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INTERVIEW

2024.05.31

「リスパレ!チョイス」選出アーティスト・シユイインタビュー!

「リスパレ!チョイス」選出アーティスト・シユイインタビュー!

アニメ音楽に特化した媒体「リスアニ!」と大阪のラジオ局・FM802のラジオ番組「802 Palette(ハチパレ)」がタッグを組んだ新たな音楽メディア「リスパレ!」。アニメ、ゲームカルチャー、ネットミュージック、そしてそれらの枠を超えた様々なアーティストの魅力を伝える本プロジェクトでは、「リスパレ!チョイス」として、今聴いてほしいアーティストを独自の視点で選出。その第1弾として選ばれた6組のアーティストを積極的に紹介していく。

今回は、2021年1月にインターネットでの投稿活動を開始し、数々の有名ボカロPが書き下ろした楽曲を歌うなか、2022年11月にTVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のEDテーマ「君よ 気高くあれ」でメジャーデビューを果たした注目のシンガー、シユイをピックアップ。これまでの活動を振り返りつつ、5月22日にリリースされる1stアルバム『be noble』やライブイベント“リスパレ!LIVE vol.1”への意気込みについて話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創


supercell・ryoが変えてくれた、アーティスト/個人としての人生

――まずは、レコメンド企画「リスパレ!チョイス」に選ばれたお気持ちをお聞かせください。

シユイ デビュー前から推してくださっていた「ハチパレ」さんと、インタビューなどでお世話になっている「リスアニ!」さんのコラボということで、選んでいただけたことが光栄ですごく嬉しかったです。ただ、他の選ばれた方々が錚々たる方々だったので、「なんで私が選ばれたんだろう……?」と恐縮してしまって。

――そんなそんな!でも、ハチパレにはデビュー前から紹介してもらっていたんですね。

シユイ はい。気づけば楽曲をオンエアしてくださったり、「シユイ推し」ということを発信してくれていて。もちろんすごく嬉しいんですけど「えっ?なんで!?」と思っていて(笑)。本当にありがたいです。

――今回は読者の方にシユイさんのことをより知っていただくために、改めてプロフィール的な部分からお聞かせください。そもそも音楽活動を始めたきっかけは?

シユイ 大学生のときに、コロナ禍で授業が減って時間があったので、何か面白いことをしたいなと思って、その頃にちょうどAdoさんやyamaさんといった歌い手のカルチャーがすごく盛り上がっていたので、私も歌い手の活動を始めたのがきっかけです。それ以前から歌うことは好きで、実家にいた頃はお風呂でよく歌っていて(笑)。でも、上京して一人暮らしを始めてからは、たまにヒトカラ(1人カラオケ)に行くくらいで、歌う機会が激減してしまったので、このタイミングでチャレンジしてみようかなっていう。

――それで2021年1月からインターネットでの投稿活動を始めたわけですね。それまで誰かに自分の歌を聴いてもらう経験は?

シユイ 全然なかったです。高校の文化祭で、友達と3ピースのアコースティックバンドを組んで、松任谷由実さんの「やさしさに包まれたなら」を歌ったりしたのですが、それも一度きりだったので。

――そのときはシユイさんも楽器を演奏したのでしょうか。

シユイ いえ、楽器をやっている友達が誘ってくれたので、私はボーカルだけでした。でも、家にはギターやベース、ドラムセットがあって、ギターは少し触ったりしていました。ドラムセットは捨ててしまったらしいんですけど(苦笑)。

――ということは家庭的に音楽が身の回りにある環境だったのですか?

シユイ 地元が田舎で家の敷地が広かったので、置いていただけだと思います(笑)。楽器が色々あったのですが、家族は誰も音楽をやっていなかったので。

――歌ってみた動画ではボカロ系の楽曲を中心に歌われていましたが、アーティスト/シンガーとして影響を受けた方はいますか?

