INTERVIEW
2024.05.27
TVアニメ『魔法科⾼校の劣等⽣』シリーズにLiSAが帰ってきた!第1シーズンOPテーマ「Rising Hope」以来、10年ぶりに担当する第3シーズンのOP主題歌「Shouted Serenade」は、「Rising Hope」と同じくLiSA×田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)×堀江晶太という、LiSAチーム最強メンバーによる最高の1曲に。カップリングには高橋 優、ツミキと新たなクリエイター陣を迎えた、最新シングルを語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
LiSAさんがTVアニメ『魔法科⾼校の劣等⽣』シリーズの主題歌を担当するのは、第1シーズンのOPテーマ「Rising Hope」以来、10年ぶり。LiSAファンにとっても、作品ファンにとっても嬉しい第3シーズンになりました。
LiSA そう思っていただけたら私も嬉しいですね。純粋にアニメが始まってからの10年間、自分が歌手活動を続けてこられて、同じ作品で10年後にまた主題歌を歌わせてもらえるタイミングがあったということが、すごいと思うんですよ。第1シーズンの時はまだ、主人公の(司波)達也お兄様が劣等生で、(司波)深雪がめちゃくちゃ優等生で、そこから2人で頑張って、自分たちの力を証明していくお話だったと思うんです。そこから10年経って、第3シーズンでは2人も進級しているし、頑張ってきた兄妹がみんなにも認められられていて、達也も劣等生ではなくなっているじゃないですか。でもずっと謙虚に頑張ってるし、後輩もできて……という姿を見ると、「あれ?なんかLiSAがやってきてることと重なるな」って思ったんですよ。
――重なりますか。
LiSA はい。10年前のLiSAは、初めての日本武道館ライブですごく悔しい想いをしたこともあったし、私自身が劣等生だったんですよね(苦笑)。当時「Rising Hope」の歌詞も、達也の気持ちに重ねてました。
――LiSAさんを今、劣等生と思う人はいないですよ。
LiSA そう、そう思っていただけるように私もなれたんですよ(笑)。当時「Rising Hope」を歌っていた時の感覚は、根本的に違ってなかった。だから「Shouted Serenade」も、自分から遠くない気持ちで作れました。私にとって『魔法科高校』は“旧友”だと思っているので。
――ちなみに、今お気に入りのキャラクターは誰でしょう?
LiSA 深雪ちゃんですね!“達也お兄様!”みたいな感じだったところに、ちょっと自我が芽生えてきたのが、すごくかわいいですよね。でも強い!そこも素敵だなと思っていて。バトルシーンもまたすごくなっているので、第3シーズンは見どころたくさんです。
――そんな第3シーズンを彩っている「Shouted Serenade」は、一聴して「Rising Hope」との関係性を強く感じる1曲になりました。作詞はLiSAさんと⽥淵智也さんの共作で、作曲が⽥淵さん、編曲は堀江晶太さんと、クリエイターも「Rising Hope」と同じ布陣ですね。
LiSA はい。私からお願いしました。やっぱり、10年ぶりに『魔法科高校の劣等生』に戻るとなると、求められているのは「Rising Hope」だというのは明らかだったので、私も「Rising Hope 2」を作るつもりで挑みました。ただ、ちょっと話は遡るんですけど……「Rising Hope」以降の10年間って、アニメ主題歌のお話をいただく時に「第2の<Rising Hope>を作ってください」と言われ続けてきてたんです。私だけじゃなく、晶太くんも田淵先輩も。でもあの曲は、この3人がいて物語があってと、色んなものが重なって出来たもの。同じBPMを使っても、同じ楽曲構成にしても、同じピッチで歌っても、同じものは出来ないんですよ。でも今回は特別じゃないですか。だから、“みんなが「Rising Hope」を作ってくれという、その「Rising Hope」とは何ぞや?”みたいなところから、アニメのスタッフさんを交えて3人で話をしていったんです。ラップが入ってることなのか、それともあの時にあった発明的な爆発力なのか、サウンド感なのか、歌手なのか……。
――“「Rising Hope」とは何ぞや?”に、答えは出たんですか?
LiSA 答えはないんですよ。多分、すべてが揃っての「Rising Hope」だから。でも、そういう話し合いをしたことで、心構えができましたね。「Rising Hope」だけどそれを超えたものにしなきゃ!という。そこからのやりとりは、いつもどおりですね。私がこういう曲にしてほしいというテーマを、先輩がメロと仮歌詞にしてくれたものに、私が想いを乗せて言葉を入れ替えて返して、先輩が私の想いを受け取ってまた音ノリのいいワードに書き直してくれたり、キラーパスを投げ合いながら完成させていきました。
――そこは、長年一緒に曲作りをしてきた田淵さんとの阿吽の呼吸ですよね。
LiSA でも先輩のデモを受けとる前は、ちょっと不安だったんです。みんな10年前に比べて当然スキルアップしていて、色んな“手”を身につけている。田淵先輩が書くUNISON SQUARE GARDENの曲を聴いても、斎藤(宏介)さんしか歌いこなせない、めちゃめちゃ難しくてテクニカルな曲が最近多いから、これもそういう曲だったらどうしよう?って思ってたんですけど(苦笑)、やっぱり先輩はすごくて。みんなで「Rising Hope」の方向を向こうとなったら、ちゃんときれいな形の器をチョイスした進化形を持ってきてくれました。それをポンと晶太くんに渡してアレンジしてもらって、というやりとりも、いつもどおり。そういえば私、先輩とも晶太くんとも、めちゃめちゃ言葉で話し合って曲を作り込んできたことって、ないんですよね。
――やりとりする曲を聴けば、相手のやりたいことがわかる!みたいな?
