リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2024.05.28

日本と海外の文化の懸け橋になりたい――TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』OPテーマ「旅のゆくえ」を歌う18歳のシンガー・Hana Hopeに初インタビュー!

日本と海外の文化の懸け橋になりたい――TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』OPテーマ「旅のゆくえ」を歌う18歳のシンガー・Hana Hopeに初インタビュー!

デビュー前から高橋幸宏、TOWA TEI、ROTH BART BARONら錚々たるアーティストと共演・コラボレーションを行い、独特のオーガニックボイスで注目を集めてきた現在18歳のシンガー、Hana Hope。彼女のニューシングル「旅のゆくえ」は、この春、新たに制作されたTVアニメ『狼と香辛料』のOPテーマとして主人公のロレンスと賢狼・ホロの旅路を彩る、雄大な景色が広がるナンバーとなった。近年はアニメやゲーム作品の楽曲を歌う機会も増えている彼女が、本作に込めた想いとタイアップ作品に寄り添ううえで意識していること、そして懐かしくも新鮮な“奇跡の歌声”の源泉に迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

ホロとロレンスの特別な関係性に宛てて歌われた「旅のゆくえ」

――新曲「旅のゆくえ」はTVアニメ『狼と香辛料』のOPテーマです。作品のどんな部分に寄り添った楽曲でしょうか。

Hana Hope 「旅のゆくえ」はホロとロレンスの旅を表した楽曲で、そのなかでも旅の“不安”や“希望”、未来はどうなるかわからないけど頑張っていこうとする“勇気”を表現しています。不安があるなかで希望を感じさせてくれる楽曲という意味では、アニメを観ていなくても歌詞に共感できる方が多いと思います。

――Hanaさん自身は人生で困難に直面したときに希望を見いだして頑張れるタイプですか?それとも不安のほうが先立つことが多い?

Hana ときによります(笑)。でも私は歌をうたうことが救いなので、不安を感じるときも、それを歌で表現することでストレスを解消しています。

――『狼と香辛料』という作品自体にはどんな印象を抱きましたか?

Hana 中世ヨーロッパと日本の文化が融合した世界観がすごくスペシャルな作品だと感じました。神様やファンタジーの要素もありますが、どちらかと言うと経済のお話しが中心に描かれているところも面白くて。その意味では物語がリアルなので私も共感できるところが多かったです。それと『狼と香辛料』の世界は壮大で自然が豊かなイメージがありますが、私も自然が大好きなので、レコーディングのときも歌いながら目を閉じてイメージしやすかったです。

――自然のある場所にはよく行かれるのでしょうか。

Hana 山が大好きで、よく家族と一緒に軽井沢のほうにハイキングに行きます。特に浅間山のハイクはすごくきれいでお薦めなのですが、夏はアブに噛まれて危ないので注意してください(笑)。

――わかりました(笑)。自然の景色を思い浮かべる以外に、レコーディングで意識したことはありますか?

Hana ホロとロレンスのリレーションシップ、年齢を越えた深い関係性を歌声でも表したかったので、そこはすごく意識しました。楽曲の始めのほうは不安な気持ち、そこからサビに行くにしたがって希望や勇気が強まっていくような表現をしています。

――ホロとロレンスの関係性について、どんなところに特別を感じますか?

Hana 年齢が全然違いますし、ホロはオオカミでロレンスは人間という種族としての違いもありながら、そういった違いにはフォーカスしないで、お互い対等に接しているところが、ありのままで素敵だなと思います。そういうマインドは今の日常的な生活においても大切なことで、お互いの違う面にフォーカスを当てるのではなく、1人1人の個性を受け止めていくことが大切だと思うので、その意味でもこの作品には素晴らしいメッセージが込められていると思います。

――もう1つ、不安から徐々に希望が強まっていくような歌声のグラデーションは、この楽曲の歌詞やサウンドを受け取ったうえで組み立てられたのでしょうか。

Hana はい。作品の内容も含めて意識しました。特に気をつけたのは歌詞で、漢字が結構苦手なので、わからない言葉はきちんと検索して歌詞の意味を理解したうえで歌いました。 “霧立つ森の中抜け出して”や“儚い未来(あす)にさぁ希望灯したら”といった表現は、とてもポエティックで豊かな歌詞だと思います。

――個人的な感想ですが、1番は新しい出会いとそれに伴う期待や希望、2番ではいつか訪れるかもしれない別れへの不安が描かれているように感じました。それこそひょんなことから一緒に旅することになったホロとロレンスが旅の中で抱く想いのように。

