前作『Parfaitone』から約2年ぶりとなる、ClariSの新しいアルバム『Iris』が5月22日にリリースされた。ラテン語で「虹」を意味するタイトルどおり、七色の曲調のシングル曲を詰め込み、今までにないアルバムに仕上がった。ClariS。今回はアルバム曲に込められた想いや、アルバムを引っ提げての春のツアー、そしてインドネシア、ブラジル、ドイツでの待望の海外イベントについてクララとカレンに聞いた。この春から夏もClariSはノンストップ!
INTERVIEW BY 冨田明宏 TEXT BY 金子光晴
――まずはアルバムのお話をじっくり伺いたいと思います。前作の『Parfaitone』からもう2年も経っていることに驚いているんですが、いよいよ新しいフルアルバムがリリースされますね。
クララ 『Iris』(イーリス)というタイトルはラテン語で「虹」という意味を持っているんですけど、今回収録されるシングル曲が本当に多種多様で、「どの枠にも当てはまらないよね」というところから、「色んな色を出していくアルバムにしよう」ということでこのタイトルになりました。私たちも選曲から関わらせていただいたんですけど、本当に今までのClariSだったら歌ってこなかったような新しい色が出せた1枚だったなと思います。
カレン 前作の『Parfaitone』もたくさんの新しい楽曲に挑戦させていただいたんですけど、今回は『Iris』、「虹」というテーマということもあって、今までとは角度の違った楽曲がたくさん入っているので、デモをいただいた段階では「これを歌ったら私たちどんなふうになるんだろう」とか、「ClariSらしさを残したままこの楽曲を歌い上げられるのかな」というドキドキ感もあったんですけど、いざレコーディングを終えて完成したものを聴いてみると、「私たちの楽曲になってる」って自覚できるくらい、自分たちの色を出せた楽曲がたくさん入ったアルバムになりました。曲順もすごく悩みに悩んだのですけど、満足感はすごくあるアルバムになったと思っています。
――なるほど。僕もアルバムを聴かせてもらって思ったのは、『Parfaitone』から2年間でリリースされたシングルが、ClariSというものの枠組みを新しくしていったんじゃないかということですね。このシングルたちを1枚にまとめて、並べていった結果、今まで以上に音楽の振り幅が個性的になったアルバムになったんじゃないかと思うんですよ。
クララ 本当にそのとおりで、逆に言うと「えー、このシングル曲、1枚のアルバムにまとめられる?」みたいなところから始まって(笑)。
カレン そう、収拾がつかないんじゃないかって。
クララ でもそれがいい方向に進んだと思います。最初にいただいた時は「どれもいい楽曲だけど、ClariSらしくなくて、私たちが歌ったらどうなるんだろう?」という不安な気持ちからのスタートだったりもしましたけど、デモで声を当ててみると「意外といいかもClariSらしいかも」って。今まで知らなかった自分たちが見られるような可能性を秘めた楽曲をたくさんいただきました。だから、今回選んだのはClariSにとって新しい作家さんの楽曲が多いんですよ。
カレン シングル『ALIVE』をきっかけに色んな楽曲の幅が増えたと自覚していたんですけど、新しいことを始めるには皆さんに「ClariSらしくない」と言われてしまうんじゃないかという心配はあったんですね。でも、どんな楽曲も「ClariSらしいね」とか、「こんなClariSもいいね」って皆さんすぐに受け入れてくれて、むしろ「ちょっとこれは違うな」という声を一切聞かないくらいでした。どんなことに挑戦しても受け入れてくださったファンの方がいたからこそ、こんなに振り幅のあるアルバムになったと思います。曲調だけでなく、私たちの声色もまったく異なる7曲になって、色んな色が出せたアルバムになったので、お気に入りがまた増えたなという気持ちです。だから、どれか1曲曲は必ず誰かに刺さるような1枚になっているのかなって思っています。
――そうですね。でもアルバムがこういう形になったのは、コロナ禍以降の活動が非常に充実していて、ClariSが自分たちで自分たちの可能性に蓋をしない、そういう音楽の選び方をしてきたからじゃないかなと思うんですよ。
