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INTERVIEW

2024.05.14

MADKID結成10周年を迎えた想い、作中の言葉をオマージュして描いた本楽曲を語る――アニメ『ただいま、おかえり』OPテーマ「ふたつのことば」リリースインタビュー

MADKID結成10周年を迎えた想い、作中の言葉をオマージュして描いた本楽曲を語る――アニメ『ただいま、おかえり』OPテーマ「ふたつのことば」リリースインタビュー

2019年にリリースした「RISE」がアニメ『盾の勇者の成り上がり』の第1クールのOPテーマとして作品の名刺的存在となり、以降も実に6曲もの楽曲でタッグを組み、今やアニメファンからもアニソンアーティストとしての認知を高めているダンスボーカルユニット・MADKIDが結成から10周年を迎えた。そんな記念すべきアニバーサリーイヤーに楔を打つ新曲「ふたつのことば」はアニメ『ただいま、おかえり』のOPテーマであり、これまでの彼らのイメージをガラリと変えるハートフルなナンバー。MVでも柔らかな表情を見せる彼らに、10周年について、そして「ふたつのことば」への想いを聞く。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

結成10周年を迎えたMADKID――今の気持ちを語る

――2024年、いよいよ10周年イヤーが開幕したMADKID。この10年を振り返ると、どんな時間でしたか?

YOU-TA MADKIDという“一生大切にしたいもの”ができたな、と思います。普通に生きていたら、こういう財産はきっと手にできないだろうと思いますし、それこそお金では買えない経験をたくさんしてきた時間でした。特に印象深いのはさいたまスーパーアリーナのステージ。そうした経験や思い出がたくさんできたことが、この10年で本当に良かったと思えることですね。あともう1つ、このメンバーでやってこられたことも本当に良かったなって、振り返ると改めて思います。ただ、そうは言ってもこの「10周年」はあくまでも通過点なので、ここからまだまだ経験や思い出を増やしていきたいです。

LIN すごく一瞬のように感じられた10年だったなと。自分はやりたいことをずっとやっているので、すごく幸せだなと改めて思っています。

SHIN ここまでの時間はすごく濃くて、本当にあっという間でした。でも、そのなかで様々な経験をさせてもらい、色んな人と出会わせてもらったので、ここからの11年目からはそういった人たちにしっかりと恩返しをしていけるように頑張っていこう、という気持ちです。

KAƵUKI 僕も、気づいたら10年が経っていたような感覚です。最初は成人式を迎える前に集まった僕らが、30歳になるんだな……と思うと、ここまで続けられていることもすごいことだと思いますし、当初一緒に切磋琢磨していた人たちも今ではこういった世界から離れてしまった人も少なくはなくて。感覚としては当たり前のようでありながらも、「続ける」ことは当たり前ではないんだな、と思います。

YUKI あっという間だったな、というのが一番の感想ですが、10年前のことを考えると、夢だけを抱いて何も知らずにこの業界に入ってきたんですよね。そこで様々な現実を見て、揉まれながらやってきたことで得たものがすごく多くて。MADKIDに入っていなかったら僕は音楽をやっていなかったかもしれないと感じることもありますし、それでもこうして今があるのはメンバーや支えてくれる人たちの存在があるからこそです。そしてMADKIDが存在していることで、僕自身も色んな活動ができているので、一筋縄ではいかなかった10年だけど、後悔はありません。この10年で得たものをより濃く、MADKIDのスタイルや個々がやるべき土壌をどれだけパワーアップしてここからの時間を過ごせるかが、未来のMADKIDの道が開けるカギになるかなと思っています。

――MADKIDを世界へと押し上げた「RISE」をはじめ、そのサウンドもこの時間の中でどんどん色濃くなっているかと思います。音楽観や届けたいものについて、この10年での変化はありましたか?

LIN あまり変わったと実感することはないです。もちろん外から受ける刺激はありますが、自分が歌っていないことを加味しても、基本的に強く誰かに届けたいという欲はあまりないので、スタンスとしてはあまり変わらないままに作っている感じですね。

――振り返ればMADKIDはライトノベルの冒険譚とのタッグが多かったかと思います。冒険譚とMADKIDサウンドの親和性についてはどのように考えていらっしゃいますか?

LIN 僕たち自身も、今のような活動形態でアニメの世界に入っていった存在という意味ではアニメ業界において新しいものだったと思うんです。ライトノベルも書き物としてすごく新しいものだったので、お互いの“新しさ”が上手くハマっていったのかな、と思います。

――お互いの持つ新しさ、開拓者という色合いがマッチしたということですね。幅広い層に人気の作品とのタッグが多かっただけに、ステージから見える景色も変化していったのではないでしょうか?