シユイ Superflyさんは中学生の頃から聴いていて影響を受けています。越智(志帆)さんは熱量のあるパフォーマンスをされる方で、ロック魂みたいなものを感じるのですが、この間、初めて生のライブを観に行ったときは、ご出産や喉の療養期間を経たこともあってか、今までとは少し違っていたように感じて。アーティストは自分を取り巻く環境によって色んなフェーズがあって、そのときにしか歌えない歌があることを感じて、また別の意味で影響や刺激を受けました。

――シユイさんのパワフルかつエモーショナルな歌声の源泉にはSuperflyさんの影響があったんですね。ちなみにこれまでの活動の中で、ご自身の歌や音楽性を確立するうえで転機になったことがあれば聞いてみたいです。

シユイ メジャーデビュー曲の「君よ 気高くあれ」に出会ったことは、アーティストとしてのシユイだけでなく、自分個人としてもすごく大きな出来事で、私の人生ごと変えてくれた印象があります。この曲を書き下ろしてくださったのはsupercellのryoさんなのですが、私は昔からずっとsupercellが大好きで、中学生のときにsupercellの音楽を聴いたことがきっかけで、いわゆるアニソンやボカロを聴くようになったんです。なので今の自分の音楽にも強く影響していると思いますし、そんなryoさんが書いてくださった歌詞の意味や楽曲の重みが、今の自分の中心にずっとあって。「君よ 気高くあれ」を歌う前と後では自分の歌が変容した印象があって、シユイとして歌うときだけでなく、普段何気なく口ずさむときも自分の歌が違って聴こえる気がします。

――「君よ 気高くあれ」以前と以後で、ご自身の歌がどう変わったか言語化できますか?

シユイ そもそも私の人格自体が、楽曲に出会う以前と以後とでは変わった感覚があって。言葉にするのは難しいんですけど……例えば言葉1つ1つの重みを以前よりも意識するようになって、言葉の核、言霊みたいなものを、意識的にも無意識的にも感じる瞬間がよく訪れるようになりました。それが自分の歌にもおそらく影響が出ているんだと思います。

――なるほど。ちなみに歌に関して、誰かに師事したり学んだ経験はあるのですか?

シユイ ボイトレには通っているのですが、そこでは歌い方を学ぶというよりも、考え方や概念的なことを学んでいて。歌い方に関しては独学で、色んな方の歌を聴いて学んできた感じです。

――自分自身を見つめることで、ご自身の歌にどのような変化がありましたか?

シユイ どちらかと言うと内面の変化を感じることが多いです。私は日々、日記をつけているのですが、その日に起こった自分の感情の動きとかを、夜に書き出すことで「私、この瞬間にこういうことを思っていたんだな」と気付くことが多くて。あと、自分から出てくる言葉を、文章の形できれいにまとめるのではなく、そのまま書き連ねているだけにしているのですが、そうすることで“言葉に対する尊敬”というものが自分の中にできて、それが歌詞に対する尊敬にも繋がっているように思います。私は自分で歌詞を書くわけではなくて、色んな方から素敵な歌詞を提供していただいているのですが、歌詞を読むと各々のクリエイターさんの特性や考え方が伝わってきて。そういう意味でも、自分自身を見つめることにはとても活きていると思います。

――音楽活動を通してリスナーに伝えたいこと、“歌”や“音楽”で表現を行うにあたって大切にしていることを教えてください。

シユイ リスナーに伝えたいことは、やっぱり歌を聴いてもらって楽しい気持ちになってほしいですし、自分なりに受け取ってもらえたらいいなと思っています。表現を行ううえで大切にしているのは、これは文字を書くときも同じですが、極力、外から見えている私というよりも、その中にいる誰からも見えない自分に対して、いかに真っ直ぐで正しい言葉を選ぶか。これは人生においても大切にしていることで、自分に正直であることは、歌や音楽にも密接に関係してくるものだと思います。

――だからこそ、日記でも自分から出てくる言葉をそのまま綴るんですね。

シユイ はい。歌うときもそうですし、音源もできる限り正直でありたいと考えていて。もちろん作品として世に出るものに関しては、きれいに整えていただく部分もありますが、全体の印象としては人間らしいもの、ちょっとダサかったりみっともない感じもあるくらいの正直な音源にできればと思っています。