LiSA そうそう。誰も何にも言わないけど、テーブルに1000円置いてあったら、今日の晩ご飯はお弁当買って食べてねって意味だな、みたいな(笑)。だから晶太くんのアレンジも、すごくスケールアップしていて。細かいところにもこだわって「Rising Hope」の“その先”をかっこ良く決めてくれました。
――歌詞には、“握ったメッセージのその先へ”に代表される「Rising Hope」とシンクロするフレーズも散りばめられています。歌詞のテーマを言葉にすると?
LiSA 歌詞を書くうえで私は、「Rising Hope」の頃の自分の気持ちをもう1度思い返したんですけど、10年経った今、私があの頃と同じ熱量、同じ気持ちで歌うことはできないなって思ったんですよ。今の私を自分がいくら“まだ劣等生だから、もっと感張りたい”と思っていても、「いやいや、もういっぱしのことはやってきたじゃん、今幸せじゃん!」って見えるだろうから、説得力がない。でも、自分が頑張りたい理由、戦いたい理由がなくなったわけじゃないんです。悔しいと思うこともたくさんあるし、叶えたいこともまだまだたくさんある。それは全部、みんなと生きる未来の幸せのためだったりするんですね。そういう今の私の素直な気持ちを、10年後の「Rising Hope」として歌いたい。それを田淵先輩にも伝えました。
――だから“握ったメッセージのその先”なんですね。「Rising Hope」では“僕はキミと まだ見たい未来 あるんだよ”と歌っていましたが、「Shouted Serenade」では“ただキミと未来を作りたい!”と気持ちが進化していたり、「Rising Hope」では“僕の右手 キミの左手 そっと繋いで”いた2人が、「Shouted Serenade」では最後に“その手は離さないんだよ”と決意を告げていたり。両方の曲を知っているとエモいポイントがいくつもあります。
LiSA そうなんですよ。作品に細かく寄り添ったり、時の経過を踏襲するワードチョイスは、先輩が大得意なので安心してお任せしました。あと私が大好きなのは、曲の最初の1フレーズの後。歌詞カードには載ってないんですけど、英語で“Hey,welcome to back~”=帰ってきたぜ!って言っているところですね。
――「Rising Hope」でも頭サビの後に、英語で“welcome to the ruthless reality~”と言っていましたね。そういうところが踏襲されているのも嬉しいです。レコーディングはいかがでした?
LiSA 全部が大変でした。難しさでいうと……「Rising Hope」と「赤い罠 (who loves it?)」と「Catch the Moment」を全部足した感じ!レコーディングも去年のホールツアー“LiVE is Smile Always~LANDER~”の途中で録っていたから、歌い方にもすごくライブ感が出てますね。田淵先輩からの歌のディレクションも印象的で。「この曲の主人公の悩みや苦しみは、1番で決意を決めてるから解決している。だから2番はうじうじしてないでキレろ!」って言われました(笑)。
――確かに、4月の“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”の日本武道館公演で歌われたこの曲もキレキレでしたし、今後もライブでキレ散らかしていただきたいです(笑)。
LiSA 頑張ります!(笑)。
――「Shouted Serenade」とは一転、カップリングの「拝啓、わたしへ」は穏やかな大人のポップス。LiSAさんとも縁のある名古屋・中日ビル開業記念のイメージソングとして、シンガーソングライターの高橋 優さんが作詞・作曲されました。
LiSA ご本人とお会いしたのは2018年の「ミュージックステーション」が最初だったんですけど、あの時は出演者が全部グループで、私と高橋 優さんだけがソロだったから、独りの私を気にかけて話しかけてくれて。翌年の「ミュージックステーション」でもやっぱり優しくて、いつも感激してたんです。それに私、優さんの曲もめちゃめちゃ好きで。特に「明日はきっといい日になる」を聴いた時は、おこがましくも、私と似てる人だ!って、すごく親近感を感じてました。優さんの曲は、嫌なことがあっても希望を持って生きていこうとする人がいつも描かれているし、ちょっとおちゃらけて、音楽を楽しんでいる時もあるのが、また自分と重なるんですよ。だから、この曲はぜひ優さんに書いていただきたいとお願いしました。
――フォーキーなテイストも新鮮で、心温まりました。
LiSA 優さんの誠実な人柄が、曲から伝わりますよね。私、2番が大好きで、“ここにある優しさはわたしより優しい人にもらったまごころ 他の誰かにまた渡すことを愛と呼んだり呼ばなかったり”ってフレーズ、本当にそうだと思うんですよ。素晴らしい教訓をいただきました。
――レコーディングで意識したことは何でしたか?とても優しい声で歌っていますが。
LiSA そうですね。優さんが書いてくれた言葉からは、ちょっとこう……“泥んこになって泣いてるわたし”のイメージがあったんですけど、江口さんが明るいアレンジにしてくれたので、“泣き笑い”みたいな。つらいこと、寂しいことはあったけど、そこはちょっと我慢して、逆に明るく振る舞っていきたいな、というか。寂しい気持ちを、ちょっと強がって明るく表現する歌い方は、意識しました。
――ちなみに、名古屋でも音楽活動をしていたLiSAさんは、中日ビルに思い出は?
LiSA ビル自体じゃないんですけど、栄の中日ビルの周り、久屋大通辺りは色んな思い出ありますね。インディーズ時代にバンドでフリーライブをよくやっていたんですよ。CHUCKYの時に。
――じゃあ、また久屋大通辺りで、サプライズの路上ライブでこの曲歌ってほしいです。
LiSA うん、いつかやってみたいですね。そういうの大好きなので!
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