YOU-TA ライブが楽しくなりました。自分も好きなアニメの主題歌を歌うアーティストさんのライブを見るときにはめちゃくちゃワクワクしますが、少しずつ自身もその立場になりつつあることを実感してきました。それに、これまではなかなか見ることのなかった男性のお客さんが、目の前でおおはしゃぎして楽しんでくれている姿を見たときには胸が熱くなりましたし、1回ごとのライブでの達成感や満足感もどんどん変化していきました。

――特に印象に残っている、ステージから見た景色というと?

KAƵUKI やっぱりさいたまスーパーアリーナ(“Animelo Summer Live”)は、今までに立ったことのない規模感だったので忘れられないですね。これまで経て来たステージはどんなにデカくても2,000~3,000人くらいのキャパシティでしたから、その10倍。自分も小さい頃から見に行っていた会場でもあったので、そのステージに立てたことは実感が湧くと同時に「夢じゃないか」と思ってしまうくらいすごい景色でした。

――最近では声出しも解禁されました。歓声が返ってくるライブはいかがですか?

SHIN すごく嬉しいです。“Animelo Summer Live”(以下、アニサマ)ではセンターステージでパフォーマンスをしたので、360°から声が響いてきたんです。その感覚は初めて体験するものだったのですが、自分たちが声に圧し潰されるのではないかと思うくらいに声がかぶさってくる感覚でした。その声にパワーをもらってパフォーマンスが出来たなと思います。

――着実にMADKIDを知る人が増えていることも感じてこられたと思いますが、特に「今、良い波の上にいる」と感じたのはどんなときでしたか?

YUKI そうですね……1回目の“アニサマ”よりも2回目に立ったときに感じましたね。アニメファンの人たちに名前が知れ渡ったんだな、と感じました。「『盾』の人ね」という方や、名前だけは知っている、曲は聴いたことがある、といった層のリスナーが増えたことをそのときに感じましたし、アニメが好きな層にしっかりと刺さったことも実感できました。異色な存在ではあるけれど、音楽や作品に対して強い気持ちでアタックすればちゃんと応えてくれるんだなということを、あの2回目の“アニサマ”のステージで感じました。

『盾の勇者の成り上がり』のイメージからガラリと雰囲気を変える「ふたつのことば」

――2019年リリースの「RISE」で『盾の勇者の成り上がり』とタッグを組んで以来、何曲も主題歌を担当されてきたMADKIDですが、別の作品からのオファーがあったときにはどのような想いがありましたか?

LIN 単純に嬉しかったです。初めて名指しでオファーをもらったのがアニメ『佐々木とピーちゃん』だったのですが、そのときは本当に「ありがとうございます」という気持ちでいっぱいでした。

――『佐々木とピーちゃん』のOPテーマ「FLY」は、これまでと非常に世界観の違う1曲で、MADKIDの新たな表情を届けたという印象でした。モチーフが変わると楽曲に向けるテンション感は変わりましたか?

LIN ありがたいことにOPテーマを担当させていただくことが多くて。自分もすごくアニメや漫画が好きなので、「こういうふうに曲が流れたらいいな」という想いが根っこの部分にあるので、さらに名指しでの楽曲制作も嬉しいものでしたし、『佐々木とピーちゃん』のときにはいつもより自由にやってみようと思ったことを覚えています。

――アニメがお好きだと、やはり曲を作っていて「ここにタイトルがくるかな」と考えながらのアレンジや構成をすることはあるのでしょうか。

LIN はい。作品が決めている言葉やキーワードを「このタイミングで歌ったらテンション上がるよね」というところで入れることもあるので、実際のオープニング映像を見ると本当にワクワクします。

――今回はアニメ『ただいま、おかえり』のOPテーマ「ふたつのことば」を制作されました。また音楽的にもガラっとMADKIDの印象を変える楽曲となりましたが、この作品とのタッグのお話を聞いたときにはどのような感想がありましたか?

KAƵUKI 最初は「僕たちでいいんですか?」という感想でした。それこそ原作ファンで、僕らを知らない人たちがオープニングを歌うアーティストとして僕たちの姿を見たときにどう感じるのだろう、と心配なところはあったのですが、こうしてお話をいただけること自体がすごく光栄なことですし、ちゃんと向き合ってやっていこう、という気持ちでお受けしました。

SHIN 『ただいま、おかえり』との出会いも『盾の勇者の成り上がり』があったからこそですし、色んなタイアップを担当させてもらったおかげだとも思っています。それにこの作品と出会わせてくれたスタッフさんへの感謝も感じました。そんな「ありがとうございます」の気持ちも込めて、5人で精一杯歌って、制作をさせてもらいました。

――楽曲制作について、MADKIDの皆さんからのオーダーはありましたか?