クララ 元々ClariSは世界観や「ClariSらしさ」というものを大切にして活動してきたなかで、仮面を外して次のステージに行って、今まで経験してこなかったようなアニメのタイアップをいただいたり、私たちにとって挑戦となる楽曲をいただいたりしてきたので、「ClariSらしさ」を広げていきたいなという想いは伝えてきたんですね。でも、実際にその時点ではしっかりとしたビジョンが見えていたわけじゃないので、1つ1つ色んなことに挑戦してClariSらしさというものに取り組んできて、それを皆さんが受け入れてくれたから今回の『Iris』というアルバムにも挑戦できたなって思います。やっぱり今年で14年活動する中で、この数年でまた成長できているというのは本当に幸せだなと思って、そういう姿を見ていただけるようなアルバムにも仕上がっているんじゃないかなと思います。
――「ALIV E」からスタートするというところも、攻めの姿勢が見えてかっこいいですよね。
カレン そうなんですよ。あまりにもカラフルな楽曲たちのアルバムになったので、まず「このアルバムを聴きたいな」と思ってくれるような導入にしようということで、1曲目から飛ばし気味なんですけど皆さんが一番知ってくださっている「ALIVE」にさせていただきました。
――リード曲である「Love is Mystery」が2曲目に入っています。今回、アルバム新曲は「恋」をテーマにした楽曲が多いですね。
カレン 確かに!今気づきました(笑)。
クララ 意識して選んだわけじゃないんですけど、多いですね。
――この「Love is Mystery」はどんな楽曲になりましたか?
クララ この楽曲は本当にかわいくて、最初に聴いた時からすごく耳に残るキャッチーでかわいらしい楽曲だなと思っていました。今までもこういうかわいらしい楽曲はたくさんやってきたんですけど、ここまで会話っぽい歌詞というのは初めてだったので、そこはすごく新鮮でしたね。本当に歌っていてとにかく楽しいなと思える楽曲でした。
――ジャズっぽいアレンジが入ったポップナンバーはClariSの王道と言えるものですけど、めちゃめちゃキャッチーですよね。カレンちゃんはいかがですか?
カレン イントロからすでに「始まった感」が満載の楽しい楽曲だなと印象がありますね。クララとの掛け合いもユニゾンも両方楽しめる楽曲だと思います。そして、私たちは今までコンサートでストーリー仕立てのものを作ることが多かったんですけど、それを歌にしたようなミュージカルっぽさもありつつ、ライブでもすごく映えそうな1曲になったので、語りかけるような部分と歌う部分とで、盛り上がるところがはっきり分かれた曲になっているかなと思いました。
――1曲で二度どころか五度おいしいくらいの楽曲ですね(笑)。
クララ すごい(笑)。
カレン 誰かに向かって「君がいいな王子様」って指名しちゃうくらい強気でいける楽曲も今までなかったですね。でもそれをすごくキャッチーに落とし込んでくださったことで歌えたフレーズだと思えているので、ライブでは会場ごとに「王子様」に指を差したいと思います(笑)。
クララ えー!どうしよう、ドキドキしてきちゃった(笑)。
――ファンの皆さんもドキドキして待つことになると思います(笑)。次は「Wonder Night」について伺いたいのですが、ファンタジックでドリーミーな楽曲になっていて、すごくかわいらしい世界観なのに踊れるダンスナンバーなのがClariSっぽいなと感じました。
クララ この楽曲は今回のアルバムのために集めたものじゃなくて、もっと前にデモを録っていた楽曲で、「シングルのカップリングか次のアルバムで入れたい作品にしたいとおもって、キープしておいた楽曲なので、今回満を持して歌うことができてとても嬉しいです。タイトルどおりの世界観のある楽曲で、全編ウィスパーなふんわりした歌声で届けられる楽曲というのも久しぶりので、昔の楽曲で「水色クラゲ」や「rainy day」を思い出しながら、懐かしい気持ちでレコーディングしていました。聴いていてつい体が揺れちゃうような楽曲なので、楽しんでいただけると嬉しいなと思います。