Hana そうですね。2番には“よぎる不安に上書きした”という言葉があって、そこも人生における不安定さを表しているように思います。こうしてインタビューで歌詞のことをお話しすると、改めて気づくことも多いですね。

――良かったです!アニメのオープニングでこの楽曲が流れたのを観たときの感想もお聞かせください。

Hana 皆さんがどう受け止めてくれるか不安もありましたけど、すごくワクワク感もありました。OPテーマというのは、アニメの世界観に入っていくための心の準備をするような役割があると思うのですが、それを私が担当することに責任を感じる部分もあって。でも、放送後の反応を見ていたら皆さんも喜んでくださったみたいで嬉しかったです。

――MVも自然が溢れるロケーションで撮影されていて、雪山を歩くHanaさんの姿が印象深いです。

Hana 雪に足を取られたりして、足が寒すぎて大変だったのですが(笑)、でも最終的には素晴らしい映像になりました。撮影は長野で行ったのですが、海外のようにも見える不思議な映像になっていて。

――屋内のシーンも登場して、ストーリー仕立ての映像になっていますが、どのようなコンセプトで撮影されたのでしょうか。

Hana 『狼と香辛料』のテーマになっている“旅”をMVでも表現したくて、映画監督でもあるディレクターの(川和田)恵真さんに企画してもらいました。最初の雪山のシーンは旅で新しい場所に迷い込んだ感じで、屋内のシーンはその旅のなかで見つけたコテージで過ごしているイメージです。アニメの中で描かれる“勇気”と“不安”のどちらも表現したくて、色々な場面を撮っていただきました。

――Hanaさんが手紙を読んで涙を流されるシーンもありますね。

Hana はい。あのシーンは撮影当日に内容を知らされて、そこまでの演技をするのは初めてだったので「大丈夫だったかな?」と思っているのですが……(苦笑)。恵真さんから「昔もらった手紙を見つけて思い出を振り返るようなイメージで泣いてください」と演技指導していただいたのですが、その手紙は実際に恵真さんが私に宛てて書いてくださったものだったので、撮影のときに初めて読んでグッときました。

――じゃあ、あの涙は本当に流したものだったのですか?

Hana あ、涙はフェイクでした(笑)。でも、もう少しだけ時間があれば本当の涙も出てきたと思います。監督の思いやりにすごくグッときたので。アニメのストーリーラインにもふさわしいMVになったと思います。

――素晴らしいMVだと思います。ちなみに演技への興味はあるのですか?

Hana んー、私は歌うことが大好きなので、演技はあまり向いていないと思います(笑)。

――今回のシングルには「旅のゆくえ」の英語バージョンも収録されていますが、歌のアプローチや意識を変えた部分はありましたか?

Hana 日本語と英語は歌い方が結構違っていて、英語だと1つの音に対して乗せられる字数が多いですけど、日本語は音に対する言葉の乗せ方が違うので、その意味では同じ曲だけどまた別の世界観が出ていると思います。

――Hanaさんは普段、英語での会話のほうに慣れていると思うのですが、その意味では英語で歌ったほうが感情を乗せやすかったりするのでしょうか。

Hana どうかな…?でも多分、この曲は最初に日本語で歌ったので、日本語のほうが感情を乗せやすいと思います。アニメ自体も日本語で制作されていますし。でも、日本語バージョンと英語バージョンの両方を歌うことができたのは、私のバックグラウンドにもふさわしいことだと思いますし、それを皆さんに届けられることが嬉しいです。

――日本のアニメは今、海外でも人気が高いので、英語バージョンがあると海外のファンの方もより親近感を感じるかもしれないですね。

Hana そうですね。よりアニメの世界観も広げられると思いますし、海外のファンの方との繋がりも深くなると思うので、英語バージョンの歌詞も読んでアニメ作品への愛情を深めてもらえると嬉しいです。

アニメ/ゲーム作品との関わり、それらがもたらした経験

――Hanaさんは昨年にも、TVアニメ『はめつのおうこく』のOPテーマ「消えるまで」やアプリゲーム「Fate/Grand Order」Memorial Movie 2023 テーマソングの「flowers」を担当されて、最近はアニメやゲーム作品の楽曲を歌う機会が増えています。それらはご自身にとってどんな経験になっていますか?

