusのriyaさんが担当していますが、これはどのような経緯で?
高垣 歌詞についても私たちから「この方で」というのはお伝えしていなくて、そこも含めてミトさんにお任せしたんです。そうしたらミトさんはとにかく縁を大事にしてくれる方で、私と愛生の初めてのコラボということも考えて、今までの関係性を繋ぎ合わせてriyaさんに作詞を頼んでくださったんです。
――とてもミトさんらしい文脈の踏まえ方ですね。
高垣 riyaさんにはスフィアで歌詞を書いてもらったこともあるし、私のソロではeufoniusさんにお世話になっているし、P.A.WORKSさんの作品繋がりでご一緒していたり縁が深いんです。愛生と私のことをわかってくれていて、でもミトさんにとってはriyaさんとの共作は初めてっていう新しいご縁でもあって。実は私、歌詞が出来上がったタイミングでたまたまriyaさんとごはんの約束をしていたんですよ。ご本人も私たちとミトさんと曲を作れることをすごく喜んでくれていて、曲を聴いたときに愛生と私が向かい合って笑顔で楽しそうに歌っている風景が浮かんで来たんだそうです。その上で私たちが長年一緒に色んなことを経験してきたという関係性を踏まえて心を込めて歌詞を書いてくださったそうで、もう本当に感激しました。
――そんな制作過程を経て、レコーディングはいかがでしたか?
豊崎 楽曲はとにかくキラキラで可愛くて。でも私と彩陽ちゃんの、大人だから表現できるかわいらしさを詰め込めたらいいなと思ってレコーディングしました。とてもかわいくてキラキラした楽曲なんですが、でも別に幼いわけではないというか。さっき彩陽ちゃんが言ってたみたいに、ミトさんは今回繋がりっていうのをすごく大事なキーワードにしてくれていて。私たちがミトさんやriyaさんと紡いできた絆や、この作品を通してのお二人の出会い、そういうものが全部土台になった上にこのキラキラ感があるような気がしたんです。なのでそこはしっかり経験値みたいなものも入れながら、みんなにとって説得力のある歌が歌えたらいいなと思いながら歌いました。ディレクションはミトさんがやってくれて、riyaさんも駆けつけてくれたのでイメージを共有しながらレコーディングできました。
――おっしゃるとおりメロディもサウンドもかわいらしく跳ねているのに、どこかミドルレンジで落ち着いている感じがしますね。
高垣 まさに目指していたところで、かわいすぎず大人感もあり、大人かわいいみたいな。楽曲としてもライブとしてもそういうところを目指したいなというのは2人の中でもあったので、言わずともみんなが同じ完成図を思い描けていたんだなと思います。ちょっとキュッと切なさもあるんですよね。私はDメロの“一緒だから気が付けたね”という歌詞が大好きで、本当にそうだなって。自分たちの関係性とか今までの思い出が全部走馬灯のように浮かぶくらい(笑)。自分の中で言葉にしきれなかった、2人の関係性ってつまりこういうことだって言ってもらえたみたいで嬉しかったです。贅沢なことに仮歌はriyaさんが歌ってくれていたんです。それはもう優しい声で言葉とメロディが深く入ってきて、自分たちで歌ったらどうなるんだろうってすごくワクワクしましたし、お客さんたちがクラップしながら一緒に笑顔でいてくれるのが見えるような1曲だなって思いました。
――豊崎さんは歌詞の部分での受け取り方はいかがでしたか?
豊崎 riyaさん独特のriya語が最後の部分で出てきたり、タイトル自体も造語だったり。煌めきの「トゥインクル」と、明度を表す単位の「ルクス」を掛け合わせたタイトルをつけてくださったんですよ。riyaさんならではの言葉遊びがいっぱいに詰まっていて、歌っていてすごく楽しかったです。今日何度も言ってることだけど、2人の関係性や時間、ミトさんやriyaさんとの繋がりって目には見えないものじゃないですか。その目に見えないけどちゃんとあるものに今回名前をつけてもらえたような気がしていて。それが「トゥインクルクス」なんだなって解釈で歌いました。言葉にしたいけど物理的に見えなくて、でもちゃんとあるものっていうのがこの曲のテーマなのかなって。
――元々お互いに思っていたことが、名前がついてくっきりと表現しやすくなった。伝えやすくなったようなイメージですかね。
豊崎 スフィアを結成するときも似たような感覚を覚えたんですよ。4 人でいる。4人一緒にいることってなんか……なんて言えばいいんだろう。4 人まとめてただ名前がついてユニットになればいいとか、そういうことじゃなくて。思い出とか一緒にレッスンしてきた過程とか、そういうのも含めて呼び名がついた感覚がスフィアになったときにもあったんです。今回それとちょっと近しいというか、15 年前もこんな感覚になったけど、思い出したらそれはスフィアっていう名前がついた時だったなって。
――ちなみにスフィアの4人で物作りをするのと、今回の制作では差はありましたか?
高垣 ライブの宝石モチーフだったりジャケットのキラキラ感とか、愛生が本当に色んなアイデアを出してくれて。「こういう仕様にできませんか?」とかそれはもう細やかにスタッフさんに提案してくれたんですよ。ライブの衣装もそうでした。愛生は本当にクリエイターなんだなって改めて尊敬しながら、私は今回何もかもおんぶに抱っこで(笑)。
豊崎 やっぱり作り方は全然違うなと思いました。いつもは4 人だからこそできることをまず探していくところから始まるんですけど、今回はもうスタート地点から全然違くて。彩陽ちゃんはこうだから私はこうしようかなとか、彩陽ちゃんの良さはこうだし、お客さんにこういうふうに見てもらいたいから逆にコントラストとして自分はどうしようかなとか。考え方自体が2人ならではなのですごく楽しかったですね。彩陽ちゃんは「アイデアをいっぱい出してくれて」って言ってくれましたけど、逆に私から言うと相手が彩陽ちゃんだったから出たもので。1人だったら絶対出ないし、4 人だったらまた別のものが出てくるし。今回は本当に彩陽ちゃんと2人だからこそできる世界観だったり歌だったりライブだったと思います。今年の上半期はずっとそういう原動力で動けたのがすごく自分の中でも楽しくて新鮮で。実際にライブをやっていても、彩陽ちゃんが歌っているのを久しぶりに目の当たりにしたときに「私は本当にすごい人と一緒にやってるんだな」っていうのを改めて実感しました。制作も含めて本当にキラキラした時間だったので、それを全部閉じ込めたうえでCDとして形に出来るのがすごくすごく幸せです。
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