カレン 今回、「Wonder Night」の歌詞に“七色”という歌詞が何回も出てくるので、この『Iris』でしか歌えないよねということで入れさせていただきました。クララが言ったように全編ウィスパーで、ふわふわ感、浮遊感がある楽曲で、ずっと顔を出さずにイラストで活動していたからこそ、「掴みどころがあるようでない私たち」という、最初に作り始めた「ClariSワールド」が表現できた楽曲だなと思っています。ずっと声を張ることに挑戦してきた分、ちょっと前に戻ったかのような、でも新しさもある1曲に仕上がったと感じています。
――例えば「ALIVE」や「ふぉりら」のように、歌声で曲の持つ情感を強調したりデフォルメしたりするのではなく、「引き算」の歌い方がこの曲の魅力ですよね。
カレン はい。皆さんに「2人のユニゾンがすごくいいね」って言ってもらえるんですけど、この曲は1コーラスがすべてユニゾンになっています。いつもはユニゾンもソロも個性を感じられるように作っているんですけど、これは2人の息の合い方、トーンの合わせ方を感じていただける1曲にもなっているかなと思います。
――そして、「Freaky Candy」はジャズ的な要素とヒップホップ的なアレンジが活きていて、ラップのような表現もあるのが魅力的な曲ですね。
クララ 「Wonder Night」からガラッと変わって、2人の大人な魅力溢れる楽曲です(笑)。今までってすごくやわらかい表現だったり、恋愛でもここまで積極的な女の子の楽曲ってなかったと思うので、本当に新しい表現ができる楽曲でした。ちょっとだけ恥ずかしさもあるんですけど(笑)。
カレン かなり積極的だよね(笑)。
クララ 私も「どんな気持ちでファンの皆さんは聴いてくれるんだろう」と思って、ドキドキしちゃうところもあったので、皆さんの反応が楽しみです。でも、大人っぽさに振り切ると今までのClariSらしさがなくなっちゃうなと感じたので、かわいらしい歌い方をする部分も研究してバランスをとりながら作っていった楽曲ですね。それと、「王子様」もそうなんですけど、この曲の「ダーリン」も初めてなんですよね(笑)。
カレン 私たち、皆さんのことを何か肩書きつけて呼びたいんですかね(笑)。この前のシングル「ふぉりら」で学生の恋愛を歌ったばかりなので、この楽曲ではそこからのギャップを感じましたし、私は大人っぽいと言われるほうではなかったので、「どう歌ったらいいんだろう」っていう気持ちはあったんですけど、クララと同様にこういう楽曲が好みだったので楽しみながら作ることができました。いつもの曲のように自分のエピソードを思い出しながら歌うのではなくて、楽曲に登場する女性になり切って歌ったので、迷いが少なく歌えたのかなと思っています。だからこそ途中で出てくる“Juicy! Oozy!”のところで「本当に同じ人!?」と思ったんですけど(笑)。でもここがなかったら重たすぎる楽曲になっていたと思うので、1曲で色んな要素を楽しんでいただけるんじゃないかと思います。これはダンスも付いたんですけどの振りもあるんですが、かなり大人っぽい、妖艶なものになっています。今までのClariSはバレエ的なダンスの表現をしてきたんですけど、この曲はジャズの動きで大人っぽさを表現しているので、乞うご期待です。
――そして「アサガオ」という楽曲。これは聞けば聞くほど良い曲ですね。切ない2人の声の響きがとっても魅力的な1曲です。
クララ バラードや切ない楽曲をたくさん歌ってきたんですけど、ここまで歌で魅せるバラードの曲って少なかったなって改めて感じたので、少し緊張してレコーディングした楽曲でした。今まで歌ってきた楽曲とはまた違った「やわらかい切なさ」を感じる楽曲で、声の伸び感、ロングトーンが見せ所の楽曲なのでそこに注目して聴いていただきたいですね。この曲もバックの音数が少ないからこそ2人のユニゾンの良さがすごく感じられると思うので、じっくり夜とかに聴いていただきたいなと思います。
カレン この曲は泣けるよね。本当に「ザ・バラード」という感じで、これはクララが歌ったら右に出る人はいないんじゃないかというくらい、私の中ではバラードといえばクララというイメージがありますし、ファンの皆さんからも「クララのバラード最高だよ」という声があったので、この曲はクララの歌声をすごく楽しんでいただけると思います。ユニゾンで声を重ねることでこの楽曲が伝えたいメッセージ性に厚みを出すことができたかなと思うので、これもまた今まで私たちになかった楽曲に仕上がりました。あとは、“この声が貴方の元へ 届くように歌うから”というフレーズも、すごくずっとずっと歌が大好きで、聴いてくださる皆さんがいたから歌い続けてきたという、クララの気持ちをすごく表現しているなと思いました。ライブで聴いたら涙しちゃう人もいるんじゃないかなって、歌っていても完成したものを聴いても感じました。
――とても映像的な歌詞で、これは感情移入しすぎると涙が溢れてしまいそうです。
クララ 私はその曲の主人公の女の子の気持ちになって歌うほうが多いんですけど、この楽曲については自分自身の想いをそのまま投影したような気持ちで歌いました。切ない歌詞なので、例えばカレンに当てはめたりすると悲しい気持ちになっちゃうんですけど(笑)。
カレン 自分自身を歌詞に重ねすぎるとこれは危険な曲かもしれませんね(笑)。
クララ でも、私が今ここにいる理由や歌い続けている理由が、この楽曲の中にたくさん散りばめられていて、自分の想いをすごく真っ直ぐに歌えたなと思います。
――続いて「トワイライト」。これはライブで真価を発揮しそうな1曲ですね。アッパーだし、だけど透明感のあるサウンドと疾走感の融合が気持ちいい楽曲ですが、いかがでしたか?
クララ この楽曲は「ALIVE」という曲があったからこそ生まれた楽曲なのかなと思います。サビはアップテンポで気持ち良く声が伸びていくけど、Aメロはリズムが早くて言葉数が多くて、いい意味で波を感じます。聴いていて飽きないというか、色んな私たちの良さを感じていただける1曲に仕上がっているのではないかなと思います。
カレン この楽曲はBメロがないので、そこがすごく新鮮だなと感じつつ、疾走感もすごいので聴いてたら「終わった!?」と思うくらいあっと言う間かも(笑)。その中に詰まっている言葉も、“守りたいもののために自分が強くある”という意志を強く感じたので、疾走感の中にも強さ溢れる一面を表現できたらなと思いながら歌いました。ところどころ、Dメロで落ちる部分があったりするので、疾走感がある中でもドラマのある1曲に仕上がったなと思いました。
――続きまして「未来航路」。2人が見えている景色が音楽になっているのかな?と思ったりもしますが、どんな楽曲になりましたか?
クララ この楽曲は新曲の中では一番「これこそがClariSの良さだよね」というのを感じていただけるんじゃないかなと思います。もちろん、重永(亮介)さんの楽曲なので、私たちのことをすごく理解して作ってくださっていると感じているんですけど、その中でもここまで明るく、前向きにまっすぐな気持ちを歌った楽曲は久しぶりですね。「未来航路」というタイトルや歌詞のイメージからも青空が広がったような感じで、歌っていてもすがすがしいです。2番のサビで“終点なんてみえない この旅路を進み続けていく”という歌詞があるんですけど、私たちは「ゴールを決めてない」という話をさせていただくことがあって、それが歌詞になった感じで、また頑張るぞという気持ちにさせてくれるなって思います。これもライブですごく映えるし、皆さんとの一体感が生まれる楽曲じゃないかなと今から思っています。
カレン 「未来航路」ということで、今まで何十回、何百回と千歳(※北海道の新千歳空港)の航路を抜けて旅立ってきたので、飛んでいくイメージがすごくつきやすかったんですよ。明るくて、サウンドもすごく心地いいですし、私たちがこれからもっともっと頑張っていきたいという想いを表現してくださった楽曲なので、歌っていて自然ともう一段階ギアを入れてくれるような1曲になったので、ライブでもこの楽曲でもう一段階みんなのテンションを上げてくれるんじゃないかなと思います。
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