Hana 作品のテーマソングを担当すると1つ1つのゲームやアニメの世界観に入っていくことになるのですが、それぞれ表現の仕方が全部違っていて、ストーリーラインやキャラクターの心情に合わせて歌のアプローチも変えていくので、数えられないほどたくさんのことを学んでいます。特に「flowers」はバラード調の楽曲なのですが、それまでバラードを歌ったことはあまりなくて。バラードはレンジが広くて歌手としてのスキルが試される部分もあるので、その意味ではパフォーマンスもより鍛えられたと思います。

――上海で開催された「Fate/Grand Order」のイベントでも歌われたんですよね。

Hana はい。皆さんの熱気がすごく伝わってきて嬉しかったです。アニメやゲームは1つ1つの作品に愛の深いファンベースがあって、その中で私の歌が受け止められている実感があるので、すごく心が温かくなって嬉しいです。他のテーマソングと比べて、分かち合ってくれる部分が強いのが特徴的だと思います。

――これまで話題に挙がった作品以外で、アニメやゲームに触れた機会はありますか?

Hana 『竜とそばかすの姫』に声優として出演したことがあります。

――そういえばそうでした!演技もされているじゃないですか。

Hana はい。でも『竜とそばかすの姫』で私が演じた知くんは少しシャイで、あまり自分の感情を表現できない子だったので、声優経験がない私にすごくふさわしい役柄でやりやすかったです(笑)。そこでも細田守監督をはじめ素晴らしいスタッフさんに会えましたし、色々新しい道に繋がっていったので、とても重要な一歩だったと思います。

――個人的にアニメをご覧になったりは?

Hana 今は忙しくてあまり観る時間がないのですが、昔は毎週金曜日に『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』、毎週日曜日に『サザエさん』と『ちびまる子ちゃん』をほぼ毎週観ていました(笑)。私はそういう子供向けでわかりやすいアニメが大好きで。観た後にすごく癒された気分になるところが好きです。あとは『あたしンち』も観ていました。

――やっぱりそういうアニメがお好きなんですね(笑)。

Hana 日常的な生活のアニメが大好きで。ちなみにどのアニメが一番好きですか?

――こちらが質問されるとは想定していませんでした(笑)。色々ありますが、子供の頃から好きでずっと馴染みがあるのは『ガンダム』シリーズですね。ご覧になったことはありますか?

Hana 名前は聞いたことがありますけど観たことはないので、今度観てみます。

――ロボットアニメですが基本はヒューマンドラマを軸にした作品なので、きっと楽しめると思います。ちなみにアニメの楽曲に馴染みはありますか?

Hana 『ドラえもん』の歌はうたっていました(笑)。実は幼い頃からアニメ作品のテーマソングに憧れていて。楽曲の中でストーリーラインを歌っているのがすごく素敵だなと思っていたので、今、色んな作品とご一緒できているのが夢のような気持ちです。

cero・髙城晶平とのコラボ曲、等身大の気持ちが詰まった自作曲

――シングルのカップリング曲についてもお聞かせください。「Rain Or Shine」はceroの髙城晶平さんが作詞・作曲した、夜の景色が似合うお洒落なナンバーです。

Hana 髙城さんとはレーベルメイト(※ソロプロジェクトのShohei Takagi Parallela Botanicaはソニーミュージックから作品をリリースしている)で担当の方が同じという繋がりもあって、以前にceroさんのライブを観に行かせていただいたのですが、そのときにすごく大好きになって。ceroさんは楽器の使い方が面白くて、フルートやユニークな楽器を楽曲の中に取り込むのが特徴的だと思うので、そういう方にぜひ楽曲をお願いしたいと思って今回ご一緒することができました。

――制作するにあたってHanaさんからはどのようなことをお伝えしましたか?

Hana 髙城さんと一緒にお話ししながら辿り着いたのは、とても日常的なシティーライフを表現した楽曲、シティーポップな感じの楽曲を作ろうということでした。私は今までメロウな楽曲を作ったことがなくて、私の歌声と合うか少し不安だったのですが、チルななかでもすごく聴きやすい楽曲になったので良かったです。

――夜の空気に溶けるような歌声でバッチリ合っていると思います。歌うときにいつもと違って意識したことはありましたか?

Hana この楽曲はメロウな曲調だけどグルーヴに入っていかなくてはいけないので、ビートを意識しながら歌いました。あとはあまり頑張りすぎていない歌声だけど、でもきれいに聴こえるように、その中間の良いバランスを見つけて歌うようにしました。

――この楽曲の歌からは優雅さや大人の余裕みたいなものも感じられます。

Hana 少し大人びていますよね。本当の私は全然幼いのに(笑)。でももう少しマチュアな(円熟した)声を出したくて。レコーディングでは髙城さんにディレクションしていただいて、色々アドバイスをもらいながら頑張ることができました。

――ちなみにHanaさんはレインとシャイン、どちらが好きですか?