YUKI 話し合いでこういう雰囲気にしたいというイメージがあったので、そこから作家さんにお願いをしました。

LIN (楽曲を制作した)hisakuniさんの作る楽曲に間違いはないと思ってお願いしました。僕はそれほど器用ではないですし、MADKIDは個性豊かでもあるのですが、そんな僕らの総意としてhisakuniさんには最大限に『ただいま、おかえり』の世界観に寄り添ってほしいです、とお願いしました。音を増やしてリッチにするのは簡単ですが、今回の「ふたつのことば」は聴けば聴くほど本当に音の少ない編成のなかで表情豊かな曲が出来上がっているので、すごく勉強になるなと感じました。

――実際にそのトラックに歌詞を載せたのがLINさんとYUKIさんです。『ただいま、おかえり』のどんなところにフォーカスして歌詞を書こうと思われたのでしょうか。

LIN まずはやっぱり“家族の愛”というところ。自分があまり意識をしたことのないテーマだったのですごく悩みましたが、逆に触れたことがないからこそ色んなアプローチができるなとも思いましたし、理想の家族像、「こういう家族があったら素敵だよね」ということを念頭に歌詞を書きました。現実にはオメガバースというものはないけれど、そういった性的マイノリティの方に対する気持ちは、自分のファーストエレメントとして外せないですし、やっとそういうことをテーマに歌う機会を得たなと思って、自分の意見を言えることのワクワクを感じながら楽曲と向き合って歌詞を書きました。

YUKI 僕もオメガバースという世界観を今回初めて知ったのですが、あまり意識しすぎず、オメガバースも性別も家族愛を語ることについては何も変わるところはないと思ったので、そういう普遍のものに焦点を当てて書きました。あとは作品のなかに出てくる言葉をオマージュしたうえで“自分”というような主語は入れずに描きました。聴いてくださった人が自分自身の想いと共に楽曲を捉えられるように意識をしましたね。1番にラップがないので、アニメで流れる部分としては僕のラップは出てこないのですが、曲の流れとしてすごく暖かいけれどシンプルな歌詞から真っ直ぐに想いが届くので、そこを受け取るようなリリックにしました。

――実際に完成した楽曲、歌詞を手にしたときの感想をお聞かせください。

YOU-TA いつもLINから上がってくるプリプロがすごく良いのですが、今回も一聴して「こういう感じか」と感動しました。ファーストインプレッションはそんな感じでしたね。今までの自分たちにはなかったサウンド感なので、自分ならどういうアプローチでいこうかとか、歌割を考えたときにもこの曲ではKAZUKIを前に出したほうがいいんじゃないかな、ということも考えたりしました。

SHIN LINからデモをもらったときに、物語の世界観とすごくマッチしていて、読解力の深さも感じました。すごく繊細に言葉が組み込まれていたので、自分がレコーディングするときにはその繊細さをしっかり伝えられるように歌うことを意識しました。

KAƵUKI 毎作品、LINの歌詞ってすごいなと思っているのですが、今回も“ひかり差すひなたへ”というところは、物語のことを狙って入れたのだけではなく、歌ってきたことの流れの中でサビに入ってきていることにグッときました。

――LINさんとYUKIさんからは物語の印象も出ましたが、皆さんはどのような印象を受けましたか?

YOU-TA オメガバースというジャンルを初めて知ったので驚きはありましたが、今まで触れたことのない設定だけどとても心温まる話だったので、ライブで歌うときにはこの作品を観たことでもっと深く理解したうえで歌えるようになる感じがしています。

SHIN 僕は子育てをメインとした物語だな、と感じました。僕自身子どもが大好きなので、ほっこりする部分や、輝くんを見て忘れていたピュアな気持ちをまた思い出させてくれるストーリーだなと思います。

KAƵUKI 僕も初めて触れるジャンルだったのですが、こういう世界観もあるのか、と思うのと同時に現実世界にも重なるような描写が心にすっと入ってきた感がありました。

――そんな「ふたつのことば」のMVもハートフルな雰囲気が印象的ですが、撮影はいかがでしたか?

YUKI 優しいMADKIDの一面がようやく出せたなと思いました。ダンスもあまりないですし、ダンスボーカルグループだという固定概念なく見られるMVになりました。

KAƵUKI 今までと打って変わったMVですし、違うグループなんじゃないかと思われるくらいガラっと印象を変えたMVになりましたが、逆に僕らの新しい扉を開いたなと思います。撮影に関しては、メンバー同士、視線を合わせながら楽しくやれたことが思い出ですね。その雰囲気が届くMVになったことが嬉しかったです。

SHIN 撮影は一日を通して本当に楽しかったです。10周年にぴったりのMVに仕上がっていると思いますし、色んな人たちが見やすいMVだなと思います。

LIN すごく良いMVになっていると思います。ああいう感じでカメラの前に立つことは子どもの頃から得意ではなかったので、いつもよりも頑張りました(笑)。

YOU-TA 今までで撮影時間が一番短かったんですよ、ダンスもないですし。いつもの風景を撮影されているような感じでしたし、素のMADKIDが出ていると思います。

次のページ:MADKIDの新たな武器はSHINの作詞!カップリング「Dream Journey」への想い

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