“リスアニ!LIVE 2024”のステージで、フレッシュな歌声を響かせた“新米”歌手・中島 怜。現在放送中のオリジナルTVアニメーション『終末トレインどこへいく?』の幕開けを飾る「GA-TAN GO-TON」を冠にしたシングルが四季のあわいにリリースされる。
ふんわりとした天然色の感性、ピカピカでピュアな歌声が特徴的な彼女だが、本作では瑞々しいだけではない、一歩深まった実り豊かな音楽が鳴っている。ガタンゴトンと揺れながら、彼女自身もまた新たな旅へと進んでいく。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
――まずは1月28日(日)、武道館で行われた『リスアニ!LIVE 2024』のステージのご感想から教えて下さい。
中島 怜 “リスアニ!LIVE 2024”のおかげで本当にたくさんの方と出会うことができました。あの日のライブを境に、色々なことが変わったなという印象があります。なによりも、当日皆さんがものすごく温かく迎えてくださり、それにビックリしました。最初は不安もあったのですが……もう日本武道館のステージに立った瞬間に、見たことのない景色が広がっていて「あ、私気絶するかも」って思ったくらい(苦笑)。以前「学校の体育館より大きいですか?」と聞いたら「大きいよ」って言われて、それだけで「うわあああ!」ってなっていたのに、想像以上に大きくて。しかも当日1曲目に歌唱した「サプライズ」のイントロがめちゃくちゃ短いので(笑)、余計に緊張して震えていました。でも会場の皆さんがペンライトを振ってくださったり、声を上げてくださったりして2曲目の「はじまる」くらいから、どんどん楽しむことができました。この環境で歌えていることがなんて幸せで、ありがたいことなんだろうって思いましたね。
――実際、本当に楽しそうでした。お米が大好き!ということもアピールできましたし(笑)。
中島 (笑)。私はお米が大好で、それをMCでも伝えさせてもらったところ、SNSなどを通じて、お米の情報をいただくことも増えました。
――最初に「変わった」というお話もありましたが、それは心境的な部分でも?
中島 はい。“リスアニ!ライブ”で、ほかのアーティストさんのステージも見せていただき、ものすごく影響されました。ああ、皆さん、本当に凄いなぁ、舞台の上だとよりいっそう輝くんだなぁって……って当たり前のことかもしれないのですが、私にとっては、それがとても新鮮で、新しい扉を開くことができたように感じています。特に、直前に拝見させていただいた岬 なこさんのステージが印象に残っています。横舞台袖で観させてもらっていたのですが、なこさんのステージが楽しい雰囲気に溢れていたからこそ、私も「ああ、ライブが楽しみだな」って思うことができましたね。
――あの日のライブでは、本当の意味でのサプライズとして、『終末トレインどこへいく?』オープニング主題歌「GA-TAN GO-TON」が初披露に。
中島 とても難しい曲ですし、この曲はサビに振付がついているのですが、ダンスも初めての挑戦だったので、手足が固まらないか心配でした。私は運動神経がめちゃくちゃ鈍いんですよ(苦笑)。初回限定盤に入っているMusic Videoのメイキング映像を見ていただくと分かるんですが、最初のダンスレッスンでは「え、ロボットですか?」というくらい身体がカチカチで。でも当日は「GA-TAN GO-TON」がいちばん緊張がほぐれた状態で歌えた気がしています。
――確かにとても難しいとは思うのですが、「GA-TAN GO-TON」は独特のリズムがクセになる曲でもありますよね。どのような制作過程を辿っていったのでしょうか?
中島 最初に聴かせていただいたときの印象は「とんでもなく凄い曲だ!」でした。それと同時に、私がこの曲を歌わせていただけることがとても嬉しかったです。この曲を歌わせていただけるとお聞きしたのが「サプライズ」の発売前くらいで。リリースイベントが落ち着いたタイミングでデモをいただいて、そこからレコーディングしていきました。とにかく難しい曲なので、何度も練習を重ねていました。
――転調も多いですよね。
中島 そうなんです!何度も転調していたり、2Aで雰囲気がガラリと変わったり。だから難しくはありますが、それすらも楽しむことができてしまうくらい素敵な曲だと思いました。曲を理解してくると、どんどん楽しくなってきて。
――以前DTMを勉強中ともお話されていましたが、中島さんは新しいことにチャレンジするのが、本当にお好きなんですね。
中島 めちゃくちゃ好きです!「GA-TAN GO-TON」だけでなく、「からっぽの月」「笑顔の花」と今回収録されている3曲、雰囲気がまったく違う曲で、全てが初チャレンジで。例えば「からっぽの月」は大人っぽくて、カッコいい曲なんですけども、歌詞をよく見ると、意外と今のわたしの年齢だからこその悩みも描いてくださっていて。だからこその歌いやすさがありました。また、作詞をさせていただいた「笑顔の花」は、メロディの音数が少なかったり、普段あまり馴染みのないサンバだったりと、歌詞を書く上では苦戦もあったのですが、でもそれ楽曲を理解できるすると歌詞の作り方も自然と見えてくるところがあって。歌詞の完成がギリギリにはなってしまったんですけれども、「難しい!」と思っていたことが、最終的には掴めたような気がしています。
――なんだか運命的ですね。中島さん自身の、新たな音楽の旅路もスタートしているというか……。
中島 そう感じていただけるのはとても嬉しいですね。今回は本当に、簡単ではないことが多かったです。すべてに乗り越えるべき壁があって、1つひとつ考えていったので、そこから気づくことも多かったです。これからはもっともっと様々なジャンルやスタイルに挑戦していきたいなと思っています。挑戦といえば、実はこのジャケット写真、アートディレクターの方からアイディアをいただいて、緑のレールを私自身で描いたんですよ。
――へえ!
中島 スタンプのようになったローラーをコロコロとさせて、実はレールが中島 怜のRを描いていたりします!ジャケットで何かを自分で描かせていただく事も初挑戦で嬉しくて。新しいこと、ものづくりが好きだな、と感じました。
ワクワクと不安が「GA-TAN GO-TON」
――それぞれの曲に難しさがあったということでしたが、レコーディングはいかがでしたか。
中島 収録曲順にレコーディングをしていたんですが(「GA-TAN GO-TON」「からっぽの月」「笑顔の花」)、「GA-TAN GO-TON」を歌っているときは、エネルギーに満ち溢れた感じと同時に、一抹の不安が忍んでいるような曲でもあって。それにリンクして私自身も、ワクワクと不安がないまぜになった状態で歌っていました。「からっぽの月」に進むときは、少し暗めの曲ということもあって、それに影響されて少しダウナーになったり。でも、その状態だからこそ歌えたところや出せた雰囲気もありました。最後の「笑顔の花」は、それこそ笑顔で、めちゃくちゃ幸せな状態で歌っています。
――別人レベルの、バラバラなメンタルな状態(笑)。憑依してしまうんですね。
中島 曲との向き合い方を色々と考えてはみたんですけど、どうしようもなくて。どうしても音楽と自分がリンクしてしまいますね。
――「からっぽの月」には語りもありますね。
中島 喋るように歌ってみたいなって思っていました。ところどころ、語りと歌の合間を縫ったような雰囲気も出したいなって。この曲は、すごくかっこよくて、深みのある曲です。今までチャレンジしたことのない曲だったので、この心の揺れをどう歌えば良いんだろうって思っていました。この曲は完全に「からっぽ」ではない曲だと思うんですよね。全てを諦めていたら“「逃げ出したい」「諦めたい」そんな言葉よぎる”こともないと思うんです。向き合っているからこその、もがき、苦しみがあって、今はその悩みが解決しない状態で。本来(この曲の主人公は)ものすごく芯の強い人なんだなという解釈をしました。私は大学生ということもあって、今の私だからこそのもがきがあります。だからこそ、共感するところもあって、等身大で歌ってみようって。
――これまでの声色とは異なる印象があります。いつもより低めで、だからこそ、この曲の景色も豊かに表現されているというか。
中島 これまでの私は高音を褒められることが多くて、実は低音には自信がなくて。でもプロデューサーさんが「あなたの低い声が魅力的だよ」と言ってくださって。それで「からっぽの月」はデモの段階から2個キーを下げて歌ってみました。当初は「これで大丈夫ですか?」と不安でいっぱいな状態だったのですが、本番のレコーディングではこの曲と一緒で、少し希望を感じるような状態で。この低めの声で歌う、というのも今回新たにした挑戦の1つでしたね。それとこの曲はミックスがヤバいので、ぜひスピーカーで聴いていただきたいです!「からっぽの月」をきっかけに、音のミックスという作業にも興味が湧きました!
――では改めて、作詞をされた「笑顔の花」の制作についても教えて下さい。
中島 作詞より先に曲をいただいたんです。その時は編曲がされていない、シンプルな状態で聴いたんですが、プロデューサーさんから「この曲からは“泣き虫”というワードが思い浮かんだんだよね」って言われて、それをテーマに作詞にとりかかりました。最初はピアノの音だけということもあって、自分の中でなかなかイメージが固まらなくて、逆に私自身はテーマと別のイメージを作ってしまったりもして。だから作詞にも苦戦したんです。「求められているのはこれじゃなさそうだな」と思いつつも提出したら、やっぱり違って。歌詞に悩んでいる中で、清水信之さんのアレンジがどんどん完成されていって、それを聴いたらてイメージが固まっていきました。アレンジって本当に大切なんだなと思いました。
――デビューシングル「はじまる」でも作詞をされていましたが、その時とはまったく感覚が違いました?
中島 違いました! 歌詞でこんなに悩んだのは初めてかもしれません。
――“私は花 笑顔の花 綺麗に咲く 涙は こぼさない 残さない ほころんで 繋いでく”と、すごく素敵な言葉が並んでいます。
中島 芽がつぼみになって、花になっていって、どんどん生まれ変わっていく。ちょっと話がそれてしまうんですが、私自身、上京したばかりの時は不安定だった時期があって。でもそれから1年経って、今は「この街に来られてよかったな」って思っています。私は人との出会いの中で生まれる優しさや愛が、幸せにつながると思っているんです。ただ、自分自身が不安な気持ちだと、その思いが曇ってしまいそうになることがあって……。でも1年経って落ち着いて周りを見渡したときに、感謝をすることがたくさんあって、自分の原点に立ち返ってみたんです。
――それは人の幸せも含めて?
中島 そうです。でもそれって心の余裕がないとそう思えない気がするんです。だからこそデビューしてから1年経って、私のことをいつも支えてくれる家族やスタッフの皆さん、友だち、なによりファンの皆さんのおかげで、それに気づくことができました。「笑顔の花」はその気持ちの過程も大切にしています。誰かの優しさに触れて、どんどんと変わっていく。でも、雨がないと花が育たないように、涙も大切であるというか……。
――最初に“泣き虫”というワードがあった、というお話がありましたが、まさにそれに帰結していくような。
中島 そうですね。私は本当に泣き虫なんです。プロデューサーさんには、自分の気持ちを見透かされていたのかもしれません(笑)。
──後半は良い意味で泥臭さもあって、シンガロング部分も印象的で、中島さんとリスナーがつながっていくような感覚もありました。
中島 人と人とのつながりを大切に思っているので、それが表現できたのかなって思っています。その中で生まれる優しさがまあるく広がればいいなって。最終的にはその輪が一凛の花となって咲くようなイメージです。色々と抽象的なお話ばかりしてしまって申し訳ないんですけれども、この曲が誰かに寄り添えるような曲になれば良いなって願っています。リリースイベントの時などに、皆さんと一緒に歌って、心を1つにできたら良いなって思っています。
――中島さんにとって音楽は、人と自分をつなげて、お互いを幸せにするツールでもあるんですね。
中島 本当にそうなんです!私は心から音楽が好きで、いちばん大事で。その理由や溢れる気持ちを言葉にしようと思うとすごく難しいんですが……。
――だからこそ、音楽に少し悲しさが含まれていたら自分も悲しくなるし、メロディが弾んでいたら心も弾むんですね。
中島 そうです、その通りです。だからめちゃくちゃ落ち込んでいる日に明るい曲を聴いていると元気になれるんです。単純ですけども(笑)。辛い時でも笑顔にしてくれる音楽は、本当に魔法のようだなって思います。これだから音楽が好きだし、やめられないなって。実は最初はタイトルを「花」にしようかなとも思ったんです。でも笑っていると、良いことが転がってくる気がしていて。だから私も笑顔でいるように心がけています。時と場合にはよると思うんですけども、笑顔でいることって大切なのかなと思っています。それでタイトルも「笑顔の花」にしました。
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