Hana やっぱりシャインですね。私はその日の天気によって精神的な影響を受けがちなので、レインだとちょっと落ち込んじゃったりすることがあって。(インタビュアーに向けて)どっちですか?

――自分もシャインですね。まあよく考えたら大体の人は晴れのほうが好きかもしれません(笑)。そしてもう1曲のカップリング「passing forward」は、Hanaさんが作詞・作曲した浮遊感あるエレクトロポップ(作詞は雨野どんぐりとの共作)。

Hana まずトラックをいただいて、そこからどんなイメージが浮かぶかを話し合ったのですが、私は夜の道の中、ヘッドライトが光っているようなイメージが浮かんで。それと私はもうすぐ高校を卒業するのですが、その大人になる狭間の時間というか、曖昧でフワッとした気持ちを表現したくて楽曲を作っていきました。なので未来を思い描いたり、過去を振り返ったり。そういう自分はどうしていいかわからない感じというか、少しだけ喪失感も感じられるような時期を表したかったです。

――大人でも子供でもない、合間の時期と言いますか。ということは、歌詞には自分自身の今の心境が表現されている?

Hana 最初のほうに“Wandering down the timelines just like the souls around us”という歌詞があるのですが、きっとみんなも不安で気分が落ち込んでいるとき、過去を思い返したり、思い出を見つめたりして、少しだけ回想することがあると思うんです。そういう気持ちを描いています。

――タイトルの「passing forward」は直訳すると“前進する”という意味ですが、過去を回想することはできても、時間は必ず未来に向かって前に進むもので、そういう立ち止まれない切なさもこの楽曲からは感じられます。

Hana すごくわかります。時間は止まらないし、やらなくてはいけないことは目の前にいっぱいある。だからあまり過去を見てばかりではいられないけど、そのまま一歩一歩踏み出していかなくてはいけない。そういう気持ちもこの楽曲にはすごく入っています。

――歌詞の最後は“No fear no more”で締め括られるところも、恐れることなく前に進む決意の表れのように取れますし、その意味では自分自身に言い聞かせているような部分もあるのかなと。

Hana そうですね。この楽曲を書くなかで少しだけ自分の中の不安を取り除くことができたので良かったです。レコーディングのときも、始めは少し不安だけど、だんだん自信が付いていくことを意識して歌いました。

――ちなみに作曲はどのように行っているのですか?

Hana この楽曲はいただいたトラックに自分でメロディをアドリブで付けながら、「これいいな」と思ったフレーズを繋ぎ合わせて作りました。

――今回のシングルの収録曲ではないですが、自分はHanaさんが作詞・作曲した「leave me blind」という楽曲がすごく好きでして(作曲はtoshi808との共作)。

Hana やったあ!(笑)。あの楽曲では自由な自分を表したくて。自分のティーンエイジャーとしての一面を見せたくて、世界に対して少し怒っているところを表現しつつ、楽しく歌えるように現代的なイメージも入れたりしています。今の自分を表している楽曲になりました。

――何物にも捉われない軽やかな雰囲気がいいですよね。MVも素敵ですが、Hanaさんと一緒に登場する女性の方はお友達ですか?

Hana 私の双子のお姉ちゃんです。撮影してくれたのは大学生の友達なのですが、全部自分たちだけで作り上げたんです。その意味では自分が全部担当した楽曲でもあるので、リアルな自分が出ているなと思います。私もすごく若々しい感じですし(笑)。

――もうすぐ高校を卒業するというお話しでしたが、学校生活とアーティスト活動を両立させるのは大変ではないですか?

Hana 両立するのは難しいのですが、最近、スノーボーダーのアイリーン・グーという、オリンピック選手でスタンフォード大学に通いながらソーシャルメディアでも色々活躍されている方が、「1つ1つの活動が、別の活動の休憩になっている」ということを言っていて。すべてを仕事として考えると息苦しくなるけど、今やっていることは別のやるべきことの休憩として考えると視野が明るくなる。私もそういうマインドで活動しています。たまに気持ちの切り替えが難しい日もありますけど、なるべくオプティミスティックに、人生を楽しもうという気持ちで頑張っています。

次のページ:唯一無二の歌声が日本と世界の文化の懸け橋になることを目指して

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP