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REPORT

2024.05.05

“誰かの希望に あたしもなれたら”――LiSAッ子と絆を確かめ合い、最高の未来を思い描きながら13周年のお祝いを!LiSA ワンマンライブ“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”ロングレポート

“誰かの希望に あたしもなれたら”――LiSAッ子と絆を確かめ合い、最高の未来を思い描きながら13周年のお祝いを!LiSA ワンマンライブ“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”ロングレポート

ミニアルバム『Letters to U』を引っ提げて鮮烈なソロデビューを果たした2011年4月20日から今まで、シーンを牽引するライブアーティストであるLiSAが2024年4月19日、20日の2日間、彼女の聖地とも呼べる東京・日本武道館にて、デビュー13周年の幕開けを記念するワンマンライブ“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”を開催した。計2万人のファンと一緒に、何度も何度も愛(i)を叫び(SCREAM)尽くした熱狂の2日間。DAY2となるデビュー記念日、4月20日のステージの模様を、セットリストを紐解きながら振り返る。

TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY Viola Kam (V’z Twinkle)

地下鉄・九段下の駅を出て、千鳥ヶ淵を左手に見ながら坂道を上る。目の前には、3年前“LADYBUG”ツアーのリュックを背負った男の子が、スタスタと坂を上がっていく。たくさんの人並み。仲間とおしゃべりをしながらのグループ、はやる気持ちを抑えるように早足で1人でライブに向かう人。今回の“i SCREAM”ライブの新しいグッズを身につけている人もいれば、リュックの彼のように過去のLiSAアイテムを身につけた人もいる。そのグッズの1つ1つに、LiSAッ子それぞれの想いとLiSAと彼らが紡いだ歴史が刻まれている。

坂の途中を曲がり、左手に見えてきた頑丈な田安門をくぐると、人の数はどんどん多くなる。グッズ売り場の看板にはいくつもの“SOLD OUT”の文字が躍り、警備員が張り上げるファンを誘導する声が響いている。入場口に、誇らしげに飾られた“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”のロゴマーク。何人ものファンが今この時の思い出を刻みつけようと、とりどりのポーズでスマホのシャッターを切っている――。

ソロデビューから丸13年、ソロアーティスト・LiSAとしてキャリア13周年に突入するこの日。思い通りのステージが出来ず、悔しさに泣いた2014年の初武道館ライブから約10年。11公演目となる今回を含めて、節目節目で素晴らしいライブを行ってきた日本武道館は、彼女のキャリアにとって欠かすことのできない“LiSAの聖地”だ。暁の富士をイメージしたと言われている、なだらかにカーブを描く正八角形の屋根を仰ぐ。ワンマンライブとしては“LiVE is Smile Always~The Birth~”以来、2年ぶりとなるが、「ああ、彼女のデビュー日という記念すべき日に、今年も武道館に来ることができたんだ!」という、言葉にならない感慨が押し寄せる。LiSAとLiSAッ子にとっての日本武道館とは、そういう場所だ。

客席に続く扉をくぐる。見渡せば、これ以上の隙間はないと感じられるほど客席は膨れ上がっている。18時5分、ざわざわと蠢く会場が暗転。鎮まった客席を照らすように、バンドセットの後方、2階建てになったセット上方のビジョンに、3DCGのアニメーションで描かれたある物語が語られる。古き良きアメリカを思わせる大陸。かつては賑やかだった土地がいつしか荒れ果て、大地を突っ切る国道(=ROUTE13)をヴィンテージなアメ車がドライブする。車窓から見えるのは、至る所に掲げられた”NO SCREAM”と書かれたポスターや標識。声を出してはいけない、人気のない沈黙の世界へと変貌した。夜の街を疾走する車は、DINNERのサインを掲げ、緑色のマスコットが門番する、寂れた1軒のドライブイン風の店=“i SCREAM(アイスクリーム)”ショップに停車し、そのドアにカメラが吸い込まれていく。

LiSAライブのオープニング映像はいつも、これから始まるステージのプロローグであり、メッセージだ。声を上げることを禁じられた”NO SCREAM”な世界は、私達がつい最近まで直面していたコロナ禍の世界を想起させる。2022年4月19日~20日、前回の武道館公演はまさに、みんなで声を合わせることができなかった”NO SCREAM”なライブだったことを思い出す。そんななかでもLiSAは素敵なライブを続けていた。だけど少し寂しい気持ちと背中合わせだったことも同時に思い出す。

映像が終わると、暗転していたステージに仄かな光が灯り、幼く拙い声で歌われる「LiTTLE DEViL PARADE」の一節が流れてくる。2017年の“~LiTTLE DEViL PARADE~”ツアーでは、バンドメンバーとダンサーズ全員が賑やかにステージを練り歩き、至福を感じさせていたあの曲が、なんとも切なく哀しげな響きを残す。声の持ち主は、ステージ正面にいた小さな女の子“ミニLiSA”だ。”NO SCREAM”な世界では、LiSAはこんなにもか弱い存在になってしまったとでもいうようだ。もう1つ、武道館というステージに初めて立った頃のプレシャーに押しつぶされそうになり、まるで小さな子供のように怯えていたLiSAの象徴だったのかもしれない。だがその幼い歌声は、ここから育っていく新しい命の誕生のようにも思えた。

LiSA本人の登場を期待していた客席が、明らかにざわめき出す。次の瞬間、その騒ぎを打ち消すようにステージの上段に舞台が移る。椅子に腰かけたまま、スモーキーなピンクの布を継ぎ足して膨らんだドレスを纏ったLiSAがハードな「LOSER〜希望と未来に無縁のカタルシス〜」を歌い始める。黒装束に身を包んだダンサー達の“絶望”が周りで激しく踊り狂うが、“絶望は絶好チャンス 奈落の底這い上がるだけ”という敗者の魂を、王者のような風格で歌うLiSA。それは”NO SCREAM”な世界に打ちひしがれながらも、再起を虎視眈々と狙っているように見える。「LOSER 〜希望と未来に無縁のカタルシス〜」を歌い終え、“i SCREAM”=私は叫ぶ!を体現するように、LiSAは大歓声で熱狂するオーディエンスを睥睨しながら階段を下りて、「武道館―!」と大きくスクリーム。ゆーこー(Ba./柳野裕孝)、PABLO(Gr.)、いくちゃん(Gr./生本直毅)、ゆーやん(Dr./石井悠也)、アッキー(Key./白井アキト)、Nona*(Cho.・Per./岩村乃菜)からなるサポートバンド“わんたんにゅーめんず”とようやく合流し、ドレスを脱ぎ捨ててパンキッシュなチェックの衣装にチェンジ。野太いリフにのせて、早くもキラーチューン「ROCK-mode’18」を叩き込む。これは、彼女の初めての武道館ライブでも歌われていた曲。“たりら たりら”の大きなコールがコロナ前の武道館へ――“NO SCREAM”の世界から“i SCREAM”できていた世界へと、時計の針がギュンと巻き戻されたかのようなカタルシスが迫る。

大声でライブタイトルを叫んで「武道館2日目、ヤバいね!」と満足そうな顔で客席を見回すLiSA。怒号のような大歓声に向かって「今日は大切な、大切な記念日です。叫び倒す準備はできていますか?ここにいる全員の声でこの武道館を揺らす準備はいい?ここは13周年に辿り着いたアイスクリーム(i SCREAM)屋さんです!」とライブのコンセプトを誇らしげに話す。2015年の武道館ライブのサブタイトルも“いちごドーナッツ”&“ちょこドーナッツ”と、お菓子の名前が付けられていたことを思い出し、微笑ましくなる。そしてMCの締めは、LiSAがずっとライブで言い続けてきた恒例の「愛と思いやりを大切に!ここにいるみんなで、最っ高に楽しんでいきましょう!ピース!」の合い言葉。武道館に響く1万人の「ピース!」の声に胸が躍る。

「ROCK-mode’18」で巻き戻されたスクリームな時は、アッパーなロックナンバーが連なるゾーンへと舵を切る。荒廃した世の中で敗者を自覚させられた「LOSER」が、“i SCREAM”なリベンジを仕掛ける。大声で叫び挙げるオーディエンスに向けて「いやいや、今日の武道館そんなもんじゃないでしょ!」と煽った「ANTIHERO」。スモークが吹き上がり、客席を何度も過激に叱咤しながらお立ち台の上で銀色のバットを振り回した「confidence driver」。アイスクリームにチョコやクリームをぶちまけたデザートをメイクする映像を挟んで、ピンクのライトに照らされた「リスキー」では、ライブではもうお馴染みになったピンクラメが散りばめられたエレキギターを掻き鳴らし、ドスの効いた歌声を響かせる。スクリーンのネオンサインが煌々と輝き、“i SCREAM”のネオンの前でスクリームした「覚醒屋」。真っ青なペンライトの光の中で妖しい笑みを浮かべた「L.Miranic」では、歌い終えてLiSAが放心したような表情を見せる。

そして、暗転。再びスクリーンに真っ赤な“NO SCREAM”の文字が流れると、黒ずくめのポリスダンサーズが登場。“お前ら、声を出すのをやめろ!”というようにオーディエンスをなだめる仕草を見せるが、それはサイレンの音とバンドのシャウトがオーディエンスとポリスマンへと伝播していき、バンドの頭上でLiSAが拡声器を振り上げてアジテートするあの曲の一節“Find! Out! By yourself!”のスクリームに丸ごと全部飲み込まれてく!“NO SCREAM”というプロパガンダを信じることなく屈せず、“i SCREAM”な世界を自分で探し、取り戻せ!というLiSAがオーディエンスに向けた強い意志。“Shout loud! Don’t go missing”と呼びかける力強い歌声は、もう誰にも止められない。私の頭の中では、LiSAが幕張メッセで高いヤグラの上からメガホンで「ID」を歌い叫んでいた「~メガスピーカー~」ライブの強烈なオープニングがシンクロする。

アジテートし尽くしたLiSAに、真っ赤なライトが当たる。深遠なシンセサイザーの美しい音色にピアノの音が絡み舞い「愛錠」が始まる。ふと我に返ったようにLiSAが赤い羽織り物を脱ぎ捨てると、エナメルのブラックドレスとロングブーツ姿が露わになる。階段を降りると、ステージにはメンバーが奏でる場末のバーに備えられたようなピアノ。その上にLiSAはゆったりと横たわり、切なくセクシーな歌声と吐息を聴かせる。黒の同じ衣装を纏ったダンサーズと椅子を使った妖艶なパフォーマンスも見せながら、“どんな見えない明日も貴方が傍にいるのなら それだけでいい 強く確かな愛情”と歌い上げる。そのリリックは、どんな困難が訪れてもファンと一緒なら、そして一緒に歌えるなら、僕らは生きていけるのだと告げているようにも思える。あまりにも切ないこの曲。もしかしたら私達はまだ、あの“敗北者”がこうありたいと願った、脳内の出来事の中にいるのではないか?……と思いもする。LiSAがドライブするエクストリームなショータイムはいつも、LiSAのメッセージがベースにありながらも、あらゆる胸躍る演出を通じて、様々な解釈や読解を可能にさせてくれる。だから楽しい。夢中になる。

LiSAがステージから去ると、“NO SCREAM”から“i SCREAM”な世界への変化を予兆させてくれる小さな物語がスタートする。まだ“NO SCREAM”に支配されているアイスクリーム屋の階上に現れたのは、モップを手にした2人の店内清掃員ダンサーズ。真面目に掃除を始めるかと思って見ていると、おどけた風情の彼らが突然、スクリーンにデカデカと表示されている“NO SCREAM”の看板にモップで殴りかかり、破壊!はしゃぎながら階下のバンドメンバーのところまで駆け下り、PABLOとエアギターで遊ぶ。“NO SCREAM”なプロパガンダにはもう縛られないぞ!というように、歓喜のハイタッチを交わすと、今までアイスクリーム屋のステージにずっと置かれていたジュークボックスに近づき、ぐるぐる巻きのテープを剥がして電源をオン!彼らの一挙手一投足に、オーディエンスが反応して歓声が起こる。

音を出してはいけない“NO SCREAM”の世界が、ついに解放される時がきた!ジュークボックスから流れ出したのは軽やかな「ノンノン」のイントロ。頭に2つお団子を結って緑とピンクのツインテールをなびかせ、白とピンクのファーを羽織り市松模様のミニドレスを着たキュートなLiSAが、ウェイトレス姿のダンサーズを従えて颯爽と登場。清掃員と合流し、「武道館、踊るよー!」とスクリームする。ちょうど10年前の「Rising Hope」のMVでは、LiSA自身が今日のDINNERのような店のウェイトレスに扮していたことも、頭をよぎる。

ここからはかわいいダンスナンバーメドレーだ。これまでライブでみんなと一緒に振り付けを楽しんできたポップチューン――「ノンノン」~「エレクトリリカル」~「WiLD CANDY」~「スパイシーワールド」がノンストップで届けられ、オーディエンスも大きな声でコールを飛ばし、フリを合わせる。ロックゾーンからポップゾーンへ。まさに世界そのものが180度ぐるりと回転したように色づく華やかなエンターテインメントショーは、LiSAだからこそ違和感なくシームレスにファンを喜ばせてくれる素敵な魔法だ。

色と音をすっかり取り戻したLiSAのアイスクリーム屋さんは、ポンポンを持ったダンサーズの踊りも楽しい「Rally Go Round」でますます生命を躍動させる。“楽しんだ者勝ちのゲームなんだ いつも飛び出したそうにしてるキミの番”のパートを、元気いっぱいに“楽しい者勝ちの2024年4月20日! 武道館飛び出したそうにしてるキミの番”とファンの気持ちを見通したような嬉しい歌詞に歌い替え、渾身の力を込めてLiSAが曲名を叫んだ「I’m a Rockstar」へ。“誰かの希望に あたしもなれたら 歌いたい 今日の日の歌を”と、メロイックサインを高々と掲げるLiSA。歌を手に入れたかつての敗北者は、今日、勝者=ロックスターとなって、夢を叶える。曲の最後に「ただいま武道館!I’m a Rockstar!」とまたLiSAがスクリーム。2022年のまだ声の出せない“NO SCREAM”な武道館を経て、打ちひしがれていたLiSAと私たちは“i SCREAM”な今日を手に入れた。壮大な物語。暗い過去があったことを忘れてはいけない物語。LiSAと私たちは、自らの強い意志で、こうして武道館に集うことを選び、自由に声を出せるようになった武道館の熱狂を目の当たりにしている。それは、なんと幸福なことだろうか!

ここで再び、オープニングに登場したアイスクリーム屋=DINNERのCGムービーにカメラが戻る。先ほど清掃員の手によってジュークボックスが息を吹き返したように、客こそまだいないものの店には明るい灯りが戻り、メニューを提供できる準備が出来ている。華やかなスイングジャズをバックに、色づく店内を駆け抜けるカメラが、バンドメンバー&ダンサーズ1人1人の名前と顔が載っているチラシを捉えると、それがそのままメンバー紹介になっている演出も粋だ。最後に映されたのは、“I SCREAM”と書かれたパンキッシュな顔のLiSAのライブポスター。そこから店の外へとカメラが向けられると、1台のアメ車が店の前に入ってきた!オープニングから約1時間20分。ほぼノーMCで綴られてきた“NO SCREAM”から“i SCREAM”への物語は、ようやくここで今この時の現実へと円環を閉じる。

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