――取り繕うのではなく、自分自身をそのまま表現すると。続いて5月22日にリリースされる1stアルバム『be noble』について、本作の中から聴いてほしい楽曲を3曲選んで、そのレコメンドをお願いします。

シユイ まずはやっぱり「君よ 気高くあれ」ですね。今の自分の核にある楽曲ですし、今回のアルバムは「君よ 気高くあれ」から今までの自分の日記みたいな印象があって、他の収録曲が「君よ 気高くあれ」を取り囲んでいるようなイメージなんです。曲順としてもアルバムのトリになっていますし、私の中心となっている楽曲なのでぜひ聴いてほしいです。

――アルバムタイトルの『be noble』も、「君よ 気高くあれ」を英訳したようなフレーズですしね。2曲目はいかがですか?

シユイ 「ハピネス オブ ザ デッド」です。デビューのきっかけになった「ONI」で出会ったjon-YAKITORYさんに書き下ろしてもらった曲なのですが、すごく自分らしい楽曲になったと感じていて。というのも、jon-YAKITORYさんとはプライベートでも親交があって、普段から友達みたいな感覚で話しているので(笑)、だからこそこの曲は友人に向けて書いた曲みたいな印象があって。私に対して「こういう人でしょ?」みたいな感じで書いてくれた楽曲に感じるんです。なので「君よ 気高くあれ」とはまた別のベクトルで特別な楽曲ですし、対になる曲という感じもします。アルバムもこの曲で始まって「君よ 気高くあれ」で終わりますし。

――「君よ 気高くあれ」が自分自身を変えてくれた楽曲だとしたら、「ハピネス オブ ザ デッド」はjon-YAKITORYさんから見たシユイさんが投影された楽曲なんですね。

シユイ 「君よ 気高くあれ」は自分の許容量を越える大きな曲だったのですが、「ハピネス オブ ザ デッド」は自分の等身大が反映された楽曲に感じていて。『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』のEDテーマで、泣き笑いしているような曲調というか、はっちゃけていて、ふざけていて、でも鬱々とした気持ちも入っている、気分のアップダウンが激しいところは私らしいのかなと思います(笑)。

――シユイさんは気分の波が激しく動くタイプなんですか?

シユイ はい、結構激しいです(笑)。

――最後にもう1曲、ご紹介をお願いします。

シユイ 「麗春花」という栗山夕璃さんに書いていただいた楽曲です。栗山さんにはEPの『思惟2』(2023年)に収録されている「あんたがたどこさ」に続いて楽曲を書いていただいたのですが、めちゃくちゃお洒落な楽曲だったのでびっくりしました。「あんたがたどこさ」のときも「どうしたらこういう楽曲が生まれるんだろう?」と度肝を抜かれたのですが(笑)、私がこれまで歌ってきた楽曲とは全然違う印象があって。サウンドはお洒落なのに歌詞は結構内向的で、歌入れのときに自分の今まで知らなかった声が出てきました。私にとっても新しい曲だったし、聴いてくださる方にとっても新しい出会いになる楽曲だと思います。

――今レコメンしていただいた3曲の他にも、40mPさん提供の軽やかかつ内省的なナンバー「ひとちがい」をはじめ、様々なクリエイターさんが提供された楽曲が収録されていて。シユイさんの歌声も楽曲によって色んな表情を見せてくれます。

シユイ それはクリエイターの皆さんが色んな楽曲を作ってくださることの影響が大きくて。私は色んな歌い方をしたり、1行ごとに表現を変えようという思いはあまりなくて、どちらかと言うと楽曲の印象や流れに身を任せて歌うタイプなんです。きっとクリエイターの皆さんが私に対して抱いた印象がそれぞれ違うから、色々な歌の入った作品になったんだと思いますし、クリエイターの皆さんが個性的な楽曲を作ってくださるので、私もわかりやすく歌うことができました。

ライブは友達と会っているような感覚

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